• 更新日 : 2025年6月19日

マイナ保険証に同意しないとどうなる?薬剤情報・高額療養費への影響と注意点を解説

2024年12月以降、現行の健康保険証は新規発行が終了しています。今後は、マイナ保険証が基本となる時代へと移行します。

とはいえ、マイナ保険証を使いたくない方や同意しないとどうなるのか不安を抱えている方も少なくありません。本記事では、マイナ保険証に同意しなかった場合の影響や注意点について解説します。

マイナ保険証とは?

マイナ保険証とは、マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにする仕組みです。カード内のICチップに保険資格情報をひもづけることで、医療機関・薬局での受付や保険資格の確認がスムーズに行えます。

この仕組みを利用するには、あらかじめ登録が必要です。登録は「マイナポータル」やスマートフォン、一部の医療機関・薬局の窓口などから行えます。

参考:厚生労働省|マイナンバーカードの健康保険証利用について

以下の記事では、マイナ保険証について詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

有効期限内であれば従来の保険証も利用できる

2024年12月2日をもって、従来の健康保険証の新規発行は終了しています。ただし、それまでに発行された保険証は、発行から最大1年間、最長で2025年12月1日まで有効です。

完全に廃止されるまでは、マイナ保険証と現行の保険証を併用できます。なお、マイナンバーカードを持っていない方には、後日「資格確認書」が交付される予定です。

こうした経過措置はあるものの、今後はマイナ保険証が基本となる運用が進められており、制度の理解と準備が求められます。

マイナ保険証を利用する方法

マイナ保険証を使うには、マイナンバーカードを取得し、健康保険証として利用するための「利用登録」が必要です。登録は、下記の方法で可能です。

  • マイナポータル
  • スマートフォンアプリ
  • セブン銀行ATM
  • 一部の医療機関や薬局の窓口

登録が完了すると、顔認証付きカードリーダーが設置された医療機関や薬局で、マイナンバーカードを提示するだけで保険証として利用可能になります。

参考:厚生労働省|マイナンバーカードの健康保険証利用方法

マイナ保険証に同意しないとどうなる?制度の仕組みと対応策

マイナ保険証を利用するにあたって、「情報提供への同意」を求められる場面があります。しかし「同意しないと不利になるのでは?」と不安に感じる方もいるでしょう。

結論、基本的な機能はそのまま利用可能です。ここでは、同意の内容や仕組み、同意しない場合の影響を解説します。

マイナ保険証の「同意」は薬や健診などの個人情報の提供に関するもの

マイナ保険証の「同意」とは、医療機関や薬局が、患者の下記の情報を閲覧できるようにする手続きのことです。

  • 患者の診療履歴
  • 薬の処方履歴
  • 特定健診結果

同意があることで、医師は過去の治療内容や服薬状況を把握しやすくなり、安全かつ適切な医療を提供可能です。

情報提供の同意は一括ではなく、項目ごとに個別で選択できます。つまり、必要な範囲だけを開示し、不要な情報は非開示にする柔軟な対応ができます。

同意は任意とされている

マイナ保険証における情報提供の「同意」は、本人の意思によって自由に選べる任意の制度です。医療機関側からの強制や義務づけはありません。利用者自身が、必要と感じた項目のみ同意可能です。

また、同意しなかった場合でも、医療機関の受診を断られることはありません。

同意しなくてもマイナ保険証は使える

診療情報や薬剤情報などの提供に同意していなくても、マイナ保険証は健康保険証として利用できます。受付時の本人確認や、保険資格の確認など基本的な機能は変わらず利用可能です。

つまり、同意はあくまで「付加的なサービス機能」を使うためのもので、同意しないことでマイナ保険証が無効になることはありません。情報共有に不安がある方は、同意せずに基本機能のみ利用する選択も可能です。

同意しないと高額療養費制度の自動適用が受けられない可能性がある

高額療養費制度とは、1ヶ月の医療費が一定の自己負担限度額を超えた場合に、その超過分が払い戻される仕組みです。これまでは、あらかじめ「限度額適用認定証」を保険者から取得し、医療機関に提示する必要がありました。

しかし、マイナ保険証を使い、なおかつ診療情報等の提供に同意していれば、認定証の事前取得が不要となります。高額療養費制度が自動的に適用される仕組みです。

一方で、同意しなかった場合は自動適用の対象外となります。そのため、従来通り保険者への申請と書類提出が必要です。

高額医療費の即時軽減を希望する方は、制度の仕組みと同意の有無による違いを把握しておくことが大切です。

同意すると受けられる3つの医療メリット

マイナ保険証の利用時に情報提供へ「同意」することで、医療の質や利便性を高めるさまざまなメリットを受けられます。ここでは、患者側に大きな恩恵となるメリットを紹介します。

同意するかどうかの判断に役立ててください。

薬の重複処方を防げる

マイナ保険証で情報提供に同意すると、医師や薬剤師がほかの医療機関・薬局で処方された薬剤情報を確認できます。同じ薬を重ねて処方されるリスクや、併用してはいけない薬の組み合わせによる健康被害を未然に防げます。

