- 更新日 : 2026年2月26日
ストレスチェックの方法とは?実施手順から事後措置までの実務を徹底解説
ストレスチェックは、正しい手順と事後措置まで実施して初めて有効です。
- 年1回以上の実施が原則
- 調査票は57項目が基本
- 面接指導と集団分析が要
Q. ストレスチェックで最も重要な点は?
A. 結果を放置せず、集団分析と職場改善まで行うことです。
労働安全衛生法で義務化されたストレスチェックは、企業のメンタルヘルス対策の要です。誤った運用は法的不備や不調の見逃しを招くため、正しい知識が欠かせません。本記事では、準備から事後措置までの実務と測定方法を体系的に解説します。初任者でも円滑に導入できるよう構成しましたので、組織の健全化に役立ててください。
目次
ストレスチェック制度の基本的な仕組みとは?
制度の全体像を把握することは、適切な運営を行うための第一歩となります。まずは、法律によって定められた基準や、この仕組みがどのような目的で導入されたのかを確認していきましょう。
参考:ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省
全事業場への義務化が予定されている法的な実施基準
労働安全衛生法の定めにより、これまでは常時50人以上の労働者を使用する事業場において、年に1回以上のストレスチェック実施が義務づけられてきました。しかし、近年の政府方針により、これまで努力義務に留まっていた50人未満の小規模事業場についても、全面的に義務化される見通しとなりました。この対象範囲には正社員のみならず、契約期間が1年以上で見込まれる者や、週の労働時間が通常の労働者の4分の3以上であるアルバイト・パートタイム労働者も含まれます。実施を怠った際のリスクを回避し、全ての働く人々が健康を維持できる環境を整えるため、規模を問わず迅速な準備を進める姿勢が欠かせません。
労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止する一次予防
本制度の最大の狙いは、労働者本人が自身のストレス状況に気づき、セルフケアを促すことや、職場環境の改善を通じてメンタルヘルスの不調を未然に防ぐ「一次予防」にあります。うつ病などの精神疾患に陥る前段階で対策を講じることで、休職者の減少や労働生産性の向上、さらには離職率の低下といった組織全体の活性化が期待できるでしょう。個人の健康増進と組織の健全な発展を両立させるための戦略的なツールとして、産業保健スタッフと連携しながら有効に活用していく姿勢が望ましいといえます。
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ストレスチェックを実施する際の手順はどう進める?
実施にあたっては、場当たり的な対応ではなく計画的な進行が不可欠です。社内の混乱を防ぎ、スムーズな受検を促すための標準的なフローを段階別に見ていきましょう。
実施体制の整備と社内規定の策定による事前準備
最初に取り組むべき事項は、実施責任者や実施者、共同実施者といった役割分担を明確に決めることです。あわせて、社内規定を作成して「誰が、いつ、どのように実施するのか」や「結果をどのように取り扱うか」を衛生委員会で審議し、従業員へ周知します。この段階でプライバシー保護に関する方針を全社的に共有しておくことで、従業員の不安を払拭し、正直な回答を得やすい土壌を整えることが可能となります。計画書を事前に作成し、スケジュールを可視化しておくことも円滑な進行を助ける大きな要因となるはずです。
調査票の配布と回収および未受検者への催促
計画に沿って全対象者へ調査票を配布します。メールや封書など手段を問わず、第三者に内容を見られない仕組みを整えることが前提条件となります。回収も会社が閲覧せず、外部機関や実施者が直接受け取る形式を採用しましょう。未回答者への催促はプライバシーを考慮しつつ、受検の意義を伝えて参加を促します。集計後は速やかに本人へ結果を返し、次なるアクションへの案内も併せて行いましょう。
参考:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省
医師による面接指導の勧奨と実施後の結果通知
集計された結果は、実施者から直接本人へ通知されます。このとき、一定の基準を超えた高ストレス者に対しては、本人の申し出により医師による面接指導を受けられる旨を併せて案内します。結果の通知を受けた従業員が、自分一人の判断で抱え込まないよう、相談窓口の情報を提示することも有効な手段となります。会社側は、本人の同意がない限り詳細な検査結果を把握することはできませんが、面接指導の希望があった場合には速やかに医師との日程調整を行い、適切なケアを受けられる環境を整える義務を負うことになります。
ストレスチェックの具体的な測定方法には何がある?
