• 更新日 : 2026年1月14日

キャリアドリフトとは?メリット・デメリットや実践の流れ、ポイントなどを解説

キャリアドリフトとは、大まかなキャリアの方向性を決めて、偶然の出来事を受け入れながらキャリアを形成する考え方です。人材育成に取り入れることで、社員の柔軟性を向上させ、新規事業の立ち上げをはじめ、さまざまな変化に対応できるようになります。

キャリアドリフトをうまく取り入れるには、キャリアドリフトのメリット・デメリットや、実践の流れなどを事前に確認し、理解を深めておくことが大切です。

本記事では、キャリアドリフトの定義や、メリット・デメリット、実践する手順などを解説します。

キャリアドリフトとは?

キャリアドリフトとは、キャリアについて大まかな方向性のみを決めて、予期せぬ出来事を受け入れながら、柔軟にキャリアを形成する考え方です。一見、目指す方向と関連がない仕事を手伝ったり、知識を習得したりしながら、多角的にキャリアを形成します。

キャリアドリフトが注目された背景には、AIの台頭やDXの推進などで社会が目まぐるしく変化し、将来の見通しを立てにくい時代が到来したことが挙げられます。また、新型コロナウイルスの流行により、より先行き不透明な状況に陥ったことも要因のひとつです。

数年先のビジネス環境さえ見通せない現代において、長期的なキャリア計画に固執すると、目指していた仕事がなくなったときにリスクになり得ます。そのため、計画を柔軟に変更できるキャリアドリフトの重要性が高まっています。

キャリアドリフトと似た用語との違い

キャリアドリフトには、似ている用語が複数存在します。人事担当者間での認識のズレを防ぎ、円滑なコミュニケーションを図るためにも、それぞれの違いを正しく理解して使い分けることが大切です。

ここからは、キャリアドリフトと似た用語を複数取り上げ、それぞれの意味の違いを解説します。

キャリアデザインとの違い

キャリアデザインとは、仕事だけでなくプライベートも含めた人生全体を設計し、自分らしい生き方を実現することです。結婚・育児・住宅購入などのライフイベントも含めてキャリアを考える点が特徴です。

キャリアデザインは、事前にキャリアの計画を立てることを重視します。一方でキャリアドリフトは、偶然の出来事を受け入れながら柔軟に計画を変更する方法で、どのようにキャリアを形成するかで違いが見られます。

キャリアプランニングとの違い

キャリアプランニングとは、将来の目標を設定し、到達するために必要なスキルや経験を洗い出して計画を立てることです。たとえば「3年後にリーダーになり、10年後に管理職になる」のように、具体的な目標と期限を定めて、達成するためのアクションプランを考えます。

キャリアデザインと似ていますが、キャリアプランニングは現状のスキルを分析し、目標達成のための具体的な行動計画を詳細に決める点が特徴です。

キャリアドリフトは大まかな方向性のみを決める考え方であるため、将来の計画を細かく決めるかどうかで違いが見られます。

キャリアビジョンとの違い

キャリアビジョンとは「業界の第一人者になる」「社会課題を技術で解決するエンジニアになる」などのような、理想とする将来像です。キャリアデザインやキャリアプランニングを実践する際の最終目標として定めます。

キャリアビジョンが最終的な到達点を指すのに対し、キャリアドリフトは到達点に辿り着くまでの進み方を指します。

キャリアパスとの違い

キャリアパスとは、ある職務や地位に就くために、必要な業務経験やスキルを体系化したものです。企業内の昇進ルートを指す場合が多く、社員に示すことで、どのように成長すればよいかを理解してもらいやすくなります。

キャリアパスが明確な道筋を示すのに対し、キャリアドリフトはあえてルートを固定せず、変化に応じて方向性を調整する考え方です。両者には、計画をどの程度固定するかについて違いが見られます。

キャリアアンカーとの違い

キャリアアンカーとは、キャリアを選択する際に最も大切にする価値観です。以下の8つのタイプに分けられます。

タイプ概要
技術的・専門的能力志向特定分野のエキスパートであるときに満足感を覚える。
経営管理能力志向組織の統率や権限の行使に満足感を覚える。
自主性・独立性志向自分のペースで仕事を進められる環境を重視する。
保障・安全性志向安全・安定を重視したキャリア構築を目指す。
起業家的創造性志向自分のアイデアで事業を実現するため、起業を目指す。
他者・社会への貢献志向自分の利益より、社会への貢献を優先する。
チャレンジ志向難易度の高い目標に挑戦することで満足感を覚える。
ライフスタイル志向仕事とプライベートのバランスを最も重視する。

