- 更新日 : 2023年6月23日
ワーケーションとは?メリット・デメリット、事例や導入へのポイントについて解説
ワーケーションは、テレワークなどを活用して観光地やリゾート地など、場所を選ばずに仕事をしながら余暇も楽しむ、新しい働き方です。本記事ではワーケーションの概要や導入事例、メリット・デメリットなどを解説します。
目次
ワーケーションとは?
新たな働き方、あるいは余暇の過ごし方として注目されているのがワーケーションです。ここでは、ワーケーションの意味や種類について、解説していきます。
ワーケーションの意味
ワーケーションとは、「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語です。テレワークなどを活用し、観光地やリゾート地などで仕事をしながら、休暇も楽しむことを指します。
2021年3月に厚生労働省が公表したテレワークに関するガイドラインでは、情報通信技術を利用するワーケーションは、テレワークの一形態に分類できることが示されています。
参考:テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン|厚生労働省
ワーケーションの種類
ワーケーションは、次のように2種類に分類することが可能です。
- 余暇主体型
- 業務主体型
余暇主体型は、休暇を主目的としており、福利厚生の一環として導入する企業が多い点が特徴です。有給休暇を組み合わせ、リゾート地や観光地に滞在しながら、テレワークを行う働き方が該当します。一般的に、ワーケーションと聞いて思い浮かべるのは、こちらの余暇主体型といえるでしょう。
一方、業務主体型は、仕事を主軸とし、その前後や合間に休暇を楽しむ形態です。業務主体型のワーケーションは、さらに以下の3つに細分化できます。
- 地域課題解決型
- 合宿型
- サテライトオフィス型
地域課題解決型は、地域関係者との交流を通じて地域課題に向き合い、解決策を出したり、取り組みを行ったりします。また、合宿型はオフィスから離れた環境で議論やグループワークを行う形態です。サテライトオフィス型は、企業が設置するサテライトオフィスや、コワーキングスペースなどでテレワークをするタイプのワーケーションを指します。
ワーケーションが注目されている理由
2020年7月の観光戦略実行推進会議で、政府から、ワーケーションなどを推進する方針が示されました。当時の菅官房長官がメディアで発信したことをきっかけに、ワーケーションという言葉が一躍注目されるようになったと考えられます。
ワーケーションの発信の背景には、新型コロナウイルスの影響で厳しい状況にあった観光関連産業を支援する、観光庁主体の政策「Go Toキャンペーン」があります。政府は、「Go Toキャンペーン」の告知とともに、ワーケーションやサテライトオフィスを普及させるために、Wi-Fiの整備の支援を行う考えを示しました。
昨今のテレワークの浸透や、フリーランスなどの仕事場所を選ばない柔軟な働き方への注目の高まりも、ワーケーションの認知の向上を後押ししているといえるでしょう。
ワーケーションの事例
ここからは、実際にワーケーションに取り組む、次の5社の事例をご紹介します。
- 日本航空
- ユニリーバ・ジャパン株式会社
- 株式会社野村総合研究所
- ヤマハ株式会社
- 株式会社LIFULL
各社の取り組み内容をみていきましょう。
日本航空
日本航空は、有給取得率の向上を目的に、2017年からワーケーションを導入し、体験ツアーや合宿型ワーケーションなどを実施してきています。国内における、ワーケーションの先駆け的存在といえます。
導入当初、夏期の推奨期間の利用者は11人でしたが、2018年の年間利用者は174人まで増加しました。
ユニリーバ・ジャパン株式会社
ユニリーバ・ジャパン株式会社も、ワーケーション推進に積極的に取り組んでいます。2016年には、働く場所や時間に制約のない「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」を導入し、ワーケーション導入の下地ができている状態でした。
さらに2019年には、ワーケーション活用のさらなる促進のため、「地域 de WAA」を導入し、2022年3月時点で8つの自治体と提携しています。
各地域の施設を「コWAAキングスペース」として利用できるほか、地域課題解決の活動を行うと、宿泊施設の宿泊費が無料になったり割引されたりするといったしくみ作りをしています。
株式会社野村総合研究所
