- 更新日 : 2024年11月1日
就業規則の意見書とは?記入例や異議ありの場合の対応を解説
賃金や労働時間、休日などについて定めた就業規則は、企業と従業員双方にとって大切なものです。また、就業規則の作成や変更の際には、従業員の意見を聴くことが求められています。
当記事では、就業規則の意見書について解説します。就業規則の作成や変更の予定がある場合には、ぜひ参考にしてください。
目次
就業規則の意見書とは
就業規則の作成や変更は、企業が一方的に行うことはできません。その適用を受けることになる従業員の意見を聴くことが求められています。
就業規則の作成や変更時に添付する書類
労働基準法第90条では、就業規則の作成や変更を行う場合に、従業員の過半数を代表する者または、過半数で組織する労働組合の意見を聴くことが必要であるとしています。労働組合を組織している企業は少ないため、ほとんどの企業では、過半数代表者の意見を聴くことになるでしょう。
就業規則を作成または変更する際には、届出を行うことが必要ですが、その際に過半数代表者等から聴取した意見が記された意見書を添付することが必要です。また、就業規則の内容が法令や労働協約に違反している場合には、行政官庁から就業規則の変更が命じられることもあります。このときにも通常の場合と同様に意見聴取しなければなりません。
就業規則の意見書の作成方法
本項では、実際に就業規則の意見書を作成する方法について解説します。しっかりと作成方法を押さえ、問題のない意見書を作りましょう。
様式
就業規則の作成や変更に際し、意見書を添付することは労働基準法で定められた義務です。しかし、意見書の様式自体に法律による定めはなく、どのような様式を用いるかは企業の自由です。
失敗したくない場合には、労働局等が公開している様式を使用しましょう。東京労働局では、意見書をはじめとした労働関係法令の様式をWordとPDF形式で公開しているため、利用しやすい形式をダウンロードして使用してください。
記載事項
意見書には記載事項なども定められておらず、労働者代表が自由に意見を記入することが可能です。しかし、一般的には以下のような事項が記載されます。
- 日付
- 企業名
- 代表者の肩書と氏名
- 労働者代表の氏名
- 労働者代表の意見
記入例
意見書における意見は自由に記入してかまいませんが、参考となるように記入例を紹介します。まずは、就業規則の内容に異議がある場合です。
「就業規則第〇条第〇項において、『従業員の定年は、満65歳とする』と定められています。しかし、高年齢者雇用安定法においては、70歳までの定年年齢の引き上げが努力義務とされています。高年齢者が、その経験を活かして活躍する場を提供する意味でも、定年年齢を満70歳とすることをご検討ください」
異議がある場合には、どの部分に異議があり、どのように改善して欲しいのかを明確に記載します。異議がない場合であれば、「本就業規則案に異議はありません」や「就業規則の変更案に異議はありません」などと記載します。はっきりと異議がないことを示しましょう。
2021年以降、署名・押印は任意
行政手続きの効率化や国民の利便性向上を図るために、2021年4月1日以降、原則として行政機関へ提出する申請書等に対する署名・押印が廃止されました。廃止の対象には、就業規則の意見書も含まれているため、現在では労使双方ともに意見者に署名・押印する必要はありません。そのため、パソコン等で入力した氏名を表示しても問題ないことになります。ただし、仮に任意で署名・押印したとしても、意見書の効力が否定されることはありません。
就業規則への意見書のテンプレート(無料)
以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。
就業規則の意見書の提出先と期限
就業規則の提出先や提出期限に決まりはあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
提出先
就業規則を作成または変更した際には、所轄労働基準監督署長に、「就業規則(変更)届」や就業規則を届け出なければなりません。この際に意見書も添付することになります。そのため、意見書の提出先も変更届等と同様に、所轄労働基準監督署長となります。
作成や変更の手続きは、窓口への直接持参や郵送のほか、電子申請も可能です。なお、電子申請の際には、意見書もPDF等の電子ファイルにすることが必要です。
提出期限
就業規則を作成または変更した際の提出期限については、労働基準法において明確に定められていません。そのため、意見書を含めた届出自体は遅滞なく行えば足ります。ただし、原則として、作成または変更された就業規則の施行期日までの間に届け出ることが必要です。
就業規則の意見書を取得する際の注意点
就業規則の作成または変更時における意見聴取には、いくつか注意しなければならない点が存在します。注意点ごとに解説しますので、しっかりと把握してください。
事業所ごとに意見聴取する
