- 更新日 : 2026年1月29日
シェアドリーダーシップとは?意味や注目される背景と導入のポイントを解説
シェアドリーダーシップとは、メンバー全員が状況に応じて影響力を発揮する分散型のリーダーシップです。
- リーダー役割を柔軟に共有
- 自律性と機動力が向上
- 心理的安全性が前提
Q&A
Q. 上司や管理職は不要になる?
A. 不要にはならず、最終責任と方向性提示が重要です。
現代のビジネス環境は急速に変化しており、特定の一人が組織を牽引する従来のスタイルだけでは対応しきれない場面が増えています。こうした中で、メンバー一人ひとりがリーダーシップを発揮し、互いに影響を与え合う「シェアドリーダーシップ」という概念が大きな注目を集めています。組織のパフォーマンスを最大化し、イノベーションを生み出すための新たなアプローチとして、その定義や導入のメリット、実践に向けたポイントを詳しく解説します。
目次
シェアドリーダーシップとはどのような概念か?
近年、組織論の分野で話題となっているシェアドリーダーシップですが、その本質は単なる役割分担ではありません。リーダーという固定された役職者がすべてを決定するのではなく、状況や課題に応じて最も適した知識やスキルを持つメンバーがリーダーシップを発揮する状態を指します。ここでは、その定義と従来のリーダーシップとの違いについて掘り下げていきます。
『職場と学校のリーダーシップ開発』(日本労働研究雑誌 2022年5月号)
メンバー全員が影響を与え合う分散型リーダーシップ
シェアドリーダーシップとは、組織内のメンバーが相互に影響を及ぼし合い、目標達成に向けて自発的に行動するプロセスです。特定の「リーダー」と「フォロワー」が固定されにくく、状況や課題に応じて主導役が入れ替わる点が特徴です。なお、組織の正式な役職・最終責任がなくなるわけではありません。
このスタイルでは、チームの知識や能力が結集されるため、複雑な問題に対しても柔軟な解決策を見出しやすくなります。誰か一人の指示を待つのではなく、全員が当事者意識を持って判断し、行動することで、組織全体の機動力が向上します。役職や権限にかかわらず、誰もがリーダーになり得るという考え方が、この概念の根幹を成しています。
従来のトップダウン型(垂直的)リーダーシップとの違い
これまでの一般的な組織運営は、一人の強力なリーダーがトップに立ち、部下に対して指示命令を行う「垂直的リーダーシップ」が主流でした。このスタイルは、意思決定の責任所在が明確であり、統制が取りやすいという利点があります。しかし、リーダー個人の能力や判断力に組織の成果が依存してしまうという側面も否定できません。
対してシェアドリーダーシップは「水平的リーダーシップ」や「「分散型リーダーシップ」とも呼ばれ、影響力が横方向に広がります。垂直的リーダーシップが「命令と服従」や「管理と実行」という一方通行の関係であるのに対し、シェアドリーダーシップは「協働」や「相互支援」を重視します。リーダー一人の限界が組織の限界になることを防ぎ、チーム全体のポテンシャルを引き出す点が、従来型との決定的な相違点といえるでしょう。
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なぜ今、ビジネスでシェアドリーダーシップが必要とされているのか?
かつては強力なカリスマリーダーが正解を導き出すことができましたが、現在はそのような成功モデルが通用しにくい時代です。市場環境の変化や働き方の多様化に伴い、組織に求められるリーダーシップのあり方も劇的に変わりつつあります。なぜ今、シェアドリーダーシップという考え方が不可欠になっているのか、その社会的背景を紐解きます。
変化が激しい時代に迅速に判断・行動できる体制が不可欠
現代は「VUCA(ブーカ)」と呼ばれる、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性が高い時代です。技術革新のスピードは凄まじく、市場のニーズも刻一刻と変化しています。このような状況下では、一人のリーダーがすべての情報を収集し、最適解を導き出すことは極めて困難といわざるを得ません。トップの判断を待っていては、ビジネスチャンスを逃してしまう可能性すらあります。
現場の最前線にいるメンバーが、それぞれの専門知識に基づいて瞬時に判断し、行動することが競争力を左右します。シェアドリーダーシップが浸透している組織では、現場レベルでの迅速な意思決定が可能となり、変化に対する適応力が飛躍的に高まります。不確実な未来を切り拓くためには、組織の知恵を総動員する体制づくりが欠かせません。
テレワーク普及と人材の多様化により自律性の尊重が求められる
働き方改革やパンデミックの影響により、テレワークが急速に普及しました。物理的に離れた場所で働くメンバーを、従来の管理型リーダーシップで細かくコントロールすることは現実的ではありません。見えない場所でもメンバーが自律的に動き、成果を出すためには、一人ひとりがリーダーシップを発揮する文化が不可欠です。
また、人材の多様性(ダイバーシティ)が進む中で、画一的なマネジメントは機能しにくくなっています。異なる背景や価値観を持つメンバーが、それぞれの強みを活かして活躍するためには、上からの押し付けではなく、個々の自律性を尊重するアプローチが有効です。シェアドリーダーシップは、多様な人材が主体的に関わることでシナジーを生み出すための土台となります。
シェアドリーダーシップを導入するメリットとデメリットは何か?
