- 作成日 : 2025年9月16日
猫カフェを開業するには?必要な資格や資金、経営者の年収などを解説
猫と触れ合いながら癒やしの空間を提供する猫カフェは、多くの猫好きにとって憧れの事業です。しかし、その夢を実現させるには、動物の命を預かるという重い責任と、事業を継続させるための経営知識が不可欠です。
この記事では、猫カフェを開くにはどんな準備や資格が必要か、自宅での開業は現実的なのか、開業資金はいくら用意すべきか、そして経営者の年収はどれくらい見込めるのか、といった疑問に答えていきます。
目次
猫カフェのビジネスモデル
猫カフェと一言でいっても、その運営形態は様々です。立地やコンセプト、社会的な役割など、多角的な視点からご自身の目指す方向性に合ったビジネスモデルを定めましょう。
店舗での開業
多くの人がイメージする、テナントを借りて運営する形態です。このビジネスモデルでは、駅前や繁華街など、集客が見込める立地選定が収益を大きく左右します。コンセプトを明確にし、他の店舗との差別化を図ることも重要です。例えば、特定の猫種に特化する、内装デザインにこだわる、写真撮影に特化した空間を作るといった工夫が考えられます。
自宅での開業
猫カフェを自宅で開業するには、多くの制約があります。まず、都市計画法上の用途地域によっては、そもそも営業が許可されない場合があります。
さらに、動物の飼養スペースと居住スペースの完全な分離、十分な換気設備の設置、防音・防臭対策など、第一種動物取扱業の施設基準をクリアするための改修が必要になります。加えて、店内で飲食を提供する場合は、食品衛生法に基づく飲食店営業許可と厨房と動物エリアの完全区画が必須となります。騒音や臭いに関する近隣住民への配慮も不可欠です。
猫カフェ開業までの具体的なステップ
猫カフェ開業までの具体的なステップは、以下の通りです。
- コンセプトと事業計画の策定
どんな猫カフェにしたいか、ターゲット顧客は誰か、他店とどう差別化するかを具体的に決め、事業計画書を作成します。立地条件や猫の飼養方針も含め、将来の収益構造を明確化します。 - 資金計画と資金調達
自己資金と必要融資額を算出し、金融機関への相談や自治体の制度融資・補助金制度の情報収集を開始します。設備投資や運転資金を含め、余裕を持った資金計画を立てます。 - 資格取得と許可申請の準備
開業に必要な動物取扱責任者の要件確認を行い、必要に応じて関連資格の取得や実務経験証明を整えます。同時に、食品衛生責任者の資格取得を進め、第一種動物取扱業(展示)の登録申請や飲食店営業許可申請に向けて、所轄の窓口へ事前相談を行います。 - 物件探しと契約
都市計画法上の用途地域を確認し、営業可能な立地かどうかを確認したうえで、広さや設備が法令基準を満たす物件を探し、契約します。 - 内装工事と設備導入
猫の脱走防止設備や換気・防臭、防音工事を行い、厨房と飼養スペースの区画を明確に分けます。キャットタワーやケージなど必要な備品を揃え、衛生管理を徹底できる環境を整えます。 - 猫の迎え入れ
事業コンセプトに合った猫をブリーダーや保護団体から迎え入れ、ワクチン・健康診断・不妊去勢手術などを済ませてから新しい環境に慣らします。 - 集客活動
SNSやウェブサイトで開業準備の様子や猫たちの紹介を行い、地域の認知度を高めます。プレオープンで運営を試行し、顧客やスタッフからのフィードバックを踏まえ、グランドオープンを迎えます。
猫カフェの開業に必要な資格と許可
猫カフェの開業準備は、法的な要件をクリアすることから始まります。手続きには時間がかかるため、計画の初期段階で全体像を把握し、余裕を持って準備を進めることが大切です。
第一種動物取扱業
猫カフェの運営は、「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」に基づき、第一種動物取扱業(展示)に該当します。保護猫カフェなど譲渡を伴う場合には、「譲渡」「譲受飼養」などの登録も必要になることがあります。営業を開始するには、店舗所在地を管轄する都道府県または政令市の動物愛護センターに申請し、登録を受けなければなりません。
登録の際には、事業所ごとに常勤の動物取扱責任者を1名以上配置することが必須であり、さらに責任者は自治体が実施する年次研修の受講義務があります。
動物取扱責任者
猫カフェの資格が必要と言われるのは、この動物取扱責任者の要件を指すことがほとんどです。動物取扱責任者になるためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 実務経験
猫カフェ、ペットショップ、ブリーダーなど営利性の第一種動物取扱業の施設で、常勤職員として半年以上の実務経験があること - 学歴
獣医学、動物看護学、畜産学など、動物関連分野を教育する大学・短大・専門学校を卒業していること - 資格
