- 更新日 : 2026年1月29日
ジョブシェアリングとは?導入のメリットやワークシェアリングとの違いを徹底解説
ジョブシェアリングとは、1つの職務を複数人で担う働き方です。
- 職務成果にペアで責任
- 評価と給与は共同扱い
- 両立支援と定着に有効
Q&A
Q. 単なる業務分担と何が違う?
A. 日本の病院事例でも、職務全体を共同責任で担う点が決定的に異なります。
企業経営において、人材不足の解消や多様な働き方の推進は喫緊の課題です。その解決策として、フルタイムの仕事を複数人で分担する「ジョブシェアリング」が注目を集めています。本記事では、ジョブシェアリングの基礎知識から導入のメリット、類似するワークシェアリングとの違い、そして導入時の注意点までを解説します。
目次
ジョブシェアリングとは?
ジョブシェアリングとは、単なる業務分担とは一線を画す「仕事をシェアする」仕組みです。まずはこの制度の定義や種類、そして日本で注目されるようになった背景について、基本的な概念を整理します。
1つのフルタイム業務を2人以上の複数人で分担する勤務形態のこと
ジョブシェアリングとは、本来1人のフルタイム従業員が担当する業務量を、2人以上で分担して行う雇用形態を指します。分担は勤務時間で区切る場合と職務の要素(担当領域)で区切る場合があり、責任分担や評価の運用は会社の制度設計によって決定します。これにより、育児や介護などでフルタイム勤務が困難な従業員でも、パートナーと協力することでキャリアを継続できます。企業はフルタイム相当の労働力を確保しつつ、個々の事情に合わせた柔軟な働き方を提供できるため、人材活用において有効な手段となります。
役割分担型と時間分担型の2種類に分類される
ジョブシェアリングには、「役割分担型(ジョブスプリット)」と「時間分担型(タイムシェア)」の2つのスタイルが存在します。役割分担型は、業務内容を細分化し、それぞれの得意分野やスキルに応じて担当領域を分け、個々のパフォーマンス最大化を図る手法です。一方、時間分担型は、業務内容は同一のまま、午前と午後、あるいは週の前半と後半といった形で勤務時間を分割します。常にどちらかが稼働している状態を作ることで、空白時間を減らせる利点があります。導入時は、業務の性質に適した型を判断しなければなりません。
米国で普及し日本でも働き方改革の一環として注目されている
この制度は、1970年代から80年代にかけて米国で普及し、ワークライフバランスを重視する欧米諸国で定着しました。日本では、労働人口の減少や「働き方改革」による長時間労働是正の流れを受け、急速に関心が高まっています。従来の「男性中心・長時間労働」モデルが限界を迎えるなか、女性活躍推進やシニア層の活用、従業員のエンゲージメント向上を実現する切り札として、多くの企業が導入を検討しています。
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ジョブシェアリングとワークシェアリングの違いは?
「ジョブシェアリング」と「ワークシェアリング」は混同されがちですが、導入目的や運用実態には明確な違いがあります。自社の課題解決に適した制度を選択するため、両者の相違点を整理します。
生産性を高めるのがジョブシェアリング・雇用を守るのがワークシェアリング
最大の違いは導入の「目的」にあります。ジョブシェアリングは、多様な人材活用による離職防止や、適材適所の配置による生産性向上を主眼とした「攻めの人材戦略」です。これに対し、ワークシェアリングは、不況時などに業務量が減少した際、一人あたりの労働時間を短縮して雇用を維持することを主目的とします。リストラ回避のために痛みを分かち合う「守りの雇用対策」という側面が強く、目指す成果が根本的に異なります。
個別に業務を分けるのがジョブシェアリング・全社で時間を削るのがワークシェアリング
運用方法も異なります。ワークシェアリングには、不況時に従業員1人当たりの労働時間を減らして雇用を守る「雇用維持型(緊急対応型)」と、短時間勤務を組み合わせて雇用機会を増やす「雇用創出型(多様就業型)」の2種類があります。
ジョブシェアリングは、主に後者の「雇用創出型」に分類される制度です。特定のポストや業務において個別の事情を持つ従業員同士がペアを組み、仕事を分け合います。一方で、ワークシェアリングは、全社的あるいは部門全体で一律に労働時間を短縮する手法が一般的です。ワークシェアリングでは、労働時間の短縮に伴い賃金調整が行われることがあり、緊急避難的な措置として実施される傾向があります。平時の組織力強化にはジョブシェアリングが、緊急時の雇用維持にはワークシェアリングが適しています。
ジョブシェアリングを導入する企業側のメリットは?
