- 作成日 : 2024年12月23日
遺言書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
遺言書とは、被相続人が財産に関する最終意思を伝えるための手段です。遺言は要件が厳格に定められているため、書き方を間違えると遺言書が無効になってしまう場合があります。
本記事では遺言書の書き方について、具体例を交えながら解説します。作成する際の注意点や、遺言執行者についても解説するため、遺言書を作成する際の参考にしてください。
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目次
遺言書とは
遺言書は、被相続人(故人)が相続に関する意思を伝えるための手段です。遺言書がない場合、遺産は遺産分割協議を行ったうえで分割方法を決定します。遺言書を作成した場合、相続人以外へも遺贈できます。
遺言書の種類としては「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類が一般的です。
自筆証書遺言は、被相続人が手書きで作成した遺言書です。全文を自筆したうえで、日付を記載し、署名・押印しなくてはなりません。2019年1月13日以降は、財産目録のみパソコンでも作成できるようになりました。
公正証書遺言は、証人2人が立ち会ったうえで、公証人に作成してもらう遺言書です。公証人が遺言の内容を筆記し、公証人、遺言者、証人2人が署名・押印して作成します。原本は公証役場に保管され、公証証書遺言の作成には財産額に応じた費用が必要です。
遺言書を作成するケース
事業者の場合、事業承継を目的として遺言書を作成します。事業承継とは、経営権や事業、資産を後継者に引き継ぐことです。株式や事業資産などを承継する際に、遺言書が必要になります。
遺言書を作成しておけば、会社の乗っ取りを防ぐことが可能です。先述したように、遺言書を作成しない場合は、遺産分割協議によって分割方法が決まります。この場合、会社経営に携わっていない相続人に、多数の株式が渡ってしまい、経営権を乗っ取られる可能性があるためです。
事業承継を目的とした遺言書を作成する際は、公的証書遺言で作成するとよいでしょう。多少の費用はかかるものの、公証人が作成するため検認手続の必要がなく、安全性が高いためです。
遺言書のひな形
遺言書を作成する際は、「マネーフォワード クラウド契約」が公開している遺言書のひな形を活用するとよいでしょう。弁護士が監修した遺言書のひな形(ワード形式)を、無料でダウンロードできます。ぜひ、ご活用ください。
遺言書に記載すべき内容
ここからは、ひな形をもとに、遺言書に記載すべき内容を紹介します。
まず記載しなければならないのは、相続に関する内容です。「誰に財産をどのように相続させるのか」を記載します。
始めに「遺言者 〇〇〇〇は、本遺言書により以下のように遺言する」と記載しましょう。その後「妻 〇〇〇〇に次の財産を取得させる」と記載し、相続させる財産を指定します。長男や長女に相続させる際も、基本的な書き方は同様です。
遺言書に記載していない財産の相続で揉めることがないように「上記に記載のない財産についてはすべて妻〇〇〇〇に取得させる」といった文言も記載しておきましょう。
次に、遺言執行者に誰を指定するのかを記載します。弁護士を指定する場合は「本遺言書の遺言執行者として弁護士 〇〇〇〇を指定する」と記載しましょう。
最後に、遺言書を作成した日付と氏名を記載して、捺印します。
遺言書を作成する際の注意点
遺言の要件は厳格に定められており、遺言書が正しく作成されていないと無効になってしまう可能性があります。
遺言書の作成でまず注意しなければならないのは、全文を自筆する必要がある点です。他の人が代筆したり、パソコンで作成したりした遺言書は無効になります。ただし、財産目録のみパソコンでも作成可能です。パソコンで財産目録を作成する際は、各ページに署名・押印が必要になります。
次に注意しなければならないのは、書き間違えた際の訂正方法です。遺言書を書き間違えた際は、訂正箇所に二重線を引き、押印したうえで正しい文字を記載する必要があります。また、訂正した際は、遺言書の適宜の場所に変更した場所や変更した旨を記載し、署名しなくてはなりません。
また、遺要が言書の作成日は、作成年月日を特定できるようにする必あります。例えば令和〇年〇月と記載した場合、作成日が特定できないため遺言書は無効です。
なお、遺言書の押印は実印が望ましいですが、認印でも問題ありません。
遺言執行者の依頼先
遺言執行者の依頼先は、以下の4つです。
- 弁護士
- 司法書士
- 税理士
- 信託銀行
それぞれの特徴について、詳しく解説します。
弁護士
弁護士は法律の専門家です。法的な専門知識・経験が豊富なため、遺言執行者として依頼すれば、遺言執行の手続きをスムーズに行えます。法的トラブルへの対応力が高く、訴訟対応も可能です。
また、社会的信用性が高いため、弁護士が遺言執行の手続きを行えば、他の相続人からの理解も得られやすくなるでしょう。これらをふまえると、相続で揉めるリスクがある場合や、遺言書で「相続廃除」を行いたい場合におすすめです。
