• 更新日 : 2025年12月18日

外国人採用の注意点は?手続きや費用もあわせて解説

外国人労働者の採用は、人手不足解消と企業のグローバル化に不可欠な戦略です。しかし、在留資格の手続きや労務管理には独自のルールがあり、不安を感じる担当者もいるのではないでしょうか。

この記事では、中小企業の経営者や人事担当者向けに、外国人採用の最新動向、在留資格の種類、具体的な採用手続き、費用、そして採用後の労務管理における注意点を、2025年7月時点の情報に基づきわかりやすく解説します。

外国人採用の動向:特定技能制度の採用状況

外国人労働者数は、人手不足を背景に年々増加傾向にあり、日本の産業を支える重要な存在になっています

厚生労働省の発表によると、令和6年10月末時点の外国人労働者数は過去最高を更新しています。とくに、特定技能制度は、即戦力となる外国人材を12の特定産業分野で受け入れる制度として注目されており、企業の安定的な人材確保につながる有効な手段の一つです。

出典:外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)|厚生労働省

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外国人採用の注意点・デメリット

外国人採用におけるデメリットは、文化や習慣の違いによるコミュニケーションの壁、そして在留資格申請の専門的な手続きの煩雑さなどが挙げられます。

知識不足のまま採用活動を進めてしまうと、雇用後にトラブルとなる可能性があります。採用する際は、以下の点に注意しましょう。

文化・習慣の違いによるコミュニケーションの壁

外国人採用におけるデメリットの一つは、文化や習慣の違いによるコミュニケーションの壁が生じることです。

文化や習慣の違いが原因で、職場で誤解や業務上の支障が生じる可能性があります。

仕事の価値観、コミュニケーションの取り方、宗教など、文化的な違いは予期せぬトラブルにつながります。職場で誤解が生じないよう、企業側は多文化への理解を深める研修やサポート体制を構築することが重要です。

在留資格申請の専門的な手続きの煩雑さ

外国人採用では、在留資格申請という、日本人採用にはない専門的かつ複雑な手続きが必要です。

在留資格の手続きは非常に複雑で専門知識が必要なため、実務担当者の負担が大きくなりがちです。

申請や変更、更新といった手続きは、詳細な書類準備と申請が必要で、不備は審査の遅延につながります。この煩雑な実務を軽減するため、専門家への相談や、労務管理を効率化するためのITツールの導入を検討するとよいでしょう。

職場で誤解が生じないよう、企業側が多文化への理解を深め、適切な研修やサポート体制を構築することが重要です。また、在留資格の手続きは複雑で専門知識が必要なため、専門家への相談や、実務負担を軽減するためのツールの導入も検討するとよいでしょう。

【実務編】外国人採用の注意点

採用後の定着とコンプライアンス維持に必要な、実務上の運用ルールを解説します。本章では、届出義務や実務で直面する課題について解説します。

外国人雇用状況届出書の提出をする

外国人労働者を雇用または離職させた場合、企業にはハローワークへ届出を提出する義務があります。

外国人を雇用または離職させた企業は、原則として雇い入れ日の翌月10日までに、ハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を、離職日の翌々日から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出する必要があります。

なお、外国人労働者が雇用保険被保険者でない場合は「外国人雇用状況届出書」を雇い入れ日または離職日の翌月末日までに、ハローワークに提出します。

提出を怠ったり、虚偽の届出をした場合、罰金が科されることがあるため注意が必要です。この届出は、企業がコンプライアンスとして必ず実施しなければなりません。

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就業規則・雇用契約書は多言語対応にする

言語の壁による誤解を防ぎ、労働条件に関するトラブルを回避するためには、多言語対応が必要です。

外国人労働者を雇用する際は、本人が理解できる言語で作成した就業規則や雇用契約書を提示し、内容を十分に説明することが欠かせません。

日本の労働基準法に基づく就業規則を外国語で提供し、内容を確認し合うことは、採用後の信頼関係を築く上で非常に重要となります。

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賃金設定・社会保険手続きは日本人と同等に

外国人労働者の賃金設定や社会保険の手続きにおいても、日本人労働者と差を設けないことが大原則となります。

外国人労働者への賃金は、同じ仕事内容であれば日本人と同等以上の水準に設定する必要があり、社会保険・労働保険の手続きも必須です。

不当な低賃金設定は、在留資格の更新に影響を及ぼす可能性があります。また、原則として外国人労働者も、適用要件を満たせば社会保険・労働保険に加入させなければなりません。

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外国人採用では助成金を活用する

外国人採用に関連する助成金制度を活用することで、採用にかかる費用負担を軽減できる場合があります。

外国人採用で活用できる助成金は、採用環境の整備や特定の求職者の雇用を支援する制度があり、費用メリットを得られます。

たとえば、「特定求職者雇用開発助成金」などがあります。これらの助成金を活用することは、採用費用を抑えるだけでなく、外国人労働者が安心して働ける環境づくりを支援することにもつながるでしょう。

