- 作成日 : 2024年2月7日
コミュニケーションコストとは?意味や例、高い組織の問題点と削減方法
企業の生産性アップ・成長には、コミュニケーションコストの削減が大切です。コミュニケーションコストとは、情報の伝達に必要な時間・労力のことです。コミュニケーションコストが高いと、何度も同じ説明を繰り返す必要があったり、業務に関する誤解を生み出してしまったりして、生産性を下げてしまう恐れがあります。
この記事では、コミュニケーションコストの意味やコミュニケーションコストを下げる方法について、詳しく説明するので、ぜひご参考ください。
目次
コミュニケーションコストとは?
コミュニケーションコストとは、意思疎通や情報伝達にかかる時間・労力のことです。相手に伝えたいことが短時間で円滑に伝われば、コミュニケーションコストは低いと言えます。反対に、何度も説明したり言い換えたりしなければ伝わらなかった場合、高いコミュニケーションコストがかかっています。
直接的な金銭の支払いが発生していなくとも、コミュニケーションコストが高い状態は組織においてマイナスです。質問の繰り返しが起こり、関係者の作業を中断させたり工数を増やしたりするおそれがあります。
コミュニケーションコストが高い状態の例
ビジネスシーンにおけるコミュニケーションコストが高い状態とは、たとえば上司や先輩が部下・後輩に指示を出すとき、多くの時間がかかることをさします。
ベテラン社員のAさんが新入社員Bさんへ指示を出すとき、専門用語を多用した場合、コミュニケーションコストが高くなる可能性があります。新入社員のBさんが、専門用語をすべて正しく理解しているとは限らないためです。Bさんがベテラン社員のAさんに専門用語の意味を質問したり、ほかの先輩や上司へ改めて確認したりすれば、余分なコミュニケーションコストが生じます。
上記のほかにも、直接のやり取りがない場合でも、高いコミュニケーションコストがかかることがあります。離席が続いて何度電話しても相手がつかまらなかったり、メールやチャットを迅速に読んでもらえなかったりすることも、コミュニケーションコストが高い状態です。
コミュニケーションコストが高い人の特徴
コミュニケーションコストが高い人は、必ずしも新入社員など会社や業界に関する知識・経験が少ない層のみとは限りません。入社して数年経つ若手やベテランであっても、コミュニケーションコストがかかりやすいこともあります。
コミュニケーションコストが高くなる人の特徴は、以下の3つがあげられます。
情報の理解に時間がかかる
1つ目は、ほかの人よりも情報を理解するための時間がかかることです。コミュニケーションコストが低い人の場合、やり取りをするときの状況や背景を加味した上で情報を理解してくれます。一方、コミュニケーションコストが高い人の場合、「何について話しているのか」「なぜ現在の状況になっているのか」など、背景も含めて丁寧な解説が必要です。
主題のみを伝えれば良い相手と比べると、前提となる情報から順序立てて伝えなくてはならない人とのコミュニケーションは、より多くの時間や労力が生じます。
中には口頭でのやり取りが苦手な一方で文章は円滑に理解できるなど、方法次第でコミュニケーションコストの増加を防げる人もいます。
自分の役割を把握していない
2つ目の特徴は、組織内における自分の役割を把握していないことです。自分がどのような役割を担っているのか把握していない場合、上司への報告や後輩・部下への情報共有が必要以上に複雑化するおそれがあります。
たとえば営業担当者に期待されている役割は、売上を増加させることです。上司から「今日は何をしたのか」と聞かれたとき、商談の結果や受注量など、仕事の成果を報告しなくてはなりません。
しかし自分の役割を正しく把握してない人は、出社時から上司に呼ばれるまでの過程を順序立てて説明することがあります。伝達内容に余分な情報も含まれるため会話が長引き、ほかの従業員以上にコミュニケーションコストが生じます。
自分の話や無駄話をしてしまう
3つ目は、やり取りの中で自分の話や無駄話を挟んだり優先させたりすることです。相手の話を遮って自分が言いたいことのみを話す人は、円滑な意思疎通ができず、コミュニケーションコストを高めます。
無駄話をする傾向の強い人に質問すると、本人が自分の話を優先するあまり、目当ての情報を得られないおそれがあります。
たとえば車のキーがどこにあるのか質問したとき、コミュニケーションコストが低い人の答えは「分からない」「ここにある」とシンプルです。コミュニケーションコストが高い人に同じ質問をすると、「昨日はあったのに」など、自分の話を優先して明確な答えを即座に返してくれない可能性があります。問題解決までに、複数のやり取りが発生します。
コミュニケーションコストが高い組織の問題点
コミュニケーションコストが高い組織はメリットを生み出すどころか、多くのデメリットにつながります。自社のコミュニケーションコストが高いと感じるのであれば、早急な対処が必要です。ここでは、具体的にどのような影響が起こるのか、4つの問題点を紹介します。
