- 更新日 : 2025年6月2日
有給管理表をエクセルで作るには?自動計算の関数や無料テンプレートを紹介
「有給管理、エクセルでできる?」そう思われたことがあるかもしれません。有給休暇の管理は、従業員の権利を守り、企業の法令遵守を徹底するために不可欠です。しかし、煩雑な管理に頭を悩ませている人事労務担当者の方も多いのではないでしょうか。この記事では、エクセルを使った有給管理の方法について、メリットから注意点、効率化のコツまでを網羅的に解説します。エクセルを使いこなし、有給管理をスムーズに行いましょう。
目次
有給管理表の作成は義務?
2019年4月に施行された働き方改革関連法によって、全ての企業において年次有給休暇管理簿の作成と保存が義務付けられました。この義務化の背景には、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、企業が年5日の年次有給休暇を取得させることが義務となったことがあります。
この義務を企業が適切に履行するためには、労働者ごとの年次有給休暇の取得状況を正確に把握し、管理する必要があります。そのために、年次有給休暇管理簿(管理表)の作成が必須となりました。
有給管理簿に記載すべき事項:
- 基準日(付与された日)
- 日数(付与日数、残日数)
- 取得時季(取得した日付)
上記の3つは必ず記載しなければなりません。また、実際の作成の際には従業員の氏名なども記載することになります。
有給管理簿の保存期間:5年間(経過措置により当面の間は3年間)
有給管理簿を作成しない罰則:
年次有給休暇管理簿の作成・保存を怠った場合の罰則規定はありません。しかし、労働基準法違反として、労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性があります。
年次有給休暇管理簿は、労働者の権利を適切に保護し、企業の法令遵守を徹底するために重要な書類です。企業は、適切な管理簿を作成・保存し、労働者の年次有給休暇の取得を適切に管理する必要があります。
有給管理をエクセルで行うメリットは?
エクセルでの有給管理は、どんな会社でも始めやすい点がメリットです。有給管理のためにシステムを導入するにはお金も時間もかかることがありますが、エクセルなら多くの会社で使われているので、すぐに始められます。また、自分の会社に合わせてカスタマイズできるので、細かい調整が必要な場合にも便利です。
コストが抑えられる
エクセルは多くの会社で使われているソフトですので、新しく導入する必要はありません。例えば、個人事業主や中小企業などにとっては、お金をかけずに有給管理を始められる良い方法です。さらに、無料のテンプレートを使えば、作成の手間も省けます。
自社のルールに合わせて管理できる
有給休暇の管理方法は会社によって異なります。例えば、時間単位で有給を取れるようにしたり、半日だけ休めるようにしたり、計画的に有給を取るようにしたりと、様々な制度があります。
エクセルであれば、自社の就業規則や休暇制度に合わせて、自由に項目を追加したり、計算式を組み込んだりできます。法律が変わったときにも、自分で計算式を修正することができます。
カスタマイズできる
エクセルは、表計算ソフトとして多くの担当者が使い慣れているため、新たな操作を覚える必要がほとんどありません。そのため、教育コストもかからず準備も簡単で、すぐに使い始められます。また、担当者が使いやすいようにレイアウトや書式を自由に設定できる点もメリットです。
エクセルでの有給管理表の作り方
ここでは、基本的な有給管理表の作成手順と、含めるべき項目について解説します。
従業員ごとにシートを作成する
有給管理表は、従業員ごとにシートを作成すると管理がしやすくなります。シートごとに従業員名や入社日などの基本情報を記載し、有給休暇の付与日数や取得日数を記録します。これにより、従業員ごとの有給休暇の残日数を一目で確認できるようになります。例えば、田中さんのシート、鈴木さんのシートといったように、個人ごとにシートを分けます。そして、各シートには、名前、入社日、付与された有給休暇の日数、取得した有給休暇の日数、残りの有給休暇の日数といった項目を含めます。
有給管理表に必要な項目を記載する
有給管理表には、基準日、取得時季、付与日数、取得日数、残日数などの項目を含めます。基準日は、有給休暇の付与日を記載し、取得時季は実際に取得した日、付与日数は、従業員に付与された有給休暇の日数を記載します。取得日数は、従業員が実際に取得した有給休暇の日数を記載し、残日数は、付与日数から取得日数を差し引いた日数を記載します。これらの項目を設けることで、従業員の有給休暇の状況を正確に把握できます。特に、残日数は、従業員が有給休暇を適切に取得するために重要な情報です。
時季指定の項目を追加する
企業には、従業員に対して年5日の年次有給休暇を確実に取得させることが義務付けられています。そのため、有給管理表には、従業員が時季指定をした日を記録する項目を追加する必要があります。時季指定とは、従業員が希望する有給休暇の取得日を会社に伝えることです。時季指定の項目を追加することで、会社は従業員の有給休暇の取得状況を把握し、適切な管理を行うことができます。例えば、「時季指定日」「取得日」「取得日数」などの項目を設け、従業員が希望する休暇日と実際に取得した休暇日を記録します。