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外国人採用のメリット

外国人採用は、人手不足の解消という直接的な効果だけでなく、企業の成長に間接的にもつながります。

外国人採用によって、若手人材の確保、多様な視点の獲得、そしてグローバル展開の足がかりといったメリットを得られるためです。

少子高齢化で採用が難しい若手の労働力を確保できます。また、異なる文化や習慣を持つ人材が加わることで、職場に多様な価値観が持ち込まれ、イノベーション創出につながる可能性が高まります。外国語能力を持つ人材は、企業の多言語対応力を高めることが可能となります。

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【大原則】雇用できる外国人

外国人雇用における最も重要なコンプライアンス(不法就労防止)の基礎知識を網羅します。本章では、不法就労助長罪の解説と、就労が認められる在留資格について解説します。

就労可能な在留資格を持っているか

外国人が日本で就労するために必要な許可を「在留資格」(いわゆる「就労ビザ」)と呼び、職種や専門性によっていくつかの種類に分かれています。外国人を雇用する際は、その外国人が持つ在留資格が、採用する職務内容に適しているかを事前に確認しましょう。

主な就労可能な在留資格は、「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などがあります。「永住者」「日本人の配偶者等」といった在留資格を持つ外国人は、原則として職種や活動の制限なく働くことができます。

詳しくは以下の「在留資格一覧」をご確認ください。

出入国在留管理庁「在留資格一覧表」

関連記事|外国人を採用できる在留資格とは?種類や必要な手続きも解説

留学生や家族滞在者のルール

留学生や家族滞在者の在留資格を持つ外国人も一定の条件のもとで就労ができますが、厳格な時間制限があるため注意が必要です。

留学生や家族滞在者を採用する際は、「資格外活動許可」を取得していることと、週28時間以内という労働時間の上限を確認する必要があります。

これらの在留資格を持つ外国人がアルバイトをするには、「資格外活動許可」を入国管理局から受けていなければなりません。労働時間の上限を超過して働かせた場合、企業側も不法就労助長罪に問われる可能性があるため、勤怠管理を徹底し、上限を厳守することが重要です。

不法就労助長罪の解説と労働基準法の適用

外国人労働者を雇用する際、企業は「在留カード」や「資格外活動許可書」を確認し、不法就労を防止する責任があります。

外国人労働者を雇用する企業は、不法就労助長罪に問われないよう、在留資格や就労範囲を徹底的に確認する必要があります。

企業が不法就労状態にある外国人を雇った場合、不法就労助長罪に問われる可能性があります。適法に雇用された外国人労働者に対しては、日本人と同等以上の賃金や労働条件を提供する必要があり、労働基準法や社会保険・労働保険も同様に適用されます。

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関連資料|外国人就労者入場届

 外国人採用7つのステップ

外国人採用は、在留資格の確認や申請など、日本人採用とは異なる手順が加わります。外国人採用は、「目的の明確化」から始まり、「在留資格の申請」を経て「入社準備」に至る7つの手順で進めます。

  1. 外国人採用の目的の明確化
  2. 募集
  3. 在留資格の確認
  4. 面接・選考
  5. 雇用契約
  6. 在留資格申請
  7. 入社準備

採用する目的を明確にする

漠然とした理由ではなく、業務内容、雇用期間、雇用人数などを事前に整理し、求めるスキルを設定することが大切です。日本語能力レベルまで定めることで、より効率的な採用活動が可能となるでしょう。

求人募集を開始

外国人労働者の募集は、自社サイトやハローワーク、人材紹介会社、社員からの紹介といった方法が一般的です。はじめて外国人労働者を採用する場合は、サポートの手厚い人材紹介会社に依頼し、就労斡旋の認可を得た信頼のおける会社を選ぶことをおすすめします。

在留資格や在留期間を確認

応募者が集まったら、在留期限や在留資格が業務内容に合致するかを在留カードより確認しましょう。また、在留カードが偽造されていないか確認することも重要です。出入国在留管理庁のホームページで無料配布されている「偽造確認アプリ」を活用し、ICチップ内の情報を読み取って真正のものであるか見極めましょう。

面接

外国人労働者を面接する際は、「日本語が話せる=仕事ができる」とは限らない点に注意が必要です。また、国によって業務内容が異なるため、どのような業務の経験があるかまで丁寧にヒアリングしましょう。実務能力の適性や正確性を判断できます。

内定・雇用手続き

外国人労働者の雇用手続きは、日本人を雇う以上に慎重さが求められます。とくに雇用契約書の作成は重要です。海外では「契約書に書かれていないことは契約していないこと」と考える人もいるため、業務内容・条件・ルールを曖昧にせず、具体的に記載する必要があります。重要事項は母国語で契約書を作成するなど、双方が同じ認識を持つように配慮できるとよいでしょう。

