- 更新日 : 2026年1月28日
有給はいつまでに消化すべき?期限(時効)や義務化ルール、対応策を解説
有給休暇(年次有給休暇)は、付与された日から2年以内に消化しなければ、時効により消滅します。
人事労務担当者や従業員にとって、「いつまでに消化すべきか」という期限の管理は非常に重要です。本記事では、労働基準法に基づく有給の時効(期限)、2019年から始まった「年5日の消化義務」、使いきれなかった場合の繰り越しや買い取りの可否について、初心者にもわかりやすく解説します。
目次
有給休暇はいつまでに消化しなければならないのか?
有給休暇(有休)の消化期限は、原則として権利が発生した日(基準日)から2年間です。
労働基準法第115条の規定により、付与された日から2年が経過すると時効を迎え、権利そのものが消滅してしまいます。また、会社には対象者に対して「年5日」を確実に取得させる義務もあり、これには別途「1年以内」という期限が設けられています。
原則としての時効と期限
有給休暇は、付与された当年度中に使い切れなかった場合、翌年度に限り繰り越すことが可能ですが、翌々年度には持ち越せません。
つまり、新たに付与された有給休暇の有効期限は、付与日から2年間となります。例えば、2023年4月1日に付与された有給休暇は、2025年3月31日までに消化しない場合、2025年4月1日時点で時効により消滅します。
この「2年」という期間は法律で定められた最低基準であるため、就業規則によって「3年間有効」など、従業員に有利な条件を定めることは可能です。しかし、多くの日本企業では法律通りの2年を期限としています。
年5日の消化義務における期限
企業は、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、基準日(付与日)から1年以内に必ず5日間を消化させなければなりません。
これは2019年4月の労働基準法改正により義務化されたルールです。通常の時効(2年)とは異なり、この「5日間」に関しては「付与から1年以内」という厳しいデッドラインが存在します。
- 入社から半年が経過し、出勤率が8割以上で、10日の有給が付与された正社員
- 週の所定労働日数が多く、年10日以上の有給が付与されるパート・アルバイト
この期間内に5日分を消化できていない場合、会社は従業員の希望を聞いた上で時季を指定し、強制的にでも休ませる必要があります。
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有給休暇を期限までに消化できないとどうなる?
期限内に有給休暇を消化しきれなかった場合、従業員は権利を失い、会社側は法律違反として罰則を受ける可能性があります。
特に「年5日の義務」を守れない場合のリスクは大きく、企業コンプライアンスの観点からも放置は許されません。
従業員側のデメリット:権利の消滅
最大のデメリットは、使わなかった有給休暇が消えてしまい、二度と使えなくなる(休みも金銭的補償も得られない)ことです。
前述の通り、時効を迎えた有給休暇は自動的に消滅します。例えば、病気や怪我での長期療養や、退職前の有給消化を行いたいと考えた際に、手持ちの日数が足りなくなるリスクがあります。従業員にとっては、「働かなくても給与がもらえる」という重要な権利を放棄することと同義です。
会社側のリスク:罰則と社会的信用の低下
「年5日の有給休暇取得義務」に違反した場合、対象となる従業員1人につき30万円以下の罰金が科される可能性があります。
労働基準監督署の是正勧告の対象となるだけでなく、悪質な場合は企業名が公表されるケースもあります。「有給が取れないブラック企業」という評判が広まれば、採用難や離職率の増加を招き、経営上の大きなダメージとなります。
また、管理不足により「誰がいつまでに何日休むべきか」を把握できていない状態自体が、労務管理体制の不備として指摘される要因となります。
有給消化しきれなかった分は繰り越しできる?
