- 作成日 : 2025年4月24日
2社間ファクタリングとは?資金調達に利用するメリット・デメリットや流れを解説
売掛債権を早期に現金化したい場合、2社間ファクタリングの利用も選択肢です。取引先に知られることなく、最短即日で資金調達できます。
本記事では、2社間ファクタリングについて解説します。2社間ファクタリング利用のメリットやデメリット、利用の流れ、おすすめの業者の特徴も紹介しますので、資金調達の選択肢として検討してみましょう。
目次
2社間ファクタリング(2社間契約)とは
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に売却し決済日前に現金化するという資金調達方法の1つで、2社間契約と3社間契約の2種類があります。それぞれの仕組みや違いを解説します。
2社間ファクタリングの仕組み
2社間ファクタリングは、売掛債権を持つ企業や個人事業主(以下、利用者)とファクタリング会社の2社で行う契約です。売掛債権を決済日前に売却して、利用者は売掛金回収後にファクタリング会社に支払いを行います。
回収は利用者が行うため、取引先(売掛先)に知られることはありません。利用者は早期に売掛債権を現金化でき、ファクタリング会社には手数料が入ります。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違い
3社間ファクタリングとは、ファクタリングを利用することを取引先に通知し、承諾を得たうえで行うものです。売掛金の回収はファクタリング会社が行います。
2社間との主な違いは、取引先への通知が必要であることと、売掛金回収が不要であることです。また、取引先が関与することで、ファクタリング会社にとっては売掛金の回収がより確実になるため、手数料は2社間より安くなるのが一般的です。
2社間ファクタリングによる資金調達のメリット
2社間ファクタリングを利用して資金調達する主なメリットは、次の4つです。
- 最短即日で資金調達ができる
- 取引先に知られずにファクタリングを利用できる
- 個人事業主も利用できる
- 売掛金の未回収リスクを回避できる
各メリットについて、解説します。
最短即日で資金調達ができる
2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社が合意すればすぐに契約できるため、売掛債権を早期に現金化できます。「最短即日現金化」を謳うファクタリング会社もあり、急いで資金調達したい場合は助かることもあるでしょう。
売掛金の入金期日より前に現金化できるのは、当然です。取引先の承諾が必要な3社間ファクタリングや審査に一定期間を要する銀行融資などと比較しても、早期の資金調達が期待できます。
取引先に知られずにファクタリングを利用できる
2社間ファクタリングは取引先への通知が必要ないため、取引先に知られずにファクタリングを利用できます。3社間ファクタリングと異なり、利用者が単独でファクタリング会社と契約しても問題ありません。また、売掛金の回収も、通常の掛け取引と同じように利用者が行います。
ファクタリングの利用によって取引先が資金繰りの悪化を懸念して、今後の取引に支障をきたすという事態を回避できます。
個人事業主も利用できる
信用力が不十分で銀行融資の審査が難しい個人事業主でも、2社間ファクタリングなら利用できる可能性があります。取引先の信用力が高ければ、ファクタリングの審査は通りやすいためです。ファクタリング会社は、利用者よりも取引先の経営状態などによって売掛金の回収見込みを判断します。
ただし、ファクタリング会社によっては利用対象を法人に限定しているケースもあるため、事前確認が必要です。
売掛金の未回収リスクを回避できる
取引先の倒産などで売掛金が回収できなかった場合、ファクタリングの利用者はファクタリング会社に支払義務を負わないのが一般的です。手数料を支払うことによって、利用者は売掛金を早期に現金化できるとともに、売掛金の未回収リスクを避けられます。
2社間ファクタリングによる資金調達のデメリット
2社間ファクタリングの利用にはデメリットもあります。主なデメリットは次の通りです。
- 手数料が高い
- 審査が厳しい
各デメリットについて解説します。
手数料が高い
2社間ファクタリングの手数料は、3社間ファクタリングと比べて高い傾向にあります。3社間ファクタリングの手数料は売掛金の10%以内が多いのに対し、2社間ファクタリングは10%を超えることもあります。
