• 更新日 : 2026年1月14日

部下の休職は上司の責任になる?対応方法や休職を未然に防ぐ対策とは

部下が休職を申し出たとき、上司としてまず頭をよぎるのは「どう対応すべきか」「自分の責任ではないか」といった不安ではないでしょうか。しかし、不安を感じながらも、休職の申し出があった時点から、上司の適切な対応が部下の回復と組織の安定を大きく左右します。この記事では、部下の休職時に上司がとるべき具体的な対応手順、休職に至る背景、責任の考え方、そして人事評価への影響までをわかりやすく解説します。

部下の休職は上司の責任?

部下の休職を知ったとき、「自分のマネジメントが悪かったのではないか」「自分のせいで部下を追い詰めてしまった」とショックを受け、自責の念にかられる上司は少なくありません。この「自分のせいで部下が休職」という感情と、実際の責任範囲について整理します。

法的・倫理的な上司の責任の範囲

部下の休職が、上司のパワーハラスメントや過重な業務指示など、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)や労働安全衛生法に反する行為によって生じたと判断された場合、会社は労働契約法第5条に定められた安全配慮義務に違反したとして、債務不履行や不法行為などの責任を問われ、状況によっては上司個人が懲戒や損害賠償の対象となる可能性もあります。

ただし、休職は多くの場合、複数の要因が絡み合って起こるため、必ずしも上司だけの責任とは限りません。重要なのは、上司として職場環境を整備し、リスクを最小限にするために何をすべきかを明確にすることです。

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部下の休職で人事評価はどうなる?

部下が休職した場合、人事評価がどうなるのかは、管理職にとって大きな懸念材料の一つです。人事評価における休職の影響は、会社の方針や評価制度によって異なりますが、一般的な傾向を解説します。

評価の項目におけるマイナス面も考慮する

休職者が発生した場合、マネジメントの観点から評価に影響することがあります。

一方で、休職者への早期の気づき、適切な対応、人事との連携、復職支援、再発防止策の立案など、管理職として取るべき行動が体系的に行われている場合は、危機対応能力としてプラス評価につながることもあります。評価者は「問題の有無」だけでなく、「問題発生時にどう向き合ったか」を重視する点を意識しておきましょう。

休職者への対応や予防策がプラスに働くことも

一方で、危機管理能力や事後の対応が評価されることもあります。休職者が発生した後の対応の適切さは、評価にプラスに働く可能性があります。具体的には、早期の気づきと対応、休職中の適切な連絡と配慮、休職後の業務の引き継ぎとチームへのフォロー、そして再発防止に向けた具体的な環境改善策の提案と実行です。これらが評価されることで、単に「休職者を出した」という事実だけでなく、「危機を乗り越え、改善につなげた」というマネジメント能力を示すことができるでしょう。

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「自分のせい」?ショックから立ち直るための視点

上司がショックを受けている状態では、他の部下やチームのサポートもおろそかになりかねません。精神的な負担を軽減するために、以下の視点を持ちましょう。

責任の範囲を区別する

上司が強いショックを受けるのは自然なことですが、休職は多くが業務要因・個人要因・家庭要因などの複合的な理由で起こり、上司がすべてをコントロールすることはできません。

「上司=原因」と単純に結びつけず、職場環境の改善や再発防止に向けてどの部分が自分の役割なのかを切り分けて考えることで、過度な自責から距離を置き、次のアクションに集中できるようになります。

専門家の力を借りる

自責の念が強い場合は、社内の産業医や保健師、外部のEAP(従業員支援プログラム)などに相談しましょう。第三者の視点が入ることで、客観的に状況をふまえることができるでしょう。

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部下が休職するとき上司が対応すべき流れ

部下が休職を申し出た際に、上司が混乱することなく取るべき行動をあらかじめ把握しておくことが重要です。休職の意向を把握してから、組織として承認・手続きを進めるまでの流れを理解しておきましょう。

部下から休職の相談を受けた、もしくは専門医から休職の診断書が提出されたら、上司は以下のステップで対応を進めます。

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1. 傾聴と状況把握

部下の話に耳を傾け、体調や現在の状況、休職したい理由や背景を把握します。この際、部下を責めたり、無理に理由を深掘りしたりせず、安全な場所で落ち着いて話せる環境を用意することが重要です。「休職したいと言えない」「どう伝えたらいいか」と悩む部下もいるため、申し出があったこと自体を肯定的に受け止めましょう。

2. 診断書の確認と会社の制度の説明

休職には原則として医師の診断書が必要です。会社の人事・労務部門と連携し、診断書の提出を促します。また、会社の休職制度について、期間、給与・社会保険の扱い、復職の手続きなど、正確に部下に説明します。口頭だけでなく、文書で渡すとわかりやすいでしょう。

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3. 業務の引き継ぎと承認

休職に入る前に、業務の引き継ぎを確実に行うための計画を立てます。部下の状態を最優先し、無理のない範囲で進めることが肝心です。引き継ぎ計画が整い、必要な手続きが完了したら、人事・労務部門と連携して正式に休職を承認します。

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休職中の部下への適切な連絡方法は?