自治体が認める民間資格(例:愛玩動物飼養管理士、家庭動物管理士など)を取得していること
食品衛生責任者と飲食店営業許可
店内で飲食物を提供する場合は、「食品衛生法」に基づく飲食店営業許可が必要です。許可を得るためには、各店舗に食品衛生責任者を1名配置しなければなりません。この資格は、都道府県食品衛生協会が実施する1日講習を受講することで取得できます。
なお、衛生上の観点から厨房(作業場)と動物スペースを完全に区画分離することが必須であり、動物が厨房に立ち入れない構造にする必要があります。お客様への飲食提供の安全管理とあわせて、猫たちの衛生管理も徹底することが求められます。
猫カフェの開業に必要な資金
猫カフェの開業には、多額の初期投資が必要です。物件の規模や立地、内装のこだわりによって大きく変動しますが、一般的な目安を把握し、余裕を持った資金計画を立てることが失敗を避けるための道です。
初期費用
- 物件取得費
保証金、礼金、仲介手数料など。都心部や駅近では高額になります。 - 内装工事費
脱走防止の二重扉、換気設備、キャットウォークの設置、傷や汚れに強い床材・壁材の使用など。猫のための特殊な工事が必要です。 - 猫の迎え入れ費用
ペットショップやブリーダーから迎える場合の費用。健康診断、ワクチン、不妊去勢手術など。 - 備品購入費
キャットタワー、ケージ、トイレ、食器、おもちゃ、空気清浄機、空調設備、レジ、テーブル、椅子など。
運転資金
開業直後から経営が安定するとは限りません。少なくとも半年分の運転資金を準備しておくことが、事業の安定と精神的な余裕に繋がります。
猫カフェの開業資金の調達方法
自己資金だけで全てを賄うのが理想ですが、多くの場合、融資の活用が必要になります。
- 融資
日本政策金融公庫の創業融資や、各自治体の制度融資などが利用できます。融資審査では、事業計画書の作り込みが極めて重要です。 - 助成金・補助金
保護猫カフェを運営する場合、一部の自治体や民間団体が提供する助成金や補助金を活用できる可能性があります。公募期間が限られているため、常に最新情報を確認し、早めに準備を進めましょう。
猫カフェの収入源と経営者の年収
猫カフェの経営を志す上で、経営者の年収は誰もが気になる点でしょう。収益構造を正しく理解し、安定した利益を生み出すための戦略が不可欠です。
猫カフェの主な収入源
主な収入はお客様からの入場料ですが、これだけに頼る経営は不安定になりがちです。安定した収益を確保するためには、ドリンクやスイーツなどの飲食メニュー、オリジナルグッズの販売、猫のおやつ販売といった形で、収入源の多角化を図ることが重要です。客単価を向上させる工夫が、年収アップに直結します。
猫カフェ経営者の年収の目安
猫カフェ経営者の年収は、店舗の規模や立地、経営手腕によって大きく異なりますが、多くは500万円未満、一部のケースでは1,000万円以上に達するとされています。利益を出すためには、売上から家賃、人件費、猫の医療費を含む経費を差し引く必要があります。特に猫の医療費は予測不能なため、利益率を常に意識し、無駄なコストを削減する努力が求められます。
猫カフェの開業を成功させるための戦略
安定した経営を実現し、年収を向上させるためには、リピーターの獲得が欠かせません。
明確なコンセプトと差別化
ただ猫がいるだけでは、多数の猫カフェの中に埋もれてしまいます。特定の猫種に特化した店舗、読書や勉強ができる静かな空間、アートやサブカルチャーと融合した内装など、他にはない独自のコンセプトを打ち出すことで固定ファンを作ることが重要です。地域のニーズ調査を踏まえて、自店舗ならではの強みを明確化しましょう。
猫ファーストの徹底
猫たちの健康と幸せを最優先にすることが、結果的にお店の最大の魅力となります。定期的な健康診断、ストレスに配慮した適切な頭数管理、十分な休憩時間の確保などを徹底し、その姿勢をお客様に伝えることが信頼に繋がります。
積極的な情報発信
SNSは強力な集客ツールです。猫たちの個性あふれる日常の様子や、お店のこだわり、イベント情報などを積極的に発信し、お客様とのコミュニケーションを深めましょう。
準備を徹底して理想の猫カフェを開業しましょう
猫カフェの開業は、単に動物が好きという気持ちだけでは成り立たない、専門知識と経営戦略が求められる事業です。自宅での開業や保護猫カフェといった多様なビジネスモデルも視野に入れつつ、ご自身の理想とするお店の形を具体化していくことが大切です。この記事で得た知識をもとに、お客様と猫たちの双方にとって幸せな空間を創造してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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