• 作成日 : 2022年4月15日

障害者雇用納付金とは?うちの企業は制度の対象?

障害者雇用納付金とは?うちの企業は制度の対象?

常用雇用労働者数100人を超える民間企業には、「障害者雇用納付金」の申告・納付が義務付けられています。民間企業の障害者法定雇用率は2.3%で、未達成の場合には不足障害者1人につき1ヵ月5万円を納付する必要があります。納付された障害者雇用納付金は、障害者法定雇用率達成企業に交付される障害者雇用調整金や、各種助成金に用いられます。

障害者雇用納付金とは

雇用で不利な立場に立たされやすい障害者については、一定数以上の雇用が事業主に課せられています。障害者雇用率は雇用している労働者の人数に対する、雇用している障害者の人数の割合です。

障害者の雇用率については以下の通り定められています。

国・地方自治体2.6%
都道府県等の教育委員会2.5%
民間企業2.3%
特殊法人等2.6%

障害者雇用納付金制度が成立した背景

障害者雇用納付金は、障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)に基づく納付金制度です。障害者の雇用の促進を図ることを目的に、積極的に障害者を雇用している会社との費用負担の均衡を図るために設けられています。

障害者雇用には、スロープやトイレ、休憩スペースの設置などの費用がかかります。これらの費用を負担して障害者を積極的に雇用している法定雇用率達成企業と、そうではない法定雇用率未達成企業の費用負担格差を、是正する目的で採用されているのが障害者雇用納付金制度です。徴収された障害者雇用納付金は、法定雇用率を達成している会社に支払われる障害者雇用調整金の財源に用いられます。

障害者雇用納付金の対象となる企業

障害者法定雇用率を未達成としている常用雇用労働者100人を超える民間企業は、障害者雇用納付金を納付する必要があります。金額は障害者法定雇用率達成に不足している障害者1人につき、1ヵ月5万円です。対象期間1年間のうち、常用雇用労働者数100人超と計算される月が5ヵ月以上の企業に納付の義務があります。

障害者雇用納付金の各種手続き

障害者雇用納付金の申告と納付の手続きは、以下のように行います。

申告・納付期間4月1日から5月16日まで納付金額が100万円以上になる場合は、1/3ずつ、3期に分けて納付することができます。その場合の第2期分納付期限は8月1日、第3期分納付期限は11月30日です(2022年度の場合)
申告に必要な書類障害者雇用納付金申告書・障害者雇用状況等報告書申告に必要な書類は、申告申請書作成支援シート(マクロ機能使用のエクセル)、またはPDFを「独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構」のサイトからダウンロードして作成します。
提出先各都道府県支部申告窓口申告申請書作成支援シートを用いて電子申告申請データを作成し、電子申告申請システムを利用しての提出も可能です。

障害者雇用で必要な雇用状況報告書については、以下の記事をご覧ください。

障害者雇用納付金における注意点

障害者雇用納付金が納付されない場合は、追徴金・延滞金・延滞処分といった制度で徴収が行われます。計算では、常用雇用労働者数や常用障害者数の数え方に注意する必要があります。

罰金等はある?

障害者雇用納付金を未申告や未納付とした場合には、以下の流れで追徴金や延滞金の徴収・滞納処分が行われます。

(1)追徴金の徴収

障害者雇用納付金について申告しなかったり、申告に誤りがあって納付しなければならない障害者雇用納付金が未納付となっていたりする場合には、事業主に対して納入告知が行われます。その際には以下の金額の追徴金が課せられます。

追徴金の金額
納入告知金額(1000円未満切り捨て)×10%

(2)延滞金の徴収

障害者雇用納付金の申告後、あるいは納付告知後に未納付となっている場合には、事業主に対して支払期限を指定した督促が行われます。その際には以下の金額の延滞金が課せられます。

延滞金の金額
督促金額の支払期限の翌日から完納日・財産差し押さえ日の前日までの日数分の14.5%

(3)延滞処分

督促を受けたにも関わらず指定期限までに定められた金額を納付しなかった場合には、延滞処分が行われることがあります。

納付金の計算方法は?

