• 作成日 : 2026年1月14日

自己破産すると会社にバレる?クビの可能性や給料・資格制限まで徹底解説

借金問題の解決手段として自己破産を検討する際、最も懸念されるのが「今の会社(勤務先)にバレるのか」「仕事を辞めさせられるのではないか」という点です。

自己破産をしたという事実だけで即座に解雇されることは法律上認められておらず、職場に知られずに手続きを完了できるケースも多く存在します。しかし、職種による資格制限や、給料の差し押さえなど、注意すべき特定の条件があります。

この記事では、会社員が自己破産をする際のリスクと対策、職場への影響について法的な観点から分かりやすく解説します。

自己破産したら会社にバレる?クビになる?

自己破産をしたという事実だけで、会社が従業員を即座に解雇することは法律上認められていません。労働契約法や労働基準法において、従業員の個人的な経済状況(破産手続きなど)は、合理的な解雇理由として認められておらず、破産のみを理由とした解雇は「不当解雇」として原則無効となります。

勤務先の就業規則に「破産者は解雇する」という条項が記載されている場合がありますが、その規定自体が無効と判断される可能性が高いです。過去の判例でも、業務遂行に直接的な支障がない限り、私的な債務整理を理由にした懲戒解雇は「解雇権の濫用」とされるのが一般的です。

ただし、借金の理由が会社の金銭横領などの犯罪行為に関わっている場合は、破産とは別の「懲戒事由」として処分の対象となる可能性があるため注意が必要です。

自己破産が会社にバレる具体的なケースは?

通常は会社に知られずに済む自己破産ですが、特定のルートを通じて発覚するリスクがあります。ここでは、会社にバレる可能性が高まる具体的な5つのシチュエーションと、それぞれの対策について解説します。

1. 会社から借入がある場合

社内貸付制度などを利用しており、会社自体が債権者となっている場合は、自己破産の手続きをすると確実に会社に知られてしまいます。これは、自己破産をすると裁判所から全ての債権者に対して「受任通知」や「破産手続開始決定通知」が送付されるためです。

これを回避するために、会社からの借入だけを先に完済してから手続きを行おうと考える方もいますが、特定の債権者にだけ優先して返済する行為は「偏頗弁済」として禁止されています。

2. 給料の差し押さえ通知が会社に届いた場合

借金の滞納が続き、債権者が裁判所を通じて「給与差し押さえ(強制執行)」を行った場合、会社に通知が届き、経理担当者などを通じて事情が知らされます。

通常、弁護士に自己破産を依頼し「受任通知」を送付することで債権者からの取り立ては止まります。すでに差し押さえが始まっている場合でも、破産申立てを行い「破産手続開始決定」を得ることで、その執行を停止または取り消すことが可能です。

3. 退職金見込額証明書を取得する場合

自己破産の手続きでは、資産調査の一環として、会社が発行する「退職金見込額証明書」の提出を裁判所から求められることがあります。この証明書を経理や総務担当者に依頼する際、取得理由を尋ねられて不自然な回答をしてしまうと、借金問題や破産を疑われる可能性があります。

会社によっては、担当者に頼まずとも、自身で就業規則の退職金規定に基づいて計算書を作成することで証明書の代用ができる場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

4. 資格制限のある職種についている場合

警備員や士業など特定の職業に就いている場合、破産手続き中は一時的にその業務に従事できなくなる「資格制限(職業制限)」が発生します。制限される期間は「破産手続開始決定」から「免責許可の確定(復権)」までの数ヶ月間であり、一生仕事ができないわけではありません。

主な制限職種には以下のようなものがあります。

  • 士業:弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、行政書士など
  • 金融・保険:生命保険募集人、貸金業者、質屋営業者
  • 警備・建設:警備員、建設業者(役員等)
  • その他:宅地建物取引士、旅行業務取扱管理者など この期間中は配置転換や休職などの対応が必要となるため、結果として会社に事情を説明せざるを得ないケースがあります。

5. 官報へ掲載された場合

自己破産をすると、住所と氏名が官報に掲載されます。しかし、一般企業の担当者が官報を日常的にチェックしているケースは稀です。そのため、官報経由で同僚や上司に露見する確率は非常に低いと言えます。金融機関や不動産業界、警備会社など一部の業種ではコンプライアンスチェックを行っている場合があるため注意が必要です。

自己破産で給料やボーナスは差し押さえられる?

