- 更新日 : 2025年4月4日
再就職手当(再雇用手当)とは?もらえる条件や金額、期間、デメリットなども解説
再就職手当(再雇用手当)とは、失業後に早期再就職した方に支給される経済的な支援制度です。この記事では、再就職手当の受給条件、支給額の計算方法、申請方法や必要書類、審査時の注意点などを詳しく解説します。最大限の手当を受け取るためのポイントや、受給する際のデメリットについても分かりやすくまとめました。
目次
再就職手当(再雇用手当)とは
再就職手当とは、雇用保険に加入していた方が、退職・失業後に早期に再就職した際に支給される手当のことです。主に、失業期間を短縮し、求職者がスムーズに社会復帰を果たせるよう支援することを目的として設けられています。
再就職手当は、ハローワークで失業認定を受けた後、一定の条件を満たして再就職を決定した方に支給されます。支給額は、失業保険(基本手当)の給付残日数に応じて計算され、残日数が多いほど支給額も高くなる仕組みです。具体的な支給割合は給付残日数によって60%または70%と定められており、再就職のタイミングや雇用契約の条件によっても異なります。
「再雇用手当」という言葉で検索されることが多くありますが、実際には「再就職手当」が正しい名称です。そのため、本記事では以下「再就職手当」と表記し、受給条件や申請方法などの詳細を解説します。
再就職手当の受給条件
再就職手当を受けるためには、雇用保険の失業手当(基本手当)の受給資格を満たしていることが前提となります。
具体的には、失業手当の受給資格決定後、7日間の待機期間終了後に再就職が決まり、再就職先での雇用が1年を超える見込みであることが必要です。また、再就職が決まった時点で、失業手当の所定給付日数が3分の1以上残っている必要があります。
さらに、以下のすべての要件を満たしていることが求められます。
1. ハローワークに求職登録をしていること
再就職手当を受けるには、ハローワークにて求職者として正式に登録され、失業状態であることを認められている必要があります。
2. 所定給付日数が3分の1以上残っていること
失業手当を受給している方が再就職手当を受けるためには、所定の失業給付日数が最低でも3分の1以上残っていることが条件です。この条件により、早期再就職を促す仕組みになっています。
3. 同一の受給期間内に再就職手当を受けていないこと
再就職手当は、原則として一つの受給期間中に1回のみ受給可能です。以前に同一の受給期間内で受け取っている場合は、対象外となります。
4. 就職先の雇用条件を満たしていること
再就職先の雇用契約が以下の条件を満たしている必要があります。
- 雇用契約期間が31日以上であること
- 1週間あたりの労働時間が20時間以上であること
短期または極端に少ない勤務時間の再就職は、手当の対象とはなりません。
5. 実際に新しい職場で勤務を開始していること
再就職手当の支給対象になるには、申請時にすでに新しい職場で勤務を開始しており、その雇用が継続される見込みが必要です。
再就職手当の支給額
再就職手当の支給額は、失業保険(基本手当)の支給残日数に応じて計算されます。支給残日数が多ければ多いほど、受け取れる手当の金額が多くなります。
具体的な支給割合は以下の通りです。
残っている給付日数の割合 | 支給割合 |
---|---|
所定給付日数の3分の1以上 3分の2未満 | 60% |
所定給付日数の3分の2以上 | 70% |
再就職手当を満額もらう方法
再就職手当をできるだけ多くもらうためには、再就職活動のタイミングが非常に重要です。所定給付日数の3分の2以上を残した状態で早期に再就職が決まれば、最大で70%の支給率で手当を受け取ることが可能になります。
ただし、再就職を急ぐあまり自分に合わない仕事を選んでしまうと、結果的に早期離職につながるリスクがあります。支給額を最大化することと、自分にとって適切な職場を見つけることのバランスを取ることが大切です。
再就職手当の計算シミュレーション
例えば、所定給付日数が90日あり、まだ60日分を受け取っていない(残日数が3分の2以上)場合、支給割合は70%となります。
- 基本手当の日額:5,000円
- 残りの給付日数:60日
- 支給割合:70%(42日分相当)
→ 5,000円(基本手当日額) × 60日(残日数) × 70% = 210,000円
このように具体的にシミュレーションすることで、自分が受け取れる再就職手当のおおよその額を把握できます。
再就職手当の支給期間・タイミング