情報共有に時間がかかる
1つ目の問題点は、意思疎通が円滑に行われず、情報共有に時間がかかることです。やり取りする度に多くの時間や労力がかかれば、他社よりも情報共有が遅れ、生産性ひいては業績にも影響を及ぼします。
また、情報共有そのものが正しく行われないリスクもあります。組織における情報共有は、朝礼など一方通行で行われることも多く、必ずしもリアルタイムで質問・確認ができるとは限りません。メンバーが多ければ、一人ひとりの理解力に応じて言い換え表現したり、正しく伝わっているか確認したりすることも困難です。
コミュニケーションコストの高い人が情報の誤りに気づかないまま業務に移れば、指示の訂正やサポートに新たな時間や労力を割く羽目になります。
業務効率が低下する
2つ目の問題点は、コミュニケーションコストが高まると、メンバーのスキルや職場環境に関係なく業務効率が低下することです。
同じチームのメンバー間のみならず、プロジェクトによっては部門をまたいだ業務連携が必要となる場合もあります。しかしコミュニケーションコストが高い状態では、迅速な情報共有が困難です。正しい内容で伝わらないおそれもあり、部門同士の連携に影響を及ぼします。
たとえばマーケティング部が商品について説得力のあるアピールをするためには、検証データや購買実績など他部門が有するデータを借りなくてはなりません。コミュニケーションコストが高い組織では、ほしいデータを取得するまでに多くの時間や労力がかかり、本来の業務に支障をきたす可能性があります。
プロジェクトのスピードが遅くなる
3つ目の問題点は、コミュニケーションコストが高くなった結果、プロジェクト全体のスピードにも影響が出ることです。
プロジェクトを進めるときは、さまざまな場面で意思決定が求められます。商品開発の例をあげると、意思決定が必要な場面は商品の仕様やリリース日を決めたり、必要な原材料の注文先や予算を相談したりするときです。迅速な意思決定が行われなければ、エンジニアは開発作業に入れず、原材料が希望納期に届かないなどのトラブルが生じます。
社内稟議を通すときも、コミュニケーションコストが高ければ説明に多くの時間や労力を割くこととなり、プロジェクトの進捗を遅れさせます。
ストレスを抱えることも
4つ目の問題点は、周囲のメンバーがストレスを抱える可能性があることです。意思疎通が困難な相手に繰り返し同じ内容を伝えることは、時間的なコストに加えて精神的な負担にもなります。
順序立てて分かるように丁寧に説明したり、誤った作業の訂正を行ったりと、本来担当する業務以外の対応に時間を割かなくてはならず、ストレスが生じます。
メンバーがストレスを抱える組織は、維持自体が困難です。業務へのモチベーションが低下して離職につながるほか、個々のパフォーマンスおよび全体の業績にも悪影響を及ぼします。
コミュニケーションコストの計算方法
組織のコミュニケーションコストを正しく把握するためには、体感ではなく客観的な数値を確認することが大切です。プロジェクトの進捗を早める目的で増員を検討する場合、コミュニケーションコストは、新たに加わるメンバー数の2乗で求められます。メンバー数を2倍に増やせばコミュニケーションコストは4倍となり、4倍のメンバー数を加えれば16倍となります。
上記の計算方法は、ブルックスの法則にもとづいたコミュニケーションコストの求め方です。ブルックスの法則は、ソフトウェア技術者が提唱した「コミュニケーションコストはチームメンバーが増えるほど増加し、プロジェクトの遅延につながる」とする考え方です。
プロジェクトに新たなメンバーを増やすときは、一人ひとりに業務を割り当て、ルールや手順、目標を説明しなくてはなりません。人数が増えた分、意思決定や情報共有のスピードも落ちます。結果的にプロジェクトの進捗を早めるどころか、かえって遅延させるおそれがあります。
組織のコミュニケーションコストを下げる方法
プロジェクトを遅延させず、スケジュール通りに進めるためには、メンバー数に左右されない円滑な情報共有を行う必要があります。まず取り組むべき課題は、組織そのもののコミュニケーションコストを下げることです。組織のコミュニケーションコストを下げる方法は、以下の4つがあげられます。
コミュニケーション手段を統一する
円滑な情報共有や意識決定ができるように、コミュニケーション手段を統一しましょう。ビジネスツールの中には、1つで複数の機能を搭載している商品もあります。複数のツールにチャット機能が搭載されている場合、あらかじめメインで使用するものを決めておかなくては、他の社員からのメッセージに気づいてもらえません。
迅速なやり取りを実現するためには、どのツールで個々の進捗を共有するのか、質問や確認作業を行うのか、メンバー間で手段を統一することが大切です。メインで使用するべき対象が決まっていれば、メンバーはどのツールでどの機能を使用すれば良いのか迷わずに済みます。
情報共有にコミュニケーションツールを活用する
