- 更新日 : 2026年1月29日
【人事必見】シエスタ導入で生産性は変わる?メリット・デメリットと運用ルールを徹底解説
シエスタとは、勤務中に短時間の仮眠を取る制度です。
- 15〜20分の短時間仮眠
- 午後の集中力を回復
- 健康経営と相性が良い
Q&A
Q. 単なる昼寝制度と何が違う?
A. 仮眠時間と運用ルールを設計し、業務成果向上を目的とする点です。
働き方改革が推進される昨今、従業員の生産性向上や健康管理は企業にとって喫緊の課題となっています。その解決策の一つとして、近年注目を集めているのが「シエスタ(仮眠制度)」の導入です。元々はスペイン語圏の文化である昼寝の習慣を指しますが、日本のビジネスシーンにおいても、短時間の休息が午後のパフォーマンスを高めるとして、戦略的に取り入れる企業が増加しています。本記事では、人事担当者の視点から、シエスタ導入の意義、メリット・デメリット、そして運用における実務的なポイントについて詳しく解説いたします。
目次
シエスタとは企業においてどのような制度なのか?
シエスタという言葉を耳にすると、南欧諸国における長い昼休みを想像される方が多いかもしれません。しかし、現代の日本企業において導入が進められているシエスタ制度は、単なる長時間休憩ではなく、戦略的な休息の仕組みとして再定義されています。人事担当者は、この制度が持つ本来の意味と、組織にもたらす影響を正しく理解し、自社の風土に適した形で設計することが不可欠です。ここでは、企業におけるシエスタの定義とその位置づけについて解説いたします。
短時間の仮眠を取り入れ業務効率を高める施策
企業におけるシエスタ制度とは、従業員が勤務時間中の休憩時間などを利用して、15分から20分程度の短時間の仮眠をとることを推奨、あるいは制度化する取り組みを指します。人間の生体リズムにおいて、昼食後の午後2時前後は眠気がピークに達しやすく、この時間帯に無理に業務を続けることは、集中力の低下やケアレスミスの誘発につながりかねません。これに対し、意図的に脳を休ませる時間を設けることで、リフレッシュした状態で午後の業務に取り組むことが可能となります。つまり、単に「休む」ことだけが目的ではなく、その後の業務におけるパフォーマンスを最大化するための「積極的な休息(パワーナップ)」としての側面が強いのです。人事担当者は、これを福利厚生としての側面だけでなく、生産性向上のための投資であると捉える視点が肝要です。
福利厚生および健康経営の一環としての位置づけと健康づくりのための睡眠ガイド2023|厚生労働省
シエスタ制度の導入は、従業員の健康を守る「健康経営」の文脈でも語られるべき施策です。慢性的な睡眠不足は、従業員の心身の不調を招くだけでなく、長期的には生活習慣病のリスクを高める要因ともなり得ます。企業が公式に仮眠を認めることで、従業員は罪悪感なく休息を取ることができ、結果として疲労の蓄積を防ぐことにつながります。また、従業員のウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)を重視する姿勢を企業が示すことは、従業員エンゲージメントの向上にも寄与するでしょう。人事部門としては、シエスタを単独の施策としてではなく、長時間労働の是正やメンタルヘルス対策など、包括的な健康経営戦略の一部として位置づけることで、より高い効果を期待することができます。
この記事をお読みの方におすすめのガイド5選
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※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
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人事担当者が注目すべきシエスタ導入のメリットとは?
