• 更新日 : 2026年1月14日

エビングハウスの忘却曲線とは?ビジネスでの記憶定着を高める学習法を解説

人は学んだ内容の多くを、時間が経つほど忘れていきます。

この記憶が失われるメカニズムを数値化したのが、心理学者エビングハウスの忘却曲線です。

忘却曲線を理解すると、私たちがなぜ覚えられないのか、どのようにすれば記憶が長く残るのかが明確になります。

さらにこの理論は、個人の勉強だけでなく、企業研修・OJT・マニュアル運用など、ビジネスの現場でも大きな効果を発揮します。

本記事では、エビングハウスの忘却曲線の概要と実験結果、記憶定着を高める学習法、研修や社内教育に応用する具体的な方法までを体系的にまとめました。

社員教育の質を上げたい人事担当者・管理職の方はぜひ参考にしてください。

エビングハウスの忘却曲線とは?

エビングハウスの忘却曲線とは、学習内容をどの程度の速さで忘れていくのかを数値で示した理論です。

時間の経過と記憶保持率の関係を可視化した点が特徴で、現在の記憶研究や学習理論の土台となっている理論です。

この理論によると、記憶は少しずつ均等に失われるのではなく、学習直後から急速に減少します。

この忘却の進み方を曲線として示したことで、「いつ復習すればよいのか」「どのタイミングで知識が抜けやすいのか」を客観的に把握できるようになりました。

現在では、学校教育や資格学習だけでなく、社内研修・マニュアルの定着・業務引き継ぎといったビジネス領域でも活用されており、効率的な知識定着を考えるうえで欠かせない考え方といえるでしょう。

エビングハウスとは?

エビングハウスは、19世紀後半に活躍したドイツの心理学者で、人間の「記憶」を科学的に研究した先駆者として知られています。

それまで感覚的に語られることが多かった記憶の仕組みを、実験によって客観的に明らかにしようとした人物です。

エビングハウスは、意味や感情の影響を排除するために、無意味綴りと呼ばれるランダムな文字列を使った記憶実験を行いました。

実験では、覚えた内容が時間の経過とともにどの程度保持されるのかを継続的に記録しています。

その結果、記憶は一定のペースで失われるのではなく、学習直後に急激に減少し、その後ゆるやかに忘れていくという特徴があることがわかりました。

この時間経過と記憶保持率の関係を視覚的に表したものが、エビングハウスの忘却曲線です。

記憶の種類

人の記憶は主に短期記憶と長期記憶に分けられます。

短期記憶とは、保持できる時間が短く、反復や意味づけがないと忘れやすい記憶を指します。

一方で、長期記憶とは、情報に意味を持たせたり、反復学習を行ったりすることで長く定着しやすくなる記憶のことです。

エビングハウスの忘却曲線は、短期記憶が急激に失われる仕組みを示し、適切な復習によって長期記憶へ移行させることが重要であることを示しています。

エビングハウスの忘却曲線を理解することで、効率的な学習設計や、記憶に残る研修教材・業務マニュアルの作成につなげられるでしょう。

エビングハウスの忘却曲線の実験結果

エビングハウスの忘却曲線は、記憶がどのように減衰していくかを実験によって数値化した点に特徴があります。実験結果を理解すると、効果的な復習タイミングや記憶を定着させる工夫を考えやすくなります。

記憶の減衰グラフ・節約率

エビングハウスは、学習内容をもう一度覚え直す際に、学習時間をどの程度短縮できるかという視点から節約率という概念を定義しました。

節約率とは、再学習にかかる時間がどの程度減るかを示す指標で、数値が高いほど記憶が脳内に残っている状態を意味します。

節約率が高いほど、少ない時間で思い出せる、つまり記憶が定着している状態だといえるでしょう。

忘却曲線のグラフを見ると、学習直後は記憶が急速に失われ、その後はなだらかなカーブを描きながら忘却が進んでいきます。

理由として、短期記憶が急速に失われる一方で、意味づけされた情報や繰り返し触れた内容が、徐々に長期記憶として残っていくためです。

節約率の推移にも同じ傾向が見られ、学習直後は再学習に必要な時間が増えますが、時間が経つにつれて忘却の進行がゆるやかになる状態に近づき、節約率の変化はゆるやかになります。