企業によっては、本社以外に支社や支店などを設けている場合もあります。このような場合には、事業所ごとに意見聴取を行うことが必要です。これは、就業規則の本社一括届出を行う場合であっても変わりません。本社だけでなく、事業所ごとに意見聴取を行い、意見書を添付しましょう。
就業規則は、パートタイムや契約社員など、一部の従業員のみを対象として作成することも可能です。なお、この場合であっても、事業所の全従業員を対象としたうえで、代表を選出し、その意見書を添付しなければなりません。ただし、何らかの形で適用を受けるパートタイム等の代表者の意見を聴くことが望ましいとされています。
会社が従業員代表を指名することはできない
従業員代表に特別な資格等は求められていません。そのため、原則として誰でも従業員代表になることは可能です。ただし、会社と一体的な立場にある管理監督者は、原則として従業員代表になれないため注意が必要です。そのような者を代表者として選出し、意見書を作成したとしても、その意見書は無効となります。
従業員代表は、挙手や投票といった民主的な方法によって選出されることが必要です。そのため、企業が代表者を指名することは許されません。また、従業員代表となったことを理由として、給与の減額や降格等の不利益取り扱いを行うことも禁止されています。
異議がなくても意見書の提出は必要
就業規則の作成や変更に際して、従業員代表に異議がない場合もあります。給与の増額や福利厚生の充実等を理由とする変更であれば、異議が出る恐れはまずないでしょう。しかし、この場合であっても、意見書の添付は変わらず必要です。紹介した記入例を参考に意見書を作成し、異議の有無を問わず就業規則等と一緒に所轄労働基準監督署長に届け出てください。
従業員代表者が異議ありの場合はどうする?
手当の削減や、福利厚生の廃止など、従業員の不利益となるような変更内容であれば、従業員代表が異議を唱えることもあり得るでしょう。そのような場合に、どう対応すればよいのか解説します。
反対意見が書かれても、就業規則の作成や変更の届出は可能
就業規則の意見書に反対意見が書かれた場合であっても、適切な変更手続きを踏んでいる限り、就業規則の変更は可能です。これは、作成の場合も変わりません。従業員代表の異議は、就業規則そのものの効力には、何ら影響を及ぼさないのです。
従業員との関係性のために理解を求める姿勢は大切
意見書に全面的な反対意見が記載されていても、作成や変更は有効とされます。しかし、従業員が反対しているような内容では、実際に就業規則の適用を受けて働く従業員のモチベーションが低下してしまいます。従業員代表から異議があった場合には、内容の見直しや必要性などを改めて説明し、理解を求めることが大切です。
就業規則の意見書を提出拒否されたらどうする?
就業規則の内容に反対である旨の意見書を提出される場合だけでなく、意見書の提出自体を拒まれることもあり得ます。そのような場合の対処法を紹介します。
意見書不添付理由書を添付する
提出を拒否されたような場合には、「意見書不添付理由書」を所轄労働基準監督署長に提出することになります。これは、就業規則の作成や変更について、その内容を説明し、従業員代表に意見を求めたことを証明するための書類です。意見書不添付理由書を提出することで、意見書の添付がなくとも、作成や変更の手続きが可能となります。
意見書不添付理由書の記載例を紹介しますので、参考にしてください。
「〇年〇月〇月に提出した就業規則変更届について、〇年〇月〇日に労働者代表に、その変更内容を説明のうえで意見を求めました。しかし、当該労働者代表が意見書の提出を拒んでいるため、変更届に意見書を添付できない旨をご報告いたします」
意見聴取をしなかった場合の罰則
労働基準法第89条においては、常時10人以上の従業員を使用する場合には、就業規則の作成及び届出が義務付けられています。規定に違反した場合には、労働基準法第120条により、30万円以下の罰金が科せられます。意見聴取しなかった場合にも労働基準法第90条違反として、同様に労働基準法第120条に基づく30万円以下の罰金が科せられるため、注意が必要です。
意見書の不添付であれば、理由書をもって代えることができますが、意見聴取そのものを行わない場合には、罰則の対象となってしまいます。就業規則の作成や変更の際には、必ず従業員代表の意見を聴き、内容について理解を求めましょう。
従業員の意見を踏まえた作成や変更を
就業規則を作成したり、変更したりするためには、必ず従業員代表や労働組合の意見を聴かなければなりません。労働者代表から反対意見が提出されたとしても、就業規則の効力には影響を及ぼしませんが、でき得る限り、内容について理解を求めることが必要です。
実際に就業規則の適用を受けて働く従業員から異議が出るような内容であれば、労使関係も険悪なものになってしまいます。従業員の意見を踏まえたうえで、働きやすい環境構築につながる就業規則を作成しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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