• 更新日 : 2026年1月14日

対話型組織開発とは?診断型との違い・手法・導入ステップまで徹底解説

対話型組織開発は、変化の激しい現代において、組織が自ら課題を発見し、変革を起こすために注目されている手法です。従来の診断型組織開発が組織の問題点を特定・解決することを目指すのに対し、対話型組織開発は参加者同士の「対話」を通じて、組織の新たな可能性や強みを引き出し、自発的な変化を促します。

この記事では、対話型組織開発の基本的な考え方から、診断型組織開発との比較、具体的な手法、そして導入するメリットまでをわかりやすく解説します。

組織開発の2つの手法

組織開発の主要なアプローチには、診断型組織開発と対話型組織開発の2種類があります。

以下でそれぞれ紹介していきます。

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対話型組織開発とは?(Dialogic Organization Development)

対話型組織開発は、組織の課題解決や変革を、専門家による診断ではなく、組織メンバー同士の対話を通じて実現するアプローチです。英語では Dialogic Organization Development(対話型OD)と呼ばれます。

このアプローチでは、組織の現状を「唯一の客観的な答え」として捉えるのではなく、メンバー同士が対話を重ねる中で、現状の理解や意味づけを共同で構成していく、という「社会構成主義」の考え方を重視します。

診断型組織開発とは?(Diagnostic Organization Development)

診断型組織開発(Diagnostic Organization Development)は、組織の効率性や健全性を高めるために、外部の専門家や人事部門がサーベイやインタビューなどでデータを収集・分析し、特定された問題点に対する解決策を実行していくアプローチです。

組織を「病気」に例え、

  • 現状の問題や機能不全を客観的なデータで把握する
  • 原因を特定し、処方せん(施策)を提示する

という「医療モデル」の考え方に基づいています。

前提として、「組織には客観的に測定できる問題が存在し、それを診断によって明らかにできる」という立場をとる点が、対話型組織開発との大きな違いです。定量的な組織診断サーベイや、エンゲージメント調査などは典型的な診断型の実践例といえます。

関連資料|3分でわかる! マネーフォワード クラウドサーベイ サービス資料

対話型組織開発と診断型組織開発の違いは?

ざっくり整理すると、次のような違いがあります。

特徴診断型組織開発対話型組織開発
主な焦点問題の特定と解決(欠陥・不足)可能性の探求と協働(強み・希望)
専門家の役割組織の問題を診断し、解決策を提言する対話を促進し、自発的な変化を支援する
前提となる考え方組織には改善すべき客観的な問題がある組織の現実は対話によって構成される

組織の状況・目的に応じて使い分けたり、組み合わせていくことが現実的です。

診断型組織開発の進め方

診断型組織開発は、現状分析から問題特定、解決策の実行へと、比較的わかりやすいステップで進みます。導入の流れは次の通りです。

  1. 現状の見える化(データ収集)
  2. 診断と課題の特定
  3. 施策の設計(アクションプラン策定)
  4. 施策の実行とフォローアップ

「どこが悪いのかをはっきりさせたい」「経営層に対して数字で説明したい」といったニーズがある場合に、診断型のステップは有効です。

関連資料|会議議事録テンプレート(Word/Excel)

対話型組織開発を導入するメリットとは?

対話型組織開発を導入することで、特に変化の激しい現代において、組織に以下のようなメリットをもたらします。

組織メンバーの主体性が向上する

対話型組織開発は、メンバーが「受け身」ではなく「主体」となって組織変革に参加します。

診断型のように外部の専門家が特定した課題に取り組むのではなく、自分たちで対話を通じて問題や可能性を発見し、解決策や未来の姿を創り出すため、「やらされ感」がなく、変革へのオーナーシップ(当事者意識)が高まります。

関連資料|アクションプランシート(KPT含む)

組織内の関係性が深まり相互理解が進む

質の高い組織対話は、部署や職位を超えた相互理解を深める効果があります。

異なる視点や意見が安全な場で共有されることで、これまで見えていなかった組織の一面を知ることができ、メンバー間の信頼関係が向上します。とくに、ワールドカフェやオープンスペース・テクノロジーなどの手法は、気軽でフラットなコミュニケーションを促すため、組織の硬直した人間関係をほぐすのにも効果的です。

