- 更新日 : 2025年6月10日
契約社員も有給休暇を取得できる? 条件や日数、繰越の可否などを解説
契約社員も要件を満たせば、有給休暇が取得できることをご存じでしょうか。この記事では、契約社員が有給休暇を取得する際の条件や日数などを解説します。また「取得申請は何日前までにすべき?」「有給休暇は繰越できる?」などの疑問にも触れていきます。
目次
契約社員も有給休暇を取得できる
契約社員も要件を満たしていれば、有給休暇の取得が可能です。
そもそも有給休暇は、労働基準法で定められている労働者の権利です。2019年4月から、使用者には、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日間の有給休暇を確実に取得させることが義務づけられました。
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
引用:労働基準法第39条
年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者とは、雇入れの日から6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者のことです。これには契約社員やパート、アルバイトといった有期契約労働者も含まれます。
つまり契約社員でも、雇入れの日から6ヶ月継続勤務し、そのうち全労働日の8割以上出勤していれば、有給休暇を取得できるのです。
参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署|年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説
契約社員が有給休暇を取得できるのはいつから?
契約社員が有給休暇を取得できるのは、入社日から6ヶ月経過後です。ただし、その間、継続勤務していることや全労働日の8割以上出勤していることなど、いくつかの要件があります。詳しく解説していきます。
雇入れの日から6ヶ月継続勤務したとき
契約社員が有給休暇を取得できるのは、雇入れの日から6ヶ月、継続勤務したときです。
継続勤務とは、職場における在籍期間のことを指し、勤務の実態にならって判断されます。たとえば、定年退職した人を嘱託社員として直ちに再雇用した場合は、労働関係が継続しているとみなし、その職場における在籍期間に通算します。
全労働日の8割以上出勤したとき
また、契約社員が有給休暇を取得するには、全労働日の8割以上出勤している必要があります。
全労働日とは、平たくいえば休日を除いて出勤しなければならない日のことで、以下の計算式を用いて、その割合を求めます。
出勤率を計算する際は、業務上のけがや病気で休んだ期間、法律上の育児休業や介護休業を取得した期間については、出勤日数に含める必要がある点に注意しましょう。さらに、以下のような日は全労働日から除外し、計算しなければならないことにも留意してください。
- 会社都合によって休業した日
- 休日労働させた日
- 就業規則などに定められている定休日に労働させた日 など
契約社員の有給休暇の日数
契約社員の有給休暇の日数は、勤続年数によって異なります。また、所定労働日数や所定労働時間によっても異なるため、一概にはいえません。ここでは通常の場合と、週所定労働日数4日以下・週所定労働時間30時間未満の場合の付与日数について解説します。
通常の付与日数
通常、勤続年数が6ヶ月の場合は10日、1年6ヶ月の場合は11日の有給休暇が付与されます。以下の表を参考に、自分に付与される有給休暇の日数を確認しましょう。
勤続年数 | 6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
参考:厚労省|働き方・休み方改善ポータルサイト「労働者の方へ」
週所定労働日数4日以下・週所定労働時間30時間未満の付与日数
週所定労働日数4日以下・週所定労働時間30時間未満の付与日数は、変則的になるので、注意しましょう。詳しくは以下の表をチェックしてください。
週所定労働日数 | 勤続年数 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月以上 | ||
付与日数 | 4日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | |
2日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | |
1日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
参考:厚労省|働き方・休み方改善ポータルサイト「労働者の方へ」
なお、週所定労働日数とは、雇用契約書に定められている勤務しなければならない週の日数のことです。週所定労働時間とは、就業規則などに定められている休憩時間を除いた労働時間のことです。週所定労働時間は、労働基準法第32条に定められている労働時間の範囲内で、各社が自由に設定できます。
使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
引用:労働基準法第32条
さらに、1日あたりの労働時間については、8時間までと決められています。
使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
引用:労働基準法第32条②
契約社員が有給休暇を取得する際のポイント
契約社員も雇入れの日から6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤していれば、有給休暇を取得することが可能です。ただし、適切なタイミングで取得しなければ、業務に支障をきたしたり、同僚に迷惑をかけてしまったりするかもしれません。
ここからは、契約社員が有給休暇を取得する際のポイントをご紹介します。
タイミングを見極める
原則、有給休暇を取得する日は、労働者が指定できます。しかし、使用者には「事業の正常な運営を妨げる場合」に、有給休暇の取得日を変更できる権利(時季変更権)があります。つまり、いつでも自由に有給休暇を取得できるとは限らないのです。
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
引用:労働基準法第39条⑤
