- 更新日 : 2026年1月14日
コルブの経験学習モデルとは?プロセスや組織に定着させる方法、具体例を解説
コルブの経験学習モデルとは、日々の仕事や活動で得た経験を、成長につながる学びへと変えるための考え方です。
「研修やOJTを実施しても人が育たない」「経験を積ませているのに同じ失敗を繰り返す」といった課題の背景には、経験を振り返り、次の行動に活かす仕組みが不足しているケースがあります。
本記事では、コルブの経験学習モデルの基本的な考え方や4つのプロセス、組織に定着させる方法を解説します。経験を成果や成長につなげたい方は、参考にしてください。
目次
コルブの経験学習モデルとは?
コルブの経験学習モデルとは、経験を振り返り、学びとして整理し、次の行動に活かすまでの流れを示した学習理論です。アメリカの組織行動学者デイヴィッド・コルブによって提唱されました。
コルブの経験学習モデルは、単に経験を積むことを重視しているわけではありません。経験した事実を省察し、そこから得た学びを概念化し、再び行動に移すといったサイクルを繰り返す点が特徴です。
このステップを繰り返すことで、経験は偶然の出来事ではなく、意図的な成長の材料へと変わります。
コルブの経験学習モデルを取り入れるメリット
コルブの経験学習モデルには、日々の業務経験を成長につなげやすくするなどのメリットがあります。具体的なメリットは、下記のとおりです。
- 日々の業務経験を次に活かせる「学び」として整理できる
- 成功だけでなく、失敗からも気づきや教訓を得られる
- 振り返りを通じて、自分の行動や思考の癖に気づける
- 学びを行動に結びつけ、成長のサイクルを回しやすくなる
- 年齢や職種を問わず、誰でも実践できる
- 実務に直結した学習のため、スキルや行動として定着しやすい
研修や座学のように知識を「与える」学習とは異なり、実際の仕事を起点に学びを深めていく点が特徴です。仕事の内容とかけ離れた学習になりにくく、日常業務の延長として無理なく取り組めます。
結果として、学びがその場限りにならず、次の行動や意思決定に自然と反映されやすくなります。
経験学習は、若手従業員の育成とも相性がよい手法です。若手の従業員を育成するためのポイントについては、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
経験学習モデルの4つのプロセス
コルブの経験学習モデルは、4つのプロセスが循環する学習サイクルで構成されています。重要なのは、ひとつの経験で学習が完結するわけではない点です。
どれかひとつでも欠けると、経験がその場限りで終わりやすくなります。4つのプロセスそれぞれの役割を順に見ていきましょう。
1. 具体的経験
具体的経験とは、実際の業務や行動を通じて体験を得る段階です。机上の知識や想像ではなく、自分で考え、動いた結果として得られる経験が学習の材料になります。成功した経験だけでなく、失敗や思うようにいかなかった出来事も重要です。
この段階で大切なのは、現場で起きた事実をそのまま受け止めることです。「こうだったはず」と推測するのではなく、何が起きたのかを正確に捉えます。自ら関わった経験であるほど、後の振り返りや学びにつながりやすくなります。
2. 省察的観察
省察的観察は、経験した出来事を振り返り、結果や背景を整理する段階です。うまくいった点だけでなく、つまずいた場面にも目を向けます。
「なぜこの結果になったのか」「別の選択肢はなかったのか」と問い直すことで、経験を客観的に捉えられるようになります。
感情だけで評価せず、事実と行動を切り分けて考えることがポイントです。第三者の視点や意見を取り入れると、自分では気づきにくい思考の癖や判断の偏りも見えてきます。この振り返りが、次の学びの土台になります。
3. 抽象的概念化
抽象的概念化は、振り返りから得た気づきを、他の場面でも使える形に整理する段階です。個別の経験をそのまま終わらせず、「何が共通していたのか」「再現できるポイントは何か」を考えます。
このプロセスでは、自分なりの仮説や考え方が生まれるのが特徴です。既存の理論や知識と照らし合わせると、理解が深まり、学びが整理されていきます。
経験が教訓として言語化されることで、次に活かしやすくなります。
4. 能動的実験
能動的実験は、抽象化した学びを次の行動で試す段階です。新しいやり方を取り入れたり、改善策を実践したりすることで、学びを検証します。
結果が期待どおりでなくても問題ありません。結果自体が次の具体的経験になります。