従業員を約1ヵ月間、徳島県三好市のサテライトオフィスに派遣しているのは野村総合研究所です。平日は通常の業務を行い週末は休暇を取る形態で、1ヵ月を前後2週間ずつに区切り、のべ15〜16人が参加するワーケーションで、通称「三好キャンプ」と呼ばれています。
従業員のモチベーションの維持や、日常から離れた場所で働くことによって得られる気づきや、発見からの新たなイノベーションの創出が期待されています。
ヤマハ株式会社
ヤマハ株式会社が提唱するのは、ハイブリッド型ワークスタイルです。ハイブリッド型ワークスタイルとは、テレワークとオフィスワークを組み合わせた柔軟な働き方のことです。
同社の音響技術を活用したソリューションで、企業のテレワーク推進の後押しをしながら、自社でもハイブリッド型ワークスタイルを実践しています。自宅やカフェはもちろん、リゾート地や観光地などでのワーケーションも認められています。
株式会社LIFULL
株式会社LIFULLでは、オフィス勤務と在宅勤務のほか、宿泊機能が備わった多拠点コワーキング施設「Living Anywhere Commons」での勤務が可能です。「Living Anywhere Commons」は、地域在住のコミュニティーマネージャーを通じた企画や交流が特徴で、全国に展開しています。場所に縛られない、自由な働き方や暮らし方の実現を目指しています。
参考:ワーケーション&ブレジャーの導入・推進企業のご紹介|観光庁
ワーケーションのメリット
ワーケーションは、企業にとっても従業員にとっても多くのメリットをもたらす取り組みといえます。それぞれのメリットについて、解説します。
企業のメリット
ワーケーションに取り組むことで得られる企業のメリットは、以下のとおりです。
- 有給休暇の取得促進
- 従業員エンゲージメントの向上
- 人材の定着率の向上
- 生産性の向上
ワーケーションの導入により、従来の「休暇を取得する」「仕事をする」の二者択一から、「休暇を取りながら仕事もする」という新たな選択肢が生まれます。それにより、有給休暇取得のハードルが下がるでしょう。
また、働く場所や時間に制限を加えないため、従業員が「会社は自分を信じてくれている」と受け止め、従業員エンゲージメントが高まる効果も期待できます。多様な働き方を認めることは企業イメージの向上にも寄与し、離職率の低下や人材の定着率の向上にも結びつきます。
さらに、普段とは異なる環境で自分の裁量のなかで決断をしながら働くことで、生産性が向上することも、ワーケーションのメリットです。
従業員のメリット
ワーケーションがもたらす従業員側のメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
- 長期休暇が取得しやすくなる
- 働き方の選択肢が増える
- ストレスの軽減につながる
- モチベーションが向上する
- 新しいアイディアが生まれる
前述のとおり、「休暇を取りながら仕事もする」選択肢が加わることで、働き方が多様化するとともに、長期休暇を取得しやすくなる点が、従業員にとっての大きなメリットです。余暇を過ごす時間が増えるためストレスの軽減につながるほか、リフレッシュ効果により、モチベーションの向上や新しいアイディアが生み出されることも期待できるでしょう。
ワーケーションのデメリット
企業にとっても従業員にとってもメリットの多いワーケーションですが、以下のようなデメリットも存在します。
- 運用するための費用や準備が必要である
- 労務管理が難しい
- セキュリティリスクが上がる
- 仕事と余暇の線引きがしにくい
ワーケーションを行うには、従業員へのノートパソコンの支給やインターネット環境の整備のほか、オンラインの会議ツールの導入などが必要です。テレワークを前提とした勤怠管理システムや就業規則の見直し、人事評価制度の構築も求められます。
また、セキュリティリスクが上がることを考慮することも重要です。特定の人のみが利用できる専用ネットワークのVPNの整備や、デバイスの紛失への対応もしなければいけません。
VPNとは「Virtual Private Network」の略で、直訳すると「仮想専用線」です。フリーWifi
など、公衆のネットワークでのやり取りをする際は、常に盗み見や改ざんのリスクにさらされています。しかし、インターネット上にVPNを設けることで、重要な情報のやり取りを安全なルートで行うことが可能になります。
さらに、余暇を取りながら仕事をするため、気持ちの切り替えが難しい従業員もいるかもしれません。従業員からすると、仕事と余暇の線引きが曖昧になる可能性がある点もデメリットといえるでしょう。
ワーケーションは意味がない?