破産手続き前に給料が差し押さえられることはありますが、破産開始決定後は差し押さえが停止・禁止されます。

通常、自己破産を弁護士に依頼し「受任通知」を送付すると、債権者からの取り立ては止まります。しかし、すでに裁判所を通じて給与差し押さえ(強制執行)が始まっている場合は、破産申立てを行い「破産手続開始決定」を得ることで、その執行を停止または取り消すことができます。

差し押さえ可能な範囲

万が一、破産手続き前に給料が差し押さえられる事態になった場合でも、給料の全額が取られるわけではありません。民事執行法152条により、受け取り予定の給料の4分の3(上限33万円)までは差押さえが禁止されています。

経営者が自己破産した場合はどうなる?

経営者が自己破産する場合、会社の債務を個人保証(連帯保証)しているかどうかが大きなポイントになります。

会社の存続は可能

法的には個人と法人は別人格なので、社長が破産しても会社を存続させることは理論上可能です。

しかし、中小企業では社長が会社の借金の連帯保証人になっているケースがほとんどです。社長個人が破産すると信用力が低下し、会社の資金繰りも立ち行かなくなるため、実務上は会社と代表者が同時に破産手続きを行うケースが多く見られます。

代表取締役は退任

商法や委任契約の規定により、破産手続き開始決定を受けると、取締役としての委任契約は終了し、一度退任することになります。

ただし、株主総会で再選任されれば、破産手続き中であっても再び代表取締役に就任することは可能です。法的に社長業ができなくなるわけではありません。

会社が破産した場合はどうなる?

個人の破産とは異なり、会社が破産すると法人格そのものが消滅します。これは会社という存在自体がなくなることを意味するため、従業員は全員解雇となり、職を失うことになります。

会社都合の解雇となり失業保険をすぐに受給できる

会社が破産した場合の解雇は、自己都合退職(自分から辞めること)ではなく、「会社都合退職」として扱われます。通常の退職では、失業保険(失業給付)を受け取るまでに1ヶ月の「給付制限期間(待機期間)」がありますが、倒産による会社都合の場合はこの制限がありません。ハローワークで手続きをすれば、7日間の待機期間を経てすぐに受給が開始されるほか、年齢や勤続年数によっては、自己都合退職よりも給付日数が長く設定されるなど、手厚い条件で受け取ることができます。

参考:ハローワークインターネットサービス – 雇用保険手続きのご案内

未払いの給料・退職金は立替払制度で8割カバーされる

倒産に伴い、給料や退職金が支払われないまま解雇されてしまうケースも少なくありません。会社の資産が残っていればそこから配当されますが、資産がない場合でも、国が会社に代わって未払い分の一部を支払う「未払賃金立替払制度」を利用できます。

未払賃金立替払制度の概要

退職日の6カ月前から請求日前日までに発生した未払賃金の80%が、独立行政法人労働者健康安全機構から支払われます。ただし、年齢によって以下の通り立替払いの上限額が定められています。

年齢(退職時)立替払の上限額
45歳以上370万円
30歳以上 45歳未満220万円
30歳未満110万円

※上記はあくまで立替払いされる金額の上限です。この制度により、万が一勤務先が倒産して給料が貰えない状態になっても、当面の生活資金は一定程度守られる仕組みになっています。

参考:未払賃金立替払制度の概要と実績 |厚生労働省

解雇予告手当や退職金も請求の対象になる

通常、会社が従業員を即時解雇する場合は「解雇予告手当(30日分の賃金)」を支払う義務があります。破産によってこれらが支払われない場合も、破産管財人に対して請求を行うことが可能です(ただし、会社の残余財産からの配当となるため、全額が支払われる保証はありません)。いずれにせよ、会社が倒産した際は「離職票」や「給与明細」などの書類が手続きに必要となるため、可能な限り手元に残しておくようにしましょう。

自己破産に関する正しい知識でリスクを回避しよう

この記事では、自己破産が会社や仕事に与える影響について、個人の破産と会社の倒産の両面から解説しました。

最も避けるべきなのは、「会社にバレるのではないか」「迷惑がかかるのではないか」と恐れて借金を放置し、最終的に給料を差し押さえられて結果的に会社を巻き込んでしまうことです。 借金問題は時間が経つほど状況が悪化します。会社に知られないための対策を含め、現在の状況に合わせた最適な解決策を見つけるためにも、早めに弁護士などの専門家へ相談することが生活再建への一番の近道です。

参考:多重債務についての相談窓口 | 金融庁


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