さらに、適切なタイミングで復習を挟むことで、節約率は再び高まり、忘却曲線の傾きも大きく緩和されます。

復習によって忘れかけた記憶を再活性化することで、記憶の寿命を延ばせるのです。

実際の数値

エビングハウスの実験で示されている節約率の数値は、以下の通りです。

経過時間節約率
20分後約58%
1時間後約44%
1日後約34%
1週間後約25%

学習後は時間の経過とともに節約率が低下し、覚え直すために必要な時間が長くなっていきます。

したがって、学習後すぐに復習を行い、その後も定期的に復習することが記憶効率を左右するポイントといえるでしょう。

エビングハウスの忘却曲線を使った効果的な学習法

エビングハウスの忘却曲線は、人がどのタイミングで記憶を失いやすいかを示した理論です。ここでは、忘却曲線を使った効果的な学習方法を紹介します。

間隔を空けて復習する

忘却曲線の特徴を活かすうえで重要なのが、復習のタイミングを適切に設定することです。

具体的には、次のように復習間隔を徐々に広げていく方法が効果的とされています。

  • 最初の学習から20分後に軽く復習する
  • 翌日にもう一度復習する
  • 1週間後に内容を確認する
  • 1ヶ月後に総復習する

復習間隔を広げていくことで、脳はこの情報は重要だと判断し、長期記憶として保存しやすくなります。

毎回長時間学習する必要はなく、短時間でも繰り返し復習することが定着率向上につながるでしょう。

インプットよりアウトプットの比率を高める

記憶を定着させるためには、ただ読む・聞くといったインプット中心の学習だけでは不十分です。

忘却曲線をゆるやかにするうえで有効なのが、アウトプットを意識した学習です。

  • 問題を解いて思い出す
  • 学んだ内容を口に出して説明する
  • テスト形式で知識を確認する

「思い出そうとする行為」そのものが記憶を強化するため、アウトプット中心の学習は忘却を防ぐ効果が高いとされています。

また、人に説明してみることで理解が浅い部分が明確になり、効率的な復習にもつながります。

学習内容を関連づけて整理する

記憶は単独の情報として覚えるよりも、関連づけて整理することで定着しやすくなります。

学習内容を次のような形で整理すると効果的です。

  • 背景や理由とセットで覚える
  • 似た概念や対になる情報を結びつける
  • 図やマインドマップで構造化する

複数の情報がネットワーク状につながることで、部分的に忘れても別の情報から思い出しやすくなります。

とくに図解や関係性を意識した整理は、長期記憶への移行を助ける有効な手段といえるでしょう。

エビングハウスの忘却曲線を活用した学習スケジュール例

忘却曲線を踏まえた学習では、「いつ復習するか」をあらかじめ決めておくことが重要です。

代表的なスケジュール例は以下の通りです。

  • 初回学習後、20〜30分以内に短時間で復習する
  • 翌日に2回目の復習を行い、記憶の定着を強化する
  • 1週間後に3回目の復習を行い、長期記憶として安定させる

この流れを意識することで、無駄な学習時間を減らしながら効率的に知識を定着させられます。

たとえば、資格試験の勉強では重要論点の見直しを行い、業務マニュアルの習得では操作手順を再確認するなど、目的に応じて復習内容を調整すれば、より実践的に活用できます。

忘却曲線を意識した学習スケジュールは、勉強時間を有効活用したい人にとって、非常に再現性の高い方法といえるでしょう。

【ビジネスシーン】エビングハウスの忘却曲線を活用する方法

エビングハウスの忘却曲線は、学習や研修の分野だけでなく、ビジネスシーンでも実用性の高い理論です。ここでは、代表的なビジネス現場での活用シーンを具体的に紹介します。

研修プログラム

研修プログラムでは、復習を前提にした設計が重要です。

一度の研修で理解させようとするのではなく、時間を空けた再接触を組み込むことで定着度が変わります。

具体的には以下のような進め方がよいでしょう。

  • 研修後20分、1日後、1週間後と段階的に振り返りを実施する
  • 動画研修やeラーニングに確認テストやミニクイズを挿入する
  • 座学だけでなく演習やロールプレイングでアウトプットの機会を設ける

