- 更新日 : 2025年6月2日
有給休暇を休日や祝日にあてるのは違法? シフト制や派遣の場合も解説
有給休暇を休日にあてることはできるのでしょうか?「人手不足だから休めない」「会社の休日に有給をあてるように言われた」など、職場によっては有給休暇の扱いに悩むこともあります。労働基準法では、労働者には年次有給休暇を取得する権利があり、適切な運用が求められます。しかし、休日と有給休暇の関係にはルールがあり、状況によっては違法となることもあります。この記事では、休日と有給休暇の関係について詳しく解説し、正しく活用する方法をお伝えします。
目次
有給休暇を休日にあてるのは違法?
有給休暇は労働基準法に基づく労働者の権利であり、労働義務がある日に取得することが原則です。つまり、もともと会社の休日として定められている日には、有給休暇をあてることはできません。
有給休暇の目的は「労働義務のある日に休むこと」であり、休日に有給をあてることは、そもそも「労働義務がない日を休む」ことになるため、制度の趣旨とは異なります。
しかし、実際の運用では、会社のカレンダーや就業規則により、休日と労働日の区別が曖昧になるケースもあります。また、シフト制や変形労働時間制など、特定の勤務体系においては、休日の定義が異なることもあるため、注意が必要です。
土曜日に有給休暇をあてる場合
会社の就業カレンダーによって、土曜日の扱いが異なります。
- 完全週休二日制の会社(休日扱い): 土曜日は会社の休日として扱われるため、有給休暇をあてることはできません。休日に有給を適用することは、法律上も認められていません。
- 隔週休二日制や土曜出勤ありの会社(労働日扱い): 土曜出勤が義務付けられている場合は、有給休暇を取得できます。例えば、隔週で土曜日が出勤日になっている会社では、その労働日に有給休暇を適用することが可能です。
日曜日に有給休暇をあてる場合
日曜日が法定休日に設定されている場合、有給休暇をあてることはできません。法定休日とは、労働基準法第35条で定められた「毎週少なくとも1日以上の休日または4週を通じて4日以上の休日」を指し、企業は必ずこの休日を設ける必要があります。
ただし、シフト制の職場では、日曜日が必ずしも休日とは限りません。例えば、週休2日制で「月曜日と火曜日が休み」と定められている場合、日曜日は通常の労働日となり、有給休暇を取得できます。
祝日に有給休暇をあてる場合
会社の就業規則で祝日が休日として定められている場合、有給休暇をあてることはできません。しかし、祝日が労働日である会社(祝日出勤がある職場)では、その日に有給休暇を取得することが可能です。
例えば、小売業やサービス業のように祝日でも営業している企業では、祝日が労働義務のある日とされるため、有給休暇を使うことができます。一方で、カレンダー通りに祝日を休みとする会社では、その日がすでに「休日」となっているため、有給休暇をあてることはできません。
お盆休み(夏季休暇)、正月休み(冬季休暇)に有給休暇をあてる場合
お盆休みや正月休みが「会社の休日」として定められている場合、有給休暇をあてることはできません。ただし、会社によっては「夏季休暇や年末年始休暇を有給休暇として取得する」ことを推奨するケースもあります。
- 全社員が一斉に休む「会社の休日」としての夏季・年末年始休暇:有給休暇を取得することはできません。
- 休暇として有給取得を奨励している場合:労働者の判断で有給休暇を取得することが可能です。
有給休暇を休日にあてても良いケース
有給休暇を休日にあてることは基本的にできませんが、例外的に認められるケースもあります。ここでは、有給休暇を休日にあてることができる具体的なケースを解説します。
振替休日を設定した場合
振替休日とは、本来の休日を別の日に変更する制度です。例えば、法定休日に出勤し、別の日を振替休日として設定した場合、その振替勤務日(振り替えた法定休日であった日)に有給休暇を使用することができます。
振替休日を設定した場合に有給休暇を利用する際は、事前に会社が労働者へ通知し、労働者がその日を労働日として理解していることが必要です。
代休を取得する場合
代休とは、休日出勤をした後に、後日休みを取得する制度です。代休は「休日出勤した日の代わりの休み」として付与されるため、本来、労働義務がない日となります。そのため、代休となった日に有給休暇を取得することはできません。ただし、企業が代休を取得して欲しいと伝えた際に、従業員が代休ではなく有給休暇の取得を希望する旨申し出た場合には、その申し出を認める必要があります。
代休と振替休日は異なりますので、注意しましょう。
- 振替休日:事前に休日と労働日を入れ替える
- 代休:休日出勤した後に、後日休みを与える
シフト制で有給を休日にあてることはできる?
