- 更新日 : 2026年1月14日
キャリアブレイクとは?メリット・デメリットや導入手順などを解説
キャリアブレイクとは、一時的に現職を離れ、スキルを磨き直したり、今後のキャリアを見つめ直したりすることです。社内でキャリアブレイクの制度を導入すると、社員の成長やリフレッシュを促せます。
しかし、制度を有効に機能させるためには、デメリットや具体的な導入手順も把握したうえで導入することが大切です。
本記事では、キャリアブレイクの概要やメリット・デメリット、導入手順などを解説します。
目次
キャリアブレイクとは?
キャリアブレイクとは、一時的に職を離れ、スキルアップやリフレッシュなどを目的に長期休暇を取得することです。休暇中に何をするかは個人の目的によって異なりますが、活動の例としては以下が挙げられます。
- スクールへ通学し、資格取得を目指す
- 国内外のボランティア活動に参加し、視野を広げる
- 海外留学を通じて語学力を高める
欧州では、企業に在籍しながら長期休暇を取得するのが一般的ですが、日本においてはキャリアブレイクをきっかけに離職するケースもあります。
キャリアブランクとの違い
キャリアブランクとは、業務に従事していない無職の期間です。職歴上は空白期間であり、目的を持たずに過ごしていると、転職活動においてネガティブに捉えられやすい傾向があります。
一方、キャリアブレイクは留学や資格取得などを通じてキャリアアップを目指す期間であり、キャリアブランクより前向きに捉えられる点が異なります。
サバティカル休暇との違い
サバティカル休暇とは、企業に在籍したまま、長期間の休暇を取得できる制度です。ヨーロッパで普及している制度で、あくまで「企業の制度」として運用されるため、雇用関係が継続している点が特徴です。
対してキャリアブレイクは、企業に在籍したまま休暇を取るケースだけでなく、退職する場合も含みます。そのため、キャリアブレイクのほうがより広い意味を持つ言葉として扱われます。
キャリアブレイクが注目されている理由
ここからは、キャリアブレイクが注目されている理由を解説します。理由を知ることで、社内でキャリアブレイクを導入する意義を理解しやすくなるため、ぜひ確認しておきましょう。
リカレント教育が注目されているため
リカレント教育とは、学校を卒業した後も、時代に合わせてスキルや知識を学び直すことです。必要に応じて就労と学習を繰り返すこともあります。
技術革新によるビジネス環境の変化が激しい現代は、語学やAI活用、プログラミングスキルなど、新しい知識を学び直すニーズが高まっています。しかし、フルタイムで働きながら学習時間を確保するのは容易ではありません。そのため、キャリアブレイクによって、学習に専念する期間を設ける人が増えつつあります。
スキルアップに集中する期間を設けることで、勉強に取り組みやすくなり、自身の市場価値を高められます。
キャリア自律の必要性が高まっているため
キャリア自律とは、自身のキャリアについて主体的に考え、自ら能力開発やキャリア形成に取り組む姿勢です。終身雇用や年功序列など、従来の日本的な雇用形態は崩壊する傾向にあり、会社任せではなく自律的にキャリアを形成する意識が重要視されています。
キャリアブレイクを行うと、社外の交流会やボランティア活動に参加でき、普段の業務では接点のない、多様な仕事・働き方をする人々と出会うことが可能です。
社外の人々のさまざまな価値観に触れることで「自分はどう働きたいか」を考え直すきっかけになり、キャリア自律を促進できます。
ワークライフバランスが注目されているため
ワークライフバランスとは、仕事だけでなくプライベートの時間も十分に確保し、どちらも充実している状態です。近年は仕事だけでなく、プライベートも重視する価値観として、ワークライフバランスが注目されています。
キャリアブレイクによってまとまった休暇を確保すると、趣味や休息に充てる時間が生まれ、プライベートを充実させることが可能です。心身をリフレッシュさせ、仕事へのモチベーションを回復させられるため、復職後も高い生産性を保てるようになります。
