- 更新日 : 2026年1月7日
健康経営とは?企業が取り組むべき理由とメリット、実践手順を解説
企業の持続的な成長を目指すうえで、従業員の健康を「経営資源」として捉える視点が広がっています。健康経営とは、従業員の健康管理を戦略的に推進し、生産性や企業価値の向上を図る経営手法です。
本記事では、健康経営の基本的な意味や導入のメリット、活用できる支援制度、実施の手順や施策例などを解説します。
健康経営とは?
健康経営は、企業が従業員の健康管理を経営戦略の一環として捉える考え方です。従業員の健康増進を通じて、生産性や企業価値の向上を図る取り組みとして注目されています。背景には、社会的な課題や働き方の変化が関係しています。
健康経営とは経営的視点での健康管理
健康経営とは、企業が従業員の健康づくりに積極的に投資し、それを経営上の戦略として位置づける考え方です。従来、従業員の健康は個人の責任とされる傾向がありましたが、近年では心身の健康が業務パフォーマンスや組織全体の活力に直接影響することが明らかになってきました。こうした認識の変化により、健康施策はもはや任意の福利厚生ではなく、「人材への投資」として位置付けられるようになっています。
経済産業省も、健康経営を“戦略的な健康管理”と定義し、その実践を後押ししています。
参考:健康経営|経済産業省
健康経営が注目される社会的背景
健康経営が広がる背景には、労働環境や社会構造の変化があります。少子高齢化が進行する中で、企業は若手人材の確保が困難になっており、限られた人材のパフォーマンスを最大限に引き出す必要性が高まっています。
また、従業員の病気や離職が企業にもたらす損失は大きく、医療費や社会保険料の増加、優れた従業員の休業・離職に伴う生産性の低下が経営を圧迫する要因にもなり得ます。これらを防ぐため、健康投資による予防的アプローチが求められています。さらに、SDGsや働き方改革の推進により、従業員の心身の健全性やワークライフバランスに配慮する企業が、社会的にも高く評価されるようになりました。これらの潮流が、健康経営への関心を一層高めています。
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企業が健康経営に取り組むメリットは?
健康経営の導入は、従業員の健康保持・増進だけでなく、企業の経営基盤そのものにも良い影響をもたらします。以下に、健康経営によるメリットを解説します。
従業員の活力・生産性の向上
健康経営に取り組むことで、従業員の健康状態が改善され、業務への集中力や意欲が向上します。職場での運動促進や食生活の改善支援、ストレスケアなどの施策が整えば、心身の健康が保たれ、結果として日々の業務の質が高まります。
十分な睡眠や適度な運動習慣の定着、メンタルヘルス対策の実施などは、集中力や業務効率の向上につながります。こうした健康支援は、職場全体の雰囲気を明るくし、従業員エンゲージメントの強化につながります。創造性やチームワークの向上、顧客対応力の強化といった波及効果も期待できます。
医療費負担や欠勤率の削減
健康経営によって、企業が負担する医療費や従業員の欠勤・休職による損失を抑えることができます。従業員の病気を予防する取り組みによって、生活習慣病の発症や重症化を防ぎ、健康保険料や医療費の増加を抑える効果が期待できます。
また、健康診断の受診率向上やストレスチェックの実施により、病気の早期発見・早期治療が可能となり、長期休職や離職のリスクを軽減できます。その結果、従業員の出勤率が向上し、現場の業務が安定することで、無駄な人件費や生産ロスの回避にもつながります。企業にとっては、健康管理を通じた経営リスクの低減という側面も利点です。
採用力・企業イメージの向上
健康経営は、企業の対外的な信頼性や魅力を向上させます。従業員の健康を大切にする姿勢は、就職活動中の学生や転職希望者にとって大きな魅力となります。「健康経営優良法人」として認定を受けた企業は、「働きやすい職場」「従業員を大切にする企業」として社会的信用を得やすくなります。このような認定は、採用活動において大きな強みとなるだけでなく、既存の従業員のモチベーション向上にもつながります。
さらに、健康経営の実績は、取引先や金融機関、投資家からの評価にも影響し、経営の健全性や将来性を高く評価される要素となります。
補助金や融資などインセンティブの獲得
健康経営を進めることにより、自治体や金融機関からのインセンティブを受けるチャンスも生まれます。経済産業省が実施する「健康経営優良法人」認定を受けると、自治体の補助金制度で加点対象になる場合があります。
また、一部の地域では、認定企業に対して低金利での融資を提供する金融機関も存在します。さらに、協会けんぽでは加入者と事業主の健康増進に関する取り組みに応じて、インセンティブを付与し、保険料率を引き下げる仕組みを導入しています。。これらの支援措置は、健康経営にかかる初期投資の一部をカバーし、企業の財務的負担を軽減する手段として有効です。
健康経営を推進するための制度は?