とくに高齢者や慢性疾患を抱える方のように、複数の医療機関を受診するケースでは、医療の安全性を高めるうえで大きなメリットといえるでしょう。

過去の健診結果や医療データを共有できる

情報提供に同意することで、下記の情報を医療機関の間で共有できます。

  • 特定健診の結果
  • 過去の検査データ
  • 診療履歴

医師が患者の健康状態を総合的に把握したうえで診察できるため、治療の精度が高まります。特定健診情報は、40歳以上を対象に、直近5回分(最大5年分)まで閲覧可能です。

問診では伝えきれない情報も、データで補えるため、初診時の診療や転院時に役立つでしょう。

参考:厚生労働省|オンライン資格確認について(医療機関・施術所等、システムベンダ向け)

事務負担が軽減される

情報提供に同意していれば、マイナ保険証を通じて高額療養費制度の「限度額適用認定証」の事前申請が不要になります。高額な医療費が発生した場合でも、自己負担の上限額が適用されるため、窓口での一時的な高額支払いを避けられます。

さらに、申請書の記入や提出、払い戻し手続きといった事後対応も不要です。患者だけでなく、医療機関側の事務負担も大きく軽減されるでしょう。

マイナ保険証の同意で自己負担が増える?加算制度の仕組みについて

「マイナ保険証を使うと診療費が高くなる」といった声を耳にしたことがある方も、多いのではないでしょうか。その背景には、「医療情報取得加算」と呼ばれる制度の存在があります。

ここでは、加算の仕組みと今後の変更点について解説します。

医療情報取得加算とは

医療情報取得加算とは、医療機関が患者の診療情報や薬剤情報などを、取得・活用できる体制を整えている場合に、診療報酬として加算される項目です。この加算は、患者の情報を正確かつ安全に活用できる体制を評価する目的で、設けられています。

過去には、マイナ保険証を利用する患者は、加算点数が低く抑えられており、従来の健康保険証を使う患者に比べて自己負担が軽減されるケースがありました。こうした仕組みが「マイナ保険証を使うと高くなる」といった印象につながった側面があります。

令和6年12月以降は加算1点に統一され、自己負担に差はなくなる

令和6年12月以降、医療情報取得加算は「マイナ保険証の利用有無」にかかわらず、初診・再診ともに一律1点に統一されます。

マイナ保険証を使った場合でも、従来の保険証を使った場合でも、自己負担額に差は出なくなります。そのため、「マイナ保険証を使うと医療費が高くなるのでは?」という誤解は払拭される見込みです。

制度の統一によって、どの保険証を利用しても公平な診療費体系となり、安心して利用できる環境が整いつつあります。

参考:厚生労働省保険局医療課|医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて

同意の変更・撤回はできる?現時点での対応方法と注意点

マイナ保険証利用時の情報提供への同意は、制度上「任意」です。ただし、同意後の撤回や変更に関しては、公的に明示された手続きは限られています。

一般的には、医療機関の顔認証付きカードリーダーで、診療時に「不同意」選択が可能とされています。しかし、マイナポータル上であとから同意内容を切り替える機能は、公式で詳細の案内はされていません。そのため、不透明な状況となっています。

同意撤回を希望する場合は、事前に受診する医療機関や加入する保険者に問い合わせ、慎重に対応するのが望ましいでしょう。また、今後の制度変更・手続き改善の動きにも注目しておくことが大切です。

マイナ保険証を利用しない場合の対応

マイナ保険証を使わないと病院に行けなくなるのではないかと、不安に感じている方も多いかもしれません。しかし、マイナンバーカードを持っていない方や、マイナ保険証に登録していない方でも、これまで通り健康保険で医療機関を受診可能です。

そのための仕組みとして、「資格確認書」という代替手段が用意されています。ここでは、資格確認書の内容や取得方法を解説します。

参考:厚生労働省|資格確認書について(マイナ保険証を使わない場合の受診方法)

資格確認書の提示が必要

マイナンバーカードを保有していない、またはマイナ保険証の利用登録をしていない場合でも、健康保険の資格は有効です。医療機関や薬局の窓口で「資格確認書」を提示することで、保険診療を受けられます。

資格確認書とは、加入している健康保険の資格があることを証明する書類です。従来の保険証と同様に取り扱われ、自己負担割合に応じた保険適用を受けられます。

また、すでにマイナ保険証の利用登録をしている場合でも、「登録解除」の申し出によって資格確認書の交付対象となります。ただし、登録解除はマイナポータルからは行えず、別途手続きが必要です。

資格確認書の取得方法

資格確認書は、マイナ保険証を利用していない方に対し、原則として申請不要・無償で交付されます。交付元は、下記の加入している保険者から、多くの場合は郵送で自宅に届きます。

  • 市区町村の国保担当窓口
  • 協会けんぽ
  • 健康保険組合

ただし、カードを紛失している方や、高齢者・障害者など配慮が必要な事情がある方は、申請を行うことで交付される仕組みです。

また、資格確認書の様式や有効期限(最大5年)は保険者ごとに異なります。そのため、必要に応じて事前に確認しておくことが大切です。

資格確認書を取得後は、従来の保険証と同様に大切に保管しておきましょう。

以下の記事で資格確認書について解説していますので、より理解を深めたい方は参考にしてください。


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