また、育児や介護などと仕事の両立に悩んでいる場合も、キャリアブレイクは有効です。一度仕事から離れることで、家庭内の役割分担を見直したり、外部のサポートサービスを手配したりするなど、無理なく両立するための準備期間を作れます。
人材の定着につながるため
企業にとって、キャリアブレイクは社員の離職を防ぎ、定着を促す取り組みとして注目されています。
勤続期間が長い社員にまとまった休暇を提供することで、心身の消耗をリセットできるため、突然意欲を失って離職されるリスクを防げます。
また、キャリアブレイクで社員のキャリア形成を支援すると「自身のキャリアに寄り添ってくれる会社」という印象を与えることが可能です。結果として、社員のエンゲージメント(企業への愛着心)を高められる点も、人材の定着につながるポイントです。
キャリアブレイクを導入するメリット
ここからは、キャリアブレイクを導入するメリットを解説します。メリットを把握することで、社内でキャリアブレイクを導入するかの判断材料になるため、ぜひ確認してください。
組織の生産性を向上させられる
キャリアブレイクの期間中は、社員が専門資格の取得やセミナーの受講などに集中しやすくなります。キャリアブレイク中に習得したスキルを、復職後の実務に活かしてもらうことで、個人のパフォーマンスが向上し、組織の生産性の底上げが可能です。
たとえば、スクールで培った語学力を海外事業に活かしたり、プロジェクトマネジメントの資格を活かして進行管理を効率化したりする効果が期待できます。
とくに、クリエイティブ職や企画職など、柔軟な発想が求められる職種では、キャリアブレイクによるインプット期間が大きな効果をもたらします。さまざまな商品のデザインや、他社の企画に触れることで、復職後に新たなアイデアを生み出しやすくなるためです。
社員のモチベーションを維持しやすい
キャリアブレイクを通じて社員に休暇を与え、心身をリフレッシュさせることで、仕事へのモチベーションやパフォーマンスを維持しやすい点がメリットです。
まとまった休暇を取らせないまま、社員にストレスのかかる業務を与え続けると、集中力の低下や精神的な不調を引き起こす可能性があります。キャリアブレイクで一度休ませることで、業務への意欲を取り戻し、新たな気持ちで仕事に向き合えるようになります。
社員のモチベーションを保ち、高い生産性を発揮させる観点からも、キャリアブレイクは有効な取り組みのひとつです。
採用活動においてアピールできる
キャリアブレイク制度を導入すると、採用活動において、社員のキャリア形成を柔軟に支援する企業としてアピールできます。競合他社との差別化ポイントになりやすいため、求職者の目を惹くことで、応募者数の増加が期待できるでしょう。
とくに、ワークライフバランスを重視する求職者に対しては、働きやすい環境として強くアピールすることが可能です。
応募者数が多くなると、優秀な人材を見つけられる可能性も高まり、組織の生産性を向上させやすくなります。
組織の柔軟性が向上する
キャリアブレイクを導入すると、特定の社員が不在となる期間が発生するため、ほかのメンバーでカバーする体制が必須となります。マニュアルの整備が進み、業務の属人化が解消されるため、誰かが欠けても組織が機能する仕組みを構築可能です。
また、残ったメンバーが不在者の業務を担当することで、社員の業務範囲を広げる「多能工化」も期待できます。
業務の属人化の解消や、多能工化の促進によって、予期せぬ欠員や繁忙期など、さまざまな変化に対応できる組織体制を構築できます。
多様な価値観の人材を採用しやすくなる
キャリアブレイクを導入すると、キャリアブレイクをきっかけに離職した人材を、積極的に採用する風土が生まれやすくなります。
キャリアブレイクの経験者の多くは、ボランティア・留学・異業種交流などを通じて、多様な価値観を持っています。そうした人材を採用することで、今までになかった価値観が組織に取り込まれ、新たな商品・サービスの創出を期待できるでしょう。
