- 更新日 : 2026年1月14日
アクティブエイジングとは?高齢者が活躍できる企業づくりが重要な理由
高齢化が進む現代社会において注目されているのが、アクティブエイジングです。年齢を重ねても健康で、自立しながら社会と関わり続ける生き方が求められています。しかし、企業の現場では、「どのようにシニア人材のスキル・経験を活かせばよいのかわからない」といった課題も少なくありません。
本記事では、アクティブエイジングの概要や3つの柱となる「参加・健康・安全」について解説します。また、シニア人材の雇用メリットと、注意すべきポイントもあわせて紹介します。
目次
アクティブエイジングとは?
アクティブエイジングとは、高齢者が年齢を重ねても健康を保ち、社会とのつながりを維持しながら自分らしく生きることを目指す考え方です。
世界保健機関(WHO)は、アクティブエイジングを「健康・参加・安全の3要素を最適化するプロセス」と定義しています。単なる身体的な状態だけでなく、社会・経済・文化活動への関与も含めています。
病気や障がいがあっても、誰もが社会の一員として能動的に関わることを目指す点が、アクティブエイジングの大きな特徴です。日本では高齢化が急速に進行しており、介護や医療の負担増加や、労働力の確保が課題となっています。アクティブエイジングの推進は、社会的な課題の解決にもつながる取り組みといえます。
アクティブエイジングの重要性
アクティブエイジングは、高齢社会を迎えた現代において欠かせない概念です。従来、高齢者は「支えられる側」とされてきましたが、少子化による若年層の減少により、「支える側」としての役割が求められる時代へと移行しています。
高齢者が健康を維持して社会と関わり続けることは、医療・介護費の抑制や社会保障制度の持続可能性にもつながります。さらに、社会参加は高齢者の孤立や認知症の予防にもつながり、生活の質(QOL)が向上する点もメリットです。
アクティブエイジングの実践は、個人の健康増進だけでなく、地域社会の活性化にも貢献します。高齢者が活躍できる環境を整えることは、持続可能な社会の実現にも寄与します。
プロダクティブエイジングとの違い
アクティブエイジングと似た概念のプロダクティブエイジングは、高齢者が社会に対して生産的な貢献を続けることを重視する考え方です。
1975年にアメリカで提唱され、「高齢者にも生産的な役割がある」という新たな社会的認識を広めました。プロダクティブエイジングでは賃金を伴う労働だけでなく、家事や育児、地域活動や健康維持といった活動も生産的な貢献として評価されます。
一方でアクティブエイジングは、すべての高齢者が対象であり、「健康・参加・安全」のバランスによって生活の質の向上を目指す概念です。つまり、プロダクティブエイジングは生産性に着目したアプローチであり、アクティブエイジングはより広い視点で高齢期の生き方全体を支える包括的な枠組みといえます。
サクセスフル・エイジングとの違い
サクセスフル・エイジングは、健康を維持しながら社会との関わりを保ち、幸福で充実した高齢期を目指す考え方です。1960年代にアメリカで提唱され、老化にうまく適応しながら身体的・認知的な機能の維持と社会参加を成功の条件と位置づけます。
サクセスフル・エイジングは老化への適応と幸福な老後の到達を目指す概念であるため、アクティブエイジングやプロダクティブエイジングとは目的や対象範囲に違いがあります。
アクティブエイジングの3つの柱
アクティブエイジングは、参加・健康・安全の3つの柱から成り立っています。ここでは、それぞれの概要について解説します。
参加
アクティブエイジングにおける参加とは、高齢者が自らの希望や能力に応じて社会と関わり続けることを意味します。地域活動やボランティア、趣味の集まりといった非営利の場面にとどまらず、労働市場への参加も含む概念です。
高齢者が役割を持ち、他者とのつながりを維持することは、自己肯定感や心理的な安定感を高め、生きがいの向上にもつながります。報酬の有無にかかわらず、社会の中で必要とされる存在であることが、身体的・認知的な健康維持にも良い影響を与えます。