変化に対応できる組織文化が醸成される

対話型組織開発は、単発の課題解決で終わらず、「対話を通じて常に組織を問い直す」文化を根づかせます。

組織内の情報を一方的に伝えるだけでなく、双方向のコミュニケーションを常態化することで、環境の変化や新たな課題に対して、組織全体として柔軟かつ迅速に対応できる能力が高まります。

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対話型組織開発で使える対話の手法3選

対話型組織開発を実践するために、さまざまな対話手法が開発されています。これらは、参加者の人数や目的に応じて使い分けられます。ここでは、代表的な4つの手法を紹介します。

ワールドカフェ

ワールドカフェは、リラックスしたカフェのような雰囲気の中で、少人数のグループで対話を行い、メンバーを入れ替えながら、その対話の内容や気づきを広げていく手法です。

ワールドカフェの進め方

グループ分け:参加者を4~5人の小グループに分ける。

対話の開始:グループごとにテーブルに描かれた模造紙などに書き込みながら、設定されたテーマについて対話を進めます(20分程度)。

メンバーチェンジ:各グループからテーブルホスト(ホスト役)を1人残し、他のメンバーは別のテーブルに移動します。

対話の継続:新しいグループで、ホストが前の対話の内容を共有した後、さらに議論を深めます。

全体共有:全セッション終了後、各テーブルホストが気づきや重要なアイデアを全体に発表し、共有します。

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AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)

AI(Appreciative Inquiry:アプリシエイティブ・インクワイアリー)は、組織の強み、成功体験、最高の瞬間といったポジティブな側面に焦点を当て、そこから組織の可能性を見出し、未来を創造していく手法です。

AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)の進め方

発見 (Discover):組織の「最高の状態」や成功体験について語り合い、強みを発見します。

夢想 (Dream):強みを活かし、組織の「ありたい未来の姿」を夢想し、大胆に描き出します。

設計 (Design):夢想した未来を実現するための組織構造や戦略を具体的に設計します。

実行 (Destiny):設計された計画を実行に移し、変革を継続的に進めます。

ポジティブな対話を通じて、メンバーのモチベーションを高め、組織の活力を引き出したい場合に効果的です。

関連資料|プロジェクト計画書テンプレート(Excel)
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オープンスペース・テクノロジー

オープンスペース・テクノロジー(OST)は、参加者が自発的にテーマを設定し、議論を進める、非常に柔軟な対話手法です。参加者の情熱と責任感を最大限に引き出し、予測不能な問題や複雑な課題に対して、迅速かつ創造的な解決策を生み出すことができるようになります。

オープンスペース・テクノロジーの進め方

テーマ設定:参加者は、提示された大テーマに関連する「今、本当に議論したいこと」を提案し、自らセッションの責任者(ホスト)になります。

タイムテーブル作成:提案されたテーマでタイムテーブルを作成します。

セッション進行:参加者は興味のあるテーマのセッションに自由に参加し、対話を行います。

集約:各セッションの結果を参加者全員で共有し、行動計画へとつなげます。

関連資料|ファシリテーションシート(会議準備用テンプレート)
関連資料|SWOT分析テンプレート(Excel/PowerPoint)

対話型組織開発を組織に導入するステップと注意点

対話型組織開発に関心があっても、「具体的にどこから始めればよいか分からない」という声は少なくありません。ここでは、初めて導入する組織が押さえておきたい基本ステップと注意点を整理します。

ステップ1:目的とスコープを明確にする

「何のために対話型組織開発を行うのか」「どの範囲から始めるのか」を、経営層・人事・現場リーダーで共通認識にしておきます。全社一斉に始めるよりも、まずは一部の部署やプロジェクト単位で小さく試すほうが、リスクを抑えながらノウハウを蓄積しやすくなります。

ステップ2:ファシリテーターを育成・選定する

対話型組織開発では、場づくりやプロセス設計を担うファシリテーターの役割が重要です。外部の専門家に依頼する方法もあれば、社内でファシリテーター候補を育成する方法もあります。いずれにしても、「中立性」「傾聴力」「場の安全性への配慮」ができる人材を確保することがポイントです。

ステップ3:小さな対話の場から始める

いきなり大規模なフューチャー・サーチを行うのではなく、少人数のワールドカフェやAIのインタビューなど、小さな対話の場から始めるのがおすすめです。参加者の体験を通じて、「この対話は意味がある」と感じてもらうことが、社内での理解と支持を広げる第一歩になります。

