• 更新日 : 2025年3月5日

管理職の残業100時間超えは違法?管理職の残業時間・残業代について解説

管理職として月100時間以上残業する場合、法律で定義されている管理監督者なら合法ですが、管理監督者でない場合は違法です。

自身は管理監督者なのか、100時間以上の残業は当たり前なのか、気になる人もいるでしょう。

管理監督者でないにもかかわらず、残業時間に上限が設けられていないのであれば、しかるべき場所へ相談すべきです。

法律で定められた管理監督者の定義、残業時間の上限および残業代の支払いについて解説します。

管理職なら残業100時間超えでも法律違反ではない?

企業や職場内における管理職は、残業時間に上限が設けられていないと聞いた人もいるでしょう。

残業時間に上限がない場合は、たとえ100時間を超えても合法です。ただし、残業時間に上限が設けられていないのは、管理監督者に該当する場合のみです。

管理職と管理監督者の違いについて解説します。

管理監督者であれば問題ないが管理職なら問題

管理職の立場で、残業時間が100時間を超えることが違法かどうかは、自身が「管理監督者」に該当するかどうかで異なります。

管理監督者は労働基準法の労働時間規制の適用外となるため、残業時間の上限はありません。。つまり、残業時間が月に100時間を超えたとしても合法です。一方で管理監督者以外の管理職は、労働基準法の労働時間が適用されるため、月の残業時間が100時間を超えると違法にあたります。

ただし管理監督者であり、残業時間に上限が設けられていないとしても、企業は従業員の安全を確保する義務があります。

管理職と管理監督者の違いについては、以下の記事でも詳しく紹介しているため、あわせてお読みください。

管理監督者は36協定・労基法の労働時間が適用されない

管理監督者は、労働基準法における労働時間が適用されません。適用されない理由は以下のとおりです。

  • 経営者との一体的な立場にあるため
  • 労働時間や休日などの規制を超えて活動せざるを得ない権限と責任があるため
  • 労働基準法や36協定で定められている規制になじまない立場にあるため
  • 賃金において、立場にふさわしい特別な待遇を受けているため

管理監督者に労働基準法の労働時間が適用されないことは、実際に労働基準法第41条で定められています。

(労働時間等に関する規定の適用除外)

第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

引用:デジタル庁 e-gov法令検索 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)

管理職の残業時間の上限については、以下の記事でも詳しく説明しています。36協定や労働基準法にもとづいて解説していますので、あわせてお読みください。

【36協定】管理職の残業時間に上限はない?残業代や有休などの決まりを解説

管理監督者と管理職の違い

自身が労働基準法で定められている管理監督者に該当していれば、残業時間に上限は設けられません。

また自身が管理職とされていても、あくまで企業や職場が定めたことであり、労働基準法では管理監督者に該当せず残業時間の上限が適用される可能性があります。

労働基準法で定められている管理監督者と管理職の違いについて説明します。

管理監督者とは?

労働基準法で定められている管理監督者について説明します。

従業員の業務内容が、総合的に判断して下記に当てはまる場合は「管理監督者」にあたり、36協定および労働基準法の労働時間・休憩・休日の適用から外れます。

  • 経営者との一体的な立場にある
  • 労働時間や休日などの規制を超えて活動せざるを得ない権限と責任がある
  • 労働基準法や36協定で定められている規制になじまない立場にある
  • 賃金において、立場にふさわしい特別な待遇を受けている

管理職とは、あくまで企業や職場が定めた役職名に過ぎません。上記に該当しない場合は、たとえ企業や職場が管理職としていても、ほかの従業員と同様に、残業時間の上限や残業代の支払いが適用されます。

管理職とは?

管理職は、企業や組織において部下の育成や業務の運営を担当する職位を指します。一般的には課長や部長などの役職が該当し、組織の目標達成に向けて重要な役割を果たします。

一般的に管理職とみなされる役職の特徴は下記のとおりです。

  • 決裁権をもつ
  • 部下の育成に携わっている
  • 主体的に業務の割り振りを行っている
  • 業務において責任のある立場にある

管理職の役割や定義、ほかの従業員とは異なる点について、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。

管理監督者における残業時間・残業代の決まり

管理監督者は、一般の従業員とは立場や業務内容が大きく異なるため、労働基準法や36協定のなかで適用から外れる箇所があります。法律で定められている、管理監督者の残業時間や残業代の決まりについて解説します。

残業時間に上限がない

管理監督者は一般の労働者とは異なる扱いを受けるため、労働基準法上の労働時間の上限規制が適用されません。そのため、管理監督者が時間外労働を行う場合でも、法的な上限が存在せず、残業時間が100時間を超えても合法とみなされます。

しかし法的に問題がなくとも、企業や職場は、従業員の過労死ラインや健康に関するリスクなどを考慮する必要があります。労働時間が長くなることで健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、企業や職場は適切な労働環境を整えることが大切です。

残業代は支払われない

労働基準法で定められた管理監督者に該当する場合は、残業代の支払いが発生しません。

ただし、すべての管理職が自動的に管理監督者に該当するわけではなく、厳格な要件を満たしてはじめて管理監督者として認められます。

たとえ企業や職場が管理職としていても、実質的には管理の権限や業務内容が責任に見合わない場合、残業代が支払われるべきです。

昨今では、業務内容や賃金が一般の従業員と同様にもかかわらず、管理職だからと残業代の未払いが発生している「名ばかりの管理職」が問題となっています。

管理職における残業時間・残業代の決まり

管理監督者に該当しない、あくまで企業や職場が定めている管理職における、残業時間や残業代の決まりについて解説します。管理監督者に該当しない場合は、労働基準法や36協定で定められている、残業時間や残業代の支払いに関する決まりが適用されます。

