- 更新日 : 2025年12月8日
マミートラックとは?原因と問題点、企業の取り組み、事例を解説
マミートラックとは育児中の女性従業員が、以前とは異なる働き方を強いられることを指します。単純作業や軽作業、補助的業務への就業を強いられ、希望通りに働けなくなります。モチベーション低下が起こり、退職に至るケースも少なくありません。育児休業期間延長や時短・在宅勤務、補助金制度の導入が、マミートラック対策になります。
目次
マミートラックとは?
マミートラックは育児をしながら働く女性従業員が、自分の希望とは働き方を強いられることを指す言葉です。育児中を理由に単純作業や軽作業、補助的業務、後方支援業務などに配置換えとなり、以前とは異なる働き方をしなければならなくなります。順調に積み上げてきたキャリアを捨てなければならず、労働意欲の喪失などが引き起こされます。
マミートラックの由来
マミートラックの言葉は1988年にアメリカで生まれました。母親を意味する「mommy」に、陸上競技に用いられる周回コース「track」を組み合わせた言葉です。育児中の女性従業員が働きやすいような整備・配慮、それらが適用される制度や職場環境をもともとは意味していました。
女性管理職と男女の家事関連時間の現状
日本では企業における女性参画は進んでいなく、役員や管理職への登用があまりされていません。2018年データにおける女性の割合は係長級18.3%、課長級11.2%、部長級6.6%と上位級になるほど低くなり、役員は4.1%となっています。
対して家事労働負担は男性より女性の方が圧倒的に多く、1日のうちの家事に費やす時間の割合は2021年で男性3.8%、女性14.7%となっています。
マミートラックが起きる原因
マミートラックは、どのような点から起きてしまうのでしょうか?マミートラックが起きる原因を考えてみましょう。
性的役割分担意識が強く残っている
マミートラックが起きる原因の1つ目には、「男性は外で働き、女性は家にいて家庭を守る」といった性的役割意識が強く残っていることが挙げられます。このような性別で役割を決める価値観は古いものではあるものの、まだ強く残っているという現状があります。この役割分担意識が出産や育児を背景に強く押し出され、マタハラ(マタニティハラスメント)が引き起こされます。
周囲の配慮方法が間違っている
働く母親に対する間違った方法での配慮も、マミートラックは起きます。母親であっても働き続けるためにはさまざまな配慮が求められますが、どのような配慮が必要なのかは、人によって異なります。周囲の人による間違った配慮はかえって本人のためにならないだけでなく、マミートラックの原因となります。
マミートラックの問題点
マミートラックには、どのような好ましくない点があるのでしょうか?マミートラックの問題点を説明します。
単純作業中心の仕事
マミートラックの問題点として、まず単純作業中心になることが挙げられます。育児中の女性は子どもの体調不良などにより、いつ休みが必要になるかわかりません。重要な業務の遂行中に抜けられると企業として困るため、重要度の低い業務を担当させるようになります。単純作業であれば誰がやっても同じなため交代がスムーズにできるとして、育児中の女性従業員にやらせる傾向が見られます。
キャリア形成が困難
出産・育児のため以前の業務を離れると、キャリア形成にも問題が生じます。単純作業を中心にした仕事担当になるとキャリアは一時的に中断します。すぐに以前の業務に戻れない環境に置かれればキャリア中断は長引き、大幅な遅れが生じます。軌道修正が必要になり、思い描いていたキャリアで働くことは困難になるでしょう。諦めて離職の決断となることも少なくありません。
女性管理職の昇進の遅れ
キャリアが中断されると、当然、昇進も遅れます。女性管理職への登用や昇格が予定されていた場合でも、保留となったり見送られたりします。
企業イメージの低下
マミートラックは育児しながら働く女性従業員を差別するものだとして、企業イメージ低下を招く場合もあります。もともとは母親業と仕事との両立を目指して奮闘する女性従業員を応援する主旨で設けられたマミートラックですが、希望を聞かずに一律にあてはめると反対に悪い制度になってしまう点に気をつける必要があります。