その年度内に有給消化しきれなかった分は、翌年度へ繰り越すことができます。 ただし、無限に積み立てられるわけではなく、法律上の有効期限(時効)や保有できる日数には上限があります。ここでは繰り越しの基本的な仕組みと、最大日数の計算方法について解説します。
翌年度への繰り越し期間と自動消滅のタイミング
年未消化分は翌年度まで繰り越し可能ですが、付与から2年経つと時効で消滅します。
労働基準法により、有給休暇の請求権は「2年間」と定められています。手続きは不要で、使い残した分は自動的に翌年の持ち分として加算されます。
有給休暇は「付与された年」に使い切れなくても、権利はすぐには消えません。
- 1年目: 付与された年度。ここで消化できなかった分は翌年へ。
- 2年目: 繰り越された分として使用可能。
- 3年目以降: 2年前に付与された分は、この時点で時効を迎え自動的に消滅します。
つまり、有給消化のチャンスは「付与されてから翌年度末まで」の2年間のみとなります。
保有上限の仕組み
一般的に、保有できる有給休暇の最大日数は「40日」です。
法律で定められた年間の最大付与日数が「20日」であり、前年度からの繰り越し分(最大20日)と合わせた合計が40日となるためです。
多くの企業では、以下の計算式で保有上限が決まります。
- 当年付与分: 最大20日(勤続6年半以上の場合)
- 前年繰越分: 最大20日(前年に全く使わなかった場合)
- 合計: 最大40日
【シミュレーション例】
前年に20日付与され、5日しか有給消化できなかった(15日残った)場合: 翌年に新規で20日付与されると、「新規20日 + 繰越15日 = 合計35日」を保有することになります。 もし前年に全く使わず20日残っていた場合は、「新規20日 + 繰越20日 = 40日」となりますが、それ以上(41日以上)貯めることはできず、あふれた分は消滅します。
期限切れや未消化の有給休暇は買い取りしてもらえる?
原則として現職中の買い取りは法律で禁止されています。有給休暇の目的は「心身の疲労回復」であるため、お金で解決して休暇を与えない行為は違法です。
労働基準法は、労働者に「休暇(休み)」を与えることを義務付けています。金銭を渡して休暇を取らせないことは、この制度趣旨に反するため認められていません。
「忙しくて休めないから、代わりにお金を払ってほしい」という従業員の要望があっても、現職中にこれに応じることはできません。
もし会社が恒常的に有給の買い取り(予約買い取り)を行っていると見なされれば、労働基準法違反として、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるリスクがあります。あくまで「実際に休むこと」が最優先です。
例外的に買い取りが認められる3つのケース
「退職時」「時効消滅分」「法定を超える付与分」の3つに限り、企業の裁量で買い取りが可能です。
これらは「これから休暇を取ることが物理的に不可能な分」や「法律の最低基準を上回っている分」であるため、買い取っても法の趣旨(最低限の休養確保)を侵害しないと解釈されるためです。
以下のケースでは、会社の判断で買い取りを行っても違法にはなりません。
| ケース | 買い取りの可否 | 理由・備考 |
|---|---|---|
| 退職時の未消化分 | ○ 可能 | 退職後は休暇権を行使できないため、残日数を清算することは認められます。 |
| 時効で消滅した分 | ○ 可能 | 2年の期限が過ぎて権利が消えた分について、恩恵的に金銭を支払うことは可能です。 |
| 法定超の付与分 | ○ 可能 | 法律(年10日等)を上回って会社が独自に付与した追加日数分は、自由にルールを決められます。 |
これらはあくまで「買い取っても違法ではない」というだけであり、会社に「買い取る義務」はありません。
就業規則に買い取り規定がない場合、会社は従業員の請求を拒否することができます。トラブルを防ぐため、自社の就業規則を確認しておきましょう。
有給休暇が消化できない場合の対処法
有給消化が進まない場合、「計画的付与制度」の導入や、業務の属人化解消に向けたチーム体制の見直しが有効です。
