- 更新日 : 2026年1月14日
カスケードダウンとは?使い方や課題、成功させるポイントを解説
カスケードダウンとは、経営層が設定した戦略やビジョンを、部署や一般社員の行動目標へと細分化し、組織全体に浸透させることです。
企業では、カスケードダウンが機能しないと、戦略が現場で実行されないまま終わりかねません。
本記事では、カスケードダウンの定義やメリット・デメリット、使い方、成功させるポイントを解説します。
経営戦略の浸透に取り組む管理職や人事担当者はぜひ、参考にしてください。
カスケードダウンとは?
カスケードダウンとは、経営層が設定した戦略やビジョンを部署や一般社員の行動目標へ細分化し、組織全体に浸透させる手法です。
滝が上から下へ流れるように、上層部の意図や理由を正確に下層に伝え、目標を整合させます。
社員一人ひとりの仕事と会社の戦略を一本の線でつなぎ、組織の方向性を統一して、実行力を高めることを目的としています。
カスケードダウンの使い方
カスケードダウンは順序立てて進めていくのが大切です。
以下では、カスケードダウンの使い方を3層構造で整理し、4Sを用いて解説します。
目的
カスケードダウンを使う際は、最初に「何のために行うのか」という目的を明確に設定します。
目的は組織全体の指針となるため、曖昧だと後の戦略や戦術が定まりません。
経営層や管理職は「売上〇%」という数値目標だけでなく「どのような価値を顧客に提供したいか」という定性的なゴールも明確にします。
全社員が目指すべきことを共有し、ゆるぎない軸をつくりましょう。
戦略
次は、目的達成に向けた戦略を策定します。
戦略は目的地に至るための基本方針を決める段階です。
現場が日々の判断に迷わないように、リソース配分の優先順位を明確にしましょう。「何をして、何をしないか」という境界線を引くのが重要です。
また、人事や管理職は戦略の段階で、現在の現場のスキルレベルや人員配置とあっているか確認しましょう。戦略は、組織能力とのギャップを無視すると機能しません。
実行不可能な戦略にならないように、現実的なリソースと整合性を見極めて進めましょう。
戦術・4S
戦術は、戦略を「いつ・誰が・何を・どのくらい行うのか」という具体的な行動計画に落とし込む段階です。
個々のタスクが上位の戦略目標とリンクし、現場で実行可能かを確認するのが重要です。
戦術の精度を高め、絵空事で終わらせないために、以下の4Sと呼ばれるフレームワークを用いて検証しましょう。
Selective(セレクティブ)
Selective(セレクティブ)とは、重点を置くべき事項を明確に決め、限られたリソースを集中させることです。
目標を絞り込まないと現場の力が分散し、組織全体が疲弊しかねません。
成果につながらない業務は「やらない」と決断すれば、重要なKPIに集中して、成果を出せるようになります。
Sustainable(サスティナブル)
Sustainable(サスティナブル)とは、短期的な成果だけでなく、中長期的に持続可能で環境や社会に配慮した成長を目指す視点です。
根性論や長時間労働でしか達成できないムリな計画は、現場の疲弊や離職を招きかねません。
組織が長期的かつ健全に走り続けられる設計になっているかを見極め、実行体制の持続性を保ちましょう。
Sufficient(サフィシェント)
Sufficient(サフィシェント)とは、戦略実行に必要な人材や資金、時間が十分に確保されているかを確認する視点です。
戦略実行のために闇雲にリソースを投入し続けると、いずれ資源が底をつくリスクがあります。
目標達成に必要な資源を見極め、効果を最大化できるリソース配分を行いましょう。
Synchronized(シンクロナイズド)
Synchronized(シンクロナイズド)とは、企業の強みと市場の機会が一致し、戦略全体が整合しているかを確認する視点です。
どれほど優れた強みを持っていても、市場が求めるニーズとズレていれば成果は出ません。
自社の強みが最大限に活かせる市場を見極め、タイミングを見計らって組織の力を集中させましょう。
カスケードダウンのデメリット・課題
カスケードダウンには少なからずデメリットや課題があり、見落とすと組織力の低下につながります。
