- 更新日 : 2023年7月6日
エクセル経営でデータ分析を全社員に!ワークマンの成功事例から学ぶ
ビジネスサイクルが速い現代において、データ分析やデータの活用は重要性を増してきています。そこで注目されているのが、ワークマンのエクセル経営(Excel経営)です。エクセル経営とはどのようなもので、導入によりどのようなメリットがあるのか詳しく見ていきましょう。
目次
エクセル経営とは何か?
エクセル経営とは、一言で表すと、社員によるエクセルを用いたデータ分析を活用した経営です。ワークマンで採り入れられた手法で、売り上げの伸び率アップにも貢献したことから注目を集めました。
全社員にデータ活用を浸透させる経営のこと
エクセル経営は、一種のデータ経営です。データ分析専用の特殊なツールを使うのではなく、全社員が利用しやすいエクセルをデータ分析に利用し、データ活用を全社員に浸透させることで、現場のデータを経営に反映させることです。
ワークマンでのデータ教育により注目を集める
ワークマンは、作業服や防寒着、レインスーツ、セーフティーシューズなど、プロ顧客向けのアパレル製品を中心に扱っている企業です。プロ用に開発された製品は一般顧客からの人気を集めており、全国に990店舗(2023年6月時点)を展開し、成長を続けるアパレル企業として広く知られる存在になりました。そんなワークマンを支える経営手法の一つがエクセル経営です。
ワークマンのエクセル経営では、全社員が基本的なエクセルの関数を使ってデータ分析ができるようにデータ分析の研修を実施しています。
さらに、実際に店舗に配属された従業員は自らエクセルを使って分析を行い、店舗を巡回するスーパーバイザーはデータをもとに加盟店に提案を行います。「このようなデータが欲しい」という要望から、数十種類ものエクセルツールもワークマン内で作られました。
ワークマンの全社員を対象にしたデータ教育は会社の成長という結果に反映されており、注目を集めています。
エクセル経営を取り入れるメリット
エクセル経営を取り入れることで何が変わるのでしょうか。ワークマンが実践したエクセル経営のメリットを紹介します。
全社員にデータを活用した分析・運営能力が身につく
ワークマンの事例でも取り上げたように、エクセル経営では、データの利用やツールの利用に不慣れな社員もデータ分析に取り組めるようにエクセルが採用されています。
データ分析ツールなどと違い、使いやすいエクセルを選択することで、全社員がデータの分析やデータを利用した運用能力を身につけられるのが大きなメリットです。
どのようなデータが欲しいか、必要なデータを得るにはどのような分析が必要か、分析結果をどのように利用していくか、社員が自ら考えられるようにすることで、店舗運営などに必要な能力が身につけられます。
エクセルではなく、ERPを導入した方が良いのではという意見もあるかもしれませんが、ERPはデータの統合には役立つものの、データ分析には適していない場合があります。ERPとエクセルではそれぞれ役割が異なりますので、データ収集にはERPを、データ分析にはエクセルなどの分析ができるツールを利用するのがベストです。
経営の在り方にも変化を及ぼす
いったん上層部で情報を集めて判断し、下に指示を出すといったトップダウン式の会社がエクセル経営を取り入れると、意思決定のスピード向上や経営効率アップが期待できます。社員一人ひとりがデータ分析をできるようになれば、データをもとに現場で判断して行動するボトムアップ式の運用がしやすくなります。会社によっては経営の在り方が大きく変わるでしょう。
社員教育にも貢献し、社内風土も変革する
全社員がデータ分析に関わることで、社員教育に貢献するのもエクセル教育のメリットです。社員同士、データを根拠に議論や意見ができるようになります。
ワークマンでは、コミュニケーションを不得意にする社員がデータを根拠に自信を持って説明できるようになった事例もあるといいます。データを根拠に会話できるようになれば上司との関係も変わり、風通しの良い組織を形成するにも役立つでしょう。社内風土をより良い方向に導く点においてもエクセル経営は役に立つといえます。
エクセル経営を実践するには?