認知度が高まりつつあるワーケーションですが、あまり意味がないと捉える人もいるでしょう。リゾート地や観光地を訪れると、間違いなく気分転換になります。しかし、環境がもたらすさまざまな誘惑を振り切って仕事をするのは、困難かもしれません。また、余暇と仕事の線引きが曖昧になって気が休まらない可能性もあります。
それでも、ワーケーションによって、なかなか上がらなかった有給休暇の取得率が向上したり、多様な働き方を認めることで企業イメージが高まったりすることは事実です。また、日常から離れた場所で仕事をすること自体に、生産性やクリエイティビティーを向上させる効果があるとされています。
ワーケーション導入の本質は、時間や場所の制約を受けずどこでも働けるという、ライフスタイルの選択肢が増えることです。多様化する社会において自分らしい豊かな生活を送るためには、この、いつでもどこでも働けるという選択肢を手に入れられるかどうかが、重要な鍵になるでしょう。
ワーケーションを導入するポイント
ワーケーションの導入にあたっては、以下のポイントをおさえ、対策を講じたり準備をおこなったりしましょう。
- ワーケーション運用のルールの策定
- 勤怠管理システムの整備
- 労務管理のルールの見直し
- ICT環境の整備やセキュリティの対策
- 補助金制度の活用
ワーケーションを導入する際は、就業場所に関する許可基準の明示や、テレワーク規程などの整備のほか、勤怠管理システムの整備が必要です。前述のとおり、オフィスや自宅以外で仕事をすることになるため、セキュリティ対策なども不可欠といえます。
また、ワーケーション補助金制度の活用も視野にいれるとよいでしょう。ワーケーション補助金制度とは、ワーケーションにかかる費用の一部を、ワーケーション先の自治体が負担してくれる制度です。自治体によって利用条件や助成金額などが異なるため、利用前に詳細を調べておく必要があります。
ワーケーションへの観光庁の取り組み
観光庁は、ワーケーションを地方創生や働き方改革につながる取り組みと位置づけ、普及や定着を目的に、「テレワーク・ワーケーション官民推進協議会」を立ち上げました。また、従業員のモチベーション向上の効果が見込まれるなど、企業の経営に与える影響が大きいことから、企業に対して導入のメリットや取り組み事例などの情報提供をしています。
そのほかの具体的な取り組みとしては、モデル企業・地域の公募や、ホテルなどの宿泊事業者が、観光庁からの助成を受けられる補助金制度の創設が挙げられます。補助金制度は、宿泊者がワーケーションプランを使い、割引を受けて安い金額で宿泊した際に、宿泊事業者が割引分の補填を受けられるものです。
参考:「テレワーク・ワーケーション官民推進協議会」を設立しました!|観光庁
ワーケーションは働き方の新たな選択肢
ワーケーションは、テレワークなどを活用し観光地やリゾート地などで仕事をしながら、休暇も楽しむ、新たな働き方の1つで、働き方改革や地方創生を促進する効果などが見込まれます。ワーケーションは、福利厚生的な意味合いの強い余暇主体型と、業務を主軸とした業務主体型の2つに分類されます。
企業の経営にもメリットをもたらすと考えられるため、自社に合った形態のワークケーションの導入を、検討してみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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