モチベーションの低下
マミートラックは希望とは異なる働き方を女性に強いるため、モチベーションの低下も引き起こします。育児によりマミートラックとなった従業員だけでなく、後輩にあたる女性従業員についても将来は自分も同じ扱いを受けるとしてモチベーションダウンとなることに注意が必要です。
マミートラックの対策方法
マミートラックのデメリットや弊害を軽減するためには、どんな取り組みが求められるのでしょうか?企業が行うべきマミートラック対策方法を説明します。
育児休業期間を延長する
育児休業期間延長により、働く環境を十分に整えたうえでの復職が可能になります。育児に専念する期間・復職して仕事に取り組む期間とで、女性従業員はメリハリをつけて働くことができるようになります。環境整備にも時間をかけて取り組めるため、復職後に育児のことで問題が起きる回数も少なくできるでしょう。
時短制度を導入する
時短制度が導入されていれば、フルタイムでの勤務が難しい育児中の母親でも周囲に気兼ねなく働けるようになります。保育園の送迎時間に合わせて始業時間を遅らせたり終業時間を早めたり、子どもに合わせた時間帯で勤務できます。
在宅勤務を可能にする
在宅勤務制度を導入して、出社しなくても勤務できるようにすることもマミートラック対策として有効です。通勤時間を就業時間に充てることができ、その分働く時間が増えます。通勤による体力消耗もなくなり、仕事に全力で取り組めるようになります。
補助制度を手厚くする
家事代行サービス利用代金補助など、さまざまな金銭的援助をしてもマミートラック対策につながります。家事や育児にかける時間を減らして、その分だけ仕事に従事してもらうことが可能になります。
意識改革と職場環境整備
マミートラック対策として、意識改革と職場環境整備も欠かせません。間違った配慮方法がマミートラックにつながることを教育し、正しい配慮をしてもらうようにすることが必要です。また母親が働きやすい環境となるよう、職場環境整備にも力を入れる必要があります。
マミートラックを防ぐための取り組み・企業事例
マミートラックを防ぐため、大企業を中心に多くの企業が、さまざまな取り組みを行っています。3社の事例を紹介します。
資生堂
資生堂は社員の仕事と育児の両立のため、15年以上前から事業所内保育所設置や保育料補助を行っています。2020年からは業務の目的に合わせてリモートワークとオフィスワークを柔軟に組み合わせる働き方を取り入れ、育児中の女性が働く際に障壁となっている長時間労働の是正を図っています。
サイボウズ株式会社
サイボウズは多様な働き方を可能にするため、2006年に最長6年間の育児休暇制度を導入しました。同時に妊娠判明時から取得できる産前休暇と育児短時間勤務制度を採用し、社長自ら3度の育児休暇を取得しています。
株式会社メルカリ
メルカリは安心して出産や育児に専念できる環境を整える目的で、2016年2月から産休や育児休業から復職する際に一時金を支給しています。また子どもの看護のために1年あたり最大10日間の休暇取得(うち5日間は特別有給休暇)を可能にしています。
育児中でも自分らしく働けるようマミートラックの弊害をなくそう
マミートラックとは育児をしながら働く従業員が、軽作業や補助的業務への就業を余儀なくされることを指します。自分の意志・希望にそぐわない仕事が強要され、モチベーション低下が引き起こされます。昇進の話が立ち消えになったりキャリアが中断したりして描いていた将来像が実現できなくなり、退職につながるケースも少なくありません。優秀な従業員の退職は、企業にとって大きな損失となります。またマミートラックがあるとして企業イメージも損なわれる恐れがあります。
人材流出や社会的信用損失を防ぐためには、マミートラックの弊害をなくすことが必要です。育児休業延長や時短勤務・在宅勤務、金銭的補助などを導入して、育児をしながらでも働きやすい職場環境に整備しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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