とくに人手不足が深刻化する現代の労働市場において、経験豊富なシニア人材の活用は、企業にとっても貴重な戦力となり得るでしょう。企業としても、アクティブエイジングを推進する視点から高齢者の労働参加を積極的に推進することが、持続可能な人材戦略に直結するといえます。
健康
アクティブエイジングにおける健康とは、単に病気がない状態ではなく、身体的・精神的・社会的に良好なバランスが保たれていることを意味します。栄養バランスの取れた食事や適度な運動、質の高い睡眠など、日々の生活習慣が健康維持につながります。さらに、ストレスを溜めない工夫や前向きな気持ちを持つことも、心と体の健康を支える大切な要素です。
健康状態が良好であれば、医療や介護に頼らず自立した生活を続けやすくなり、社会全体の負担軽減にも貢献します。万が一支援が必要になった場合でも、医療・福祉サービスに円滑にアクセスできる仕組みが整っていることが重要です。
安全
アクティブエイジングにおける安全とは、高齢者が心身ともに安心して暮らし続けられる物理的・社会的な環境が整っている状態を指します。たとえば、バリアフリー住宅や見守りサービスの導入など、住まいの安全性と福祉支援の両立が必要です。安心して生活できる環境が整っていることで、転倒や孤立といったリスクを防ぎ、自立した生活を長く続けやすくなります。
また、介護・医療・行政との連携体制が整っていることで、支援が必要になったときにも迅速に対応が可能です。家族や地域とのつながりも、高齢者の孤立を防ぎ、日常生活の中で安心感を生む重要な要素として機能します。
日本におけるアクティブエイジングの取り組み
日本では超高齢社会への対応として、国・自治体・企業が一体となりアクティブエイジングの推進に取り組んでいます。国の施策では、健康寿命の延伸を目指した「健康日本21」や、「地域包括ケアシステム」の構築が中心です。また、公的年金制度や介護保険制度の整備により、経済的・生活面での基盤づくりにも取り組んでいます。
さらに、シルバー人材センターは高齢者に短期・軽作業の就労機会を提供しており、生きがいづくりや地域活性化にも貢献しているでしょう。認知症予防教室や運動プログラム、地域イベントなどを通じ、交流と健康維持の場も提供しています。
企業も再雇用制度やシニア向けの研修プログラムを導入し、高齢者が働き続けやすい環境整備を進めています。
アクティブエイジングの観点から見たシニア人材を雇用するメリット
アクティブエイジングの観点を踏まえてシニア人材を雇用すると、人手不足の解消や技術・知識の継承ができるといったメリットが得られます。ここでは、主なメリットを4つ紹介します。
人手不足を解消できる
シニア人材の活用は、慢性的な人手不足に悩む企業にとって現実的かつ効果的な解決策です。とくに専門的なスキルや業務経験が必要な現場では、即戦力となる高齢者の存在が大きな支えとなります。
シニア人材の中には、「70歳を超えても働きたい」と考える人もおり、高い労働意欲を持っています。意欲的な人材を採用することで、従業員の負担を分散し、チーム全体の安定化や生産性向上が期待できるでしょう。
シニアの雇用は単なる人手の確保ではなく、知識や技術の継承という観点でも企業の競争力を支える重要な戦略です。
技術や知識を継承できる
シニア人材は、長年の経験から得た知識やスキルを持つ貴重な存在です。とくに製造業や建設業、医療分野などでは、高齢社員の引退による技術の断絶が深刻な課題となっており、継続雇用による技術継承の重要性が高まっています。
定年後に再雇用されたシニアをOJTや社内研修の講師として起用すると、属人化していた業務を可視化・マニュアル化できるため、組織全体のスキルの底上げにつながります。若手社員も実務を通じて学ぶことで、成長スピードが早まり、職場への定着率向上にも役立つでしょう。
さらに、顧客との信頼関係や業界内の人脈を若手に引き継ぐことで、新たなビジネスチャンスの創出にもつながります。
ダイバーシティの推進につながる
シニア人材の雇用は、企業におけるダイバーシティ推進につながります。年齢や価値観の違いを受け入れることで、組織全体に多様性を尊重する文化が浸透し、働きやすい職場づくりを構築可能です。