司法書士
司法書士は、弁護士と同じく法律の専門家です。法的トラブルへの対応力が高いため、遺言執行の手続きをスムーズに行えます。
相続財産に不動産がある場合は、司法書士への依頼がおすすめです。相続不動産がある場合は、相続登記が義務となっています。そして、相続登記を代理でできる唯一の専門家が、司法書士だからです。
税理士
税理士は税金の専門家です。税理士を遺言執行者に依頼すれば、相続税申告をセットで依頼できます。税理士が関与した相続税申告であれば、相続人自身が申告した場合よりも、税務調査のリスクが大きく下がる点もメリットです。財産評価の専門性を活かした、最適な遺産分割方法の提案も受けられます。
また、早い段階から税理士に依頼しておけば、相続税の節税も可能です。相続税の申告が必要な場合や、適切な節税対策を知りたい場合は、税理士に依頼するとよいでしょう。
信託銀行
金融機関の一部である信託銀行では、遺言執行の相続に関する手続きを引き受ける「遺言信託」と呼ばれるサービスを取り扱っています。具体的には、信託銀行が公正証書遺言と預貯金を預かり、相続開始時に払い戻しが行われるサービスです。
ただし、相続税の手続きは信託銀行では行えません。相続税の手続きを代理するには、税理士資格が必要なためです。また、相続に関する手続きのみを引き受けている関係上、相続登記や相続廃除などの手続きには対応していません。
弁護士を遺言執行者として指定するメリット・デメリット
メリット
弁護士を遺言執行者として指定するメリットとしてまず考えられるのは、遺言執行の手続きがスムーズになる点です。遺言の内容が複雑な場合、執行手続きにも相応の負担がかかりますが、弁護士に依頼すれば煩雑な手続きから解放されます。
また、相続人間での対立・紛争が想定される場合、弁護士が公平な立場で手続きを進めることで、紛争案件に対応することが可能です。さらに、弁護士に依頼すれば子の認知をはじめとする身分法上の行為や、相続廃除を行えます。これらに対応できるのは弁護士のみです。
費用に関しても信託銀行より安くなるケースが多いため、費用面を重視する場合は信託銀行ではなく弁護士へ依頼するとよいでしょう。
デメリット
結論から言うと、弁護士を遺言執行者として指定する際に目立ったデメリットはありません。あえて挙げるのであれば、公平な立場の法律の専門家であるがゆえに、相続人が身構えてしまう可能性がある点でしょう。
また詳しくは後述しますが、弁護士個人に遺言執行者として指定した場合、遺言を執行できなくなるリスクがあります。
遺言執行者を弁護士に依頼する場合の費用
遺言執行者を弁護士に依頼する場合の費用相場は、30~100万円が目安です。多くの弁護士事務所は、報酬を「旧弁護士会報酬基準規程」をもとに定めています。この規程に従った場合の費用目安は以下の通りです。
財産の経済的な利益の額 | 報酬 |
---|---|
300万円以下 | 30万円 |
300万円を超え3,000万円以下 | 2% + 24万円 |
3,000万円を超え3億円以下 | 1% + 54万円 |
3億円超 | 0.5% + 204万円 |
こちらはあくまでも目安であり、実際の費用は弁護士事務所によって異なります。詳細な金額については、依頼前に事務所に確認するとよいでしょう。
遺言執行者を弁護士に依頼する場合、個人と法人どちらがよい?
遺言執行者を弁護士に依頼する場合は、基本的に法人への依頼がおすすめです。
弁護士個人に依頼した場合、遺言を執行できなくなるリスクがあります。例えば弁護士個人を遺言執行者に指定した場合、遺言執行のタイミングまでに事務所を退所していたり、廃業したりしているケースがあるためです。このような場合、必要な手続きを進められず、遺言を執行できなくなってしまいます。
一方、法人に依頼しておけば、その弁護士法人が存続している限りは遺言執行を行えます。
遺言が執行されないというリスクを回避するためにも、遺言執行者には弁護士法人を指定しましょう。
記載すべき内容や注意点を理解して遺言書を作成しよう
遺言書は、被相続人(故人)が相続に関する意思を伝えるための手段です。事業者の場合は事業承継を目的として遺言書を作成します。株式や事業資産などを承継する際に、遺言書が必要です。遺言書を作成しておけば、会社の乗っ取りを防ぐことができます。
遺言書を作成する際は、相続に関する内容や、遺言執行者に誰を指定するのかの記載が必要です。作成年月日を特定できるよう、作成した日付と氏名も記載しておきましょう。
遺言執行者は、弁護士や司法書士、税理士などを指定できます。依頼先ごとにそれぞれ特徴がありますが、遺言執行の手続きをスムーズに行いたい場合は弁護士への依頼がおすすめです。身分法上の行為や相続廃除に関しても、弁護士であれば対応できます。
遺言書が正しく作成されていないと無効になってしまう可能性があるため、記載すべき内容や注意点を理解したうえで作成しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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