- 更新日 : 2025年11月21日
年5日の有給休暇の取得義務に罰則はある?ばれないもの?中小企業の対応を解説
2019年4月の労働基準法改正により、企業は年に10日以上有給休暇が付与される従業員に対して、年5日以上の有給休暇を取得させる義務があります。違反すれば罰則の対象となるため、適切な対応が必要です。
背景には、日本の有給取得率の低さや労働者の健康維持の必要性があります。中小企業も例外なく適用されるため、対応が求められます。
この記事では、年5日有給取得義務の具体的な内容や対象となる従業員、罰則、さらに実務に役立つ対応策について、わかりやすく解説します。
目次
年5日の有給休暇の取得義務とは?
年5日の有給休暇の取得義務は、労働基準法第39条第7項に定められています。この規定により、使用者は、年次有給休暇を10日以上付与された従業員に対して、付与された日から1年以内に、少なくとも5日以上の有給休暇を取得させることが義務となりました。この義務は、「年5日の取得義務」または「年休5日取得義務」とも呼ばれています。
年10日以上の有給休暇を付与された従業員が対象
この年5日の有給休暇取得義務の対象となるのは、「年10日以上の年次有給休暇を付与された従業員」です。これは、正社員だけでなく、一定の要件を満たすパート・アルバイト、管理監督者、有期契約社員も含まれます。
具体的には、雇入れ(入社)の日から6ヶ月が経過し、その間の出勤率が8割以上である従業員には、原則として10日の有給休暇が付与されます。
また、パートタイム労働者であっても、週の所定労働日数や勤続年数によっては、年10日以上の有給休暇が付与される場合があります。例えば、週4日勤務で3年6ヶ月以上継続して働いているアルバイトや、週3日勤務で5年6ヶ月以上継続して働いているアルバイトなどが該当します。
一方で、週2日以下のパート社員は、有給休暇の権利が最大でも年7日までであるため、原則としてこの取得義務の対象外となります。
このように、年5日の有給休暇取得義務は、雇用形態にかかわらず、年10日以上の有給休暇が付与される全ての従業員に適用されるため、中小企業においても、自社の従業員の有給休暇付与日数を確認し、対象となる従業員を把握する必要があります。
この義務は、有給休暇が「付与された」従業員に対して発生するものであり、従業員が実際に有給休暇を取得したかどうかや、雇用形態だけで判断するものではないという点に注意が必要です。
有給休暇の取得義務は付与日から1年以内
年5日の有給休暇は、有給休暇が付与された日、いわゆる「基準日」から1年以内に取得する必要があります。一般的に、正社員の場合、この基準日は入社日から6ヶ月後となります。
ただし、企業によっては、法定の基準日よりも前に有給休暇を付与するケースや、入社時に一部を付与し、6ヶ月後に残りを付与するといった分割付与を行うケースもあります。このような場合、最初に有給休暇を付与した日が基準日となることもありますが、5日の取得義務が発生するのは、付与された有給休暇の日数の合計が10日以上になった時点から1年間となります。
また、有給休暇の付与日が従業員によって異なる場合や、付与のタイミングが複数回ある場合など、取得期間が重複するようなケースでは、それぞれの期間を通じた期間の長さに応じて、比例按分した日数を取得させる必要がある場合もあります。中小企業においては、従業員一人ひとりの基準日と、そこから1年間の取得期間を正確に管理することが、法令遵守の第一歩となります。
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もし有給休暇を5日取得させなかったら?罰則はある?
年5日の有給休暇取得義務は法律で定められた企業の義務であり、これに違反した場合、罰則が科される可能性があります。
30万円以下の罰金が科される可能性
企業が、年10日以上の有給休暇を付与した従業員に対して、付与日から1年以内に5日以上の有給休暇を取得させなかった場合、労働基準法第39条第7項の違反として、対象となる従業員1人あたり30万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、使用者が従業員に有給休暇を取得させる時期を指定する場合(時季指定)には、就業規則にその対象となる労働者の範囲や時季指定の方法などを明記する必要がありますが、この記載を怠った場合にも、同様に30万円以下の罰金が科される場合があります。
さらに、従業員が希望する時期に有給休暇を取得することを正当な理由なく拒否した場合も、労働基準法第39条に違反するものとして、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
これらの罰則は、対象となる従業員1人あたりの違反として計算されるため、例えば、取得義務のある従業員が複数いる場合、その人数分の罰金が科される可能性もあります。
年5日の有給休暇の取得はどこでばれる?ばれないもの?