たとえば、NPO法人での海外の活動経験がある人材を採用すると、SDGsの考え方が社内に根付き、環境に優しい商品の開発が促進される可能性があります。
企業がキャリアブレイクに関する理解を深めることで、従来の慣習にとらわれない人材を採用しやすくなり、時代の変化に対応しやすくなります。
キャリアブレイクを導入するデメリット
ここからは、キャリアブレイクを導入するデメリットを解説します。メリットと同様、実際に導入するかの判断材料になるため、人事担当者は一度目を通しておきましょう。
社員の離職につながる可能性がある
社員がキャリアブレイク中に、新しいスキルを学んだり、新たな出会いを経験したりすることで、ほかの仕事や働き方に興味を持つ可能性があります。その結果、社員が他社に転職したり、独立したりする恐れがある点がデメリットです。
キャリアブレイク中の社員と定期面談を行い、会社の情報を共有することで、復職に対する不安や疎外感を抑えられ、ある程度は離職を抑止できます。
しかし、社員がほかの職種に強い興味を抱く可能性は、完全には抑えられません。キャリアブレイクの導入は、人材流出のリスクを許容したうえで実施する必要があります。
現場の負担が増加しやすい
キャリアブレイクをする社員が不在となる間は、担当業務を誰がどのように引き継ぐかを考えることが必要です。残ったメンバーだけで業務を分担すると、ひとり当たりの業務負荷が増加し、社員が疲弊する可能性があります。
社員からキャリアブレイクの利用を申請された段階で、担当業務を早急に洗い出し、ほかのメンバーの業務配分に無理がないかを検討することが大切です。業務を回せそうにない場合は、派遣社員や契約社員などを新たに採用する手段もありますが、採用コストや教育・引き継ぎのコストが発生する点には注意しましょう。
また、複数人が同時期に休暇を取ることがないよう、キャリアブレイクの取得タイミングについてルールを設けることも重要です。
キャリアブレイクを導入するステップ
ここからは、キャリアブレイクを導入するステップを解説します。ステップを把握することで、キャリアブレイクをスムーズに実施できるため、ぜひ押さえておきましょう。
1. 制度の目的を明確にする
まず「なぜ自社にキャリアブレイク制度が必要なのか」「導入によって何を実現したいのか」など、目的を言語化します。目的が曖昧だと、導入後の効果を検証しにくかったり、社員に対して導入の理由を説明できず、利用が進まなかったりする恐れがあるためです。
キャリアブレイクの導入目的の例としては、以下が挙げられます。
- 社員のスキルアップ
- 心身の回復による離職防止
- 業務の属人化解消
- 新たな知見の獲得によるイノベーションの創出
今後の事業計画や人事戦略も参考にしながら、組織の改善につながる導入目的を考えましょう。
2. 運用のルールを決める
目的が決まったら、キャリアブレイク制度の詳細なルールを決めます。たとえば、以下のような項目を定めます。
- 対象者の条件(勤続年数や評価ランクなど)
- 利用可能な期間
- 利用回数の制限
- 休暇期間中の給与の有無
- 申請から承認までのフロー
- 業務の引き継ぎの手順
- 休暇中の面談の有無
- 復職後の処遇(給与や役職など)
とくに金銭面や復職後の処遇は、社員とのトラブルを避けるため、明確な規定が不可欠です。社員がキャリアブレイクの申請から復職までをスムーズに進められるよう、細部までルールを作り込みましょう。
3. 経営陣との合意形成を行う
詳細なルールを策定したら、経営陣に説明し、キャリアブレイクの導入に関する承認を得ます。経営陣の理解を得ないと、スムーズに導入できないため、詳細を固めた段階で必ず合意形成をしましょう。
プレゼンテーションの際は、導入のメリットや予想されるコスト、業務への影響などを具体的に説明します。経営陣から納得を得られるよう、離職率改善のシミュレーションや他社の導入事例など、客観的なデータを挙げながら説明しましょう。