関連資料|労働条件通知書・雇用契約書の兼用 対応ガイド

在留資格の申請・変更

海外在住の外国人を雇用する場合、在留資格の申請が欠かせません。国内在住の外国人でも、仕事内容によっては在留資格の変更が必要です。申請に必要な書類が多く、専門的な知識も求められるため、不備による入国時期の遅れを防ぐためにも、行政書士や人材紹介会社といった専門家にサポートを依頼してもよいでしょう。

入社までの準備

雇用が確定したあとは、入社に向けた準備をしましょう。具体的には、銀行口座開設、住居の確保(ライフラインの契約含む)、航空券の手配、事前研修やオリエンテーションの準備などが挙げられます。海外在住者の場合は特に時間と手間がかかりますので、受け入れ体制を整えて、外国人労働者が安心して業務を開始できる環境を作りましょう。

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外国人採用にかかる期間の目安(国内在住者・海外招聘)

採用にかかる期間は、応募者が既に日本に住んでいるか、海外から招聘するのかによって大きく異なります。

外国人採用にかかる期間は、国内在住者で1〜3ヶ月、海外在住者(招聘)の場合、在留資格認定証明書の申請期間を含めると3〜6ヶ月程度を目安としましょう。

国内在住者の場合、採用決定後に在留資格の変更・更新手続きの審査期間が通常1〜3ヶ月程度かかります。海外から招き入れる場合、在留資格認定証明書(COE)の申請が必要で、審査期間は3〜6ヶ月程度の期間を見積もることが安全です。

外国人採用にかかる費用相場

外国人採用には、求人広告費や人材紹介手数料のほかに、在留資格申請に関する専門家への依頼費用などが加わります。

外国人採用にかかる費用は、採用手法や依頼する専門家によって異なりますが、人材紹介手数料や行政書士費用などが発生します。

費用の内訳としては、人材紹介会社への手数料(理論年収の20〜35%程度が相場)や、在留資格申請代行のための行政書士への報酬(10万円〜30万円程度)などが考えられます。

なお、在留資格申請代行ができる行政書士は、特定の研修を修了し登録した「申請取次行政書士」のみとなるため注意が必要です。

【ケース別】在留資格の手続きと必要書類

採用担当者が実務で直面する、最も複雑な「在留資格変更・申請」をケース別に深掘りします。本章では、実務で直面しやすい3つのケースについて手続きを深掘りします。

海外在住者を招く場合

海外在住の外国人を新たに採用し、日本で働いてもらうためには、企業側が代理で「在留資格認定証明書」を申請する必要があります。

海外在住の外国人を招聘するには、まず企業側が各地の管轄出入国在留管理局に在留資格認定証明書を申請し、交付された証明書を本人に送付する必要があります。

申請に必要な主な書類には、履歴書、雇用契約書、企業側の事業内容や財務状況を証明する資料などが含まれます。証明書交付後、外国人は現地の日本大使館・領事館で査証(ビザ)の発給を受け、入国が可能となります。

留学生を採用する場合

留学生を卒業後に正社員として採用する場合、在留資格を「留学」から就労可能な資格へ変更する手続きが必要です。

留学生を採用する際は、在留期間の満了を迎える前に、管轄出入国在留管理局で在留資格変更許可申請を行うことが重要です。

申請のタイミングは、通常、卒業予定の年度の秋頃から可能です。企業側の担当者は、留学生が専攻内容と採用後の職務内容に関連性があるかを事前に確認し、それを証明する資料を準備するサポートをするとスムーズです。

転職者の場合

すでに日本で就労している外国人(転職者)を採用する場合でも、職務内容が変わる際は「就労資格証明書」の取得が推奨されます。

日本国内で転職活動中の外国人を採用した場合、在留資格の変更自体は不要なことが多いですが、転職後の職務が現在の在留資格の活動範囲内であることを証明する「就労資格証明書」の取得を推奨しましょう。

就労資格証明書は必須ではありませんが、取得することで次の在留期間更新の際に審査が円滑に進む可能性が高まります。企業側は、採用する外国人の職務内容が在留資格の定める活動範囲に合致しているかを慎重に確認する必要があります。

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外国人採用でグローバルな成長を実現する

外国人採用は、企業の長期的な成長戦略を支える重要な一歩につながります。本章では、記事の要点を再確認し、今後の採用活動へのメッセージを伝えます。

外国人採用は、適切な手続きをふまえて行えば、企業に多くのメリットをもたらし、グローバルな成長を実現できます。

外国人採用を成功させるためには、最新の在留資格制度や手続き、法令順守を徹底することが大前提となります。採用後の労務管理では、賃金設定、社会保険の手続き、外国人雇用状況届出書の提出義務など、異なる注意点を理解しておくことが欠かせません。適切な知識とITツールを活用することで、実務負担は大幅に軽減できます。外国人材の持つ可能性を最大限に引き出し、企業の長期的な成長へとつなげていきましょう。

関連資料|マネーフォワード クラウド 人事労務担当者向けパンフレット


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