• 更新日 : 2025年12月5日

ストレス耐性が低い人の特徴は?耐性の高め方・メンタル不調防止策を解説

日々の仕事において、従業員は知らないうちにさまざまなストレスにさらされます。ストレスの受け止め方や解消の仕方など、ストレス耐性も人によって異なります。

なかには、ストレス耐性が低い従業員がいるのも事実です。ストレス耐性が低い人は、どういった特徴があり、どのように対策を講じればよいのでしょうか。この記事では、ストレス耐性が低い人の特徴や耐性を高める方法を解説します。

ストレス耐性とは?

まずはストレス耐性の定義や、ストレス耐性が決定される6つの要素について解説します。ストレス耐性についてより詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。

ストレス耐性の定義

ストレス耐性とは、外部からの刺激や負荷である「ストレス」に対して、適応しようとする能力のことです。ストレスが発生する要因は、以下のようにさまざまです。

  • 人間関係
  • 業務量
  • 職場環境
  • 日常の予期せぬトラブル

従業員のストレス耐性が高ければ、外部の負荷や環境の変化にも適応でき、十分なパフォーマンスを発揮できます。一方、ストレス耐性が低いと、ストレスに耐えられず心身に不調をきたしやすく、業務にも影響を及ぼす可能性があります。

ストレス耐性が決まる要素

ストレス耐性が決まる要素として、以下の6つがあります。

容量「ストレスをどの程度まで許容し受け入れられるか」という度合いを指す。少ない容量の人ほど耐性が低い。
処理「ストレスをどのように対処するか」を指す。ストレスの解消・低減の仕方を理解している人ほど高い能力を持つといえる。
感知「ストレスをどれくらい感じ取れるか」を指す。耐性が低い人ほど、無意識にストレスを抱え込んでいる可能性がある。
経験「これまでどのようなストレスを受け、どのように対応してきたか」を指す。経験値が多いほど、ストレス耐性が高まる。
回避「ストレスをどれだけ避けられるか」を指す。物事への考え方が楽観的で心身が健康なほど、ストレス耐性が高い。
転換「ストレスをどれくらいポジティブに捉え直せるか」を指す。気持ちの切り替えが上手い人ほど、ストレス耐性が高い。

それぞれの能力が高ければ、ストレス耐性も高いといえます。

一方、人によっては抱え込んだり考え方を切り替えられないこともあるでしょう。こうした人は上記の能力があまり高くなく、ストレス耐性が低いと考えられます。

ストレス耐性が低い人の特徴

ストレス耐性が低い人の特徴としては、完璧主義な部分があったり責任感が強かったりといった性格が見られます。また、ネガティブ思考の人も低い可能性があります。それぞれの特徴について解説しましょう。

真面目で責任感が強い

真面目で責任感が強い人は「任された仕事を最後までこなす」「期待に応えるべき」と、自身に高いハードルを課す傾向があります。高品質な仕事ができるのが強みですが、基準に達しなかった場合に自身を責めてしまったり、深く考え込んだりして、ストレスを抱えがちです。

また、真面目すぎるがゆえ、失敗を嫌い、本来とりたい行動が取れずにストレスを溜め込む可能性もあります。

完璧主義

完璧主義の人は、仕事を妥協せずに進めるため、細部まで丁寧な仕事をします。それ自体はその人の個性であり強みですが、完璧な仕事を目指すあまり、細かなミスなどを自分で許容できず、自己批判につながりストレスを溜めやすいです。

また、完璧主義の人は周囲の期待に応えるべく、自身のキャパシティを超えて業務をする傾向も見られます。その結果、突然心身の不調を訴える可能性も考えられるでしょう。

他者の視線・評価を気にする

周囲からどのように見られているか気にする人は、協調性や共感性がある人といえます。しかし、過度に評価や周囲を気にする場合は、注意が必要です。

こうした人は、自身の意見を押さえ込んだり、怒られる・指摘されるといったことを過度に恐れてしまったりと、対人関係を原因としたストレスを抱えやすいです。

感情の切り替え・コントロールが苦手

感情の切り替えやコントロールが苦手な人は、ネガティブなことがあるとそれを引きずりやすく、気持ちを切り替えるのに時間がかかります。感受性豊かで素直な人といえますが、事実を過度に重く受け止めてしまい、ストレス反応が長引きやすいです。

感情の受け止め方を理解してもらう、意識的にリフレッシュしてもらう、といったことが重要になります。

ネガティブ思考

物事を悲観的に捉えがちな人は、リスク管理に長けており慎重といえます。

一方で、行動する前から不安を感じやすく、小さな問題でも必要以上に大きく捉えてしまう可能性があります。そのためストレスが増幅しやすく、心身不調になりやすいです。

ストレス耐性が低いと起きる影響

ストレス耐性が低い従業員を放置しておくと、業務や心身にさまざまな影響を及ぼします。どれもネガティブなものばかりのため、企業にとっても悩みの種となりかねないため、早急な対策が求められます。

勤怠の乱れ

ストレス耐性が低い人がストレスに悩み始めると、勤怠の乱れが起きることがあります。たとえば、今まで遅刻をしたことがなかったにもかかわらず、遅刻回数が増えたり、突然欠勤することが増えたりといった形です。あるいは、職場に行こうと思っても体が動かない、気分が悪くなるといった症状が出る可能性もあります。

企業としては、まず従業員の遅刻や早退、欠勤の数が増えていないか確かめます。急激に遅刻や欠勤が増えている従業員には「直近の業務で不安がないか」「職場で気になっていることはないか」といったような声掛けをしていくとよいでしょう。