このプロセスを経て、再び振り返りが行われ、学習サイクルが回り続けます。経験学習モデルは、一度で完成するものではありません。試行錯誤を重ねながら、少しずつ精度を高めていくのが特徴です。
経験学習モデルを組織に定着させる方法
経験学習モデルを機能させるには、個人の意識や努力だけに頼らないことが重要です。ここでは、経験学習モデルを組織に定着させる方法を解説します。
1. 成長につながる業務・経験を用意する
経験学習の出発点は、学びにつながる経験を意図的につくることです。単なる作業やマニュアルどおりの業務では、深い学習が生まれにくい傾向があります。
自分で考え、判断し、行動できる仕事を任せることで、経験が学習材料になります。成功体験だけでなく、試行錯誤や失敗も含めて経験として扱う姿勢も欠かせません。
失敗を避ける環境では挑戦が生まれず、学習の幅も狭まります。判断や工夫が求められる業務を通じて、経験そのものの質を高めることが、経験学習を根づかせるコツです。
2. 業務後に振り返る機会(リフレクション)を設ける
経験を学びに変えるには、振り返りの時間が必要です。忙しさを理由に後回しにすると、経験は消費されるだけで終わってしまいます。振り返りを個人任せにせず、業務の一部として定期的に行う仕組みを整えることがポイントです。
ひとりで考えるだけでなく、対話を通じて振り返る場を設けると、視点が広がります。事実や行動を整理し、何が起きたのかを言葉にすることで、経験の意味が明確になります。
リフレクションが当たり前の文化になると、学習サイクルが自然に回りはじめるでしょう。
以下の記事では、リフレクションについて詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
3. 考えを深める質問や対話を取り入れる
振り返りの質を高めるには、問いかけの工夫が欠かせません。「なぜその結果になったのか」「他の選択肢はなかったか」といった質問が、思考を一段深めます。
ここでの上司や先輩の役割は、評価や正解を示すことではありません。求められるのは、考えを整理するための支援に徹する姿勢です。否定せずに話を受け止め、視野を広げる手助けをすることで、本人の気づきが促されます。
対話を通じて省察が深まると、経験は確かな学びへと変わっていくでしょう。
4. 振り返りを次の行動計画に落とし込む
振り返りは、次の行動につながってこそ意味をもちます。経験から得た気づきを曖昧なまま終わらせず、「次に何を試すのか」「どこを変えるのか」を具体的な行動として整理することが重要です。
そのためには、改善点を短い行動計画やチェック項目として言語化し、実行しやすい形に落とし込みます。大きな変化である必要はなく、小さな行動でも構いません。
こうして決めた行動を実践すると、新たな経験が生まれます。経験を再び振り返ることで、学習のサイクルが継続します。行動までを含めて設計することが、経験学習を一過性のもので終わらせないポイントです。
5. 上司・先輩が成長を支える体制を整える
経験学習は、本人だけに任せると途中で止まりやすくなります。学びを継続させるためには、上司や先輩が定期的に関わり、成長を支える体制が欠かせません。
具体的には、業務の進み具合や悩みを確認し、必要なタイミングで声をかけられる状態をつくります。細かく指示を出すのではなく、状況を見守りながら、迷ったときに相談できる存在であることが重要です。
フィードバックでは改善点だけを伝えるのではなく、うまくいった点や工夫した行動も評価しましょう。努力や挑戦が認められる環境があってこそ、学びを次の行動につなげようとする意欲が生まれます。
このように上司・先輩の関わり方が、経験学習が組織に根づくかどうかを左右します。
ビジネスにおける経験学習モデルの具体例
経験学習モデルが実際のビジネス現場でどのように活用されているのかを紹介します。具体的な活用イメージを押さえることで、経験学習モデルを自社でどのように活かせばよいかが見えやすくなります。
OJTを通じた育成
OJTは、経験学習モデルを実務の中で自然に回しやすい育成方法です。
実際の業務を任せることで、部下は自ら考え、判断し、行動する経験を積めます。業務が終わった後に振り返りを行えば、うまくいった点や課題が整理され、経験が学びに変わります。
ポイントは、上司や先輩が答えを与えすぎないことです。「なぜそう判断したのか」「他に選択肢はあったか」と問いかけて、部下自身の気づきを引き出します。
OJTは単なる作業指導ではなく、経験学習を回すための場として機能します。
OJTのメリット・デメリットや進め方について詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご確認ください。
