- 更新日 : 2024年12月18日
90連勤は違法である理由|労働基準法に基づき分かりやすく解説!
90連勤という極端な状況は、身体的にも精神的にも深刻な影響をもたらします。
本記事では 「90連勤は違法なのか?」 という疑問を労働基準法に基づいて分かりやすく解説します。法令遵守はもちろん、従業員の健康や働きやすさを守るためのポイントも合わせてお伝えしますので、労務管理の改善にお役立てください。
目次
90連勤は違法?
90連勤は明らかに法定休日を確保できていない状態といえます。
1.週1日の休日を確保している場合
週1日の休日を与える場合、理論上は最大で12連勤が限度と考えられます。90連勤は12日をはるかに超えているため、法定休日が確保されていないことになり、明らかに違法です。
2.4週間(28日間)で4日以上の休日を確保している場合
この制度では最大48連勤が理論上可能とされています。しかし、90連勤は48日をはるかに超えており、やはり法定休日を適切に確保できていません。この場合も違法です。
※36協定が締結されている場合には、極論連続勤務自体には上限はないものの、労働時間の限度時間があります。(もっとも、長期間の連勤は好ましくありません)
※労働基準法第41条では、管理監督者(監督・管理の立場にある者や機密業務を扱う者)には労働時間や休憩、休日に関する規定が適用されません。ただし、健康管理の観点から、一般の従業員と同じような配慮が求められます。
そもそも労働基準法での休日のルールについて
労働基準法第35条では、会社(使用者)が労働者に対して必ず与えるべき「法定休日」について定められています。会社は以下のいずれかの方法で休日を設定しなければなりません。
- 週に1日
- 4週間を通じて4日
この法定休日に対して、会社が独自に設定する休日は「法定外休日」と呼ばれ、労働基準法ではなく、労働契約や就業規則に基づいて付与されるものです。
たとえば、週2日休みがある会社の場合、そのうち1日が法定休日、残りの1日は法定外休日に該当します。
12連勤が可能な場合について
労働基準法第35条では、使用者(会社)は労働者に対して 「毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」 と定めています。このルールに従えば、厳密には 12連勤が認められるケース があります。
12連勤が発生する仕組み
例えば、1週間の区切りを「日曜から土曜」とした場合の例を見てみましょう。
- 1週目:日曜日が休日、月曜日から土曜日まで6日間働く
- 2週目:日曜日から金曜日まで6日間働き、土曜日が休日
この場合、1週目の月曜日から2週目の金曜日まで 連続12日間 の勤務が発生しますが、法定休日は週に1回確保されているため、労働基準法には違反しないことになります。
48連勤が可能な場合について
労働基準法第35条では、会社(使用者)は労働者に対して 「毎週少なくとも1回の休日」 または 「4週間を通じて4日以上の休日」 を与えることが義務付けられています。この「4週間で4日」のルールを活用すると、 最大48連勤(1カ月あたり24日間)が理論上は認められるケースがあります。
48連勤が発生する仕組み
4週間単位で休日を設定する「変形休日制」を採用している場合、連続勤務が理論上可能になります。具体的な例を見てみましょう。
- 1週目:日曜から水曜まで休み、木曜から土曜まで勤務
- 2週目~7週目:毎日勤務(42日間連続勤務)
- 8週目:日曜から火曜まで勤務、水曜から土曜まで休み
この場合、 1週目の木曜日から8週目の火曜日まで 連続 48日間 の勤務が発生しますが、 4週間ごとに4日間の休日が確保されているため違法ではありません。
違法な連勤が引き起こすリスク
違法な連勤を避けるためには、 法定休日の確保 と 労働者の健康配慮 が重要です。36協定を遵守し、過度な連勤が発生しないよう適切な労務管理を行うことで、従業員の健康と企業の信頼を守りましょう。
安全配慮義務について
労働契約法第5条では、使用者に 「安全配慮義務」 が課されています。これは労働者の健康や安全を守るための配慮義務です。
- 健康を害するほどの連勤:
過度な連勤が続くことで、労働者が心身に不調をきたした場合、安全配慮義務違反に該当します。
違反した場合のリスクとして、使用者には 損害賠償責任 が発生する可能性があり、企業の信頼を大きく損なうことになります。