適切な診断を行うためには、信頼性の高い測定ツールを選ぶことが肝要です。現在、多くの企業で採用されている標準的な手法と、その特徴について詳しく解説いたします。
厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」の活用
標準的な測定手法として広く普及しているのが、全57項目から構成される「職業性ストレス簡易調査票」です。これは仕事の負担や心身の反応、周囲のサポート状況を網羅的に測定できるよう設計されており、科学的な根拠に基づいた信頼性の高いデータを得ることができます。さらに詳細な分析を行いたい場合には、80項目や120項目といった新職業性ストレス簡易調査票を選択することも可能です。自社の組織課題や調査の目的に合わせて、適切な項目数を選択することが、より精度の高いメンタルヘルスチェックの実現に寄与します。
紙媒体による配布回答とオンラインシステムによるWeb受検
実施の方法には、紙の調査票を用いる形式と、パソコンやスマートフォンを利用したWeb受検形式の二種類があります。紙媒体はPC環境が整っていない工場や現場作業が多い職場でも導入しやすい反面、配布や回収の手間、データ化のコストが発生します。一方でWeb受検は、集計が自動で行われるためスピード感のある対応が可能であり、匿名性の確保もシステム上で制御しやすいという利点があります。リモートワークが普及した現代においては、場所を問わずに回答できるWeb形式を導入する企業が増加傾向にあり、利便性の向上が受検率の向上にも直結しています。
職場のストレス要因や心身の反応を把握する質問項目
調査票は、主に三つの領域を測定するように構成されています。第一に「仕事のストレス要因」として、業務量や裁量権、職場の人間関係などを問い、第二に「心身のストレス反応」として、不安感や疲労感、身体的な痛みなどを確認します。そして第三に「周囲のサポート」として、上司や同僚、家族からの支援がどの程度あるかを評価します。これらを掛け合わせて分析することで、本人が自覚している以上の負荷を可視化し、適切な対策を講じるための客観的な指標を得ることができます。個人の項目が意図する意味を正しく理解し、正答を導き出すことが正確な判定の鍵となります。
受検結果はどのように評価し判定する?
集められたデータは、一定のアルゴリズムに基づいて数値化され、個人の状態が判定されます。公平かつ正確な判定を行うための基準と、その後の管理方法について詳述します。
高ストレス者の選定基準と評価数値の算出
高ストレス者の判定は、医師等の実施者があらかじめ定めた基準に沿って行います。心身の反応が強く出ている場合や、仕事の負荷に対して周囲の支援が不足している状態が主な判定材料となります。国が示す標準的な基準を軸としつつ、自社の実情に合わせた微調整も可能ですが、透明性の高い客観的な運用を継続することが欠かせません。また、判定結果は秘匿性の高い個人情報であるため、厳重な管理体制を敷く必要があります。不適切な取り扱いは制度の信頼性を著しく損なう要因となるため、細心の注意を払わなければなりません。
個人のプライバシーを保護するための厳格な情報管理
ストレスチェックの結果は、実施者から本人へ直接通知され、会社側が本人の同意なくその内容を知ることは法律で禁じられています。結果を管理する担当者は、守秘義務を遵守し、施錠管理された書庫やアクセス制限をかけたデジタルフォルダで厳重に保管しなければなりません。また、検査結果を理由とした人事評価への悪影響や、不当な不利益取扱いを一切行わないことを明文化し、全社に公表しておくことも欠かせません。従業員が安心して受検できる環境を保証することこそが、本音の回答を引き出し、実効性のある制度運用を実現するための基盤となります。
集団分析を活用した職場環境の改善とリスク把握
個人の結果を部署や課単位で集計・分析することを「集団分析」と呼びます。10人以上の単位であれば、個人の特定を避けた状態で、どの部署でストレスが高いのかを客観的に把握することが可能となります。これにより、過重労働が発生している部署の特定や、人間関係のトラブルが潜在しているエリアの早期発見に役立てることができます。集団分析の結果を基に職場環境改善ワークショップを開催したり、業務フローの見直しを行ったりすることで、個人のストレス耐性に頼らない、組織的なメンタルヘルス対策を推進できるはずです。
面接指導や事後措置はどのように対応する?