障害者雇用納付金の計算は、以下の手順で行います。

(1)月ごとの常用雇用労働者数を計算する

障害者雇用納付金制度では、次の2点を満たす労働者を常用雇用労働者とします。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 1年を超えて雇用されること

所定労働時間によって短時間以外の常用雇用労働者と短時間労働者に区分し、それぞれ1人や0.5人としてカウントします。

常用雇用労働者数の数え方

1週間の所定労働時間1人につきカウントされる人数
短時間以外の常用雇用労働者30時間以上1人
短時間労働者20時間以上30時間未満0.5人

(2)除外率による計算を行う

障害者の雇用が難しい事業には、法定雇用率達成に必要な障害者数を少なくする、除外率が設けられています。除外率が設けられている場合には、次の計算を行います。

常用雇用労働者数-(常用雇用労働者数×除外率)

(3)月ごとの法定雇用障害者数を計算する

常用雇用労働者数、除外率が設定されている場合は、除外率による計算を行った数に法定雇用率(2.3%)をかけて、月ごとの法定雇用障害者数を計算します。

(4)1年分の法定雇用障害者数を求める

③の「月ごとの法定雇用障害者数」の値を合計します。

(5)月ごとの常用障害者数を計算する

雇用率の計算において1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者は、短時間労働者として1人を0.5人とカウントします。また障害の程度が重い身体障害者・知的障害者は、1人を2人とカウントします。

常用障害者数の数え方

1人につきカウントされる人数
短時間以外の常用雇用労働者のうち、重度の身体障害者・知的障害者2人
短時間以外の常用雇用労働者のうち、重度以外の身体障害者・重度以外の知的障害者・精神障害者1人
短時間の常用雇用労働者のうち、重度の身体障害者・重度の知的障害者1人
短時間の常用雇用労働者のうち、重度以外の身体障害者・重度以外の知的障害者・精神障害者0.5人

短時間労働者である精神障害者については以下の2つの条件を満たす場合、1人を0.5人とせずに1人とカウントします。

  • 新規雇入から3年以内か精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内であること
  • 令和5年3月31日までに雇われ、精神障害者保健福祉手帳を取得したこと

(6)1年分の法定雇用障害者数を求める

(5)の「月ごとの常用障害者数」の値を合計します。

(7)不足している障害者数を計算する

(4)の「1年分の法定雇用障害者数」の値から⑥の「1年分の法定雇用障害者数」の値を引いて、差を求めます。

(8)障害者雇用納付金を計算する

最後に(7)の「不足している障害者数」の値に5万円をかけ、障害者雇用納付金を算出します。

障害者雇用納付金を正しく申告・納付しよう

民間企業の障害者法定雇用率は2.3%で、労働者を43.5人以上雇用している場合に障害者を1人以上雇用することが求められます。障害者雇用納付金は、法定雇用率を達成していない企業が負担しなければならない納付金です。納付を怠ると追徴金や延滞金、延滞処分が課せられます。

障害者雇用納付金の対象となるのは、常用雇用労働者100人を超える民間企業です。常用雇用労働者を数える際、短時間労働者は0.5人、常用障害者数は重度の身体障害者・重度の知的障害者は2人とカウントされます。このような人数のカウント方法にも注意し、正しく申告・納付しましょう。

よくある質問

障害者雇用納付金とはなんですか?

民間企業の障害者法定雇用率は2.3%と定められていて、この率を達成していない場合に負担しなければならない納付金です。詳しくはこちらをご覧ください。

障害者雇用納付金の対象となる企業の条件について教えてください。

障害者法定雇用率を達成していない、常用雇用労働者数100人を超える民間企業が障害者雇用納付金の対象となります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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