- 更新日 : 2025年3月5日
休職中に有給消化はできる?休職中にもらえる傷病手当や保険金も紹介
休職中は労働が免除されているため、有給は消化できません。有給は労働の義務があるときに消化できます。
ただ「休職中に有給の時効が来たら?」「休職終了後は有給を消化できる?」などと疑問に思う人もいるでしょう。そこで本記事では、休職中や休職終了後の有給消化について、休職中にもらえる傷病手当金などを中心に解説します。
目次
休職と有給休暇の違い
休職 | 有給休暇 | |
---|---|---|
概要 | 雇用契約を維持したまま労働が免除される制度 | 所定の休日以外で休める制度 |
給与の有無 | なし | あり |
法律で義務付けられた制度か否か | 法律で義務付けられてはいない | 法律で義務付けられている |
取得できるタイミング | 会社によって異なる | 入社日から半年後 |
上記のように、休職と有給休暇は大きく異なることが分かります。
休職は法律で義務付けられた制度ではないため、設けるかどうかは会社の任意で決められます。休職の期間や取得できるタイミングなども会社の任意です。
対して有給休暇は、法律で義務付けられた制度であるため、会社は必ず付与しなければなりません。付与日数や取得できるタイミングなども法律で定められています。
休職・有給を取得できる主なケース
休職を取得できる主なケースは、病気・事故・留学・資格取得・出向などです。基本的には、私的な理由で長期間の休みが必要と判断された場合に取得できます。
有給休暇を取得できる主なケースは、旅行・冠婚葬祭・家族の行事・体調不良など、取得理由は何でも問題ありません。従業員が要求した時季に付与しなければならず、理由を言わないと取得させないのは違法です。
休職と有給を使い分ける判断基準
休職と有給のどちらを取得するか迷った場合は、基本的に休みが必要な期間で判断します。休職は1ヶ月以上の長期で休みが必要な場合に、有給休暇は1ヶ月以内の短期で休みが必要な場合に取得するケースが大半です。
ほかにも、自身の状況や有給の残存日数などを考慮して、休職と有給のどちらを取得すべきか判断しましょう。
たとえば、うつ病や適応障害と医師に診断されたら、1~2ヶ月は休みが必要となる場合がほとんどです。よって、有給を消化するよりも、休職を取得する方が良いでしょう。
また、留学したい人や資格の勉強をしたい人は、留学期間や資格の勉強に費やす期間を決めたうえで休職するか有給を取得するか判断するのがおすすめです。
休職中に有給は消化できる?
休職は労働の義務が免除される期間であるため、有給は消化できません。有給を消化できるのは、労働の義務があるときのみです。
休職中に有給の消化はできませんが、休職に入る前なら有給を消化可能です。休職前に有給を取得すれば、有給の初日から病気の治療をしたり留学に行ったりできます。
休職も有給も使い方が指定されるわけではないため、休職前に有給を取得すると有給の日数分だけ休める期間が長くなり、給与も全額もらえます。
ただ、休職前に有給を消化するかどうかは従業員の自由です。会社側は休職前に有給取得を強要できません。従業員が要求したときに有給を与えなければならないため、無理に休職前に有給を消化させるのは違法です。
休職中に有給の時効が来る場合
休職中に有給の時効が来る場合でも、有給の消化はできません。休職期間に有給の時効が来る場合なら、有給を消化できるといった例外はないためです。
有給の時効は、付与された日から2年後です。たとえば、2023年の4月1日に入社した場合、有給が付与されるのは2023年10月1日で、有給の時効は2025年10月1日となります。2025年9月1日~11月1日まで休職する場合、8月31日までに残った有給を消化する必要があります。
休職に入る前に、有給の時効の日や残存日数などを確認しておきましょう。時効の日や残存日数を知りたい人は、人事部もしくは管理部の担当者に聞いてみましょう。
休職期間の終了後に有給が残っている場合
休職期間の終了後に有給が残っている場合、有給を取得できるかどうかは自身が労働可能な状態にあるかによって変わります。
医師から復職できると診断された場合、残りの有給を消化し切って退職できます。反対に、復職の目処が立たずに休職の満了日を迎えて退職する場合、有給の消化はできません。
有給を消化できるのは、労働の義務が発生しているときです。復職できずに休職の満了日を迎えると、労働の義務が発生していないと判断されます。よって、残った有給の消化もできません。
ただ、退職時に残った有給は会社に買い取ってもらえる可能性があります。買取額は会社の任意であること、買取に必ず応じる義務はなくそのまま消滅する場合があることに注意しましょう。
休職中にもらえる手当や保険金
休職中は基本的に給与が支払われませんが、傷病手当金をもらえる可能性があります。傷病手当金をもらえるのは以下4つの条件を全て満たした人です。
- 業務外の事由による病気やケガの病養のために休職する
- 仕事に就けない
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかった
- 休職期間に給与の支払いがない
上記の条件を全て満たすと、支給日から通算で1年6ヶ月まで傷病手当金が支給されます。支給される額は、給与のおおよそ3分の2です。
支給が始まるのは、連続して3日間休んだのちの4日目からです。たとえば、火曜・水曜・木曜と連続で休むと、金曜から傷病手当金が支給されます。
ただ、休職期間中に給与が会社から支払われている場合、傷病手当金は支給されません。もし給与の一部が会社から支払われていても、傷病手当金より給与の方が少ない場合は差額分が支給されます。
留学や資格の勉強などで休職しても、傷病手当金はもらえないため注意しましょう。
参考:病気やケガで会社を休んだとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
休職中でも有給は付与される?