ファクタリング会社にとっては、取引先に債権の有無を確認できなかったり、利用者が第三者に債権を二重譲渡したり、回収した売掛金を使い込んだりするリスクもあるため、手数料が高くなりがちです。
手数料が高いと手元に入るお金が少なくなる点に注意して利用を検討しましょう。たとえば、80万円の商品を仕入れて100万円で掛売すると利益は20万円ですが、ファクタリングを利用すると手数料分だけ利益は減少します。手数料が売掛金の20%ならば利益が出ません。
審査が厳しい
2社間ファクタリングは3社間ファクタリングと比べて審査が厳しく、ファクタリングを利用できないリスクもあります。ファクタリング会社にとっては、2社間ファクタリングのほうが売掛金の未回収リスクが高いためです。
取引先に債権の有無が確認できないうえ売掛金を直接回収できないため、ファクタリング会社は回収の可能性を慎重に審査することになります。
2社間ファクタリングの利用に向いているケース
2社間ファクタリングの利用に向いている主なケースは、次の2つです。
- すぐに資金調達したい場合
- 取引先にファクタリングの利用を知られたくない場合
各ケースについて解説します。
すぐに資金調達したい場合
資金調達を急ぐ場合、時間のかかる銀行融資や3社間ファクタリングよりも、2社間ファクタリングを利用するという選択肢もあります。手数料は高くなりますが、最短即日で資金調達できるケースもあります。
事業が好調でも売掛債権が急増して一時的に資金繰りが悪化したり、投資機会を逃さないために早急に資金が必要になったりした場合、2社間ファクタリングは有効です。目先の利益は減少しますが、キャッシュフローの改善や事業の拡大など経営上のメリットが期待できます。
取引先にファクタリングの利用を知られたくない場合
利用者が取引先にファクタリングの利用を知られたくない場合にも、2社間ファクタリングが役に立ちます。3社間ファクタリングと異なり、取引先への通知が不要であるためです。
取引先が利用者の経営状況に不安を感じることを避けられるとともに、取引先からファクタリング利用の承諾が得られないというリスクも回避できます。
2社間ファクタリングを利用する流れ
2社間ファクタリングを利用する場合、次の手順で手続きを行います。
- ファクタリング会社を選定する
- ファクタリングを申し込む
- ファクタリング会社が審査を行う
- ファクタリング契約を締結する
- ファクタリング会社に売掛債権を譲渡する
- 事業主が取引先から直接売掛金を回収する
- ファクタリング会社に支払いを行う
各手順について解説します。
ファクタリング会社を選定する
最初に、希望にあったプランを提供してもらえるファクタリング会社を探し、契約内容の詳細を確認したうえで決定しましょう。
インターネットやファクタリングの利用者からの情報をもとに、ファクタリング会社を探します。あとで紹介する「2社間ファクタリングにおすすめの業者の特徴」などを参考にして条件の合うファクタリング会社を選択します。
複数の会社からプランを提示してもらい、詳細を確認したうえで慎重に検討しましょう。
ファクタリングを申し込む
ファクタリング会社と契約内容が決まったら、ファクタリングを申し込みます。ファクタリング会社によって異なりますが、申込書のほか次の書類などが必要です。
ファクタリングの申込方法は窓口での手続きや電話、郵送などファクタリング会社によって異なりますが、インターネット申し込みが可能ならば手続きが簡単・迅速にできます。
ファクタリング会社が審査を行う
申込時に提出した資料などをもとに、ファクタリング会社が審査を行います。申込日の即日審査や短時間での審査をアピールするファクタリング会社があるなど、比較的短期間でファクタリングの利用可否が判明するでしょう。
ファクタリング契約を締結する
審査に通ると、次はファクタリング契約の締結です。契約書の内容をよく確認して、事前の説明と異なる点や不明点があれば必ず確認します。
たとえば、取引先から売掛金が回収できなければファクタリング会社への支払いは不要となるのが一般的ですが、十分な説明なく契約書に支払義務が記載されていないかなど、チェックが必要です。
ファクタリング会社に売掛債権を譲渡する
ファクタリング契約を締結したうえで、ファクタリング会社に売掛債権を譲渡して現金(売掛金から手数料を差し引いた金額)を受け取ります。