休職中の部下への連絡は、原則として会社からの連絡を最小限にとどめることが適切です。これは、休養に専念させ、回復を促すことが第一だからです。

連絡の目的と範囲を定める

連絡は「休職制度上、やむを得ず必要な連絡」のみに限定することが基本です。たとえば、給与や保険関係の書類確認などが必要な場合に限ります。業務に関する連絡は避けるべきです。

連絡の頻度と方法

連絡が必要な場合は、人事・労務部門が窓口となるのが理想的ですが、上司が連絡する場合は、事前に「体調が安定しているとき」「月1回程度」など、部下の意向をふまえて頻度や方法を決めておきましょう。

メール連絡の例文

もしメールで連絡をとる必要がある場合は、業務の確認ではなく、体調を気遣う簡潔な内容にします。

(例)「○○さん、お変わりありませんか。人事からお伝えすべき書類があり、メールいたしました。体調が優れないときは無理せず、ご自身のペースでご確認ください。必要な返信も、ご無理のないときで構いません。○○さんの一日も早い回復を心から願っています。」

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部下が休職に至る理由は?

部下が休職に至る原因は一つではありませんが、多くの場合、以下の4つの要因が複雑に絡み合っています。「適応障害 」や「うつ病」など、病名がついた場合も、その根本原因を上司として理解しておくことは予防につながります。

業務内容・業務量の問題

過度な長時間労働、残業の常態化、自分の能力や経験を超えた難易度の高い業務、または単調でやりがいのない業務の継続などが原因となります。

特に、急に大きなプロジェクトを任されたり、業務量が大幅に増えて部下が急 に 休職した背景には、この業務負荷の問題があることが多いでしょう。上司の視点としては、部下の業務量を客観的に把握し、適切な量の業務に調整することが重要です。また、業務の目的や意義を伝え、やりがいをもって取り組めるようサポートしましょう。

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職場内の人間関係の問題

上司や同僚とのコミュニケーション不足、衝突、孤立感などが、精神的なストレスの大きな要因となります。

相談できる相手がいないと感じることも、状況を悪化させます。上司の視点では、チーム内の心理的安全性を高めるための配慮が欠かせません。部下が抱え込まずに相談できる雰囲気作りや、日頃から良好なコミュニケーションを心がけることが大切です。

ハラスメントの可能性

パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、カスタマーハラスメントなど、さまざまなハラスメントによって心身が追い詰められ、休職に至ることがあります。

上司の視点として、ハラスメントの兆候を見逃さないよう、日頃から部下の言動や表情に注意を払うことが求められます。ハラスメントが疑われる場合は、迅速かつ公正に事実確認を行い、人事・労務部門と連携して対応しましょう。

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個人の特性や家庭の事情

もともとの性格(真面目すぎる、完璧主義など)、介護や育児、病気の治療といったプライベートな事情がストレスとなり、業務への集中を妨げ、心身の不調につながることがあります。

上司の視点では、仕事以外の個人的な事情に深く踏み込む必要はありませんが、個人の特性や事情に合った配慮(時短勤務、リモートワークなど)ができないかを検討し、柔軟に対応する姿勢が大切です。

部下の休職を防ぐ方法

部下を休職させないためには、日々のマネジメントの中で、部下のメンタルヘルスを意識した予防的措置をとることが最も効果的です。管理職として、以下の3つの具体的なアクションでチームの健康を守りましょう。

上司のNG行動を理解し、心理的安全性を高める

心理的安全性とは、「チームの中で自分の考えや気持ちを、誰に対しても安心して発言できる状態」を指します。これを高める具体的な策として、ミスや失敗を責めず、「なぜ起こったのか」をチームで一緒に分析・改善する文化を作ることが挙げられます。

休職が疑われる部下に対し、以下の対応は悪化要因となります。

  • 叱責・詰問・強圧的な指導
  • 相談を軽視する・変化を放置する
  • 病気や家庭事情を必要以上に深掘りする
  • 不適切な情報共有(周囲に言いふらす など)

