- 更新日 : 2026年1月28日
週20時間を超えたり超えなかったりすると社会保険はどうなる?加入条件と実務対応を解説
労働時間が「週20時間」を超えたり超えなかったりする場合、社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険への加入が必要かどうかの判断は非常に悩ましい問題です。原則として、一時的な超過であれば加入は不要ですが、その状態が常態化しているとみなされれば加入義務が生じます。
この記事では、人事労務担当者に向けて「1回だけ超えたら?」「月8.8万円以下の場合は?」といった迷いやすいケースの判定基準や実務対応を解説します。月87時間の目安や契約変更のタイミングなど、曖昧な運用による未加入リスクを防ぐための具体的な知識を網羅しました。
目次
労働時間が週20時間を超えたり超えなかったりする際の基本ルールは?
このケースでは、原則として「雇用契約書上の所定労働時間」が判断の基準となります。ただし、実態が契約と大きく異なる場合は実態が優先されるため、契約と実態の両方の側面からの確認が不可欠です。
そもそも社会保険の「週20時間」基準とは?
週20時間というラインは、雇用保険および特定適用事業所におけるパートタイム労働者の社会保険加入義務が生じる重要な法的境界線です。この基準は、繁忙期の一時的な超過ではなく、あくまで契約上の「所定労働時間」で判定されます。
原則として「所定労働時間(雇用契約書で定めた時間)」で判断するため、一時的な超過なら加入は不要です。これは、健康保険法および厚生年金保険法において、加入要件の時間は「所定労働時間」と定義されており、突発的な残業等の時間は含まない運用となっているためです。
具体的には、「週20時間」の壁は以下の2つの保険制度で重要な意味を持ちます。
- 雇用保険: 週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合に加入。
- 社会保険(健康保険・厚生年金): 特定適用事業所(従業員51人以上など)において、週20時間以上かつ月額賃金8.8万円以上などの要件を満たす場合に加入。
基本的には契約書に記載された時間が週20時間未満であれば、たまたま忙しい週に20時間を超えても直ちに加入義務は発生しません。しかし、実態が契約とかけ離れている場合は、行政調査において実態優先で判断されるリスクがあります。
雇用保険と社会保険(健保・厚年)の違い
「週20時間」は共通の目安ですが、適用条件は異なります。特に雇用保険は企業規模に関わらず対象が広いため注意が必要です。
雇用保険は規模に関わらず加入必須ですが、社会保険は企業規模や賃金要件(106万円の壁)も満たす必要があります。根拠法が異なるため、要件も個別に設定されています。
| 項目 | 雇用保険 | 社会保険(健康保険・厚生年金) |
|---|---|---|
| 週の労働時間 | 週20時間以上 | 週20時間以上 |
| 雇用見込み | 31日以上 | 2ヶ月を超えて使用される見込み |
| 賃金要件 | 特になし | 月額8.8万円以上 |
| 適用事業所 | 従業員1人以上 | 従業員51人以上(※特定適用事業所) |
| 学生の扱い | 原則対象外(夜間等除く) | 原則対象外 |
雇用保険は「週20時間」を超えれば即加入ですが、社会保険は小規模企業(50人以下)であれば、正社員の4分の3以上という要件を満たせないことの多い「週30時間未満」は対象外となるケースもあります。両者を混同せず管理しましょう。
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シフト制における「週20時間」の計算方法は?
固定勤務ではないシフト制の場合、契約書上の時間が曖昧になりがちで、より慎重な計算が求められます。ここでは契約記載の有無に応じた、正しい時間の算出方法を解説します。
契約時間が決まっている場合
契約書に明確な時間が記載されているなら、基本的にはその数字が正となります。しかし、実態との乖離が著しい場合は形式上の契約が無効とみなされることもあるため注意してください。
この場合は、「雇用契約書」に記載された週所定労働時間をそのまま基準として扱います。行政解釈においても、所定労働時間は原則として就業規則や雇用契約書等の定めによるとされているためです。
例えば「月・水・金の週3日、1日6時間勤務」と契約書にあれば、週18時間となり、加入要件(週20時間)を満たしません。この契約が実態と合致している限り、計算などの手間はなく判断はシンプルです。
週によって勤務時間が異なる場合
シフト制のように週によって勤務時間が異なる場合は、「1ヶ月の所定労働時間」を「週単位」に換算して算出します。
特定の週だけを切り取って判断すると、加入・喪失を頻繁に繰り返すことになり制度の趣旨に反するため、以下の換算式を用います。
上記計算式を用いた場合、週20時間の目安は月所定労働時間が87時間以上となります。
【ケース別】実労働時間が変動する場合の判断基準は?
