- 更新日 : 2025年10月30日
日本政策金融公庫の創業融資とは?申し込みの流れや必要書類、創業計画書の書き方まで解説
新たに事業を始める起業家の資金調達において、日本政策金融公庫の創業融資は有力な選択肢の一つです。しかし、「自分は融資を受けられるのか」「審査に通るには何が必要なのか」といった不安を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、日本政策金融公庫の創業融資制度の内容から、審査を通過する確率を高めるポイント、万が一審査に通らなかった場合の対策まで、具体的に解説します。
目次
日本政策金融公庫の創業融資とは
日本政策金融公庫の創業融資は、主に新しく事業を始める方や、事業を始めて間もない方を対象とした公的な融資制度です。政府系金融機関であるため、民間の銀行に比べて創業者への支援に積極的で、比較的低い金利で借り入れできる点が大きな特徴です。
個人事業主でも法人でも利用可能で、多くの起業家の資金調達で有力な選択肢となっています。
新規開業・スタートアップ支援資金
日本政策金融公庫の創業融資は、新規開業・スタートアップ支援資金が中心となります。
新規開業・スタートアップ支援資金とは、新たに事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の方を対象とした融資制度で、個人事業主でも法人でも利用可能です。
- 融資限度額
7,200万円(うち運転資金4,800万円) - 返済期間
- 設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)
- 運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内)
- 金利
基準利率(一定の要件に該当する場合は特別利率が適用) - 担保・保証人
申込者の状況に応じて相談の上で決定されます。
特別利率が適用される関連制度
新規開業・スタートアップ支援資金の対象となる方は、特定の要件を満たすことで、基準利率よりも低い金利で融資を受けられる可能性があります。
- 女性、若者/シニア起業家支援関連
女性、35歳未満の方、55歳以上の方が新たに事業を始める場合に、金利の優遇を受けられる可能性があります。 - 再挑戦支援関連
過去に事業の廃業歴がある方でも、以下の要件をすべて満たす場合は支援の対象となります。- 廃業歴などを有する個人または法人であること
- 廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込みであること
- 廃業の理由や事情がやむを得ないものであること
- 中小企業経営力強化関連
以下の要件をすべて満たす場合も、金利の優遇を受けられる可能性があります。- 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している、もしくは適用予定
- 自ら事業計画書の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている
参考:
新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)|日本政策金融公庫
新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連)|日本政策金融公庫
新規開業・スタートアップ支援資金(中小企業経営力強化関連)|日本政策金融公庫
日本政策金融公庫の創業融資を実行するまでの流れ
創業融資を初めて利用する場合、申し込みから融資実行までは、通常2週間~1ヶ月半程度が目安とされています。内容や地域によっては前後するため、余裕をもって準備を進めましょう。
- 問い合わせ・相談
全国の支店窓口のほか、オンラインでの相談も可能です。 - 申し込み・書類の提出
必要書類を準備し、提出します。 - 面談(申込から約1〜2週間後)
担当者と事業計画について面談を行います。 - 審査
提出書類と面談内容をもとに審査が行われます。 - 結果通知・融資実行(面談から約1〜2週間後)
審査結果の連絡があり、通過した場合は契約手続きを経て融資が実行されます。
日本政策金融公庫の創業融資での必要書類
日本政策金融公庫の創業融資に必要な書類には、以下のようなものがあります。
個人事業主か法人か、また事業内容によっても変わるため、事前に確認しましょう。
日本政策金融公庫の創業計画書の書き方
創業計画書は、創業融資の審査において特に重要な書類です。ここでは、各項目のポイントを解説します。
- 創業の動機
なぜこの事業を始めたいのか、自身の経験と結びつけて具体的に記述します。熱意だけでなく、事業としての勝算を伝えましょう。 - 経営者の略歴
これまでの職務経歴が、今回の事業にどう活かせるのかを明確にアピールします。事業に関連する経験が豊富であるほど、説得力が増します。 - 取扱商品・サービス
商品やサービスの内容、セールスポイント、価格設定の根拠を分かりやすく説明します。専門用語の多用は避け、簡潔にまとめましょう。 - 取引先
販売先や仕入先、外注先など、予定している取引先を記載し、事業の具体性を示します。 - 必要な資金と調達方法