とくに有給休暇を取得したい日が、繁忙期と重なっているような場合は、スケジュールを調整してほしいとお願いされるかもしれません。また、繁忙期に有給休暇を取得することによって、人間関係がぎくしゃくする恐れもあります。
有給休暇は、なるべくタイミングを見極めて取得しましょう。
余裕をもって申請する
有給休暇を取得する日が決まったら、早めに申請を済ませましょう。早めに申請していれば、自分が休んでいる間の業務を、他の社員に引き継ぐ余裕があります。
反対に直前に申請すると、自分の業務を引き継ぐ時間がなく、結果として取引先などに迷惑をかけてしまうかもしれません。
こうした事態を避けるために、有給休暇の申請は、なるべく早めに済ませておきましょう。そのうえで、周りの人に有給休暇を取得する日を知らせておくことをおすすめします。
仕事を計画的に進める
有給休暇を取得する際は、仕事を計画的に進めておくことも大切です。有給休暇を取得したことによって、後々、仕事に遅れが出て困らないようにするためです。
また有給休暇を取得する当日に、自分の代わりをつとめてくれる社員に、きちんと引き継ぎをしておきましょう。さらに、あらかじめ取引先に、自分が不在の間の連絡先を共有しておくと安心です。
契約社員が有給休暇を取得できない場合の対処法
要件を満たしていて、業務に支障がないタイミングで有給休暇を申請しても、断られてしまう場合があります。そこで、契約社員が有給休暇を取得できない場合の対処法を解説します。
有給休暇を取得できない理由を確認する
はじめに、なぜ有給休暇が取得できないのか、その理由を聞いてみましょう。会社側が、契約社員も雇入れの日から6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤していれば、有給休暇の取得が可能なことを知らない可能性があるからです。
「誰も有給休暇をとっていないから」といった理由は、正当ではありません。もしそのようにいわれた場合は、有給休暇は労働者の権利であり、雇用形態を問わず認められるものであることを伝えましょう。
また、取得する日が問題ならば、スケジュールを調整し、あらためて相談してみてください。
労働基準監督署への相談を検討する
それでも有給休暇の取得が認められない場合は、労働基準監督署に相談することを検討しましょう。
労働基準監督署は、労働基準法や労働安全衛生法などにもとづく業務を行う厚生労働省の出先機関であり、全国に設置されています。
最寄りの労働基準監督署は、厚生労働省の「全国労働基準監督署の所在案内」ページから探せます。労働基準監督署へ相談する際の参考にしてみてください。
退職や転職を検討する
どうしても有給休暇が取得できない場合は、思い切って退職をしたり、転職をしたりするのもひとつの手段です。
そもそも有給休暇が取得できない会社は、一般的にいう「ブラック企業」の可能性があります。また、有給休暇が取得できないことにより、体調不良に陥る可能性も否定できません。
体調を崩してしまいそうな場合は無理をせず、よりよい条件で働ける会社へ転職しましょう。
契約社員の有給休暇についてよくある質問
インターネット上では、有給休暇について「取得申請は何日前までにすべき?」や「理由は『私用のため』でよい?」「繰越できる?」などの質問が見受けられます。そこで最後に、これらの質問に回答していきます。
有給休暇の取得申請は何日前までにするべき?
有給休暇の取得を申請する際は、自社における有給休暇の規定をチェックし、進めましょう。
有給休暇を取得するにあたって「⚫︎⚫︎日前までに申請する」といったルールは、とくに定められていません。よって、自社の就業規則などに定められている期日までに申請すればOKです。なお、法的には前日までに申請すれば良いとされています。
有給休暇取得の理由は「私用のため」でよい?
有給休暇を取得する理由は「私用のため」で構いません。
有給休暇を取得することは、労働基準法で定められている労働者の権利です。したがって、有給休暇を取得するにあたって、会社にその理由を伝える義務はありません。
しかし、どうしても理由を求められる場合は「体調不良のため」や「通院のため」「冠婚葬祭のため」など、差し支えのない範囲で伝えましょう。
契約社員の有給休暇は繰越できる?
契約社員の有給休暇は、繰り越しできます。
繰越分の有給休暇は翌年、新たに付与された有給休暇に加算されます。ただし、有給休暇には時効があるため、注意してください。労働基準法第115条に定められているとおり、有給休暇は付与された日から2年で時効になります。
この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
引用:労働基準法第115条
よって、繰越分の有給休暇を翌年中に取得しない場合は、消滅するので気をつけましょう。
契約社員の有給休暇は買取できる?
正社員か契約社員かにかかわらず、原則として、有給休暇の買取は禁止されています。
有給休暇は、労働者の心や体の疲労を回復させることを目的とし、与えられるものです。有給休暇の代わりに金銭を付与することは、その目的から外れてしまいます。
しかし以下の場合は、例外的に買取が認められます。
- 福利厚生の一環として、法律で定められているよりも多分に、有給休暇の日数を付与しているとき
- 退職時に有給休暇を使いきれないとき
- 時効により消滅した有給休暇を買い取るとき
この場合は、有給休暇の目的から外れておらず、むしろ労働者にとっての利益になると考えられるため、買取が認められるのです。
契約社員の有給休暇は退職したらどうなる?
契約社員の有給休暇は、退職したら消滅します。
会社側に、契約期間を延長してまで、残った有給休暇を消化させる義務はありません。雇用契約終了時に残っている有給休暇は消滅してしまうため、最終出社日までに計画的に消化しましょう。
法律を理解し、周囲に配慮したうえで契約社員も有給休暇を取得しよう
契約社員も要件を満たしていれば、有給休暇を取得できます。ただし有給休暇を取得する際は、タイミングを見極めたうえで、余裕をもって申請するなど、一定の配慮が必要です。この記事を参考に、法律や自社の就業規則などを正しく理解して、有給休暇を取得し、ワークライフバランスを実現させましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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