労働時間が変動する場合、「一時的なものか」「常態化しているか」によって対応が分かれます。ここでは、発生頻度や期間に応じた3つのパターンごとの判断基準を解説します。
一時的に週20時間を超える場合
繁忙期や欠員対応などで一時的に増えただけなら、社会保険への加入は不要です。
例えば、突発的な残業で「1回だけ」「2回だけ」週20時間を超えてしまった程度であれば、直ちに加入義務は生じません。日本年金機構等の見解でも、業務都合による一時的な超過は「所定労働時間の変更」とはみなされないためです。
- 他の従業員の急病対応(穴埋め)
- 年末年始やセール時期のみの残業増
こうしたケースでは契約変更も不要ですが、後日の調査で「常態化」と疑われないよう、勤怠データの備考欄に「欠勤対応のため増員」等の理由を必ず記録しておきましょう。
超えたり超えなかったりが頻繁に繰り返される場合
変動が頻繁で実態が曖昧な場合は、数ヶ月単位の平均労働時間や勤務実績の連続性を見て判断します。実質的に週20時間以上が常態化しているとみなされれば、遡及加入のリスクが生じます。
概ね2ヶ月連続して週20時間を超える実績がある場合、加入指導の対象となる可能性が高いと言えます。実務上の運用基準として、労働条件の変更が実態として認められる期間の目安が「2ヶ月」とされることが多いためです。
「今月は週22時間、来月は週18時間」といった変動が頻繁にある場合、行政調査では以下のポイントが見られます。
- ならして平均週20時間を超えているか?
- 2ヶ月以上連続して超過しているか?
特に2ヶ月連続して要件を超過し、3ヶ月目も同様の見込みである場合は、「実態としての契約が変更された」とみなされ、遡って加入を求められるケースがあります。このような曖昧な状態が一番リスクが高いため、早めに実態に合わせた契約変更を検討すべきです。
完全に常態化して週20時間を超えるようになった場合
実態として週20時間超えが定着したら、速やかに契約変更と加入手続きを行ってください。放置すると未加入期間の保険料を遡及徴収されるリスクがあります。
恒常的な超過が見込まれた時点で、契約変更と加入手続きが必要です。実態が変われば新たな労働契約が成立したとみなされ、法律上その時点から資格取得義務が生じるためです。
たとえ当初の契約が週15時間でも、実働週25時間が定着すれば「週25時間の労働者」として扱われます。 手続きは「恒常的に超えることになった月」の初日(または変更日)から行います。対応が遅れると、過去分の保険料を一括徴収することになり、従業員トラブルの大きな原因となります。
社会保険の適用拡大による影響(106万円の壁)は?
法改正により、社会保険の適用範囲は年々広がっています。特に従業員数が多い企業では、新たな加入義務が発生する可能性が高く、制度理解が不可欠です。
従業員数51人以上の企業で義務化された新ルール
2024年10月より、従業員数51人以上の企業において社会保険の適用範囲が拡大されました。自社が対象か再確認が必要です。
特に、従業員数51人以上の企業では、週20時間以上・月額8.8万円以上で加入義務が発生します。法改正により特定適用事業所の要件が「101人以上」から「51人以上」へ引き下げられたためです。
従来は「週30時間」が目安でしたが、近年は一定規模以上の企業で勤務する短時間労働者への網が広がっています。「51人」は法人単位の厚生年金被保険者数でカウントします。まずは自社が該当するかを確認してください。
「週20時間変動層」が最も影響を受ける理由
今回のテーマである「週20時間変動層」は、制度の境界線上にいるため最も注意が必要です。少しのシフト増で加入対象となる可能性が高いためです。
彼らは月額賃金も8.8万円(年収約106万円)前後であることが多く、いわゆる「106万円の壁」の対象者と重なります。法改正を意識せず従来通りのシフトを組むと、意図しない「隠れ加入漏れ」になりかねません。
手取り減少に敏感な層でもあるため、厳密に時間を管理するか、説明の上で加入を促すか、明確な対応が迫られます。
社会保険・雇用保険の加入漏れを防ぐための確認手順
意図しない社会保険や雇用保険の加入漏れを防ぐには、定期的な労働時間のモニタリングと、従業員本人へのヒアリングが欠かせません。ここでは、人事担当者が具体的に実行すべき3つのステップを紹介します。
ステップ1:現状の労働時間のモニタリング
まずは勤怠データを活用し、直近の実労働時間が契約時間を超過していないか事実確認を行います。特に3ヶ月連続で基準を超えている従業員は、重点的なチェック対象となります。
まず、直近3ヶ月のタイムカードや勤怠データを確認し、平均週労働時間を算出してください。労働基準監督署や年金事務所の調査では、過去の出勤簿(タイムカード)が事実認定の最重要資料となるためです。
以下の手順で確認します。
- パート・アルバイトの勤怠データを抽出する。
- 各月の総労働時間を計算し、実際の週ごとの時間を集計する。
- 契約時間は週20時間未満なのに、実績が週20時間を超えている人をリストアップする。
- 特に「扶養内」を希望している従業員については、年収の壁(130万円、106万円)に抵触していないかも併せて確認します。