単に「休んでください」と呼びかけるだけでは改善しない場合、仕組みで解決する必要があります。
計画的付与制度の活用
計画的付与制度とは、労使協定を結ぶことで、会社があらかじめ有給休暇の取得日を指定できる制度です。
従業員が個人的に自由に使える「5日間」を残しておけば、残りの日数を会社全体の一斉休業日(夏休みや年末年始の延長、ブリッジホリデーなど)や、班ごとの交代制休暇として割り当てることができます。
- メリット:会社主導で確実に消化日数を稼げるため、年5日義務違反を防ぎやすい。
- 注意点:就業規則への規定と労使協定の締結が必須。全日数を計画付与にすることはできない。
業務効率化とチーム体制の見直し
有給が取れない最大の理由は「自分が休むと仕事が回らない」という状況です。これを解消するには、業務マニュアルの作成や情報の共有化(クラウドツール活用など)を進め、誰が休んでも業務が止まらない体制を作ることが不可欠です。
特定の人しかできない仕事を減らし、チーム内で互いにフォローし合える環境を作ることは、有給消化率だけでなく、組織全体の生産性向上にも繋がります。
有給消化の期限を守るための3つの管理ポイント
有給休暇を「いつまでに消化するか」の判断には、有給休暇自体の時効である「2年」と年5日の消化義務の期限である「1年」という2つの異なるタイムリミットが存在します。 うっかり期限を過ぎて消滅させたり、法違反になったりしないよう、以下の3つのポイントを押さえて管理しましょう。
ポイント1:付与から「2年」で権利自体が消滅する
有給休暇の有効期限は原則2年です。付与日から2年経つと時効で消滅します。
労働基準法第115条に基づき、権利を行使しないまま2年が経過すると、その有給休暇は自動的に消滅します。
「いつまでに消化?」と聞かれた際、最も基本となる期限です。 例えば、2023年4月1日に付与された20日分の有給は、2025年3月31日が最終期限です。繰り越し分がある場合、古い年度のものから先に消化される仕組みが一般的ですが、「2年前の付与分は今のうちに使い切らないと消える」という意識を持つことが大切です。
ポイント2:「年5日」は付与から「1年以内」が絶対期限
年10日以上付与された人は、基準日から「1年以内」に必ず5日消化しなければなりません。
これは2019年の法改正で義務化されたルールであり、違反すると企業に罰則(30万円以下の罰金)が科されるため、2年の時効よりも緊急性が高い期限です。
2年あるから大丈夫」と思っていても、この「5日分」だけは1年という短いスパンで消化が必要です。 特に管理職や忙しい部署の従業員は、「いつの間にか1年が経ち、5日未達成だった」というケースが多発するため、半期ごとに消化状況をチェックする仕組みが必要です。
ポイント3:期限切れを防ぐ「管理簿」の作成と通知
誰がいつ期限を迎えるかを把握するため、「有給休暇管理簿」を作成し、アラートを出す運用が推奨されます。
従業員ごとに異なる「付与日(基準日)」と「消化期限」を正確に管理し、3年間保存することが法律で義務付けられているためです。
Excel等での管理も可能ですが、人数が増えると「いつまでに消化」の管理が複雑化します。
- 管理簿の必須項目:基準日、日数、実際に取得した日付
- 推奨アクション:期限の3ヶ月前などに「有給消化のお願い」をメール通知する
期限ギリギリになって慌てて消化を行うと業務に支障が出るため、管理簿を用いて計画的に消化を促すことが、スムーズな有給運用のカギとなります。
適切な有給消化は企業の義務であり信頼の証
有給休暇は付与から2年で時効消滅し、特に年5日は1年以内に確実に消化させる法的義務があります。
期限内に消化できないと、従業員はリフレッシュの機会を失い、企業は法違反のリスクを負います。もし消化が滞っている場合は、計画的付与制度の導入や、業務シェアの仕組みづくりを検討してください。適切な有給管理は、従業員の満足度を高めるだけでなく、企業の社会的信用を守る重要な防衛策です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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