- 更新日 : 2025年2月21日
テンプレート付き – 休日出勤届について解説!
休日出勤届とは、法令で定められた法定休日に休日出勤する際に必要となる申請書です。使用者は労働者に一定の休日を付与しなければならず、休日労働させた場合は割増賃金を支払わなければなりません。そのため、休日出勤は休日出勤届によって厳格に管理する必要があるのです。この記事では、休日出勤届の概要と無料テンプレートを紹介します。
目次
休日出勤届とは?
「休日出勤届」とは、法令で定められた休日に出勤する際に必要となる申請書です。「休日出勤届出書」や「休日作業届」などという場合もあります。
労働基準法の定めでは、使用者は労働者に週1日以上もしくは4週にわたり4日以上の休日を与えなければなりません。法令で定められた休日を「法定休日」といいます。
労働基準法
第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
(休日)第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない。
② 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
週休2日制などで、法定休日以外の休日を与えることも可能です。就業規則や労使協定で定められた法定休日以外の休日を「法定外休日」といいます。
法定休日に労働を課す場合は「労働基準法第36条に基づく労使協定」通称「36協定」を締結し労働基準監督署に届け出なければなりません。
労働基準法
第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
(時間外及び休日の労働)第三十六条 使用者は、(中略)書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、(中略)労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
(略)
④ 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(中略)とする。
さらに、法定休日に出勤させた場合は「休日労働」として一定の割増賃金を支払う必要があります。
労働基準法
第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
(時間外、休日及び深夜の割増賃金)第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
法定外休日に働いた場合は原則通常賃金ですが、法令で定められた「法定労働時間」である「1日8時間・週40時間」を超えた場合は「時間外労働」として割増賃金の対象です。なお、休日労働の割増賃金率は35%、時間外労働の割増賃金率は25%となっています。
労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令
労働基準法第三十七条第一項の政令で定める率は、同法第三十三条又は第三十六条第一項の規定により延長した労働時間の労働については二割五分とし、これらの規定により労働させた休日の労働については三割五分とする。
引用:労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令|e-Gov法令検索
働き方改革に伴う労働基準法の改正によって、時間外労働は厳しく制限されるようになりました。原則「月45時間以下・年360時間以下」でなければなりません。ただし、この制限に休日労働は含まれません。繁忙期など臨時的な理由でのみ認められる特別条項付きの36協定では「時間外労働と法定休日労働の合計が月100時間未満」と定められているため、これが法定休日労働の実質的な上限となります。
休日出勤は法律で時間が制限され、賃金も通常と異なる割増賃金です。そのため、休日出勤届を提出し厳格に管理しなければなりません。
休日出勤を申請しないとどうなる?
休日出勤申請について直接規定した法律はないため、申請しなかったからといって直ちに法令違反となるわけではありません。ただし、前述の通り休日労働には制限があり、賃金面でも通常の労働時間と分けて管理が必要です。休日出勤申請を怠ると賃金計算上休んだものとして扱われ、場合によっては賃金が支払われない恐れもあります。こういった事態を未然に防ぐためにも、就業規則に休日出勤のルールを明文化しておくことが望ましいでしょう。
一般的に、休日出勤申請は休日出勤届を提出することで行われます。その際に、休日出勤の理由も必ず記載させるようにしてください。これは、休日出勤の妥当性を判断し、無用な休日出勤を防止するためです。ルールを厳格化して休日出勤をなるべく減らし、労働者の健康確保と人件費削減に努めましょう。
なお、就業規則には休日出勤のルールとともに、休日に関する規定も必ず明記してください。法定休日は曜日を問わないため、会社の業務形態に合わせて規定すれば問題ありません。週休2日制の場合は、法定外休日に関する規定も必要です。法定休日と法定外休日では休日出勤の扱いが異なるため、非常に重要な規定となります。法定休日労働には休日労働割増賃金が、法定外休日労働には通常賃金が適用されるため気を付けましょう。
振替出勤申請と休日出勤申請の違い
振替出勤申請とは、業務上の都合で休日出勤しなければならない場合、他の労働日に休日を振り替えるための申請です。例えば、日曜日に休日出勤するかわりに水曜日を振替休日にするようなケースが考えられます。文字通り法定休日を振り替える手続きなので、元々の法定休日だった日曜日に出勤しても休日労働割増賃金の対象とはならない点に注意しましょう。
対して休日出勤申請は、法定休日が1日減るかわりに休日労働割増賃金が支払われます。労使間の取り決め次第では、後から代替措置として特定の労働日に代休を取得できることもありますが、割増賃金が支払われる点は変わらないため注意しましょう。