キャリアドリフトは、キャリアの方向性の考え方を指す用語であるため、キャリアアンカーとは意味合いが大きく異なります。

ただし、両者の関連性は高いといえます。キャリアドリフトにおいて予期せぬ事態に直面した際に、明確なキャリアアンカーを定めていると、大切な価値観に沿って自分らしい選択を取ることが可能です。

キャリアドリフトのメリット

ここからは、キャリアドリフトのメリットを解説します。社員がキャリアドリフトの考え方を身につけることで、どのような好影響があるのかを確認し、導入するかの判断材料にしてください。

柔軟性の高い人材に成長できる

社員がキャリアドリフトを実践することで、変化に強い柔軟な人材へと成長します。

キャリアドリフトを意識している社員は、キャリアプランを固定化させていないため、会社主導の部署異動や、新規プロジェクトへのアサインなどにも肯定的です。また、新しいツールや業務フローの導入に対する抵抗感も少なく、スムーズに適応してくれます。

企業にとっては、社員が変化を許容してくれることで、組織改編や新規事業をスムーズに進められる点が大きなメリットです。

業務へのモチベーションを維持しやすい

キャリアドリフトの考え方をもつ社員は、想定外の事態が起きても業務へのモチベーションを維持しやすくなります。

綿密なキャリアプランを立てている社員は、希望したプロジェクトの中止や予期せぬ異動があった際に、計画が狂うことでモチベーションが低下する恐れがあります。

一方で、キャリアドリフトの思考をもっていると、計画と現実でギャップが生じても「この経験も何かにつながる」という前向きな思考が可能です。その時々の経験から学びを得ようとする姿勢が生まれるため、意欲的に業務へ取り組んでくれます。

企業にとっては、社員のモチベーションを管理しやすくなることで、組織全体の生産性の安定を見込みやすいというメリットがあります。

短期離職を防ぎやすい

社員にキャリアドリフトの考え方を教えることで、短期離職を防げる可能性があります。

社員が入社した直後は、本人の希望と異なる部署に配属させるケースも少なくありません。社員がキャリアプランにこだわり過ぎていると、人員配置に不満を感じ、早期退職してしまう恐れがあります。

社員にキャリアドリフトの考え方を伝えることで、希望と異なる部署に配属させても「今後のキャリアに役立つかもしれない」と前向きに捉えやすくなるでしょう。そのため、社員の短期離職を防止でき、新しい社員を採用したり、教育したりするコストを削減できます。

キャリアドリフトのデメリット

ここからは、キャリアドリフトのデメリットを解説します。キャリアドリフトによって起こり得るリスクも事前に理解したうえで、適切な体制を構築しましょう。

特定の期間における成長を可視化しにくい

キャリアドリフトを実践する場合、特定の期間の成長度を測定しにくくなる恐れがあります。

組織に属している以上、本人の希望と異なる業務を任されるケースは少なくありません。キャリアドリフトでは、将来目指すキャリアとは一見関係のない業務も前向きに受け入れて着手します。しかし、その期間は専門スキルが伸びていないように感じやすく、成長を可視化しにくいのが難点です。

具体例としては「将来は人事を志望しているが、現場理解のために営業や開発の業務に取り組む」というケースが挙げられます。この場合、現場の業務に取り組む期間は、人事の専門スキルの向上を実感しづらいため、成長を可視化しにくいといえます。

キャリアドリフトを実践中の社員に人事評価を行う際は、専門スキルの習熟度だけで判断しないようにしましょう。ポータブルスキル(コミュニケーション能力や課題発見力など、業種を問わず通用する能力)の伸びや、評価期間中の経験を将来にどう活かせるかなども加味して、多角的に評価することが大切です。

主体性を失う恐れがある

社員がキャリアドリフトを誤って解釈すると、主体性を失い、与えられた仕事に対応するだけの人材となる恐れがあります。

キャリアドリフトの本質は、将来の理想像を明確にしたうえで、偶発的に発生する業務も経験しながらキャリアを形成することです。しかし「言われた仕事をこなしていればよい」と捉えてしまうと、次第にキャリアの方向性を考えなくなる可能性があります。社員が目標を見失ったまま放置すると、数年が経過しても突出した強みが育たない恐れがあります。

社員の主体性を損なわないために、定期的に面談を行い、最終的なキャリアの目標を確認しましょう。もし主体性が薄れている場合は、目標の再確認とアクションプランの再考を促し、軌道修正させる必要があります。

社内でキャリアドリフトを実践する際の流れ

ここからは、社員にキャリアドリフトを実践させる際の流れを解説します。事前に全体像を把握し、円滑に実践できるようにしておきましょう。

1. 各社員のキャリアの方向性を決める

まずは、各社員のやりたいことや理想の姿などを考えて、キャリアの方向性を決めます。

上司との1on1面談で、時間をかけてキャリアの方向性を検討します。詳細な計画を立てる必要はありませんが、社員が大切にしている価値観を明確にして、大まかなキャリアの目標を決めましょう。