ステップ4:実践と振り返りをセットにする

対話の場を単発で終わらせず、「話し合って出てきたアイデアを試してみる→結果を持ち寄って再度対話する」というサイクルを設計します。この繰り返しによって、対話型組織開発は一度きりのイベントではなく、「学習する組織」の仕組みとして根づいていきます。

導入時の注意点
  • 短期的な数値改善だけをKPIにすると、対話の価値が理解されにくくなる
  • 「結論を急ぎすぎる」「議論をまとめすぎる」と、心理的安全性や創造性が損なわれる
  • 対話の内容が業務にどうつながるかを、経営層・現場の双方に丁寧に説明する

これらを意識しながら、対話型組織開発を自社の組織開発ポートフォリオの一つとして位置づけていくことが大切です。

対話型組織開発に必要な心理的安全性とは?

対話型組織開発を成功させる上で、参加者同士が率直に意見を出し合い、深いレベルでの組織対話を実現するための前提条件となるのが、心理的安全性です。

対話型組織開発に心理的安全性が必要な理由

対話型組織開発は、組織メンバーが自分の経験や感情、違和感までも含めて共有し合うことで、変革のきっかけとなる「新しい意味」を生み出していくプロセスです。

しかし、心理的安全性が低い環境では、次のようなことが起こりがちです。

  • 批判を恐れて、当たり障りのない意見しか出てこない
  • 組織にとって都合の悪い情報が隠される
  • 少数派の視点や現場のリアルな声が表に出てこない

心理的安全性が対話の質を高めるメカニズム

心理的安全性が高い場では、次のような変化が起こります。

  • 多様な視点の共有
    少数派の意見や、組織の「暗黙の前提」に異を唱えるような意見も、恐れずに発言できるようになります。これが、組織の新たな可能性や盲点を発見する鍵となります。
  • 内省の深化
    メンバーは、自分自身の行動や考え方について深く内省し、それをオープンに共有しやすくなります。これにより、単なる施策レベルの改善にとどまらず、組織文化や関係性の変容につながります。
  • 学習の促進
    失敗や間違いを隠さずに共有できるため、そこから学ぶプロセスが加速します。変化の激しい環境で持続的に成長するうえで、組織学習のスピードを高めることは非常に重要です。

対話型組織開発のファシリテーターは、参加者同士が互いを尊重し、失敗を許容しあえるようなルールづくりや場づくりに注力し、心理的安全性を高いレベルで保つ役割を担います。

対話型組織開発を深めるためのディベート活用法

対話型組織開発で用いられる手法は、ワールドカフェやAIのような協調的なワークが中心ですが、あえて「対立」や「異論」を表に出すディベートの手法も、議論を深めるうえで有効に活用できます。

対話型組織開発でディベートを行うポイント

ディベートの要素を対話型組織開発に取り入れる際のポイントは、「役割を一時的に演じる」ことです。

1. 役割として立場を演じる(ロールスイッチ)

参加者を二つのチームに分け、ある組織課題について敢えて賛成と反対の立場を割り当てます。それぞれのチームは、自分の本当の意見にかかわらず、割り当てられた立場の論拠を考え、相手に伝えます。議論が一巡した後、チームの役割を交換し、相手側の視点に立って再度議論を行います。このプロセスを通じて、参加者は普段気づかない反対意見の論理的な強さや、異なる立場の人が抱える懸念を深く理解できるようになります。

2. 根拠の明確化を徹底する

単なる感情論ではなく、「なぜそう考えるのか?」という論拠やデータの提示を強く求めます。これにより、参加者は自分の意見を客観的な事実や論理で裏付けようとする意識が高まり、議論のコンテント(内容)が深まります。

この手法は、組織内に根強い意見の対立や溝がある場合に、感情的にならずに、相手の意味の構成を理解するための有効な手段となります。

対話型組織開発の適切な実施が組織の信頼につながる

対話型組織開発は、組織の課題解決や変革を、メンバー同士の深い対話を通じて実現する、効果的なアプローチです。診断型組織開発が問題解決に焦点を当てるのに対し、対話型は組織の可能性と強みを掘り起こし、メンバーの主体的な行動を引き出します。

ワールドカフェ、AI、フューチャー・サーチ、オープンスペース・テクノロジーといった対話手法を適切に活用することで、組織は硬直化を避け、変化に強い文化を醸成できるようになります。組織の変革をけん引したい経営者や人事担当者は、対話型組織開発の考え方をふまえ、現場での組織対話の質を高めていくことが、結果的に組織全体の信頼と成長へとつながります。

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