新たな制度を導入する際、経営層や現場のマネージャーに対して説得力のある説明を行うためには、そのメリットを明確に提示しなければなりません。シエスタの導入は、従業員個人のパフォーマンス向上のみならず、組織全体への波及効果も期待できるものです。ここでは、人事担当者が把握しておくべき、シエスタ導入による具体的なメリットについて、生産性、健康管理、そして採用戦略の観点から深掘りして解説いたします。
午後の集中力低下を防ぎ生産性を最大化する効果
最大のメリットは、午後の業務における生産性の劇的な改善です。昼食後に襲ってくる強烈な眠気、いわゆる「アフタヌーンディップ」は、生理現象であるため個人の気合や根性だけで克服することは困難と言えます。眠気を抱えたままパソコンに向かっていても、思考力は低下し、作業効率は著しく落ちてしまいます。ここで短時間の仮眠を挟むことにより、脳内にあるアデノシンなどの疲労物質が除去され、覚醒度が高まることが科学的にも示唆されています。スッキリとした頭で業務を再開できれば、意思決定のスピードが上がり、クリエイティブな発想も生まれやすくなるでしょう。残業時間の削減にもつながる可能性があり、限られた時間の中で最大の成果を出すという、働き方改革の本質に合致した施策となり得るのです。
従業員のメンタルヘルスケアと疲労回復
日々の業務によるストレスや疲労は、知らず知らずのうちに従業員の心身を蝕んでいきます。とりわけ睡眠不足はメンタルヘルス不調の大きな要因の一つです。日中に短時間の休息をとることで、自律神経のバランスが整えられ、ストレス軽減効果が期待できます。また、夜間の睡眠時間が十分に確保できていない従業員にとっても、日中の仮眠は脳の休息を補う貴重な機会となります。心身ともに健康な状態で働ける環境は、休職率の低下や離職防止にもつながるため、人事担当者にとってはリスクマネジメントの観点からも無視できない要素です。従業員が活き活きと働ける環境を整備することは、組織の持続的な成長を支える基盤となります。
採用市場における企業ブランディングの強化
人材獲得競争が激化する現在、求職者は給与などの条件面だけでなく、企業の働きやすさや独自の制度にも注目しています。シエスタ制度を導入している企業はまだ少数派であるため、「先進的な働き方を取り入れている企業」「従業員の健康を大切にする企業」というポジティブなイメージを求職者に与えることができます。とりわけ、ワークライフバランスを重視する若手層や、柔軟な働き方を求める優秀な人材に対して、強力なアピール材料となります。採用広報においてシエスタ制度を紹介することで、他社との差別化を図り、企業のブランディング強化につなげることが可能です。人事担当者は、この制度を社内向けの施策として留めるのではなく、採用戦略上の武器としても活用する視点を持つと良いでしょう。
シエスタを効果的に運用するためのルール作りとは?
シエスタ制度には多くのメリットがある一方で、明確なルールなしに導入してしまえば、単なる「だらけ」や業務の停滞を招く恐れがあります。制度を形骸化させず、組織に定着させるためには、人事部門主導による適切なルール設計と環境整備が不可欠です。ここでは、運用においてトラブルになりやすいポイントを押さえつつ、効果的なルール作りの指針について解説いたします。
15分から20分程度を目安とした時間の制限
シエスタにおいて最も注意すべき点は、仮眠の時間管理です。深い睡眠(徐波睡眠)に入ってしまうと、起床後に強い眠気や倦怠感が残る「睡眠慣性」という状態に陥ります。深い眠りの段階で起きると頭が働かず、かえって業務効率が低下してしまいます。これを防ぐためには、深い睡眠に入る手前の段階、すなわち15分から20分程度で目覚めることが推奨されます。人事担当者は、制度設計において「仮眠は20分以内」といった明確な基準を設けるべきです。また、仮眠を取るタイミングについても、概ね午後1時から午後3時の間に設定することが望ましいでしょう。夕方以降の仮眠は夜間の睡眠に悪影響を及ぼす可能性があるため、推奨時間帯のアナウンスも併せて行うことが肝要です。
関連資料|労働時間管理の基本ルール
就業規則における休憩時間との区別の明確化