再就職手当は、「新しい職場で勤務を開始した後」に申請手続きを行い、その後の審査を経て支給されます。実際の支給日は、新たな職場で働き始めた日(就業開始日)から約1ヶ月~1ヶ月半後が目安です。
もし、申請から1ヶ月以上経過しても手当が支給されない場合は、早めにハローワークへ問い合わせてみることをおすすめします。
再就職手当の申請の流れ
再就職手当を申請するためには、次の3つのステップを踏む必要があります。
1.就職先の決定・書類準備
新しい勤務先が決定したら、採用通知書や雇用契約書などの正式な書類を用意しましょう。特に以下の点を確認します。
- 就職日(勤務開始日)
- 雇用期間(1年を超えることが必要)
- 週あたりの勤務時間(20時間以上必要)
就職先から交付される書類に不備がないかよく確認しておくと、後の手続きがスムーズになります。
2.ハローワークへの報告
就職が決定したら、できるだけ早く最寄りのハローワークへ報告に行きます。ハローワークへは以下の書類を持参します。
- 雇用保険受給資格者証
- 採用通知書または雇用契約書
- 身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)
この段階でハローワークの担当者から、再就職手当の申請書類(再就職手当支給申請書)を受け取ります。
3.再就職手当の申請
申請書類(再就職手当支給申請書)に必要事項を記入し、添付書類とともにハローワークに提出します。申請書類には以下のような情報を記入します。
- 就職先の企業情報(名称、所在地、連絡先など)
- 雇用形態や勤務条件
- 就職日や勤務開始日の情報
書き方に不安がある場合は、ハローワークの担当者に相談しながらその場で確認や訂正を行いましょう。
再就職手当の必要書類
再就職手当を申請するために必要な主な書類は、以下のとおりです。
- 再就職手当支給申請書
- 雇用保険受給資格者証
- 採用通知書または雇用契約書
- 身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証など)
- (場合によって)給与明細書など就業状況を証明する書類
上記の書類に不備や不足があると、審査が遅れる可能性がありますので、事前の準備と確認が大切です。
再就職手当を申請するときの注意点
再就職手当の申請を行う際には、いくつかの注意点があります。これらをあらかじめ理解しておくことで、手続きがスムーズになり、支給が遅れるリスクも軽減できます。
申請期限(就職日から1ヶ月以内)を厳守する
再就職手当の申請は、「就職日の翌日から1ヶ月以内」と期限が明確に定められています。この期限を1日でも過ぎてしまうと、原則として再就職手当を受給することはできません。
就職が決定したらすぐに申請に向けて準備を始め、余裕をもって早めにハローワークで手続きを行いましょう。特に就職直後は職場での研修や業務に忙しくなりがちなので、就職前から必要書類の準備を進めておくことをおすすめします。
虚偽や不正な申請は絶対にしない
申請書類には、勤務条件や雇用契約の内容などを正確に記載することが求められます。故意または過失によって事実とは異なる情報を記載した場合、再就職手当が支給されないだけでなく、すでに支給された手当の返還を求められたり、場合によってはペナルティ(不正受給として3倍返還や行政処分等)が課されることがあります。
特に、勤務開始日、契約期間、勤務時間、雇用形態については厳しく確認されます。書類提出前に、記載内容が事実に一致しているかどうかを再度確認しましょう。
提出書類に不備がないか十分に確認する
再就職手当の審査に必要な書類(申請書、雇用保険受給資格者証、雇用契約書、採用通知書など)に不足や不備があると、支給が大幅に遅れる可能性があります。
特に多いのが、「採用通知書や雇用契約書に勤務条件が明確に記載されていない」「署名・押印漏れがある」「日付や契約期間が曖昧」などのケースです。申請書類を準備したら、一つ一つの項目をよく確認し、不明点があればハローワークの担当者にその場で確認を取りましょう。
不明点や疑問はすぐにハローワークに問い合わせる
再就職手当の申請手続きはやや複雑であり、細かな条件があるため、初めて申請する方にはわかりにくい部分もあります。少しでも疑問点や不安がある場合は、すぐにハローワークに連絡し、担当者に相談しましょう。
ハローワークの担当者は再就職手当の申請手続きに慣れており、具体的なアドバイスを受けることができます。疑問点を曖昧にしたまま手続きを進めるよりも、担当者との積極的なコミュニケーションを通じて正確に手続きを行った方が結果として支給までの期間が短くなります。