新たな制度導入にはコストがかかりますが、ジョブシェアリングにはそれを補うメリットが企業側に存在します。人材確保が困難な現代において、どのような経営効果をもたらすのか解説します。
優秀な人材の離職を防ぎ長期的な定着を促進できる
企業にとって、スキルの高い従業員が家庭の事情で退職することは大きな損失です。ジョブシェアリングを導入すれば、勤務時間を短縮しながら責任ある仕事を続けられるため、こうした人材の離職を未然に防げます。従業員は会社が事情を考慮してくれたと感じ、組織への帰属意識が高まります。結果として、離職率の低下と長期的な定着につながり、採用や育成にかかるコスト削減にも寄与します。
業務の属人化を解消し組織全体の生産性を高められる
一人が業務を抱え込むスタイルは、その担当者が不在の際に業務が滞るリスクがあります。ジョブシェアリングでは、2人以上が業務内容や進捗を共有するため、引き継ぎの過程でプロセスの可視化やマニュアル化が進み、属人化が解消されます。誰かが休んでも業務が回る体制が構築され、組織としての対応力が強化されます。また、複数の視点で業務を見直すことで改善案が生まれやすく、チーム全体の生産性向上にもつながります。
多様な人材の活用により企業イメージと採用力が向上する
柔軟な働き方を認める企業である事実は、ブランディングにおいて強力な武器になります。子育てや介護世代、副業を持つ人材などが活躍できる環境は求職者にとって魅力的です。「働きやすい会社」というイメージが定着すれば、優秀な人材からの応募が増加し、採用競争力が強化されます。ダイバーシティ推進が重視される昨今、ジョブシェアリングの実践は企業価値そのものを高める要素となります。
ジョブシェアリングが従業員にもたらすメリットは?
企業側だけでなく、働く従業員にとってもジョブシェアリングは大きな恩恵をもたらします。ワークライフバランスの実現とキャリア形成の両立という観点から解説します。
育児や介護などのライフイベントとキャリア形成を両立できる
育児や介護、自身の病気療養などで、仕事だけに全力を注ぐことが難しい時期でも、ジョブシェアリングを活用すれば現職に留まることが可能です。従来であれば退職や非正規雇用への転換を余儀なくされたケースでも、キャリアを断絶させずに済みます。仕事のやりがいを維持しつつ、家庭やプライベートの時間も確保できるため、精神的な負担を軽減しながら充実した生活を送ることができます。
フルタイム勤務が困難な状況でも正社員としての雇用が継続される
一般的なパートタイム勤務は補助業務が中心となりがちですが、ジョブシェアリングは「フルタイムの仕事を分担する」制度です。賃金・休暇・福利厚生などは勤務時間に応じて按分されるのが一般的です。会社の制度設計に応じて、雇用区分(正社員扱い、短時間正社員、パートタイム等)や評価・昇進を判断します。キャリアの空白期間を作らずにスキルアップを継続できることは、将来的にフルタイム勤務へ復帰する際にも大きなアドバンテージとなります。
ジョブシェアリング導入に際してのデメリットや課題は?
多くのメリットがある一方で、導入にはいくつかのハードルも存在します。制度を実効性のあるものにするため、事前に課題を把握し対策を講じることが欠かせません。
社会保険料や採用コストなどの人件費負担が増加する傾向がある
経営視点での課題はコストの増加です。給与は按分できますが、交通費、研修費、備品コストなどは人数分必要になります。各人が社会保険の加入要件を満たす場合は、それぞれについて保険料負担が生じ、結果として総額が増える可能性もあります。また、2人の人材を確保するための採用プロセスが必要となり、採用単価が上昇する可能性もあります。導入時は、これらコスト増を上回る生産性向上や離職防止効果が見込めるか、慎重にシミュレーションを行うべきです。
業務の引き継ぎやパートナー間のコミュニケーションが複雑化する
ジョブシェアリングの成否はパートナー間の連携にかかっています。一人の担当者が完結する業務と異なり、常に情報の受け渡しが発生するため、引き継ぎが不十分だとミスや効率低下を招きます。また、パートナーとの相性が合わない場合、人間関係のストレスが生じるリスクもあります。円滑な運用には、情報共有ツールの導入やルールの標準化に加え、信頼関係構築へのサポート体制が不可欠です。
ジョブシェアリングを成功させるための導入フローは?
ジョブシェアリングを現場に定着させるためには、計画的な導入プロセスが必要です。成功に向けた具体的なステップについて解説します。
対象業務の選定と相性の良いパートナーのペアリングを行う
まずは対象業務を選定します。定型業務は導入が容易ですが、企画や営業職でも情報共有ルールを徹底すれば適用可能です。次に、誰と誰を組み合わせるかという「ペアリング」を行います。スキルレベルや教育効果、性格的な相性、勤務時間の希望などを総合的に考慮し、最適な組み合わせを決定します。
評価制度や報酬体系を見直し公平なルールを策定する
従来の評価制度はフルタイム勤務を前提としていることが多いため、新たな評価基準を設ける必要があります。個人の成果に加え、ペアとしての成果をどう評価するか、ミスをした場合の責任の所在などを明確にしなければなりません。労働時間に応じた公平な賃金設定と納得感のある評価プロセスを構築し、就業規則等に明記しておくことがトラブル防止の鍵となります。
ジョブシェアリングはこれからの組織運営において有効な選択肢
労働人口の減少が進む現代において、従来の画一的な働き方からの脱却は企業の急務です。ジョブシェアリングは、導入時にコストや制度設計の手間を要しますが、それを補う離職防止効果や生産性の向上、そして属人化の解消といった多大な恩恵を組織にもたらします。多様な人材が活躍できる環境を整備することは、企業の持続的な成長と競争力強化に直結します。組織の未来を支える戦略的な投資として、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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