残業時間の上限がある

管理監督者に該当しない場合は、企業や職場から管理職とされていても、通常の従業員と同じ残業時間の上限が適用されます。通常の従業員と同じ残業時間の上限は、以下のとおりです。

  • 36協定を締結していない場合は残業ができず、労働時間は1日8時間および週40時間まで
  • 36協定を締結している場合は、月45時間・年間で360時間が上限
  • 特別条項を利用する場合でも年間の時間外労働の上限は720時間までと定められており、適用できる回数は年6回まで

管理監督者でない場合は、たとえ36協定を締結していたとしても、月100時間を超える残業は違法にあたります。

残業代が支払われる

管理監督者に該当しない場合は、企業や職場から管理職とされていても、通常の従業員と同じ残業代の支払いが発生します。

具体的には、法定労働時間(1日8時間および週40時間)を超えて働いた場合に、残業代の支払いが発生するため注意が必要です。残業代は通常の賃金に対して25%以上の割増賃金が適用され、月の残業時間が60時間を超える場合は、割増率が50%以上に引き上げられます。

さらに、労働基準法における連勤に関する決まりも適用されます。労働基準法で定められている連勤や上限に関する決まりを以下の記事で解説しているため、あわせてお読みください。

名ばかり管理職とは?

管理職は労働基準法の残業時間の上限や残業代の支払いが適用されない決まりを悪用した、名ばかり管理職の扱いが問題となっています。

名ばかり管理職とは、名目上は管理職という肩書きを持ちながら、実際には管理職としての権限や責任を持っていない従業員を指します。

管理職ならば残業時間に上限がなく残業代も支払わなくてよいことを利用し、従業員に対して適切な労働環境を提供していない企業や職場が存在するのです。

管理監督者でないにもかかわらず、残業時間の上限がなく、本来であれば支払われるはずの残業代が未払いの場合は違法です。

残業時間の上限違反をした企業・職場への罰則

残業時間の上限や、残業代の支払いに関する決まりに違反した企業や職場には、罰則が設けられています。

具体的には、労働基準法にもとづき6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。また違反が認められた場合、企業名が公表される場合があるため注意が必要です。労働基準法に違反したとして公表されると、企業としての信頼性やブランドイメージが著しく低下するでしょう。

また労働基準監督署から是正勧告が出され、指示に従わない場合は、さらに厳しい対応が取られることもあります。

適切な労働環境が提供されていないとして、従業員から訴訟されるリスクもあるため、企業や職場は正しいルールの把握と遵守が必要です。

管理職(管理監督者)の労働時間の把握は義務

2019年の働き方改革関連法の施行により、労働基準法と労働安全衛生法が改正されました。

改正に伴い管理職(管理監督者)の労働時間の把握が義務化され、管理監督者に対して労働時間を記録し、管理する必要があります。

現在、管理職(管理監督者)の労働時間を記録・管理しないことに対する罰則は設けられていません。しかし、今後設けられる可能性があるため、労働時間が適切に把握できる仕組みを早めに構築する必要があります。

管理職(管理監督者)の労働時間を把握するには?

企業や職場には、管理職(管理監督者)を含めた従業員の労働時間の把握と記録が義務付けられています。今後、従業員の労働時間に関する決まりがますます厳しくなる可能性もあります。従業員の労働時間を手間なく管理する方法を見ていきましょう。

勤怠管理ツールを導入する

自社の業務や勤務体系にあった、勤怠管理ツールを導入しましょう。

昨今の勤怠管理ツールには、勤怠時間の登録だけでなく、各従業員の労働時間が一目でわかるグラフやダッシュボード機能が付いています。そのため、労働が集中している時間帯の把握や、残業時間が長い従業員の特定も可能です。

管理職を含む従業員の勤務時間を把握することで、業務内容や工程の見直しにもつながります。また、休日出勤や深夜残業が多い従業員に対して、原因を探り適切な対策を講じられます。

労働時間を全体で可視化する

労働時間の可視化は、従業員が自ら労働時間や残業時間を把握するための、非常に効果的な方法です。また、従業員だけではなくほかの従業員の労働時間や残業時間も可視化できるとなおよいです。

自分だけではなくほかの従業員の労働時間や残業時間が把握できると、一部の従業員のみ労働時間が長い場合、周囲から注目されることで配慮や問題意識につながります。

また従業員自身も周囲から注目されることで、残業時間を短縮させ定時までに業務を完了させる意識が強まるでしょう。

パソコンやサイトの使用記録を確認する

勤怠管理ツールを導入しなくても、パソコンやウェブサイトの使用記録がかんたんに閲覧できる場合は、使用記録を勤怠記録として代用できます。

業務で使用するソフトウェアやウェブサイトのログを分析すれば、作業時間や作業内容を把握できます。

たとえばひとりの従業員が、業務で使用する頻度が多い自社専用のツールからログアウトした時間が21時であったとしましょう。すると、対象の従業員が退勤した時間は21時であることがわかります。

同様に業務に直結するアプリケーションの使用時間を確認することで、管理職や従業員がどのような業務にどれくらいの時間を費やしているかを明らかにできるのです。

管理監督者ではない管理職の残業100時間超えは違法

法律で定義された管理監督者は、賃金や業務において優遇措置を受けているため、残業時間の上限や残業代が適用されません。

管理監督者でないにもかかわらず、残業時間に上限を設けず残業代が未払いなのは違法です。

職場に残業時間の改善依頼を出すか、改善されない場合は転職をおすすめします。

自身の権利と健康を守るため、法的ルールを適切に把握しましょう。


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