再就職手当を受給するデメリット
再就職手当は、失業中の方が早期に再就職を果たすことを促進するための非常に有効な制度です。しかし、状況によっては再就職手当を受け取ることがデメリットになるケースもあります。ここでは、再就職手当の受給で考えられるデメリットや注意すべきポイントについて詳しく解説します。
支給額が満額の失業手当よりも減る可能性がある
再就職手当を受給する場合、早期に再就職することで失業保険(基本手当)の一部を一括で受け取る仕組みになっています。そのため、失業期間を最後まで使って満額の失業手当を受給する場合に比べると、総額としてはやや少なくなる可能性があります。
たとえば、失業給付の残日数のうち60~70%が再就職手当として支給されますが、当然ながら100%全額が支給されるわけではありません。そのため、長期的な休養やじっくり転職活動をする予定だった方にとっては、経済的にやや不利になることがあります。
短期間で職場環境の変化に対応する必要がある
再就職手当は早期に職場復帰を促すための制度であるため、就職を急ぐあまり、自分に合わない仕事や職場を選んでしまうリスクがあります。
業界や職種を変えた場合、新しい職場に早期に適応する必要があり、十分な準備期間や精神的余裕がないまま仕事に取り組むことになる可能性があります。こうした環境の急激な変化は精神的なストレスや身体的な負担につながることもあるため、無理なく働けるかどうかを慎重に判断する必要があります。
再離職後の給付金受給に影響する可能性がある
再就職手当を受け取った後に短期間で再び離職してしまった場合、次回の失業給付を受け取る条件が厳しくなったり、受給額が少なくなったりする可能性があります。
再就職手当は「早期再就職」を支援する制度のため、再度短期で離職すると雇用保険の給付日数が十分に貯まらず、次回の失業期間に十分な支援が受けられないケースがあります。そのため、再就職手当を受給する前には、自分に合った仕事かどうかを冷静に見極めることが非常に重要です。
長期的なキャリアプランを見失うリスクがある
再就職手当の経済的メリットを優先してしまうと、長期的なキャリアプランや自分の適性に合った仕事選びが疎かになる可能性があります。早く就職したい気持ちが強いと、「とりあえず仕事を決めてしまおう」という短期的な視点で就職を決めがちです。
そのため、再就職手当の受給を検討する際は、まず自身のキャリアの方向性やライフプランをじっくり考えた上で、再就職先が本当に自分に合っているかどうかを慎重に検討しましょう。
再就職手当に関してよくある質問
最後に、再就職手当に関してよくある質問とその回答をまとめました。
再就職手当はもらわない方がいい?
再就職手当は必ずしもすべての人にとってメリットになるとは限りません。手当を受け取ると失業給付の残日数が減少し、再び失業した際に困る可能性もあります。短期間で離職するリスクがある場合や、長期的な視点で慎重に仕事を探したい方は、受け取らないほうが良い場合もあります。
自身の状況や再就職先の安定性を考慮し、慎重に判断することが重要です。
再就職手当の審査は厳しい?
再就職手当の審査は、適正な支給のため比較的厳密に行われます。主に以下のポイントが確認されます。
- 雇用契約が正式に結ばれているか(契約書や採用通知書の確認)
- 失業給付の残日数が条件を満たしているか
- 再就職先と前職との関係性(離職理由や職務内容の確認)
審査に落ちる主な原因は、書類の不備や条件を満たしていないことです。不備があれば速やかに対応し、不安な場合はハローワークに早めに相談しましょう。
再就職手当を上手に活用しましょう
再就職手当は、失業中の方が再び職に就くことを促進する重要な支援制度です。単に経済的な支援にとどまらず、新たな職場でのスタートを後押しする大切な役割があります。再就職手当の支給条件や申請方法は少々複雑に感じられるかもしれませんが、事前に正確に理解し、必要書類を整えておけば、スムーズに受給できます。
本記事で解説した条件や注意点を十分に確認し、自分のキャリアプランや将来的な目標を考慮して、最適な選択をしましょう。再就職手当を上手に活用し、次のキャリアへの一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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