では、このような有給休暇の取得義務違反は、どのような場合に発覚するのでしょうか。主なケースとしては、労働基準監督署による定期的な調査や、従業員からの申告が挙げられます。
労働基準監督署は、企業の労働条件や労働環境が労働関係法令に適合しているかどうかを確認するために、定期的に事業所を訪問し、帳簿書類の調査などを行います。
この調査では、従業員の出勤簿や賃金台帳と合わせて、年次有給休暇の管理簿が必ず確認されます。管理簿には、従業員ごとに有給休暇の付与基準日、付与日数、取得日などが記録されている必要があり、この記録を通じて、年5日の取得義務が履行されているかどうかがチェックされます。
もし、管理簿が適切に作成・管理されていなかったり、5日以上の取得が確認できなかったりする場合には、労働基準監督署から指導や是正勧告を受けることになります。
また、従業員が、会社が有給休暇の取得を妨害したり、取得義務を履行していなかったりすると感じた場合、労働基準監督署に相談や申告を行うことがあります。実際に、有給休暇の取得義務違反が発覚するきっかけとして、従業員からの申告が多いという事例も報告されています。
労働基準監督署から指導や是正勧告を受けたにもかかわらず、改善が見られない場合や、違反の内容が悪質な場合には、書類送検され、刑事罰が科される可能性もあります。
「ばれない」はあり得る?有給休暇の未取得リスク
中小企業の経営者や人事担当者の中には、「うちのような小さな会社では、なかなか有給休暇を取得させる余裕がない」「実際、取得させていなくても、労働基準監督署にばれることはないのではないか」と考える方もいるかもしれません。しかし、安易に「ばれないだろう」と考えるのは非常に危険です。
労働基準監督署の調査
労働基準監督署の調査では、年次有給休暇の取得状況が確認されます。企業には、従業員ごとに年次有給休暇の管理簿を作成し、それを3年間保存する義務があります。この管理簿には、基準日、付与日数、取得日、そして年5日の取得義務対象者の取得状況などを記載する必要があります。
もし、この管理簿が作成されていなかったり、記載内容に不備があったり、最新の情報が反映されていなかったりする場合には、労働基準監督署から指導を受けることになります。また、管理簿上、年5日の取得義務のある従業員が5日以上有給休暇を取得していないことが明らかになった場合も、是正を求められます。
このように、労働基準監督署は、書類を通じて企業の有給休暇管理状況をしっかりとチェックするため、「ばれない」と安易に考えることはできません。むしろ、適切な管理体制を構築し、法令を遵守することが、企業にとってのリスクを回避する上で非常に重要です。
従業員からの申告
また、「ばれない」という考えは、従業員の視点が欠けていると言わざるを得ません。従業員は、自身の権利である有給休暇を取得できない状況に不満を感じる可能性があります。もし、会社が正当な理由なく有給休暇の取得を拒否したり、取得を促すなどの義務を怠ったりしていると感じた場合、従業員は労働基準監督署に相談や申告を行う可能性があります。前述の書類送検事例のように、従業員からの申告がきっかけで違反が発覚するケースは少なくありません。
従業員の不満を放置することは、労働意欲の低下や離職につながる可能性もあります。また、近年では、労働者の権利意識も高まっており、企業が法令を遵守しているかどうかに対する目は厳しくなっています。
企業イメージへの影響
さらに、有給休暇の取得義務を怠ることは、法的な罰則のリスクだけでなく、企業イメージの悪化や信頼失墜につながる可能性もあります。現代社会において、企業のコンプライアンス意識は、顧客や取引先、そして求職者にとっても重要な判断基準の一つです。もし、法令違反が明るみに出れば、企業の評判を大きく損なうことになり、採用活動や事業運営にも悪影響を及ぼす可能性があります。
働き方改革が推進される中で、従業員のワークライフバランスを重視する企業は、社会的に評価される傾向にあります。逆に、有給休暇の取得を阻害するような企業は、時代遅れであるという印象を与えかねません。長期的な視点で見ても、法令遵守は企業の持続的な成長にとって不可欠な要素と言えるでしょう。
年5日の有給休暇の取得を進めるために