情報共有を円滑化する効果的な方法が、コミュニケーションツールの活用です。コミュニケーションツールとは、Web会議システムやチャット機能などをさします。
共有される情報は、取引先との契約など重大な内容のほかにメンバー同士の質問・回答など些細な内容も含まれます。確認作業のみの場合、電話やメールで情報共有すると相手に負担をかけて、コミュニケーションコストの増加を招きかねません。
チャットなどコミュニケーションツールを活用すれば、簡潔に用件を伝えられます。メールに比べるとマナーを気にする必要がない分、チャットはやり取りの相手にとっても負担が少ない方法です。
組織の方向性、理念を浸透させる
メンバーの理解度を高めるために、組織の方向性や理念をあらかじめ浸透させる必要があります。組織の方向性や理念は社内教育の軸となり、業務上で大きな決断に迫られたときの後押しにもなる重要な指標です。
経営層がかかげる理念が浸透していれば、共有される情報や指示に対して誤った解釈をする可能性が低くなります。各メンバーに共通認識をもった上で取り組んでもらわなくては、誤った解釈によって業務内容にブレが生じます。
マニュアルを作成し仕組み化する
マニュアルの作成も、コミュニケーションコストの削減に効果的です。マニュアルを作成しておくと、新人教育、組織の方向性・理念の浸透、システムやツールの活用促進など、さまざまな場面で活用できます。
マニュアルがない状態で新しい業務を任せる場合、担当者が変わる度に作業内容を説明しなくてはなりません。同じ説明をしたり質問を受けたりすると、コミュニケーションコストを増加させる要因となります。
あらかじめマニュアル化しておくと、指示を出す側は「マニュアル通りに進めて、困ったことがあったら質問してほしい」と伝えるのみで済みます。指示を受ける側もマニュアルを読めば疑問点の多くが解消されるため、先輩や上司に何度も声をかける手間が生じません。
コミュニケーションコストが低い人になる改善ポイント
前述のコミュニケーションコストが高い人の特徴に当てはまっていても、意識や行動を変えればトラブルのリスクを軽減できます。最後に、コミュニケーションコストが低い人になるための改善ポイント3つについて、詳しく解説します。
相手の話をじっくりと聴く
円滑なコミュニケーションを実現するためには、一方的に話すのではなく、相手の話に耳を傾けることが大切です。コミュニケーションコストが高い人は、相手の話や状況を十分に確認せず、自分の話を優先する傾向にあります。
相手からの質問を遮って、早とちりや誤解をしたまま回答すれば、誤った情報を提供しかねません。伝達ミスなどのトラブルに発展させないためには、相手の話をじっくりと聴く(傾聴する)クセをつけましょう。
傾聴のコツは、まず相手の話を聞いてから、話の要点を確認したり疑問に感じた部分を質問したりすることです。重要な部分をオウム返ししつつ確認すると、誤った解釈で覚えずに済みます。
自分の役割を日ごろから理解しておく
自分が周囲から何を求められているのか、どのような役割を任されているのか、日ごろから理解しておきましょう。同じ部門部署、チームでも、一人ひとり役割は異なります。同じ営業担当者でも新規開拓を得意とする人がいれば、既存顧客との関係を深めることに長けた人もいます。
自分の役割を理解するためには、日々の業務内容や周囲との関わり方など、さまざまな視点から振り返る・自己分析することが大切です。自分が求められている役割を知れば、やり取りする相手がどのような解答を期待しているのかも推測しやすくなります。
自己分析のみでは自分の役割が分かりにくい場合、上司やチームメンバーに聞いてみることもおすすめです。
5W1Hで物事を考える
相手が自分に何を求めているのか、やり取りにどのような意図があるのか探るときは、5W1Hを軸に考えると整理できます。5W1Hとは、下記6つの英語をさす言葉です。
- When:いつ
- Where:どこで
- Who:だれが
- What:なにを
- Why:なぜ
- How:どのようにして
同じ質問内容であっても、質問者や聞かれたタイミングが異なれば、答えも異なる可能性があります。正しい回答を行うためには、質問の背景を理解することが大切です。
たとえばマニュアルの場所を聞かれたとき、「なぜ必要なのか」を確認すると、内容によってはその場で質問者の問題を解消できる可能性があります。
上記の5W1Hを軸に相手の状況や質問の意図を整理すると、誤った解釈で回答する事態を避けられます。
組織と個人の両面からコミュニケーションコストの削減を
コミュニケーションコストを下げるためには、個人と組織の両面から対策に取り組む必要があります。組織的な対策としては、コミュニケーション手段の統一やマニュアルの作成などが、一般的です。個人に注目すると、相手の話をじっくり聞く・5W1Hで物事を考える、などの対策が有用です。
この記事で紹介した、コミュニケーションコストを下げる方法を参考にして、組織・個人の両面から対策を進めていきましょう。
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