このような設計により、「聞いたことがある」状態で終わらせず、実務で使える知識として定着させやすくなります。

とくにアウトプットを伴う研修は、忘却曲線の落ち込みをゆるやかにする効果が期待できるでしょう。

OJT・マニュアル

OJTや業務マニュアルの内容を効率的に定着させるには、忘却曲線を活用するのがおすすめです。一度説明しただけでは、多くの内容が短期間で失われてしまいます。

そのため、以下のようなポイントを意識してOJT・マニュアルを実施してください。

  • マニュアルを読むだけでなく、実務で繰り返し使う前提にする
  • 新人教育では1日後・1週間後に再確認や再指導の時間を設ける
  • チェックリストやQ&A集を用意し、必要なときに見返せる状態にする

思い出す機会を意図的に作ることで、業務知識が長期記憶として定着しやすくなります。

結果として、属人化の防止や教育コストの削減にもつながるでしょう。

社内ツール

社内ツールを活用すれば、忘却曲線に沿った復習を仕組み化することが可能です。

人の記憶に頼るのではなく、システムで自然に繰り返し触れる機会をつくる点がポイントです。

  • 社内SNSやLMS(学習管理システム)でリマインドを自動配信する
  • 数分で完結するマイクロラーニングを定期的に配信する
  • 重要なナレッジを動画、スライド、チャットなど複数形式で提供する

接触回数を増やすことで、同じ内容でも記憶に残りやすくなります。

とくに忙しい現場では、短時間で確認できる仕組みを整えることで、学習の継続率と定着率を同時に高められるでしょう。

【ビジネスシーン】エビングハウスの忘却曲線を活用する際のポイント

エビングハウスの忘却曲線をビジネスに活かすためには、単に理論を知るだけでは不十分です。ここでは、実務で活用する際に押さえておきたい重要なポイントを解説します。

復習タイミングを可視化してルール化する

忘却曲線を活かすうえで、「復習を個人任せにしない」ことは大切なポイントです。

復習のタイミングが曖昧だと、忙しさを理由に後回しにされ、結果として定着しません。

復習する際は以下を意識して進めるようにしましょう。

  • 研修計画やOJT設計の中に復習日をあらかじめ組み込む
  • 20分後、1日後、1週間後といった基本サイクルをテンプレート化する
  • リマインド通知で復習タイミングを自動的に知らせる

復習をルールとして明示することで、属人的な努力に頼らない再現性の高い運用が可能になります。

現場の負担を減らしつつ、安定した学習定着を実現できる点がメリットです。

学習量より定着率を優先して設計する

ビジネス研修では一度に多く教えたいという発想になりがちですが、忘却曲線の観点では逆効果になる場合があります。

定着率を軸に考えることで、研修後の「知っているが使えない」状態を防ぎやすくなります。

具体的には以下を確認しましょう。

  • 大量の内容を一度に教えるよりも、重要項目を絞って反復する
  • 必須スキルや重要業務に優先順位をつける
  • 繰り返し触れる前提で研修全体を設計する

学習量ではなく「業務で使える状態でどれだけ残っているか」が重要です。

結果として、研修の実務効果が明確になり、現場からの評価も高まりやすいでしょう。

学習者の負担が少ない仕組みを作る

復習が定着しない理由のひとつは、「時間が取れない」「面倒に感じる」といった心理的・物理的な負担です。

そのため、学習者の負担を最小限に抑える設計が欠かせません。

以下のような負担の少ない仕組みを取り入れてみましょう。

  • 1回5分程度で完結するミニクイズやショート動画を活用する
  • 自動通知や履歴管理で復習を仕組み化する
  • 隙間時間で取り組める形式を前提に設計する

負担が軽いほど継続率は高まり、結果的に忘却曲線の影響を抑えやすくなります。

頑張らなくても自然に復習できる状態を作ることが、長期的な定着支援につながります。

定着状況を測定し改善につなげる

忘却曲線を活用した施策は、実施したままにすると効果が見えにくいため、定着状況を可視化し、改善につなげる仕組みが重要です。

以下のように定着状況を測定できる取り組みを意識しましょう。

  • 理解度テストや確認クイズで知識の定着度を測る
  • ロールプレイや業務パフォーマンスで実践レベルを確認する
  • 定着率が低い項目は復習頻度や内容を見直す

数値や行動で効果を把握することで、研修の投資対効果が明確になります。

また、学習データを蓄積すれば、翌年以降の研修を設計する精度の向上が期待でき、組織全体の学習力強化につながるでしょう。


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