休職中でも、以下の条件をいずれも満たしていれば有給は付与されます。
- 雇い入れの日から6ヶ月が経過している
- 6ヶ月の全労働日のうち8割以上は出勤している
上記2つの条件をどちらも満たしている人は、休職中でも決まった日数分の有給が付与されます。ただ、2回目以降の有給付与については、最後に有給が付与された日から1年間の全労働日のうち8割以上は出勤していることが条件です。
パートやアルバイトといった雇用形態の人も、条件を満たしていれば休職中でも有給が付与されます。正規雇用・非正規雇用は関係なく、全ての労働者に有給を与えることが義務付けられているためです。
しかし、前述の通り、休職中に有給は取得できません。休職の終了後も労働が可能な状態でなければ有給を消化できないため、注意しましょう。
参考:年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。|厚生労働省
企業側から見た休職制度を設ける3つのメリット
休職制度を設けるかどうかは会社の任意ですが、設けると従業員や会社にもメリットがあります。
もし休職制度を新たに設ける場合は、就業規則に休職のルールを追記しましょう。厚生労働省の「モデル就業規則」を参考にしてください。
1. 従業員が治療や好きなことに専念できる
休職制度を設けると、従業員が病気・ケガの治療をしたり、長期旅行や趣味など好きなことに専念できます。
休職制度がないと、病気やケガの通院時間が取れず完治まで伸びる可能性があるでしょう。休職制度を利用して治療に専念すれば、従業員が自身の病気やケガの回復だけに集中できます。
また、休職中は仕事のことを考えなくて良いため、ストレスからも解放されてより快適な時間を過ごせます。
ほかにも、長期旅行や趣味に関するイベント・プロジェクトへの参加などに休職制度は利用可能です。従業員のプライベートを尊重することで、ワークライフバランスの改善にも繋がるでしょう。
病気の治療や趣味への専念などで休職中にリフレッシュできると、復職後に生産性が向上する可能性もあります。
2. 貴重な人材の離職を防げる
休職制度を設ければ、貴重な人材の離職を防げる可能性があります。
「病気を治療したい」「留学に行きたい」と考える従業員が出てきた場合、休職制度がないと退職を選ぶ従業員もいるでしょう。
休職という選択肢があることで、雇用契約を維持してもらえる可能性があります。貴重な人材の流出を防げるだけでなく、離職率の低下も見込めます。
休職を取得した従業員の状態に応じて、待遇や働き方などの改善を検討して休職期間の満了日近くに提案すると、復職してもらえる確率が上がることもあり得るでしょう。自社の働き方や休日の取り方の見直しもできます。
3. 福利厚生の一環とすることで企業の魅力が向上する
休職を福利厚生の一環とすれば、企業の魅力が向上することも考えられます。
病気やケガなどの治療以外に、趣味・留学・資格取得などでも休職を取得できるように定めると、従業員からのイメージがアップするでしょう。
また、採用活動において多様な働き方ができる職場としてアピールすることで、働きやすい環境を求める優秀な人材を確保できる可能性もあります。
企業の魅力が向上することによって、売上が伸びたり新規顧客を獲得できたりと、ブランディングにも影響することがあります。
休職中の有給の取り扱いや休職と有給の取得条件を把握しよう
休職と有給は、給与の有無や取得できるタイミングなどさまざまな違いがあります。
休職と有給の違いを把握することで、自身の状況に合った休みを取得できるでしょう。自身の状況に合った休みの取得によって、病気やケガの治療に専念しやすくなるほか、趣味や旅行などプライベートも充実させやすくなります。
休職と有給の違いを明確に理解したうえで、どちらを取得するか検討してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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