人間関係の悪化

ストレス耐性が低い人は、ストレスに悩むことで同僚や顧客にきつくあたってしまう可能性があります。また、自分の意見や不満が言い出せないと、余計にストレスを溜めてしまいます。結果的に会話を避けられたり、上手くコミュニケーションが取れなかったりと職場環境の悪化にもつながる可能性も考えられるでしょう。

「最近明らかに態度が変わった」という従業員がいる場合は、上司が話を聞くなどして、悩みごとや不安なことがないか確かめるとよいです。

メンタル不調

ストレス耐性の低い人は、メンタル不調を引き起こす可能性があります。適応障害・パニック障害・うつ病など、心身の不調は長期の休職を余儀なくされることも考えられます。休職期間中は、ほかの従業員が業務をカバーするため、仕事が思うように進まず、ほかの従業員の負担となる可能性もあるでしょう。

もしメンタル不調を気にかけず、従業員を傷つける対応やパワハラをしてしまえば、訴訟問題にもなりかねません。加えて、従業員が休職する期間の採用コストもかかるため、企業にとってもネガティブな影響を及ぼします。

ストレス耐性を高めるには

ストレス耐性を高めるには、要因を突き止めたり、アプローチの仕方やコントロールの仕方を身につけたりするのがポイントです。それぞれの対策を解説します。

ストレッサーを明確にする

ストレッサー(ストレスを引き起こす要因)を明確にすれば、対処の仕方や受け止め方などの意識を変えられ、ストレスとの付き合い方が理解できるようになります。

日々の労働におけるストレッサーとして考えられるものには、以下のようなことが挙げられます。

  • 業務量の多さ
  • 対人関係の難しさ
  • キャリアへの不安
    など

ストレスの要因を特定すれば、何が原因で心身の不調が起きているのかが理解でき、対策を打ちやすいです。従業員としても、ストレスを感じた際は要因を避けたり排除したりする努力ができれば、ストレスとも向き合いやすくなります。

理論やアプローチの仕方を知る

理論やアプローチの仕方を知っておくことで、ストレスへの捉え方がこれまでと変わる可能性があります。

ストレス耐性に関して知っておきたい基礎知識は、以下のとおりです。

ABC理論人間の感情や行動は、それ自体ではなくそれをどのように受け止めるかが結果を決めるという考え方。

知っておくとストレスの要因となっているものの受け止め方などを変えるきっかけになる。

SOC首尾一貫感覚とも呼ばれ、自分の生活性に一貫性があると感じられることを指す。「把握可能感」「処理可能感」「有意味感」という3つから構成される。

SOCが高まると、物事を前向きに考えられたり、自己肯定感が高まったりするため、ストレス耐性も高まる。

考え方やアプローチの仕方を従業員に理解してもらうために、研修を開いたり朝礼で話題にしたりといった工夫をしてみると、より効果的でしょう。

ストレスコーピングを身につける

ストレスコーピングとは、ストレスに対処するためにとる行動のことです。行動タイプによって、以下のように分類されます。

  • 問題焦点型:ストレスの原因自体を解決しようとするタイプ
  • 情動焦点型:ストレスによる不快な感情を和らげるタイプ
  • ストレス解消型:溜まったストレスを発散するタイプ

単なるストレス発散だけでなく「問題解決のために情報収集や周囲の協力を得る」、「感情をコントロールして落ち着かせる」といったストレスを鎮める方法を理解しておくのがポイントです。ストレスを自分でコントロールできるようになることで、抱え込むことが少なくなり心身不調を予防できるでしょう。

ストレス耐性のテストを実施する

Web上でできる簡単なテストのほか、専門機関が提供する詳細な診断などさまざまなものがあります。

客観的なストレス度合いを知ることで、従業員がストレスと向き合うきっかけをつくれたり、企業としての対策や行動計画を立てやすくなるでしょう。

ストレス耐性が低い人に企業ができること

ストレス耐性が低い人に、企業は相談窓口の設置やワークライフバランスの充実といった支援のほか、ストレスチェック・ストレス関連の研修などを実施するのが望ましいです。

ストレス耐性が低い人への支援をして、心身不調を予防し離職を防ぐのが重要です。

メンタルヘルス相談窓口を設置する

職場にメンタルヘルス相談窓口を設ければ、従業員が悩みを話しやすく、ストレスを抱え込みにくくなります。メンタルヘルス不調の予兆や早期発見も期待でき、従業員の離職防止にもつながるでしょう。

設置の際は、メンタルヘルスに関する知識を有したものを担当者に任命するとよいです。必要に応じて外部の専門機関や産業医と連携するのも有効です。

ワークライフバランスの充実を図る

ワークライフバランスの充実を図れば、ストレスを低減しやすいです。

長時間労働や休日出勤が長引くと、疲労が蓄積しストレス耐性も低下していきます。従業員が私生活と仕事のバランスをとりながら過ごせて、十分な休息を確保できる環境をつくるのがポイントです。

有給休暇でのリフレッシュ促進やテレワークの導入などは、有効な対策のひとつといえます。

ストレス耐性を高める研修を開催する

ストレス耐性を高める研修を実施し、ストレスマネジメントやセルフケアに関する知識を身につけてもらうのも有効です。前述のストレスコーピングの方法やストレスの要因の見つけ方やケアの仕方などを題材とすると、実用的で従業員も試しやすいでしょう。

組織としてだけでなく、個人としてもストレスマネジメントができれば、従業員誰もが低ストレス環境で働けるようになります。

ストレスチェック制度を導入する

労働安全衛生法第66条の10

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。

引用:e-Gov法令検索「労働安全衛生法 第66条の10」

ストレスチェックは、従業員自身がストレスに気づけると同時に、企業としてもストレスの度合いが高い従業員の支援をするための目安になります。高ストレスの部署がある場合はその要因を特定するきっかけにもなるため、職場環境の改善も期待できるでしょう。

ストレスチェックについてより詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。


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