取引の安全性を高めるために、ファクタリング会社から「債権譲渡登記」を求められることがあります。債権譲渡が行われたことを公的に証明する登記で、ファクタリング会社は売掛債権が譲渡されたことを第三者に主張可能です。
ただし、債権譲渡登記は法人しか利用できないため、個人事業主は債権譲渡登記を不要とするプランを選択しなければなりません。
事業主が取引先から直接売掛金を回収する
売掛金の入金期日がくれば、事業主(利用者)は取引先から直接売掛金を回収します。3社間ファクタリングではファクタリング会社が売掛金を回収しますが、2社間ファクタリングでは利用者自身が責任を持って資金を回収しなければなりません。
ファクタリング会社に支払いを行う
売掛金回収後、回収したお金をファクタリング会社に支払います。取引先から売掛金が振り込まれたことに気づかず、支払いが遅延することのないように注意しましょう。支払いが遅れるとファクタリング会社からの信用が低下し、今後の利用に支障をきたす可能性もあります。
2社間ファクタリングにおすすめの業者の特徴
ファクタリング会社によって手数料や審査基準、手続きにかかる時間などはさまざまです。適正な手数料水準でスムーズにファクタリングをするために、ファクタリング会社を慎重に選択しましょう。おすすめの業者の主な特徴は、次の通りです。
- 審査や入金がスピーディー
- 審査基準や契約条件が柔軟
- オンラインでの手続きが可能
- 手数料や料金体系が明確
各特徴について解説します。
審査や入金がスピーディー
すぐに資金調達したい場合、審査や入金がスピーディーなファクタリング会社の利用がおすすめです。ファクタリング会社によって異なりますが、インターネットでの審査・手続きが可能な場合、早ければ1時間程度で審査ができることや、即日入金可能な会社もあります。
資金繰りや急ぎの投資に必要な資金は、早めに現金化して手元にあったほうが安心です。
審査基準や契約条件が柔軟
希望に沿ったプランでファクタリング契約を締結するには、審査基準や契約条件が柔軟なファクタリング会社がよいでしょう。利用者の現状や希望を理解し臨機応変に対応してもらえれば、初めてでもファクタリングを利用しやすくなります。
オンラインでの手続きが可能
手続きの手間を省くには、オンラインでの手続きが可能なファクタリング会社がおすすめです。審査や申し込み、書類の提出がインターネットでできれば、窓口に出向く手間や時間を省略できます。すべての手続きがオンラインで完結できる会社もあるため、インターネットなどで探してみましょう。
手数料や料金体系が明確
利用者の状況にかかわらず、ファクタリング利用の手数料や料金体系が明確なファクタリング会社を選択しましょう。資金調達を急いで手数料が曖昧なまま利用すると、想定していた資金調達ができずに事業に支障をきたす可能性もあります。
2社間ファクタリングを利用するときの注意点
2社間ファクタリングを利用するときは、前述のメリットとデメリットをよく理解して検討するとともに次の2点に注意しましょう。
- 利用し過ぎによる収益の低下
- 悪徳業者による損害
2社間ファクタリングを利用すると手数料がかかるため、利益は減少します。ファクタリングの利用はキャッシュフローを一時的に改善するのに役立ちますが、繰り返し利用すると手数料が収益を圧迫するリスクもあります。収益と利便性のバランスを考慮して上手に活用しましょう。
また、資金繰りに困った利用者から高額な利用料金を取ろうとする悪徳業者の存在にも注意が必要です。インターネット上の評判がよくない、強引に勧誘する、契約内容が不透明、など、不安や不審に感じる点があれば、資金調達を急ぐ場合でも避けたほうがよいでしょう。
メリット・デメリットを理解して必要なときのみ活用しよう
2社間ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらい、支払期日より前に現金化するという資金調達方法の1つです。取引先への通知と承諾を要する3社間ファクタリングと比較して、早く資金調達できる、取引先に知られずに利用できるなどのメリットがあります。
ただし、2社間ファクタリングには手数料が高いというデメリットもあります。多用すると収益を圧迫し経営に悪影響が及ぼすこともあるため、本当に必要なときだけ賢く活用しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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