自動計算を設定する
エクセルの関数を活用することで、有給休暇の残日数を自動的に計算できます。例えば、付与日数から取得日数を差し引く計算式を設定することで、手動で計算する手間を省けます。また、条件付き書式を利用することで、残日数が一定の日数を下回った場合に、自動的に色が変わるように設定することも可能です。これにより、残日数が少ない従業員を視覚的に把握し、有給休暇の取得を促すことができます。
エクセル有給管理表でよく利用する関数
エクセルで有給管理表を作成する際、関数を活用することで、入力作業の自動化や正確性の向上を図れます。ここでは、有給管理表でよく利用する関数とその使い方について解説します。
SUM関数:残日数を自動計算する
有給休暇の残日数を自動計算するには、「SUM関数」が便利です。SUM関数は、指定した範囲の数値を合計する関数で、付与日数から取得日数を差し引く際に使用します。例えば、付与日数がセルC2、取得日数がセルD2に入力されている場合、残日数を表示するセルE2に「=C2-D2」と入力することで、自動的に残日数が表示されます。また、複数の取得日数を合計する場合は、「=C2-SUM(D2:D10)」のように、SUM関数を組み合わせて使用します。これにより、複数の取得日数をまとめて計算し、残日数を正確に表示できます。
IF関数:条件によって表示を変える
「IF関数」は、指定した条件に応じて異なる値を表示する関数です。有給管理表では、残日数が一定の日数を下回った場合に、警告メッセージを表示する際に使用します。例えば、残日数が5日以下になったら「残日数わずか」と表示する場合、セルE2に「=IF(D2<=5,”残日数わずか”,””)」と入力します。これにより、残日数が5日以下の場合は「残日数わずか」と表示され、それ以外の場合は何も表示されません。IF関数を活用することで、有給休暇の取得を促したり、管理者が残日数を把握しやすくしたりできます。
TODAY関数、DATE関数:日付を自動で表示する
「TODAY関数」は、今日の日付を自動的に表示する関数です。有給管理表では、基準日や取得日を自動で表示する際に使用します。例えば、基準日を今日の日付にしたい場合、セルB2に「=TODAY()」と入力します。これにより、常に最新の日付が基準日として表示されます。「DATE関数」は、指定した年、月、日に対応する日付を表示する関数です。有給管理表では、入社日や付与日を自動で計算する際に使用します。例えば、入社日から6ヶ月後の日付を付与日にしたい場合、セルC2に「=DATE(YEAR(B2),MONTH(B2)+6,DAY(B2))」と入力します。これにより、入社日から6ヶ月後の日付が自動的に表示されます。
DATEDIF関数:DATEDIF関数
「DATEDIF関数」は、2つの日付の間の期間を計算する関数です。有給管理表では、勤続年数に応じて付与日数を自動で計算する際に使用します。例えば、入社日から今日までの勤続年数を計算する場合、セルF2に「=DATEDIF(B2,TODAY(),”Y”)」と入力します。これにより、勤続年数が年単位で表示されます。DATEDIF関数を活用することで、勤続年数に応じた有給休暇の付与日数を自動的に計算し、管理業務を効率化できます。
無料の有給管理テンプレート(エクセル)の紹介
テンプレートを利用すると、有給管理に必要な項目や計算式が既に設定されているため、一から作成する必要がありません。また、多くのテンプレートは、自動計算機能や条件付き書式などの便利な機能が搭載されており、効率的に有給管理を行えます。
年次有給休暇管理シート(エクセル)|厚生労働省
有給休暇管理表|Microsoft
エクセルで有給管理をする際の注意点
エクセルでの有給管理は手軽に始められる一方で、いくつかの注意点があります。適切な対策を講じることで、エクセルでの有給管理をより安全かつ効率的に行えます。
複数人での同時編集に注意する
エクセルは、複数人で同時に編集すると、データの競合や上書きが発生する可能性があります。特に、従業員数が多い企業では、複数人が同時に有給管理表を編集するケースが考えられます。そのため、ファイルの共有方法や編集権限を適切に設定し、データの整合性を保つ必要があります。例えば、ファイルの共有は閲覧専用とし、編集は特定の担当者のみに許可する、もしくは、編集する時間帯をずらすなどの対策を講じます。
情報漏洩のリスクを減らす
有給管理表には、従業員の個人情報が含まれるため、情報漏洩のリスクに注意が必要です。特に、ファイルをメールで送信したり、クラウド上に保存したりする場合は、セキュリティ対策を講じる必要があります。例えば、ファイルにパスワードを設定したり、アクセス権限を適切に設定したりすることで、情報漏洩のリスクを低減できます。
法令改正に柔軟に対応する
労働基準法は頻繁に改正されるため、常に最新の情報を把握し、有給管理表を適切に更新する必要があります。特に、有給休暇の付与日数や取得義務に関する規定は、定期的に見直される可能性があります。そのため、厚生労働省のウェブサイトなどで最新情報を確認し、必要に応じて有給管理表を修正する必要があります。
バックアップを徹底する