キャリアの方向性が決まらない場合は、過去に夢中になった経験を振り返ったり、逆に興味のない仕事を挙げて消去法で考えたりすると効果的です。上司は社員に対して、好きなことや理想の生き方などを質問し、スムーズに方向性を決められるようにサポートしましょう。

2. 業務に取り組んでもらう

キャリアの方向性が定まったら、それを意識しながら日々の業務に取り組んでもらいます。

上司は、現在の担当業務が、本人の目指すキャリアの目的とどうつながるかを説明し、モチベーションを保てるように工夫します。ただし「営業部に在籍しているけど、本当は開発の仕事がしたい」というように、キャリアの方向性と現在の業務が異なる場合は、部署異動を検討しましょう。

業務の割り振りにおいては、希望するキャリアに沿った内容をベースにしつつ、未経験のプロジェクトや他部署との連携業務なども織り交ぜるのがポイントです。予定調和な業務だけでなく、予期せぬ経験を意図的に組み込むことで、社員の視野を広げ、新たな適性への気づきを促せます。

また、社員に自己研鑽や外部セミナーへの参加も促し、幅広い知見を積ませることも意識しましょう。

3. 定期面談で取り組み方を見直す

社員がキャリアドリフトを実践している間は、上司との定期面談を通じて、こまめに軌道修正してもらうことも大切です。

面談では、当初決めたキャリアの方向性からズレていないか、受け身思考で業務に取り組んでいないかなどをチェックします。また、さまざまな業務を経験するなかで、社員に新しい興味・価値観が生まれていないかもヒアリングしましょう。

振り返りが終わったら、今後の行動計画を考えます。「どのプロジェクトに立候補するか」「何のスキルを習得するか」など、具体的なアクションプランを考えましょう。

定期的に面談を実施することで、社員の主体性を維持し、効果的なキャリアドリフトをサポートできます。

社内でキャリアドリフトを実践する際のポイント

最後に、社員がキャリアドリフトを実践する際のポイントを解説します。組織全体として、キャリアドリフトを実践しやすい環境を構築できるよう、ぜひ確認しておきましょう。

ジョブローテーションを取り入れる

ジョブローテーションとは、社員の能力開発を目的に、定期的に職務や部署を異動させる制度です。営業・企画・人事など、さまざまな職種を経験させることで、社員の視野を広げ、新たな適性に気づくきっかけになります。また、多くの社員と関わることで、キャリアを見つめ直す出会いが生まれる可能性もあります。

社内でキャリアドリフトを実践するなら、ジョブローテーション制度も導入し、新入社員の段階から幅広い業務を経験できる仕組みを作ると効果的です。

新規事業の公募制度を設ける

社員がキャリアドリフトを実践する際は、社内公募制度を活用し、新規事業に挑戦できる機会を多数設けることも大切です。

新規事業は既存事業に比べて不確実性が高く、予期せぬトラブルに対して臨機応変な対応が求められます。マニュアルがないなかで試行錯誤を繰り返す経験を積ませることで、社員の対応力を高められるでしょう。未経験の業務に取り組む場面も多く、キャリアドリフトにおいてよい経験になるといえます。

新規事業への挑戦を促す際は、失敗を許容する風土を作ることが大切です。「失敗を恐れなくていい」「結果だけでなく、挑戦したプロセスも評価する」などの方針を明確にし、社員が安心して挑戦できる雰囲気づくりに努めましょう。

社員の副業を認める

キャリアドリフトの一環として、普段の業務と異なる経験を積むために、社員の副業を認めることも有効です。副業を認めると、たとえば以下のような形で、社員が新たなスキルを伸ばすきっかけを作れます。

  • 営業職の社員がWebライティングに挑戦し、相手に伝わる文章力を磨く
  • 開発部署の社員がイベントスタッフの仕事を行い、コミュニケーション力を養う
  • 若手社員がコーチングの副業に挑戦し、早くから人材育成に通じる「教える力」を身につける

社員が副業を経験することで、自身の意外な適性に気づき、新たなキャリアを模索するきっかけになり得ます。

また、副業で得たスキルを本業で活かしてもらうと、一人の社員が複数の分野で活躍できるため、自社の生産性の向上も実現可能です。

ただし、副業による長時間労働で社員が体調を崩すと、かえって本業のパフォーマンスが低下する恐れがあります。あくまで自社の業務が本業であることを意識させ、自己管理を徹底するように呼びかけましょう。


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