• 更新日 : 2026年1月14日

エフィカシーとは?自己肯定感との違いや高めるための方法も紹介

エフィカシーとは、特定の状況下で「自分ならうまくできる」と自分の能力を信じている心理状態を指します。近年、ビジネスの場でも注目を集めています。

しかし「エフィカシーについてイメージを掴めていない」「エフィカシーを高めるとどのようなメリットがある?」と悩んでいる方もいるでしょう。

そこで本記事では、エフィカシーの概要や自己肯定感との違いについて詳しく解説します。また、エフィカシーが高い人の特徴や実際に高める方法もまとめています。

エフィカシーとは?

エフィカシーとは、ある目標を達成するときに「自分ならうまくできるはずだ」と自身の能力を信じている心理状態のことです。日本語では一般的に「自己効力感」と訳されます。

この概念は、カナダの心理学者であるアルバート・バンデューラの著書『激動社会の中の自己効力』の中で提唱されました。

エフィカシーの特徴は、生まれつき備わっているものではないという点です。成功体験や他者との関わり合いなどを通じて、誰でも後天的に高めることが可能とされています。

自己肯定感との違い

エフィカシーは自己肯定感と混同されがちですが、両者は明確に異なります。

自己肯定感の焦点は、過去や現在にあります。たとえば「成功していようと失敗していようとありのままの自分に価値がある」と考えている人は、自己肯定感が高い人です。

つまり自己肯定感とは、生まれ持つ要素も含めた自分という存在への信頼感です。「自分は優秀だ」という漠然とした自信、もしくは特定の状況に左右されない土台のような自己評価とも言い換えられます。

一方、エフィカシーの焦点は未来に向けられています。たとえば「これから行うこの行動を自分ならうまく遂行できるはずだ」と考えられている人は、エフィカシーが高い人です。

つまりエフィカシーとは、未来の行動に対する見込みや自信です。「自分はこのスキルを使ってこの課題を解決できる」という自身の遂行能力に対する自信や「この交渉ならうまくまとめられる」といった特定の状況に対する自信とも言えます。

エフィカシーの種類

エフィカシーは、以下の3つの種類に分類されます。

種類特徴
自己統制的自己効力感自分の能力に関するエフィカシー
  • 失敗しても過度に落ち込まず、すぐに気持ちを切り替えて次の行動に移れる
  • これまでに経験のない業務に対しても前向きに挑戦できる
社会的自己効力感対人関係に関するエフィカシー
  • 初対面の人とも臆せずに会話し、良好な関係を築ける
  • チーム内で意見が対立しても建設的な対話を通じて解決に導ける
学業的自己効力感学習に関するエフィカシー
  • 新しい知識やスキルを積極的に吸収する
  • 未経験の分野でも、勉強してすぐにキャッチアップしこなせるようになる

エフィカシーが高い人の特徴

エフィカシーが高い人は、自身の能力を信じているため高い目標や困難な課題にも積極的に挑戦でき、失敗を糧にしながら成果を出し続けられる点が特徴です。

エフィカシーが高い人の特徴を4つ紹介します。

高い目標を自ら設定する

エフィカシーが高い人は、現状維持に満足しません。自分の能力で容易に達成できるような目標ではなく、自身の成長につながるような目標を自ら好んで設定します。

また、将来のキャリアビジョンも明確に持っていることが多いため、そこから逆算して何をすべきかを考え、日々の目標に具体的に落とし込む能力にも長けています。

キャリアビジョンを踏まえて高い目標を設定し達成するというプロセスを通じて、新しいスキルを習得したり成長したりすることに楽しさを感じている人も少なくありません。

困難な課題にも粘り強く取り組む

エフィカシーが高い人は、計画通りに物事が進まなかったり予期せぬトラブルが発生したりした場合でもすぐに諦めることはありません。

これは根拠のない楽観的な思考ではなく、自分の能力と努力をもってすれば問題を解決できるという心理状態から来ています。

また、任された仕事や課題に対する当事者意識も強いため、最後までやり遂げるという責任感も持っています。

このような自分の能力に対する自信や責任感があるからこそ、どうすれば乗り越えられるのか粘り強く解決策を探し続けられるのです。

成功体験が多い

そもそも、エフィカシーが高い人は新しいことに挑戦する心理的なハードルが低いため、行動の回数が自然と多くなります。積極的に行動すればするほど、成功を経験できる機会も増えます。

また、彼らは過去の成功体験を振り返り「なぜうまくいったのか」という成功の要因を自分なりに分析・言語化するのが得意です。よって、異なる状況においてもその経験を応用し、成功を再現できます。