以下では、カスケードダウンのデメリット・課題を解説します。
上層からの一方通行になると、現場の納得感が下がる
カスケードダウンが上層からの一方通行になると、現場は目標をノルマと認識しかねません。
現場の納得感が下がり、従業員の主体性や現場ならではの創意工夫を失う恐れがあります。
対話のプロセスが欠如し、機械的に数字だけが伝わる状況では、どれほど素晴らしい戦略も実行されない可能性があるでしょう。
目標設定の場を上司と部下の対話の機会と捉え直し、社員の当事者意識を高め、生産性の向上を目指しましょう。
意図が途中で歪み、誤った理解につながる
カスケードダウンは経営層の意図が階層を経るごとに歪み、現場に届く頃には誤った理解になる可能性があります。
数値目標だけが伝わり、背景にある戦略的意図が省かれると、現場は本来の戦略とは矛盾した行動を取りかねません。
また、数字達成のみを目的にした行動は、長期的に見てブランドや顧客からの信頼を損なう原因にもなります。
誤った理解を防ぐには、数値だけでなく、背景にある理由や想いを丁寧に伝えるプロセスを徹底しましょう。
目標が不適切だと空回りする可能性がある
カスケードダウンは組織の方向性を固定する力が強いため、目標が不適切だった場合、組織全体が間違った方向へ空回りする可能性があります。
とくに市場環境や競合状況が激変した場合は、硬直的な運用がリスクになりかねません。
四半期ごとの振り返り習慣を整えておくと、変化に対して軌道修正ができ、柔軟に対応できるでしょう。
カスケードダウンのメリット・効果
カスケードダウンは適切に運用すると、戦略を共通言語とする強固な組織になります。
以下では、カスケードダウンのメリットと効果を4つ解説します。
会社の方針が全階層に統一して伝わる
カスケードダウン最大のメリットは、会社の方針を全階層に統一して伝えられることです。
経営層のビジョンが上層から下層へ正確に伝わると「今、何を目指すか」という共通認識を持てます。
また、組織の方向性が揃うと、全社のパワーが分散せず、目的達成に向けた推進力が最大化できるでしょう。
戦略が具体的な行動レベルになる
カスケードダウンには、抽象的な戦略を現場の具体的な行動レベルへと変換する効果があります。
階層を下るごとに「上位目標のために、自分の部署は何をすべきか」という問い直しが繰り返されるからです。このプロセスにより、明日から実行可能な具体的なタスクへと変換されます。
例は以下のとおりです。
上位目標:顧客満足度の向上
部署目標:クレーム発生率の低減
個人目標:問い合わせへの一次回答を1時間以内にする
カスケードダウンは戦略が理想論で終わるのを防ぎ、現場の行動を具体化できるでしょう。
社員の役割が明確になり、納得感が高まる
カスケードダウンは社員一人ひとりの役割を明確にし、仕事への納得感を大きく高めます。
下位目標は、上位目標を達成するための手段として設定されるため、目的と手段のつながりが明確になります。
例は以下のとおりです。
- 自分のメール対応(個人)がリピート率向上(部署目標)につながる
- リピート率向上(部署目標)が会社のブランド価値の向上(ゴール)につながる
自分の仕事が会社にとって重要だと実感できるため、仕事への納得感とモチベーションの向上につながるでしょう。
課題がわかり、改善スピードが上がる
カスケードダウンを導入すると、組織の課題がわかり、改善スピードが上がります。
カスケードダウンは階層ごとにつながっているため、目標未達成の際に「どの部署のどの行動に問題があったのか」を特定しやすいです。
「なぜかうまくいかない」という曖昧さがなくなり、原因が可視化されるため、具体的な解決策をすぐに打てます。
結果、原因特定から改善までのサイクルが早まり、組織全体のPDCAを回すスピードが向上するでしょう。
カスケードダウンを成功させるポイント
カスケードダウンを成功させるには、運用面での工夫が不可欠です。
以下では、カスケードダウンを成功させるポイントを5つ解説します。
数字を用いた具体的な目標を設定する
カスケードダウンでは、数字を用いた具体的な目標を設定し、理由とともに伝えるのが大切です。