心理的安全性を守るためには、NG行動を避け、冷静な傾聴と適切な連携を徹底しましょう。

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適切な業務量に調整する

部下が過度な負担を感じていないか、常に業務量をチェックする体制を整えましょう。タスク管理ツールなどを活用し、各部下の担当業務量と進捗状況を客観的に可視化することが有効です。

残業が続いている部下には、仕事の「優先順位の付け方」を一緒に考え、不要な業務を削減したり、他のメンバーに再配分したりといった対応をします。本人の申告だけでなく、上司の側から「業務が多くないか」「手伝えることはないか」と定期的に声をかけるようにしましょう。

メンタルヘルス対策としてのラインケアの実践

ラインケアとは、管理監督者(上司)が、職場環境の改善や部下の相談対応を通じて、部下の心の健康をサポートすることです。具体的な実践として部下の変化に気づくことを意識します。また、定期的な1on1ミーティングを、業務の進捗確認だけでなく、部下の精神的な状態を確認する場としても活用します。

産業医や保健師といった社内の専門家との連携ルートを明確にしておき、必要に応じて速やかに引き継ぐようにしましょう。

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休職前の兆候に気付く

部下が休職までに至るには、必ずといってよいほど事前のサインがあります。早期に気づければ、休職を未然に防げる可能性が高まります。

  • 勤務態度の変化:遅刻・欠勤の増加、始業時の動きが重い
  • 表情・言動の変化:笑顔が減る、会話が少ない、ミスを過度に恐れる
  • パフォーマンスの低下:判断の遅れ、ケアレスミスの増加
  • 見落としがちなサイン:「大丈夫です」を繰り返す、休暇取得を避ける

日常の小さな変化に気づくことが、休職予防の第一歩になります。

復職後のフォローと再発防止策

復職前後には、本人・人事担当者・産業医(必要に応じて)が参加する復職面談を行います。復職面談の目的は「復帰の可否を判断すること」ではなく、無理のない働き方を一緒に設計することです。

復職面談のポイント

復職にあたっては、本人と人事担当者、そして必要に応じて産業医が加わった復職面談を実施します。この面談では、現在の体調や働ける時間帯、業務量など、復帰後の働き方を慎重に確認します。また、主治医の意見を踏まえながら、以前の不調につながった要因がどこにあったのかを整理し、職場としてどのような配慮が必要なのかを明確にします。面談の目的は、本人に無理をさせない範囲で、安心して復帰できる環境を整えることにあります。

段階的な業務復帰の設定

復職直後から以前と同じ働き方に戻そうとすると、心身に大きな負担がかかり、再発リスクが高まります。そのため、復帰後は負担の軽い業務から始め、徐々に任せる範囲を広げていく段階的な復帰が望ましいとされています。

勤務時間を短めに設定したり、余裕を持ったスケジュールにすることで、本人のペースを尊重した働き方が可能になります。真面目な性格の人ほど「早く取り戻そう」と無理をしがちなので、上司が適宜声をかけながら進捗を確認し、無理をしないためのブレーキ役になることが重要です。

負担の大きい業務や配置の見直し

以前の業務内容がそのまま復職後の負担につながることも少なくありません。復帰に合わせて業務の棚卸しを行い、どの業務が負担になっていたのかを見極めることが大切です。

必要に応じて業務内容を調整したり、チーム内で分担を再編したりすることで、本人が過度なストレスを抱えずに働けるようになります。また、場合によっては配置転換を検討することも、再発防止の選択肢として有効です。

継続的なフォローと再発リスクの管理

復職後の一定期間、とくに1〜3ヶ月は再発しやすい時期といわれています。そのため、定期的に1on1の時間を設け、体調や業務負荷の変化を丁寧に把握していくことが欠かせません。

本人が不調を隠してしまうこともあるため、上司が相談しやすい雰囲気をつくり、ささいな変化にも気づけるようにしておくことが大切です。状況によっては産業医や人事と早い段階で情報を共有し、必要なサポートにつなげていきます。

部下の休職には適切な対応と予防策の考案を

部下の休職は、上司にとって精神的な負担や業務的な調整が必要となり、非常に重い出来事となります。しかし、この危機的な状況において、上司が責任をふまえ、適切な対応をとることは、休職した部下だけでなく、他のチームメンバーからの信頼にもつながります。

休職の原因を探り、二度と「部下を休職させない」ための予防策を講じることで、結果としてチーム全体の生産性と健康的な職場環境を保つことができるでしょう。今回の経験を、より強固な組織を作るための機会とふまえることが大切です。

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