1on1ミーティングでの振り返り
1on1ミーティングは、経験を振り返るための定期的な対話の場を確保できる点が特徴です。業務結果だけでなく、判断の背景や迷った点を言葉にすることで、経験を整理しやすくなります。
上司からの問いかけやフィードバックによって、本人だけでは気づきにくい視点が加わる点も1on1の強みです。評価や結論を急がず、考えを言語化する時間として活用することで内省が深まります。
1on1はあくまで「振り返りの場」であり、学びを生み出すための環境です。こうした場を継続的に設けることで、経験学習のサイクルを安定して回しやすくなります。
以下の記事では、1on1の準備や進め方について解説していますので、あわせて参考にしてください。
人事ローテーションによる学び
人事ローテーションは、異なる部署や業務を経験することで学習の幅を広げる取り組みです。これまでとは異なる環境に身を置くことで、自身の強みや課題に気づきやすくなります。
過去の経験と新しい経験を比べることで、共通点や違いが整理され、学びが抽象化されます。このプロセスを通じて、特定の業務に限らない応用力や状況対応力が身につけられるのが魅力です。
経験の種類が増えることで、経験学習モデルを回す機会そのものを増やせるでしょう。
ワークショップでの学習機会
ワークショップは、現場経験と集合研修を組み合わせて行う学習の場です。参加者同士で経験を共有しながら振り返ることで、ひとりでは気づけなかった視点に触れられます。
他者の意見や考え方を通じて内省が深まり、経験から得た学びを整理・言語化しやすくなる点が魅力です。個人の経験が共有されることで、学びは組織全体の知見として蓄積されます。
ワークショップは、経験学習を個人に留めず、組織全体の学びへと広げる場として効果を発揮します。
経験学習モデルを行う際の注意点
経験学習モデルは、進め方を誤ると、振り返りが形だけになったり、経験が単なる作業で終わったりする恐れがあります。学習の深さを左右するのは、上司・先輩・組織の関わり方です。
個人任せにせず、安心して考え、挑戦できる環境と支援の設計が欠かせません。ここでは、経験学習モデルを行う際に押さえておきたい注意点を整理します。
1. 気づきを引き出す姿勢を保つ
経験学習で重要なのは、学習者自身が「気づく」ことです。上司や先輩が答えや正解を先に示してしまうと、考える機会が失われます。
たとえ結論が未熟でも、すぐに否定せずに背景を問いかける姿勢が求められます。突飛に見える意見にも理由があると考えましょう。
過程を尊重することで、学習者は自分の思考を振り返り、学びを深められます。教える側は結論を与える存在ではなく、気づきを支える存在であることが大切です。
2. 振り返りの時間を確保する
どれだけ多くの経験を積んでも、振り返りがなければ学びは残りません。
忙しい職場では、次の業務を優先するあまり、内省の時間が後回しになりがちです。その結果、経験が流れて終わってしまいます。
経験学習を機能させるために、次の2つの振り返りの機会を意識的に設けましょう。
- プロジェクトや業務の区切りごとに行う振り返り
- 月次・週次など、あらかじめ決めた頻度で行う振り返り
経験を増やすだけでなく、振り返る時間まで含めて設計することで、学習は習慣になります。短時間でも継続的に行うことで、学びの定着につなげられます。
3. 必要なときに支援する
経験学習は自律を重視しますが、放置や丸投げとは異なります。学習者が迷ったり、思考が止まったりしたままでは、学びは深まりません。
上司や先輩には、適切なタイミングで関わる役割があります。行動の結果だけを見るのではなく、考え方や判断の過程を確認し、必要に応じて視点を補いましょう。
過度に介入せず、必要なときに適切に支援することで、経験学習を効果的に進められます。
4. 失敗を学びに変える文化を育てる
経験学習は短期間で成果が見える取り組みではありません。試行錯誤や失敗を重ねながら、少しずつ学びを積み上げていくものです。
失敗を責める風土があると、挑戦そのものが避けられ、学習は止まってしまいます。重要なのは、失敗の有無ではなく、そこから何を学んだかです。
焦らず長期的な視点で経験を捉え、学びとして共有する姿勢を組織全体でもつことが、経験学習を根づかせる土台といえます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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