ステップ2:超過理由のヒアリングと記録
超過が確認された場合、それが一時的な事情によるものか、業務量の増加によるものかを明確にする必要があります。理由は口頭で済ませず、必ず記録として残すことで将来の調査対策となります。
現場責任者等に超過理由を確認し、「一時的」か「恒常的」かを分類・記録してください。理由が明確でない超過は、なし崩し的な契約変更とみなされるリスクがあるため、証拠保全が必要だからです。
- 一時的な場合: 「〇月〇日~〇日はセール対応のため」等の理由を勤怠管理システムや管理簿にメモしておきます。
- 恒常的な場合: 特定の理由なくシフトが増えている、あるいは本人がもっと働きたいと言っている場合は、次のステップへ進みます。
ステップ3:本人への説明と契約変更・加入手続き
常態化が確認されたら、対象者と今後の働き方を相談し、契約内容を更新する手続きに入ります。本人の希望と会社の法的義務をすり合わせ、トラブルのない移行を目指します。
本人と面談し、「加入して働く」か「時間を抑える」かを選択させ、契約書を再締結します。労働条件の変更には労使の合意(契約書の締結)が必要であり、保険加入は手取り額に直結する重要事項であるためです。
面談の際は、保険加入によるメリット(雇用保険の失業給付、社会保険の将来の年金額増など)と、手取り減少の可能性をシミュレーションして提示します。
- 加入する場合:資格取得届を提出します。労働条件通知書も改めて交付することが望ましいでしょう。
- 抑える場合:所属部署にシフト調整を指示し、確実に週20時間未満になるよう管理を徹底します。
週20時間を超えたり超えなかったりする際の未加入防止策
未加入リスクを回避する鍵は、書面による契約管理の徹底と、運用ルールの明確化です。
労働条件の定期的な見直し
どのような労働条件で雇用されているのかを定期的に見直し、20時間を超えないようにするか、超えているのであれば速やかに加入手続きを取ることが大切です。実態と契約がずれているようであれば、本人の希望を踏まえて労働条件を変更します。シフトパターンの変更時も注意が必要です。
曖昧なシフト管理からの脱却と方針決定
「週20時間を超えたり超えなかったり」という曖昧な状態を放置せず、会社として運用方針を明確にしてください。
「週20時間未満に厳格に抑える」か、「週20時間以上として加入させる」か、どちらかに決めて運用すべきです。中途半端な管理は法令違反のリスクを高めます。
- 抑える場合: アラート基準を設け、確実に超えないよう調整を徹底する。
- 加入する場合: 本人同意の上で契約時間を引き上げ、堂々と適用する。
この方針決定を、定期面談や契約更新フローに組み込むことを推奨します。
週20時間の判定に関してよくある質問(Q&A)
Q1. 残業でたまたま20時間を超えた週が続いたらどうなりますか?
一時的な残業増は「所定労働時間」に含まれないため、即座に加入とはなりませんが、常態化には注意が必要です。
1ヶ月だけなら問題ありませんが、2ヶ月以上続き、3ヶ月目も同様となる見込みであれば、契約変更と加入を検討してください。長期化すると「恒常的」とみなされ、実態優先で判断される可能性があるためです。
業務量が増えたまま戻る見込みがない場合は、実態に合わせて契約時間を変更し、遡及加入手続きを取るのが安全です。
Q2. 2つの会社で働いていて、合計で週20時間を超える場合は?
社会保険の加入要件は事業所ごとに判断されるため、合算で20時間を超えても各社での加入義務はありません。
社会保険・雇用保険ともに適用は「事業所単位」であるためです。A社で15時間、B社で10時間(計25時間)働いていても、各社単独で要件を満たさない限り対象外です。
ただし、65歳以上の労働者については、2社の労働時間を合算して雇用保険に加入できる「マルチジョブホルダー制度」という例外があります。
Q3. 月88,000円以下だけど週20時間以上働いている場合は?
「雇用保険」のみ加入し、「社会保険(健保・厚年)」は加入しないというケースが発生します。
週20時間以上(かつ31日以上見込み)であれば、賃金額に関わらず雇用保険は加入必須です。一方、社会保険は、週の所定労働時間が通常の社員の4分の3未満(週30時間未満など)であれば、「週20時間以上」かつ「月額8.8万円以上」の両方を満たす必要があるため時間が超えていても賃金が要件未満なら加入対象外となります。
週20時間を超えたり超えなかったりする場合の未加入リスクを防ごう
週20時間を「超えたり超えなかったり」する場合、原則は契約時間が基準ですが、実態が常態化すれば加入義務が生じます。「1回だけ」のような一時的な超過であれば加入不要ですが、必ず理由を記録して証拠を残しましょう。
最も重要なのは、曖昧な状態を放置しないことです。「厳格に時間を抑える」か「契約変更して加入する」か、方針を明確にして運用することが、将来の未加入リスクや労使トラブルを防ぐ最善策です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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