健康経営を実施・推進する際には、公的な認定制度や表彰制度を活用することで、企業の取り組みを「見える化」し、対外的な信頼性を高めることができます。ここでは代表的な制度と、その他関連する支援施策について紹介します。
健康経営優良法人認定制度
健康経営優良法人認定制度は、戦略的な健康経営を実践する企業を国が公式に認定する制度です。この制度は経済産業省と日本健康会議が2017年から開始したもので、従業員の健康管理に取り組む企業を「見える化」し、社会的に評価することを目的としています。
認定は「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」に分かれており、企業の規模に応じた基準で審査が行われます。たとえば、定期健康診断の受診率、メンタルヘルス対策、職場環境整備などが審査対象となります。
認定を受けた企業は「健康経営優良法人」のロゴマークを使用でき、採用活動や広報資料などで積極的にアピールできます。こうした「見える化」により、従業員や求職者、取引先、地域社会などからの信頼を得やすくなります。実際にこの制度の認知度は年々向上しており、2024年度には申請企業数が約24,000件にのぼるなど、広く浸透してきています。
健康経営銘柄
健康経営銘柄は、上場企業の中から特に優れた健康経営を実践している企業を表彰する制度です。
この制度は経済産業省と東京証券取引所が2014年に共同で創設しました。健康経営に注力する企業は「人的資本への投資」を重視しているとみなされ、投資家にとっても魅力的な企業と位置づけられます。健康経営銘柄に選定されることは、企業にとって名誉であり、株主や市場からの評価向上にもつながります。
選定にあたっては、企業の「健康経営度調査」の結果が反映されます。この調査では、トップの関与度、従業員の健康データの活用、制度の継続性などが問われ、単なる形式的な取り組みでは選ばれません。選定された企業はメディアなどで紹介されることも多く、ブランド価値向上や社内モチベーションの醸成にもつながります。
参考:健康経営銘柄|経済産業省
その他の関連制度や取り組み
中小企業向けには、健康経営への初期ステップを支援する「健康宣言事業」があります。この取り組みは全国健康保険協会(協会けんぽ)などが主導し、企業が「健康経営に取り組む意思」を明文化し宣言することで支援を受けられる制度です。宣言企業には、専門家によるアドバイスや、健康づくりに役立つ資料・ツールなどが提供されます。
これを足掛かりに、健康経営優良法人の認定申請に進む企業も多く、導入段階での負担軽減に役立つ制度です。
また、一部の自治体や商工会議所、業界団体などでも独自に「健康企業認定」や「健康企業賞」を設けており、地域や業界内での健康経営推進を後押ししています。
これらの制度は規模や業種に応じて設計されているため、自社に合った取り組みを選びやすい点も利点です。
健康経営の始め方は?
健康経営を始めるには、企業規模や業種に関わらず、段階的なアプローチが効果的です。以下の4ステップに沿って、導入の流れを整理してみましょう。
【ステップ1】経営トップによる「健康宣言」
最初に、経営トップが「健康を経営課題と捉える」という明確な方針を社内外に示すことが重要です。この宣言は、従業員の意識変化や社内の体制整備に影響します。中小企業であれば、「健康企業宣言事業」(協会けんぽ)を活用し、必要書類を提出するだけで専門的な支援を受けられるため、第一歩として有効です。
【ステップ2】現状の把握と目標設定
自社の健康課題を可視化し、改善の方向性を定めます。健康診断の受診状況、長時間労働の実態、メンタルヘルス不調の傾向などを把握し、具体的な目標を設定します。たとえば、「受診率100%」「禁煙率の改善」などが挙げられます。
これらはKPIとして数値化し、経営計画に組み込むことで、進捗管理が容易になります。
【ステップ3】施策の実行と定着
目標に基づいて、健康施策を具体的に実行していきます。職場環境の改善や運動促進プログラム、メンタルヘルス支援、栄養指導などが有効です。実施にあたっては、安全衛生委員会や人事部門が中心となり、従業員の声を反映しながら進めることがポイントです。施策を社内報や説明会で継続的に周知し、社内文化として根付かせる工夫が求められます。
【ステップ4】検証と改善のサイクルを回す
施策を継続するには、定期的な評価と改善が不可欠です。KPIの達成度やアンケート結果、欠勤率の変化などを指標に、効果の有無を検証します。結果をもとに施策を見直し、より現場に適した取り組みへと更新していきます。このPDCAサイクルを継続的に回すことが、健康経営の質を高め、継続可能な施策へとつながります。
健康経営のための施策例は?
健康経営を実践する際には、従業員の健康維持・増進を目的とした取り組みを計画的に実行することが求められます。ここでは多くの企業で活用されている代表的な施策例を紹介します。
身体的健康を支える施策
基本となるのが、従業員の身体的な健康をサポートする取り組みです。定期健康診断の受診率向上や再検査のフォロー体制の構築、社内でのウォーキングキャンペーンやラジオ体操の導入、フィットネスジムとの法人契約などが代表的です。
また、社員食堂のメニュー改善や栄養指導の提供も、生活習慣病の予防に効果的です。喫煙対策として禁煙外来の費用補助や分煙環境の整備も取り入れられています。
メンタルヘルス対策の推進
心の健康を守る取り組みも、現代の職場では重要性が増しています。ストレスチェックの定期実施や、社外カウンセラーと連携した相談体制の構築、管理職向けのラインケア研修などが効果的です。職場内での心理的安全性を高めるために、ハラスメント防止教育や定期的な1on1面談を実施する企業も増えています。
働きやすい環境づくり
長時間労働の是正や柔軟な働き方の導入も、健康経営の重要な柱です。フレックスタイム制、テレワークの活用、有給休暇取得の推進、休養制度の整備などにより、従業員のワークライフバランスを支援できます。これにより、過労やモチベーション低下の防止につなげます。
健康経営で企業と従業員の未来を健やかに
健康経営とは従業員の健康を守り育てることが企業の成長戦略につながるという考え方です。社員の活力を高めることで生産性向上や人材定着といったメリットが得られ、結果的に企業全体の持続的発展に寄与します。公的な認定制度の活用や段階的な取り組みにより、どんな企業でも健康経営を実践することが可能です。
長期的な視野で健康経営に取り組み、企業と従業員双方の未来を健やかにしていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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