このように過去の体験を冷静に分析し、かつ自身の能力も的確に把握しているために、結果として成功体験も必然的に多くなると考えられます。

ストレス耐性が高く精神的に安定している

エフィカシーの高い人は、自分の遂行能力に対して自信を持っています。そのため、過度なプレッシャーがかかる場面やストレスの多い状況下でも、冷静にパフォーマンスを維持できます。

また失敗してしまった際も、自分の人格や能力を否定することはありません。過度に落ち込むこともなく、「何が原因だったのか」「次はどう改善すべきか」とすぐ客観的に分析し始めます。

そして「今回の経験によって貴重なデータが得られた」「次に活かせる学びがあった」とポジティブに解釈し、すぐに立ち直る精神力も持ちあわせています。

エフィカシーが高いことによって企業にもたらされるメリット

従業員のエフィカシーが高まることによって、個人の課題解決力が向上し、急激な市場変化にも自律的に対応できる強い組織につながります。

企業にもたらされるメリットを3つ紹介します。

業績アップにつながる

従業員一人ひとりのエフィカシーを高めることは、最終的に会社全体の業績向上につながります。

エフィカシーが高い社員は、困難な状況に陥ったとしても粘り強く対処するためです。たとえば、大型契約の交渉が難航した際も、「どうすればこの状況を打開できるか」と別の角度から新たなアプローチを模索し続けます。この粘り強さが、最終的に成果へと結びつきます。

仮に交渉に失敗したとしても、「相手が本当に重視しているポイントはここだと分かったから、次はそこを狙おう」と失敗から得た教訓を次の糧にすることが可能です。

このような対応ができる社員は、必然的に良い業績を残すようになるでしょう。組織内にエフィカシーの高い社員が増えれば、会社全体の業績アップに貢献することにも期待できます。

人材定着率が向上する

社員のエフィカシーが高まれば、人材定着率が向上する可能性もあります。

「自分はこの会社で活躍できている」「困難な課題を乗り越えることで成長を実感できる」という感覚になれば、従業員のエンゲージメント自体も高まることがあるためです。

たとえば、上司から裁量権のある仕事を任されて試行錯誤の末に成果を出した社員は「自分は会社に信頼され、価値を提供できている」と感じられるでしょう。この感覚が給与や待遇以上の働きがいとなり、会社やチームへのエンゲージメントを深めます。

エンゲージメントが高まれば、安易に辞めたいと考えることも減ります。結果として将来を期待される優秀な人材の離職を防ぎ、組織全体の人材定着率が向上することにも期待できるでしょう。

唐突な市場の変化にも対応できるようになる

エフィカシーが高い人材は強い当事者意識や責任感を持っており、困難な課題にも粘り強く取り組むという特徴があります。

そのため、もし予期せぬ市場の変化が起きても「新しい挑戦の機会だ」と前向きに捉え、柔軟に対応することが可能です。

また、エフィカシーの高い人の中には、指示を待つのではなく自ら考えて行動できる人も多いです。トップや上司の指示を待つことなく、変化を察知したらすぐに行動します。

このように社員一人ひとりが迅速に対応できることは、先の読めないVUCAの時代においても重要です。企業が持続的に成長していくための強固な基盤となるでしょう。

エフィカシーを高める4つの方法

エフィカシーを高めるためには、小さな成功体験の積み重ねや、身近なロールモデルを観察することが有効です。また周囲も手厚いサポートを行うことでポジティブな信念を持つことができます。

ここでは、エフィカシーを高めるのに効果的な方法を4つ紹介します。

1. 小さな成功体験を積ませる

エフィカシーを向上させるうえで重要なのが、成功体験の積み重ねです。自分にもできたという手応えを何度も得ることで、「次もきっとできるはずだ」と自信を持てるようになります。

具体的には、以下のようなことを実施すると良いでしょう。

  • 大きな目標を細分化し、短期的に達成可能な小さな目標を設定させる
  • 簡単すぎず難しすぎない、絶妙な難易度の仕事を任せる
  • たとえ小さな目標でも、達成した際には「君の〇〇という工夫が成功につながった」と具体的にフィードバックし、成功を本人に強く認識させる

上記のようなやり取りを意識すれば、着実に従業員のエフィカシーを高めていけるでしょう。

2. お手本となる人材と関われる機会を作る

従業員自身が成功体験を積むだけでなく、見本となる人物や自分と似た人物が成功する姿を観察することも、エフィカシーを高めるうえで有効です。

「あの先輩にできるなら、自分にもできるかもしれない」という感覚が育ち、新しいことに挑戦する心理的なハードルを下げてくれます。

具体的には、以下のような取り組みがおすすめです。

  • 年齢の近い優秀な先輩社員をメンターとして付け、仕事の進め方や思考プロセスを間近で学べるメンター制度を導入する
  • 活躍している社員の成功事例や失敗談を共有する社内勉強会やランチミーティングを企画する
  • 目標とする先輩社員と意図的にペアを組ませ、実際の業務を通じて具体的なスキルや姿勢を間近で見られる機会を作る