何にいくら必要なのか(店舗の改装費、商品の仕入費など)を積み上げで算出し、自己資金と借入希望額のバランスを示します。 - 事業の見通し(収支計画)
創業時と事業が軌道に乗った後の売上・経費・利益をそれぞれ予測します。楽観的すぎず、かつ返済可能な利益が見込める、現実的な計画であることが重要です。
日本政策金融公庫の融資審査に通過するためのポイント
スムーズに創業融資を受けるためには、押さえておきたいポイントがあります。以下では、審査に通過するためのコツを解説します。
自己資金を計画的に準備する
日本政策金融公庫の創業融資では、自己資金は審査における重要な要素の一つです。単なる金額だけでなく、通帳の履歴などで「この事業のために計画的に準備してきた」という姿勢を示すことが、信用度を高めます。家族からの一時的な借入などは自己資金と見なされない場合があるため注意が必要です。
根拠のある創業計画書を作成する
「儲かりそう」といった曖昧な計画ではなく、実現可能性の高い事業計画を示し、十分な利益を確保できることを裏付ける必要があります。売上や経費の予測については、「なぜその数字になるのか」という根拠を明確に提示しましょう。
これまでの経験やスキルをアピールする
創業する事業と同じ業界での勤務経験は、事業の安定性を示す強力なアピールポイントです。代表者自身の経歴や実績、スキルの中で、事業に結び付けられる要素を具体的に伝え、事業成功への説得力を持たせましょう。
個人の信用情報をクリーンに保つ
クレジットカードの支払いを長期間遅延させると、信用情報機関に「事故情報(異動情報)」として登録され、審査に悪影響を及ぼす可能性があります。公共料金の支払いの遅れ、税金の滞納なども審査に大きく影響します。日頃から支払いはきちんと行い、クリーンな状態を保ちましょう。
面談で事業内容をしっかりと伝える
面談では、書類の内容を自分の言葉でしっかり説明できることが求められます。事業に対する熱意を伝えるのはもちろんのこと、計画についての質問に論理的に回答できるよう、想定問答集を作成するなど万全の準備をして臨みましょう。
日本政策金融公庫の融資審査に落ちた場合の対処法
残念ながら審査に通らなかった場合でも、事業を諦める必要はありません。重要なのは、否決された原因を冷静に分析し、改善した上で再挑戦することです。
なぜ審査に通らなかったのかを分析する
すぐに再申請しても、同じ理由で断られる可能性が高いです。まずは、なぜ審査に通らなかったのかを考えましょう。担当者から直接的な理由は教えてもらえないことが多いですが、面談時のやり取りなどを振り返り、どの点が弱かったのかを自己分析することが次の一歩につながります。
半年以上の期間を空けて再申請する
公式には定められていませんが、実務上は半年程度の期間を空けて再申請するケースが多いとされています。これは、自己資金の積み増しや事業計画の抜本的な見直しには相応の時間が必要であり、短期間での再申請は根本的な改善ができていないと見なされる可能性が高いためです。
この期間に行うべき具体的な改善アクションは以下の通りです。
- 自己資金をさらに貯める
毎月一定額をコツコツと貯金し、通帳に記録を残すことで計画性をアピールします。半年間で自己資金がどれだけ増えたかを具体的に示せるようにしましょう。 - 事業計画を練り直す
専門家である認定経営革新等支援機関などに相談し、客観的なアドバイスを受けましょう。売上予測の根拠を補強したり、経費の見積もりをより現実的なものに修正したりすることが重要です。 - 小さな実績を作る
自己資金の範囲内で小規模に事業を始め、具体的な売上実績を作りましょう。たとえ少額でも、計画通りに事業を進められることを証明できれば、次の審査で大きな強みになります。
日本政策金融公庫以外の資金調達も検討する
再挑戦の準備と並行して、他の資金調達方法も検討しましょう。
- 制度融資を検討する
お住まいの自治体・地域の金融機関・信用保証協会が連携して提供する融資制度です。日本政策金融公庫の創業融資とは審査基準が異なるため、こちらに相談してみるのも一つの方法です。 - 補助金・助成金を活用する
国や自治体が提供している、原則として返済不要の資金です。自身の事業内容に合うものがないか探してみましょう。 - クラウドファンディングを試す
インターネットを通じて不特定多数の人から少額ずつ資金を集める方法です。事業の将来性や熱意をアピールできれば、資金とファンを同時に獲得できる可能性があります。
日本政策金融公庫の創業融資は創業者の強い味方
日本政策金融公庫の創業融資は、「新規開業・スタートアップ支援資金」を中心に、対象者に応じた優遇措置が用意されています。
原則として無担保・無保証人で融資制度を利用でき、長期返済が可能であるなど、創業のタイミングでも借りやすい条件が揃っています。これから創業したい方や、創業間もない事業者は、本記事を参考に、ぜひ日本政策金融公庫の創業融資を検討してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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