労働安全衛生法違反となるケースも
労働安全衛生法では、使用者は職場環境を整え、労働者の健康や安全を確保することが義務付けられています。
- 過度な連勤で健康被害が発生:
長時間の連勤が原因で労働者が過労死やメンタルヘルスの不調に陥った場合、違反と判断される可能性があります。
違反した場合のリスクとして、労働基準監督署からの指導が入り、労働環境の改善を求められることになります。
従業員の健康被害・チベーション低下を引き起こす
過度な連勤は、うつ病や過労死など深刻な健康被害を引き起こす恐れがあります。労災認定されれば、企業は慰謝料や損害賠償責任を負う可能性もあります。
連勤が続けば、労働者の業務意欲は低下し、生産性にも悪影響が出ます。労働環境への不満が高まれば、離職者の増加や定着率の低下にもつながります。
企業の信頼失墜にもつながる
労働基準法違反が発覚すれば、罰金や懲役といった刑罰だけでなく、企業名が公表される可能性もあります。社会的信用の失墜は大きなダメージとなるでしょう。
90連勤ともなると、そのきつさは並大抵のものではない
90連勤は、身体的および精神的に非常に過酷な状況をもたらすことがあります。
まず身体的な面から見ると、休息の不足が深刻な疲労を引き起こします。人間の体は日々の活動の後で適切な休息を必要としますが、連続した労働日数が増えると、必要な回復時間が確保できず、体力の消耗が蓄積します。これにより、免疫力の低下や怪我のリスクが高まるほか、慢性的な健康問題につながることもあります。
精神的なリスクも無視できません。長期間にわたる労働はストレスの原因となり、それがうつ病や不安障害などの心理的問題を引き起こすことがあります。また、仕事と私生活のバランスが崩れることで家庭や社会生活に支障を来たし、孤立感や満足度の低下を感じることが多くなります。
仕事のパフォーマンスにも影響を与えます。疲労が蓄積されると、注意力や集中力が低下し、ミスが増える可能性があります。これは職場での安全リスクを高め、重大な事故につながることもあります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
残業削減に失敗するたった3つの理由とは?残業削減に導く4つの方法
残業削減が推進されるなか、人材不足のため一部の従業員へ業務が集中したり、定時退社しにくい環境であったりするために、残業削減がうまくいかない企業も多いでしょう。 とはいえ、残業削減のために業務量を減らせば売り上げが下がるため、さらに売り上げ目…
詳しくみるシフト制とは?メリット・デメリットをわかりやすく解説
シフト制とは、従業員の働く曜日や時間帯が固定されていない勤務形態です。年中無休、長時間の営業が必要な場合などに採用されています。この記事ではシフト制の定義、種類、従業員及び雇用主にとってのメリット・デメリット、仕事に応募する際の注意点を解説…
詳しくみる13連勤は違法?連続勤務の上限日数やリスク、必要な対策を解説
労働基準法では原則、連続勤務の上限は12日と定められています。ただし、「変形休日制」や「変形労働時間制」の働き方を導入している企業であれば、上限を超える勤務が認められています。 しかし連続勤務は労働者の健康リスクの増加、生産性の低下、離職率…
詳しくみる自己都合の退職でも有給消化しても良い?会社に断られた場合や円満に進めるポイント
退職を考えている方の中には、「自己都合退職でも有給休暇を消化できるのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。有給休暇は労働者の正当な権利であり、退職の理由に関わらず取得することが可能です。しかし、会社側の理解を得られず、有給消化を断…
詳しくみる裁量労働制とは?限定される適用対象とは?
裁量労働制とは何か? 裁量労働制とは、特定の業務について、「実労働時間にかかわらず、一定時間労働したものとみなす」制度です。 これまでの労働時間法制は、工場などで集団的に働く人のように「一定の時間」「一斉に働くこと」を前提に、労働時間を定め…
詳しくみる30連勤は違法?労働基準法に基づき分かりやすく解説!
30連勤は、健康面、精神面、そして生活面すべてに悪影響を及ぼす働き方です。法的に問題がない場合でも、働き続けることによるデメリットは非常に大きく、労働者だけでなく企業側にも深刻なリスクが伴います。適切な休息を確保しなければ、健康を害するだけ…
詳しくみる