たとえば、「既存顧客のリピート購入率を現状から25%アップさせる」といった形で数値を明示することで、進捗状況を把握しやすくなり、目標達成の可否を判断しやすくなります。
さらに、その背景も伝えることが重要です。「市場シェアの拡大に必要な数値であり、達成できれば新規サービスの開発に投資できる」と理由を示すと、従業員は「何のための目標なのか」を理解し、意味のある目標として受け取れます。
数値と理由の両方を示すことで、従業員は納得して主体的に行動に移せるでしょう。
社員の意見を反映する
カスケードダウンを成功させるには、社員の意見を反映させることが不可欠です。
経営層からの一方的な指示をしている場合、現場の声が届かず、経営と現場の間に認識のギャップが生まれかねません。
目標設定は必ず双方向の対話で行い「達成にあたり現場で何が課題になるか」を丁寧に聞き取りましょう。
現場の声を反映させると、意見を聞いてもらえたという信頼感が生まれ、風通しのよい職場になります。
主体的な目標を設定する
カスケードダウンを成功させるには、従業員自身が主体的に取り組める目標を設定するのが重要です。
目標の細かい手順まで管理すると、社員の主体性が失われ、やらされ仕事になりかねません。
「何を達成するか」は経営方針で決まるものの「どのように達成するか」は現場の社員に考えさせましょう。
ある程度プロセスを任せると、社員に当事者意識が生まれ、自ら工夫して動く主体的な組織になります。
実行に必要なリソースを確保する
カスケードダウンを行う際は、目標を立てるだけでなく、実行に必要なリソースを確保する必要があります。
高い目標を掲げても、人材・資金・時間といったリソースが不足していると、現場は疲弊しかねません。
「気合いで乗り越えろ」という根性論は捨て、必要な人員配置や予算、協力体制が整っているか確認しましょう。
環境を整え、リソースを確保するのは、現場を預かる管理職が果たすべき重要な責任と役割です。
目標設定だけでなく、振り返りも行う
カスケードダウンは目標設定をして終わりではなく、定期的に振り返りを行いましょう。
ビジネスを取り巻く市場や競合の動きは常に変化しており、当初の計画が通用しない可能性があります。
定期的に今の目標は有効か、現場の課題は何か、振り返る機会を設けましょう。
状況にあわせて軌道修正を行うと、硬直化が防げて、目的達成に向かって最適な方向で進められます。
カスケードダウンに関するよくある質問
カスケードダウンを行うにあたり、不安や疑問はつきものです。
以下では、カスケードダウンに関するよくある質問にお答えします。
カスケードダウンとブレイクダウンの違いは?
カスケードダウンとブレイクダウンの違いは、以下のとおりです。
| カスケードダウン | ブレイクダウン | |
|---|---|---|
| 意味 | 上位の戦略を汲み取り、現場の業務内容にあわせて担うべき目標に変換する | 上位の目的を個人の具体的な業務内容にまで、詳細にかみ砕いて指示する |
| 例 | 「売上1億円」を達成するために→「成約率を上げる」→「リード数を増やす」 | 売上高1億円にする→営業担当者一人ひとりの販売個数の目標設定をする |
カスケードダウンとトップダウンの違いは?
カスケードダウンとトップダウンの違いは、以下のとおりです。
| カスケードダウン | トップダウン |
|---|---|
|
|
カスケードダウンの例は?
カスケードダウンは、以下の例のように抽象的な戦略から具体的な行動までが一本の線でつながります。
| 段階 | 例 |
|---|---|
| 全社目標・目的(経営層) | 高単価でも選ばれるブランドになる(まだ現場は何をしていいのかわからない状況) |
| 部署目標(部長・課長) | 値引き販売をやめ、新プラン(高単価)の提案件数を月30件にする(部署の目指す数字が決まった状況) |
| 個人目標 | 新プランの魅力が伝わる資料を今週中に作成し、来週には営業先に見せる(明日から具体的に動ける状況) |
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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