シフト制で働く労働者の場合、有給休暇を休日にあてることができるかどうかは、シフトの組み方や労働契約の内容によります。基本的に、有給休暇は労働義務のある日に取得するものとされているため、もともとシフトが入っていない休日には、有給休暇をあてることはできません。
例えば、シフト制の労働者が「週3日勤務」の契約で働いている場合、出勤予定のない日は休日となるため、その日に有給休暇をあてることはできません。一方で、出勤が予定されていた日に休みを取りたい場合は、有給休暇を使用することが可能です。
しかし、例外的に休日にも有給休暇を適用できる場合があります。例えば、シフトの変更に伴い、出勤日が変わった場合などが考えられます。
シフト制の労働者が有給休暇を正しく取得するためには、まずは自分のシフトと就業規則を確認し、会社の担当者に相談することが大切です。また、シフトの調整により、有給休暇の取得が不利にならないように注意しましょう。
派遣社員は派遣先の会社の休日に有給をあてることはできる?
派遣社員が派遣先の休日に有給休暇を取得することはできません。派遣社員を雇用しているのは派遣元である派遣会社ですが、実際に就業しているのは派遣先であり、労働義務のない休日に有給休暇を取得することは不可能です。
有給休暇管理簿の作成や、年5日の有給休暇消化義務など、有給休暇の管理自体は派遣会社が行いますが、実際に働いているのは派遣先であることに注意しましょう。
欠勤した日を有給にあてることはできる?
欠勤した日を有給休暇として扱うことは可能です。ただし、事前の申請が必要であり、会社の就業規則に従う必要があります。例えば、体調不良や家庭の事情で急に欠勤した場合、後日「欠勤を有給扱いに変更できるか」を会社に相談することができます。
会社によっては、事後申請を認めていない場合もあります。そのため、事前に就業規則を確認し、できれば欠勤前に連絡を入れて有給休暇を申請するのが望ましいです。また、長期間の欠勤に対して有給休暇をあてる場合は、上限日数や取得の条件が定められていることがあるため、会社のルールを確認しましょう。
会社から夏季休暇や冬期休暇を有給にしてと言われたら?
夏季休暇や冬季休暇として設定されている日は、もともと労働義務がないため、有給休暇を取得する余地はありません。夏季休暇や冬季休暇に接着する形で有給休暇の取得を指示し、長期休暇とすることは可能ですが、計画的付与として労使協定の締結が必要となります。
年5日の消化義務の関係上、夏季や冬季など特定の時期に5日の有給休暇を取得させること自体は問題ありません。しかし、その代わりとしてもともとあった夏季休暇や冬季休暇などの制度を廃止することは労働条件の不利益変更となるため、労働者の同意を得ることが必要です。
勝手に休日を有給扱いにされたらどうする?
会社が休日に勝手に有給休暇を適用していた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
まず、自分の有給休暇の管理状況を確認することが重要です。会社の勤怠システムや給与明細をチェックし、休日に有給休暇が適用されていないかを確かめましょう。例えば、会社の休日であるはずの日に「有給休暇」と記録されている場合は、適用方法が正しいのかを人事部に確認する必要があります。
次に、会社に直接確認することが大切です。人事担当者や上司に対し、休日に有給休暇が適用されている理由を尋ね、説明を求めましょう。場合によっては、システムの誤りや手続き上のミスである可能性もあります。そのため、まずは冷静に会社に確認し、必要であれば修正を依頼することが大切です。
もし、会社が意図的に休日に有給休暇を適用している場合、それが違法かどうかを判断する必要があります。労働基準法では、会社が一方的に労働者の有給休暇を操作することは認められていません。有給休暇は労働者が自由に取得する権利のため、会社が勝手に休日に有給をあてることは、労働基準法違反となる可能性があります。
このような場合は、まず会社と話し合い、それでも解決しない場合は労働基準監督署に相談することを検討しましょう。労働基準監督署は、労働者の権利を守るために適切な指導を行います。相談する際には、給与明細や勤怠記録のスクリーンショット、会社とのメールのやり取りなどの証拠を残しておくことが重要です。
有給休暇を適切に取得しよう
有給休暇は「労働義務のある日」に取得するのが原則であり、もともと休日となっている日にはあてることができません。もし、会社が休日に有給休暇を強制的にあてるよう指示してきた場合は、労働基準監督署や専門家に相談することをおすすめします。有給休暇を正しく理解し、適切に活用することで、快適な働き方を実現しましょう。
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