このような制度を導入したり施策を実行したりすれば、多くの従業員にとって貴重な学びの機会となるでしょう。

3. 目標達成まで手厚くサポートする

従業員の目標達成まで手厚くサポートするのも、エフィカシーを高めるのに有効な手段です。

上司からの励ましやポジティブなフィードバックによって、「自分は期待されている」「きっとできるはずだ」という信念を強化できます。

具体的には、以下のようなアプローチが推奨されます。

  • 「頑張れ」という精神論ではなく、「君の〇〇という強みを活かせば、この課題は乗り越えられる」と具体的な根拠とともに期待を伝える
  • 結果だけでなく、目標達成に向けた努力のプロセスや挑戦した姿勢そのものを認めて称賛する言葉を返す
  • 定期的な1on1ミーティングで、本人が気づいていない長所や以前より成長した点を具体的に言語化して伝える

単に部下の業務の進捗を管理するだけでなく、上記のような言葉がけも意識してミーティングやフィードバックを行ってみましょう。

4. 新しい知識や情報を取得できる機会を増やす

エフィカシーを向上させるために、新しい知識や情報を取得できる機会を増やすという方法もあります。

新しい知識やスキルを習得できれば目標達成のための手段やノウハウが増え、それが「自分ならできる」というエフィカシーにつながります。

具体的には、以下のような取り組みや施策がおすすめです。

  • 業務に関連する外部研修やセミナーへの参加を推奨・支援する
  • 資格取得支援制度を充実させる
  • 最新の業界ニュースや有益な記事をチーム内で共有する習慣を作る
  • 読書会を開催してインプットの機会を増やす

研修やセミナーで新しい知識やスキルを習得したら、インプットだけで終わらせないように工夫することも重要です。

習得した内容をすぐに試せるような小さな業務を任せ、「知識がスキルに変わった」という成功体験につなげてあげることで、学習意欲とエフィカシーの好循環を生み出せます。

エフィカシー向上とは逆効果となる言動

最後に、エフィカシーの向上とは逆効果となりうる言動を3つ紹介します。

高すぎる目標設定

達成不可能なほど高すぎる目標を設定することは、エフィカシー向上とは逆効果です。

本人のスキルや能力に見合わない目標を設定すると、達成できなかったときに失敗体験を強制的に積ませることになります。もしその体験が何度も続くと「どうせ頑張っても無駄だ」という無力感を持ってしまったり自信喪失につながったりすることも考えられます。

そのため、今の本人のスキルや能力を無視し「期待しているから」という理由だけで、ほぼ達成不可能な目標を課すのは避けましょう。また、目標を達成できていない状態が続いているにもかかわらず、具体的なサポートや計画の見直しを行わずに結果だけを問い詰めるのも控えるべきです。

このような言動は成功体験の積み重ねとは真逆のアプローチであり、挑戦する意欲そのものを奪ってしまう恐れがあります。

マイクロマネジメントや過度な介入

従業員のエフィカシーを向上させたいときは、マイクロマネジメントや過度な介入も控えましょう。

業務の進め方に対して細かく指示をしたり、小さな業務の決断まで上司が行ったりすると、部下が自分で考えたり積極的に行動したりする機会を奪ってしまいます。

これにより、部下は自分の力で仕事をやり遂げたという達成感を得られず、成功体験も自分のものとして認識できなくなってしまうでしょう。

もしそのままマイクロマネジメントを続けると、次第に部下は自ら考えることをやめて指示待ち人間になってしまう可能性もあります。

否定的な内容に偏ったフィードバック

否定的な内容に偏ったフィードバックも、エフィカシーの向上を妨げる要因となり得ます。

ネガティブなフィードバックばかり行うと、エフィカシーの根源でもある自己効力感や自信が育たないためです。

たとえば、フィードバックの際にできたことや良かった点には一切触れず、改善点や欠点ばかりを執拗に指摘するのは望ましくありません。また、他の優秀な社員と比較して相対的に評価・批判することも避けるべきです。

このような関わり方をするとエフィカシーが向上しないだけでなく、上司との対話そのものがストレスとなり、報連相の遅延といったさらなる問題を引き起こす可能性もあります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事