エクセルファイルは、誤って削除したり、破損したりする可能性があります。そのため、定期的にバックアップを作成し、万が一の場合に備える必要があります。例えば、毎日ファイルのコピーを作成し、別の場所に保存したり、クラウドストレージにバックアップしたりする方法があります。
入力ミスに気をつける
手入力による有給管理では、入力ミスが発生しやすい点が課題です。入力ミスは、従業員の有給休暇の残日数に誤りが生じる原因となります。入力規則機能を活用して、休暇の種類や日付など入力内容を制限したり、入力後のダブルチェックを徹底したりする対策が考えられます。
エクセル以外で有給管理を効率よく行うには
エクセルでの有給管理は手軽に始められる一方で、従業員数が増えたり、管理が複雑になったりすると、限界を感じることもあります。より効率的に有給管理を行いたい場合は、専用のシステムやソフトウェアの導入を検討すると良いでしょう。
クラウド型の勤怠管理システムを導入する
クラウド型の勤怠管理システムは、インターネット環境があればどこからでもアクセスでき、リアルタイムでの情報共有ができます。有給休暇の申請や承認もオンラインで完結するため、ペーパーレス化や業務効率化につながります。また、法改正にも自動で対応するため、常に最新の法令に準拠した管理が可能です。
有給管理に特化したシステムを導入する
有給管理に特化したシステムは、有給休暇の残日数管理や取得状況の把握に特化しており、より高度な管理が可能です。例えば、従業員ごとの有給休暇の付与日や取得日、残日数を自動で計算したり、有給休暇の取得状況をグラフで表示したりする機能があります。
会計ソフトと連携する
会計ソフトと連携することで、給与計算や年末調整などの業務と有給管理を連携させることができます。これにより、データの二重入力や転記ミスを防止し、業務効率化を図れます。例えば、給与計算時に有給休暇の取得日数を自動で反映させたり、年末調整時に有給休暇の取得状況を自動で集計したりすることが可能です。マネーフォワード クラウドのような会計ソフトでは、勤怠管理システムとの連携もスムーズに行え、有給管理をより効率的に行えます。
エクセル有給管理を自社に合わせて効率化しよう
この記事では、エクセルでの有給管理の方法について解説しました。エクセルは、手軽に始められる一方で、注意すべき点もあります。無料テンプレートを利用したり、関数を活用したりすることで、より効率的に管理できます。また、従業員数や管理の複雑さに応じて、専用のシステムやソフトウェアの導入を検討することも大切です。エクセルでの有給管理を自社に合わせて効率化し、従業員のワークライフバランスを向上させましょう。
有給休暇の取得、管理に役立つテンプレート
有給休暇の取得や管理をスムーズに行うには、ひな形(テンプレート)を利用するのも効果的です。自社に合わせてカスタマイズしてお使いください。
マネーフォワード クラウドでは、ひな形・テンプレートを無料でダウンロードいただけます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
48連勤は違法?労働基準法に基づき分かりやすく解説!
48連勤は、単なる「働き過ぎ」では済まされないほどの負担を労働者にもたらします。身体的な疲労と精神的なストレスが限界を超え、健康を損なうだけでなく、仕事のパフォーマンスや人生全体の質までも低下させてしまいます。 本記事では 「48連勤は違法…
詳しくみる早朝から深夜勤務は可能!時間によって割増賃金の支払いが必要
深夜勤務や早朝勤務における賃金計算は、労働者に適切な割増賃金を支払うために非常に重要です。 とくに、法定休日をまたがる勤務や深夜残業、早朝勤務の場合には、通常の勤務時間とは異なる計算方法が適用されます。 そのため、企業側は正確な計算と適切な…
詳しくみる有給休暇の前借りとは?企業の義務や対策、想定されるトラブルについて解説
有給休暇は労働者の大切な権利ですが、付与前や使い切ったのちに「前借り」を求められるケースもあります。 企業としては対応に悩むことも多いでしょう。 法律上、有給前借りに応じる義務はありませんが、認めた場合にトラブルになる可能性があります。 本…
詳しくみるみなし残業に上限はある?45時間・60時間では?目安や違法な場合を解説
みなし残業の上限は、労働基準法で明確に定められているわけではありません。しかし、36協定の上限規制に合わせて、一般的には月45時間以内に設定されています。 みなし残業とは、事前に一定時間の残業代を給与に含めて支払う制度です。みなし残業は、上…
詳しくみる有給休暇の規定を解説!付与日数など
有給休暇は、労働基準法で定められた労働者の権利です。会社は、一定の要件を満たした従業員に対して、法律の規定に従い有給休暇を付与しなければいけません。今回は、付与の条件や、有給休暇の繰り越し、リセットされるタイミングなど適切な労務管理のために…
詳しくみる振替休日とは?労働基準法上の代休との違いも解説!
振替休日とは、あらかじめ休日と決められていた日に働き、代わりに他の労働日を休日とする制度です。労働日と休日を振り替える制度であるため、休日に働いても休日労働に該当せずに割増賃金も支払われません。 一方、代休の場合は休日労働として扱われ、割増…
詳しくみる