組織にとって理想的に見えるシェアドリーダーシップですが、導入すればすべてが解決するわけではありません。どのような組織改革にも光と影が存在します。導入を検討する際は、期待できる効果だけでなく、想定されるリスクについても十分に理解しておく必要があります。ここでは、メリットとデメリットの両面から考察します。
【メリット】従業員のエンゲージメント向上とイノベーションの創出
最大のメリットは、従業員のエンゲージメントが高まる点にあります。自分の意見が採用され、チームの成果に直接貢献できる環境は、仕事に対するモチベーションを大きく向上させます。「やらされている」感覚から「自分たちがやっている」という当事者意識へと変化することで、組織への帰属意識も深まります。
さらに、多角的な視点が交錯することでイノベーションが生まれやすくなります。一人のリーダーの視点だけでは気づかなかった課題やアイデアが、メンバー間の活発な議論を通じて顕在化します。異なる専門性を持つメンバーが互いに刺激し合うことで、既存の枠にとらわれない新しい解決策やサービスが創出される可能性が高まります。
【デメリット】意思決定の遅延や責任の所在が不明確になるリスク
一方で、意思決定のプロセスが複雑になるというデメリットも懸念されます。全員がリーダーシップを発揮して意見を出し合うことは素晴らしい反面、議論が紛糾して収拾がつかなくなる恐れがあります。合意形成に時間がかかりすぎると、かえってビジネスのスピードを損なう結果を招きかねません。
また、責任の所在が曖昧になりやすい点も注意すべきです。「みんなで決めた」という意識が強すぎると、失敗した際に誰も責任を取ろうとしない「無責任の連鎖」が起こるリスクがあります。誰が最終的な決断を下し、誰が結果責任を負うのかというルール設定が不十分だと、組織運営に支障をきたすことになります。これらを防ぐための仕組みづくりも同時に進めるべきです。
組織内でシェアドリーダーシップを高めるにはどうすればよいか?
シェアドリーダーシップは、単に「今日から全員がリーダーです」と宣言するだけで実現するものではありません。メンバーが安心して発言し、主体的に行動できるような環境整備と、組織文化の醸成が不可欠です。経営層や管理職が意識的に取り組むべき、具体的な実践ポイントについて解説します。
心理的安全性の醸成による意見交換の活性化
シェアドリーダーシップを機能させるための土台となるのが「心理的安全性」です。これは、組織の中で自分の考えや気持ちを安心して発言できる状態を指します。単なる「仲が良い」雰囲気ではなく、リスクを取った発言でも安全だと信じられる環境です。
批判や否定を恐れてメンバーが沈黙してしまえば、分散型リーダーシップは決して成立しません。そのため、管理職はどんな意見でもまずは受け止める姿勢を示し、失敗を学習の機会として捉える文化を作ることが大切です。異論や反論を歓迎し、建設的な議論を推奨することで、メンバーは自信を持ってリーダーシップを発揮できるようになります。風通しの良い職場環境こそが、相互の影響力を高めるための第一歩となります。
明確なビジョンの共有と適切な権限委譲の実践
各メンバーが自律的に判断するためには、判断基準となる「共通のビジョン」や「目的」が明確でなければなりません。組織がどこへ向かっているのか、何を実現したいのかが共有されていない状態で権限だけを委譲すれば、組織はバラバラの方向に進んでしまい、混乱を招きます。
リーダーは、組織のミッションやゴールを繰り返し伝え、メンバーの中に浸透させる努力を惜しんではなりません。その上で、各メンバーの能力や適性を見極め、適切な範囲で権限を委譲します。任せることは放任することとは異なります。適切なサポートを行いながら、メンバー自身に決定させ、成功体験を積ませることが、次世代のリーダーを育てることにも繋がります。
シェアドリーダーシップは組織の未来をどう変えるか?
シェアドリーダーシップは、変化の激しい現代社会において、組織が生き残り、成長し続けるための強力なエンジンとなり得ます。一人のカリスマに依存するのではなく、メンバー全員の知恵と力を結集することで、組織はより柔軟で強靭なものへと進化します。もちろん、導入には意識改革や環境整備といった時間と労力を要しますが、それによって得られる自律的な組織文化とイノベーションの創出は、企業の持続的な競争優位性を確立する上でかけがえのない資産となるはずです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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