高ストレス者へのフォローアップは、企業の安全配慮義務を果たす上で避けては通れない領域です。医師による直接的な介入と、その後の具体的な措置について整理します。
本人からの申し出に基づく医師による対面指導
高ストレス者と判定された従業員から面接の申し出があった場合、企業は1ヶ月以内に医師による面接指導を設定しなければなりません。面接では、医師が本人の勤務状況や疲労の蓄積度合い、心理的な負担を確認し、現在の就業が継続可能であるかを医学的見地から判断します。この面接指導は対面で行われるのが原則ですが、要件を満たせばオンラインでの実施も認められています。本人が安心して医師に胸の内を明かせるよう、相談しやすい時間帯の設定や、面接場所のプライバシー確保に配慮することも企業の役割の一部となります。
参考:医学的知見に基づくストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面接指導実施のためのマニュアル|厚生労働省
医師の意見を反映した就業場所の変更や労働時間の短縮
医師からの報告に基づき、企業は適切な事後措置を講じる義務があります。例を挙げますと、時間外労働の制限や、出張の禁止、業務内容の軽減、さらには配置転換などが検討の対象となります。これらの措置を決定する際は、本人の意向を十分に尊重しつつ、人事担当者と現場の上司が連携して具体的なアクションプランを策定します。適切な措置を講じることで症状の悪化を防ぎ、休職という最悪の事態を回避することに繋がります。企業の安全配慮義務を履行する観点からも、医師の意見を真摯に受け止め、迅速に実行に移す姿勢が誠実な対応といえます。
労働基準監督署への実施報告書の提出義務
ストレスチェックの実施期間終了後、50人以上の事業場は「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を管轄の労働基準監督署へ提出しなければなりません。これには、受検人数や面接指導を受けた人数などを記載します。報告書の提出は年度ごとに行う必要があり、実施した事実を公的に証明する主要な手続きとなります。提出を失念すると法令違反と見なされる恐れがあるため、実施サイクルの最後に必ず組み込んでおくべきタスクです。産業医の氏名などを含めて正確に記載することが必要となるため、余裕を持ったスケジュールで書類を準備しておくことが賢明です。
ストレスチェックを効果的に運用するポイントは?
制度を形骸化させず、実のあるものにするためには、現場の理解と協力が不可欠です。運用を成功に導くための付加価値的な工夫について提案します。
受検率を向上させるための周知徹底と不利益取扱いの禁止
受検率が低い状態では、組織の真の課題を把握することができません。まずは受検の目的が「従業員の健康を守ること」にあることを繰り返しアナウンスし、回答内容によって査定に響くことは絶対にないという安心感を醸成することが先決です。社内報や掲示板、イントラネットを活用して、制度のメリットを分かりやすく伝えましょう。また、管理職に対してもストレスチェックの意義を正しく教育し、部下への受検推奨を適切な形で行えるようサポートすることも、組織全体の意識改革を促す上で高い効果を発揮します。
外部機関であるEAPや産業医との円滑な連携体制
ストレスチェックの結果を最大限に活用するためには、産業医や外部のEAP(従業員支援プログラム)機関との強固な連携が力強い支えとなります。複雑なケースの面接指導や、高ストレス者への継続的なカウンセリング、職場環境改善のアドバイスなど、プロフェッショナルの視点を取り入れることで、社内の担当者だけでは解消できない課題にも対処できるようになります。契約している産業医と定期的に意見交換を行い、自社のストレス傾向を共有しておくことで、有事の際の迅速な対応が可能となるでしょう。外部リソースを賢く活用することは、担当者の負担軽減にも大きく寄与します。
単なる検査に留めない継続的なメンタルヘルスケアの構築
ストレスチェックはあくまで「健康診断」の一種であり、結果が出た後のアクションこそが本番です。定期的な検査を軸に据えつつ、日常的な声かけや、セルフケア研修、ラインケア教育といった多様な施策を組み合わせることで、多層的なメンタルヘルスケア体制を築くことができます。年を追うごとにデータを蓄積し、施策の効果を検証していくことで、自社の最適案を磨き続ける姿勢が理想的です。従業員が心身ともに健やかに働ける職場を作ることは、最終的に企業の競争力を高めることへと繋がっていきます。
ストレスチェックの適切な方法を理解し健全な職場環境を築く
ストレスチェックは義務の履行に留まらず、従業員の心を守り組織を活性化させる基盤です。適正な手順と情報の厳重管理を徹底すれば、社内の信頼関係はより深まります。集団分析や事後措置を確実に実行し、専門家と連携しながら環境改善を継続することが、持続可能な経営の実現には欠かせません。本記事の内容を指針として、実効性のあるメンタルヘルス対策を推進していきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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