エクセル経営のメリットを取り上げましたが、ワークマンのように生きた経営手法にするには、社内への浸透や共有のための下地作りが必要です。エクセル経営実現のために必要な準備を3つ取り上げます。
全社員への教育・研修は必須
エクセル経営を実践するには、全社員へのデータ教育やデータ研修が必須です。小規模な会社であれば、全ての社員と経営層が参加する形での研修も可能な場合がありますが、規模が大きくなるほど階層ごとに分けて研修を実施するなどの工夫が必要になります。
また、全社員にしっかり浸透するまでには、研修のための時間やコストがかかるということも頭に入れておきましょう。
データやノウハウは失敗を含め共有する
ワークマンは、決して小さい規模の会社ではありませんが、短期間でのエクセル経営の浸透に成功しました。
その理由は、データ分析の手法を指導するだけでなく、失敗事例と成功事例のどちらも共有するようにしたためです。成功例だけでなく、失敗例も共有することで、社員一人ひとりのデータへの関心もより深まったといわれます。
経営者が自ら学び実践する
現場で働く社員にデータ分析やデータを利用した経営について考えてもらい、実践してもらうことも必要ですが、会社のトップである経営者が自らエクセル経営を学び実践することも重要です。
現場での運用が比較的うまくいったとしても、最終決定者である経営者の理解が弱いと、エクセル経営はうまく効果を発揮できません。経営者自らも、社員と同じ目線でデータについて理解し、経営に落とし込んでいく姿勢が求められます。
なお、ワークマンでは、エクセル経営により全社員が自らデータを分析できる基盤が整ったものの、複数の課題も発生しています。
高度化した分析がエクセルでは効率よく行えない問題、データ収集に労力がかかる問題、などです。そこで、ワークマンでは、因果関係が証明されている部分の分析はAIを導入したり、プログラミング言語習得の社内教育を充実させたりする取り組みも進めています。
ワークマンのように、従業員によるデータ分析が浸透したら次の段階を検討するなど、エクセル以外の手法を取り入れる柔軟性も考えておくと良いでしょう。
エクセル経営でデータ分析を活かした経営を始めませんか
ワークマンが取り入れた経営手法として注目を集めるエクセル経営は、現場でのスピード感のある意思決定が重要度を増してきた現代にマッチした手法といえます。全社員がデータ分析を理解し運用できるようになるという面も大きなメリットです。特に、社員の能動性が落ちているような会社では、エクセル経営が大きな変革を起こしてくれるのではないでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会社設立の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
会社経営でかかる主な税金は?設立までに確認しておきたい税の種類
会社経営では法人税や法人事業税など、個人事業主とは違った税金が課税されます。会社が納める税金はおよそ10種類におよび、設立時には登録免許税が必要です。 本記事では会社経営で納める税金の種類や支払うタイミングを解説し、節税の方法についてもわか…
詳しくみる経営指針とは?企業事例5つも紹介
経営理念や経営方針といった「経営指針」を定めている企業は数多くあります。会社を設立するにあたって、絶対的登記事項である「目的」とは別に経営指針を謳う理由とは何でしょうか。今回は、経営指針の読み方や、経営指針の実例を紹介しながら解説していきま…
詳しくみる持株会社と親会社の違いとは?設立の理由や方法、子会社との関係を解説
持株会社と親会社。いずれも傘下にある会社(子会社)の株を保有する会社のことを指しますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。 この記事では持株会社と親会社の違いや子会社との関係、親会社や持株会社を設立する理由についてご説明します。 持…
詳しくみる会社の成長に必要なこととは?中小企業の経営者必見!
経営者のほとんどが、自社を成長させたいと思うことでしょう。会社の成長のためには、売上や社員数を増やすことはもちろん、企業の質を向上させる必要があります。そのためには、経営目標や社員の目標・目的の設定、評価体制やオフィス環境の整備などが不可欠…
詳しくみる海外子会社のガバナンスとは?なぜ難しい?不正事例や強化する方法を解説
海外子会社のガバナンスは、海外子会社における親会社への説明責任ともいえます。海外子会社での不正を防止するためには、内部統制の強化や管理方法の検討、適切な会計ソフトの利用などが必要です。海外子会社のガバナンスが問題になる理由やガバナンスが弱い…
詳しくみる経営者になるには何をすべき?勉強方法や向いている人の共通点を解説!
「兼ねてより温めていたアイデアを形に移したい」「企業を設立して、会社員では達しないレベルの富を築きたい」など、経営者を志す理由は人それぞれ。経営者になるには、資格や難関大学の学歴は必須ではありません。ただ勉強を日常的に行い、必要な知識を持っ…
詳しくみる