4. キャリアブレイク制度の説明を行う
キャリアブレイク制度の導入が決まったら、説明会の開催などを通じて、全社員に周知します。
利用条件や申請方法のほか、制度の開始に至った背景も伝えましょう。「会社として、キャリアアップのための休息を積極的に支援する」という姿勢を示すことで、利用しやすい空気を作れるため、社員に制度の活用を促せます。
また、管理職の社員に対しては、部下から申請があった際の対応や、業務調整の方法などを記載したマニュアルを配布しておくと、より円滑に制度を運用できます。
5. キャリアブレイク制度を開始する
社員にキャリアブレイク制度の内容を理解してもらったら、実際に運用を開始し、休暇の申請を受け付けます。
社内に制度を定着させるには、最初の利用者が問題なく復職し、業務で活躍することが重要です。ほかの社員は、最初の利用者の様子を見て「この制度を使ってもキャリアに傷がつかないか」「現場に迷惑をかけないか」などを判断するためです。
運用開始から間もない時期は、とくに手厚いサポートを意識し、キャリアブレイクを利用する社員の部署を注意深く観察しましょう。申請手続きのフォローを行うほか、現場の業務調整が難航している場合は積極的に間に入り、成功事例を作ることに努めます。
現場の混乱を最小限に抑えるため、全社一斉に導入するのではなく、一部の部署から試験的に運用を始めるのもおすすめです。
キャリアブレイクを導入する際のポイント
最後に、キャリアブレイクを導入する際のポイントを解説します。ポイントを把握することで、キャリアブレイクをより効果的に活用できるため、ぜひ理解しておきましょう。
復職時のサポート体制を整える
長期間業務から離れていた社員が、スムーズに仕事の感覚を取り戻すためのサポート体制を整備することは大切です。社員の休暇中に変更された業務フローや組織体制などは適宜共有し、復職時の不安を解消するように努めましょう。
また、復職前に人事担当者や上司との面談を行い、休暇中の経験の活かし方や、今後のキャリアプランなどを話し合うことも大切です。復職前にしっかりコミュニケーションを取ることで、休暇前と同じように、ほかの社員とスムーズに連携できるようにしましょう。
現場のリソースに余裕がある場合は、最初からフルタイム勤務で復職させるのではなく、時短勤務で仕事の感覚を徐々に戻してもらうのもひとつの方法です。
制度を利用する心理的なハードルを下げる
キャリアブレイク制度を導入しても「人事評価で不利にならないか」「同僚に迷惑をかけないか」などの不安から、社員に利用を躊躇される可能性があります。
制度を導入する際に、人事評価で不利にならない点や、休暇中は適切な業務調整が行われる点を、はっきりと周知しておきましょう。
経営層や管理職が積極的にキャリアブレイクの意義を発信し、取得を推奨し続けることも、利用しやすい雰囲気作りにつながります。
また、実際にキャリアブレイクを利用した社員がいる場合は、社内報などを活用し、休暇中の過ごし方や復帰後の活躍などを紹介しましょう。実際のロールモデルを紹介することで、キャリアブレイクのイメージを掴みやすくなり、制度の利用をさらに後押しできます。
定期的に制度の見直し・改善を行う
キャリアブレイク制度は、導入したまま放置するのではなく、運用状況を確認しながら定期的に改善することが大切です。
制度の利用者数・復職後の定着率・パフォーマンスの変化などを測定し、導入目的を達成できているか確認しましょう。社員にアンケートを取り、業務の負担感や不満点などをヒアリングすることも大切です。
目的が達成できていなかったり、社員からの不満が多かったりする場合は、対象範囲の拡大や休暇期間の調整など、制度の改善に努めます。導入目的を達成しつつ、現場に負担をかけない状態を維持するように心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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