なお、振替休日についても就業規則に規定しておかなければなりません。ただし、就業規則に規定されていても、労働基準法に定める週休1日もしくは4週4休の規定を満たしていないと休日労働となるため気を付けましょう。さらに、振替休日を取得するには事前に労使間で相談して振り替え日を決めておかなければなりません。事後になってしまうと原則代休扱いとなるため注意が必要です。
振替出勤申請 | 休日出勤申請 | |
---|---|---|
労働時間の扱い | 法定内労働 | 休日労働 |
賃金の扱い | 通常賃金 | 休日労働割増賃金 |
休日出勤の代替措置 | 振替休日 | 代休 |
加えて、休日と休暇の違いについても説明します。「休日」とは労働契約における労働義務を負わない日です。労働基準法に定められた法定休日、就業規則で定められた法定外休日などが休日に該当します。これらは特段の申請無しに取得することが可能です。
一方、申請することによって労働契約上の労働義務を免除される日を「休暇」といいます。年次有給休暇などが代表的な休暇です。労働基準法では、勤続年数に応じて一定の有給休暇を付与することが義務付けられています。
休日出勤・振替休日・代休などに関する規定は雇用形態を問わず、正社員だけでなく派遣社員やパート・アルバイトなどにも適用されるため注意しましょう。
休日出勤届に記載が必要な項目
休日出勤届には特定のフォーマットや様式はありませんが、一般的には下記の項目について記載されます。
- 氏名
- 所属部署
- 休日出勤の予定日時
- 休日出勤の理由
前述の通り、予定日時だけでなく休日出勤の理由も記載させることが重要です。休日出勤届を受領した場合は必ず理由を確認し、休日出勤の必要性や妥当性を精査してください。無用な休日出勤は人件費の増加だけでなく、労働者の健康面にも悪影響を及ぼしかねません。
なお、休日出勤の時間帯についても注意が必要です。労働時間が深夜帯に及ぶ場合、深夜労働割増賃金と休日労働割増賃金が合算されて通常の割増賃金より高額になります。人件費を抑えるためにも、深夜帯の休日出勤はなるべくさせないように気を付けましょう。
休日出勤届への記載例 – 無料テンプレート付き
休日出勤届は紙媒体やワード・エクセルで作成するのが一般的です。インターネットには様々なフォーマットや雛形が公開されており、マネーフォワードでも無料で利用可能なテンプレートを提供しています。ワード形式なので、メールに添付するだけで簡単に休日出勤申請を行うことが可能です。汎用性の高い書式となっているので、様々な業種で活用していただけることでしょう。
▼ 休日出勤届のテンプレートはこちらからダウンロードできます
残業をしている場合は、正しく処理を行いましょう!
休日出勤届について解説しました。休日出勤届とは、法令で定められた法定休日に休日出勤する際に必要となる申請書です。休日労働は労働基準法で厳しく制限されているため、厳格に管理しなければなりません。さらに、休日出勤を課した場合、使用者は割増賃金を支払うよう定められています。賃金計算においても、休日労働は分けて管理しなければならないのです。たとえ1時間だけであっても、休日出勤する場合は必ず休日出勤届を提出してください。休日出勤届を利用し、正しく勤怠管理を行いましょう。
よくある質問
休日出勤届とは何ですか?
休日出勤届とは、法令で定められた法定休日に休日出勤する際に必要となる申請書です。休日労働は労働基準法で厳しく制限され、割増賃金の対象となるため、休日出勤届によって厳格に管理しなければなりません。詳しくはこちらをご覧ください。
休日出勤届には、どんな項目を記載するのですか?
特定の様式などはありませんが、氏名・所属部署・休日出勤の予定日時・休日出勤の理由などを記載するのが一般的です。休日出勤の必要性や妥当性を判断するために、理由も記載させることが重要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
有給奨励日とは?違法になってしまうケースや注意すべきポイントを解説
「有給奨励日って何?」「会社が指定した日に有給休暇を取らなければならないの?」 上記のような疑問をもつ方も多いのではないでしょうか。 有給奨励日は、企業が従業員に有給休暇の取得を推奨する日ですが、運用方法によっては違法になる可能性があるため…
詳しくみる女性が使える「生理休暇」とは?休暇中は無給?取得のための手続きも解説!
働く女性にとって、生理による体調不良で生理休暇を取得することはプライベートでデリケートな問題であり、躊躇することが多いといわれています。 独身男性が上司の場合は結局言い出せず、有給休暇として処理することもあるようです。 今回は生理休暇につい…
詳しくみる介護休暇とは?同居していない場合や取得条件、介護休業との違いを解説
介護休暇は、介護を要する必要な家族を持つ従業員が取得できる法定休暇です。従業員が申し出れば、会社は原則として断ることができません。家族の世話や入院の付き添いをしながら働く従業員にとって、介護休暇制度は重要なサポートです。 こちらの記事では、…
詳しくみる過労死ラインは何時間?人事労務担当者が気をつけること
過労死ラインとは、健康被害に発展するリスクが高まる時間外労働の時間のことです。発症前1ヶ月間に100時間、2~6ヶ月間を平均し月80時間の時間外労働があると、業務と疾病との関連が強くなるとされています。この記事では、過労死や過労死ラインの定…
詳しくみる27連勤は違法?労働基準法に基づき分かりやすく解説!
27連勤ともなると、心身への負担は避けられず、日々の疲れが蓄積していくことで特有のきつさを感じます。 本記事では 「27連勤は違法なのか?」 という疑問を労働基準法に基づいて分かりやすく解説します。法令遵守はもちろん、従業員の健康や働きやす…
詳しくみる試用期間中に解雇はできる?不当解雇になるのかを解説
社員としての適性を判断するため、新規採用者に対して試用期間を設けることは一般的に認められています。試用期間中は通常よりも広い範囲での解雇が認められているものの、理由によっては不当解雇と判断されます。また入社後14日を過ぎてから解雇する場合は…
詳しくみる