労務管理の観点からは、シエスタの時間が労働時間に含まれるのか、あるいは休憩時間として扱うのかを明確にする必要があります。一般的に、労働基準法上の休憩時間は、労働者が労働から離れることを保障されている時間を指します。もしシエスタを会社の指揮命令下で強制的に行わせる場合は労働時間とみなされる可能性がありますが、従業員の自由意志に基づいて実施する場合は、休憩時間の一部として取り扱うケースが多いでしょう。既存の昼休憩に加えてシエスタ時間を付与するのか、あるいは昼休憩の一部を充てるのかによって、就業規則の変更が必要になる場合もあります。「休憩時間」扱いにする場合は、法定休憩(6時間超:45分、8時間超:60分)を下回らない設計が必要です。シエスタを昼休憩の一部に充てる場合でも、最低基準の確保と就業規則・勤怠ルールを整合させることは欠かせません。トラブルを未然に防ぐためにも、弁護士や社会保険労務士等の専門家と相談の上、規定を整備することが不可欠です。
周囲への配慮と利用を促進する社内風土の醸成
制度を作っても、周囲の目を気にして利用されないというケースは少なくありません。「寝ている=サボっている」という古い価値観が根強い職場では、シエスタの浸透は困難です。人事担当者は、経営層からのメッセージ発信などを通じて、シエスタが業務効率向上のためのポジティブな行動であるという認識を社内に広める努力をしなければなりません。一方で、電話対応や来客対応が必要な職種においては、チーム内で交代で仮眠を取るなどの運用ルールを定めることも大切です。仮眠を取る人と業務中の人が互いに配慮し合えるよう、仮眠スペースを執務室とは別に設ける、あるいはデスクで仮眠を取る際のサイン(「仮眠中」のプレートなど)を用意するといった工夫も効果的です。
導入にあたり人事が懸念すべきデメリットや課題は?
どのような施策にも光と影があり、シエスタ導入においても予期せぬデメリットや課題が生じる可能性があります。これらを事前に想定し、対策を講じておくことが、制度運用を成功させる鍵となります。ここでは、人事担当者が導入前に検討すべき懸念事項と、その対応策について解説いたします。
長時間の睡眠による起床後の倦怠感や夜間の睡眠への悪影響
前述の通り、仮眠時間が長すぎると逆効果となるリスクがあります。30分以上の睡眠は深い眠りを招き、起きた後に頭がぼーっとする状態が続くことがあります。また、日中に長く寝すぎてしまうと、夜の寝つきが悪くなり、生活リズムが乱れる原因にもなりかねません。これを防ぐためには、事前の社内周知徹底が欠かせません。仮眠前にカフェインを摂取して20分後に覚醒効果が現れるようにする「カフェインナップ」という手法を紹介するなど、正しい仮眠の取り方に関する教育を行うことも人事の役割です。また、アラームの使用を許可する、あるいは照明を落とさないリフレッシュスペースを用意するなど、寝すぎないための物理的な環境づくりも検討すべきでしょう。
職種や業務内容による利用の不公平感への対応
全社一律にシエスタを導入しようとしても、職種によっては実施が難しい場合があります。例えば、顧客対応が必要なコールセンター業務、店舗での接客業務、あるいは常時稼働する生産ラインの担当者などは、一斉に仮眠を取ることが物理的に不可能です。デスクワーク中心の部署だけが恩恵を受けられる状態になれば、他部署から不満の声が上がり、組織内のモチベーション低下を招く恐れがあります。こうした事態を避けるためには、交代制での休息を導入する、あるいはシエスタが難しい部署には別の形でのリフレッシュタイムや手当を設けるなど、公平性を担保するための配慮が必要となります。現場のマネージャーと綿密に連携し、それぞれの業務実態に即した柔軟な運用体制を構築することが求められます。
組織の生産性を高める戦略的なシエスタ導入
シエスタ制度は、単に「昼寝を許可する」という単純なものではなく、従業員の健康増進と企業の生産性向上を同時に実現し得る戦略的な人事施策です。導入にあたっては、その医学的な効果やメリットを理解するだけでなく、労務管理上の規定整備、運用ルールの策定、そして社内風土の醸成といった実務的なプロセスを丁寧に進めることが成功の条件となります。また、職種間の不公平感などの課題に対しても、自社の状況に合わせた柔軟な対応策を用意しておく必要があります。一過性のブームとして取り入れるのではなく、自社の企業文化や働き方にフィットした形で制度を設計し、運用していくことで、組織全体のパフォーマンスを底上げする強力な武器となるはずです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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