異なる世代の視点が加わることで、意思決定や業務改善における思考の偏りが減り、柔軟で創造的な発想が促進されます。また、シニア世代が持つ歴史的背景や実務経験と、若手の斬新な感性が融合することで、これまでにない新しいアイデアやビジネスモデルの創出も期待できるでしょう。
ダイバーシティを推進すると、持続的な成長が見込まれるだけでなく、社会からの信頼獲得にもつながります。
職場環境の改善につながる
シニア人材の活躍を支える職場づくりは、結果的に全世代にとって働きやすい環境整備につながります。たとえば短時間勤務やフレックスタイム制度、在宅勤務の導入は、子育て中の社員や介護を担う世代、病気療養と仕事を両立する人にも大きなメリットになります。
また、高齢社員が安心して働ける環境は、「長く働ける職場」として若手社員からの信頼も高まり、離職率の低下も期待できるでしょう。作業環境の見直しや安全対策の強化は、全従業員の労災リスクを軽減し、業務効率の向上にも寄与します。
多様な人材が能力を発揮できる職場は、従業員のエンゲージメントを高め、組織全体の生産性向上も達成できます。
アクティブエイジングの観点から見たシニア人材を雇用する際の注意点
アクティブエイジングによってシニア人材を雇用する際は、若手の活躍機会の喪失や高齢者へのフォロー体制など、いくつか押さえておくべきポイントがあります。ここでは、シニア人材を雇用する際の注意点を3つ紹介します。
若手の活躍機会が減る可能性がある
シニア人材の採用は企業に多くのメリットをもたらしますが、若手社員の活躍機会が減少するリスクも生じます。とくに、経験豊富なシニア社員が現場の中心に立ちすぎると、若手が自ら考え、失敗を通じて成長するプロセスが奪われてしまう可能性があります。
また、世代間の力関係が固定化されると、若手社員が自由に意見を言いにくい空気が生まれ、職場の活力低下や離職の要因になりかねません。このような事態を避けるためには、シニア人材に支援や指導といった育成的なポジションを与え、あくまで「後方支援役」として活躍してもらう工夫が必要です。
若手には挑戦と成長の機会を確保しつつ、シニアが支援する形でサポートする関係性を築くことで、双方にとって意義ある職場環境が整います。
高齢者へのフォローが求められる
シニア人材を職場に迎えるうえで欠かせないのが、高齢者へのフォロー体制の構築です。体力やスキルに個人差があるため、一律の対応ではなく、それぞれに合わせたサポートが求められます。
とくに、パソコンやデジタルツールの操作に不慣れなケースも多く、業務の習得に時間を要することも想定されます。そのため、操作マニュアルの整備や研修の実施など、実務を支える環境づくりが重要です。
また、加齢による体力の低下や健康面にも配慮し、残業・力仕事を避けられる業務設計や、定期的な健康チェックを実施し、安心して働き続けられる環境を整えましょう。
さらに、過去に管理職などを経験してきた人材に対しては、役職変更への心理的配慮も不可欠です。「アドバイザー」や「スーパーバイザー」といった役割を設け、知識や経験を活かせるポジションを提示することで、シニア人材のモチベーション維持にもつながります。
給与・待遇の最適化が求められる
シニア人材を戦力として迎える際には、給与や待遇の最適化が大きな課題となります。年齢や経験に応じた報酬を維持する一方で、若手社員との公平性も意識しなければなりません。
そのため、報酬設計では一律の減額ではなく、段階的な調整を行うことが重要です。また、収入面の調整の代わりに、勤務日数や時間の柔軟性を持たせるといった対応も効果的です。自由度の高い働き方を提示することで、働きやすさと満足度を両立させられます。
さらに、職務内容や責任の範囲に見合った待遇を設定することで、企業のコスト管理とシニア人材の満足度維持の両立が可能です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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