年5日の有給休暇取得義務を確実に履行するためには、中小企業も適切な対策を講じる必要があります。以下に、具体的な対応策をいくつかご紹介します。
年次有給休暇管理簿を作成し管理する
まず、従業員ごとの年次有給休暇管理簿を正確に作成し、適切に管理します。管理簿には、従業員の氏名、採用年月日、有給休暇の付与日(基準日)、付与日数、取得した日付、そして残りの日数などを記録します。これにより、誰がいつ、何日有給休暇を取得しているのか、そして年5日の取得義務を達成しているのかどうかを、常に把握することができます。
手作業での管理が難しい場合は、勤怠管理システムの導入を検討するのも有効です。システムによっては、有給休暇の残日数や取得状況を自動で管理したり、取得期限が近づいている従業員にアラートを出したりする機能も搭載されているため、管理業務の効率化につながります。
計画年休制度を導入する
年5日の有給休暇を確実に取得させるための有効な手段の一つとして、「計画年休制度」の導入が挙げられます。これは、あらかじめ労使協定を結び、有給休暇の取得日を計画的に割り振る制度です。例えば、夏季休暇や年末年始休暇に加えて、数日間の計画年休を設定することで、従業員はまとまった休暇を取りやすくなります。
計画年休として取得した日数は、年5日の取得義務日数に含めることができるため、企業は確実に義務を履行することができます。計画年休の導入方法には、全従業員が一斉に休む一斉付与方式、部署やグループごとに交代で休む方式、個人別に計画表を作成する方式などがありますので、企業の業態や従業員の意向に合わせて検討すると良いでしょう。
使用者による時季指定をする
従業員が自らの希望で有給休暇を取得しない場合や、取得日数が5日に満たない場合は、使用者から時期を指定して有給休暇を取得させる必要があります。この時季指定を行う際には、一方的に会社が取得日を決めるのではなく、事前に従業員の意見を聴取し、できる限りその意向を尊重するように努めることが重要です。
また、時季指定を行う場合には、就業規則にその対象となる労働者の範囲や、時季指定の方法などを明確に記載しておく必要があります。なお、時間単位での時季指定は認められていませんが、半日単位での指定は可能です。
半日単位・時間単位での取得も認める
従業員の多様な働き方やライフスタイルに対応するため、半日単位や時間単位での有給休暇取得を認めることも、年5日の取得義務を促進する上で有効な手段となります。半日単位で年次有給休暇を取得した場合でも、0.5日として年5日の取得義務日数に算入することが可能です。
例えば、午前休や午後休といった形で柔軟な休暇取得が可能になるため、従業員はより有給休暇を取りやすくなります。人員に余裕がない中小企業でも、半日単位の取得であれば比較的調整しやすい場合もあります。
ただし、使用者による時季指定については、時間単位で行うことは認められていません。従業員が自ら時間単位で取得した有給休暇は、年5日の取得義務日数から控除することはできません。半日単位や時間単位の有給休暇制度を導入する際には、就業規則にそのルールを明確に定めておくことが重要です。
休みやすい環境づくり
制度を整えるだけでなく、従業員が有給休暇を取得しやすい環境づくりも非常に重要です。年5日の有給休暇取得義務について、従業員に周知徹底することはもちろん、管理職が率先して有給休暇を取得し、部下にも取得を促すなど、職場全体で有給休暇を取得することに理解のある雰囲気を作り出すことが大切です。
また、各従業員の有給休暇の取得状況を定期的に共有したり、取得が進んでいない従業員に対しては、人事担当者や上司から個別に声かけを行ったりすることも有効です。その際には、業務の調整や人員配置の工夫など、有給休暇を取得しても業務が滞らないような体制を整えることも重要となります。
年5日の有給休暇の取得は義務、適切な対応をしよう
企業には年5日以上の有給取得を義務付けられており、違反すれば罰則の対象となります。しかし、これは単なる義務ではなく、従業員の健康維持や生産性向上にもつながります。
まずは有給休暇の付与・取得状況を把握し、適切な管理を行いましょう。計画年休の導入や時季指定も有効です。不安がある場合は専門家に相談し、法令遵守と働きやすい環境づくりを進めましょう。
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