- 更新日 : 2025年12月5日
モラールサーベイとは?メリット・デメリットや実施の流れ、注意点を解説
モラールサーベイとは、従業員の士気や満足度を可視化し、職場の課題を明らかにするための意識調査です。
本記事ではモラールサーベイの意味や他のサーベイとの違い、メリット・デメリット、実施の流れ、注意点を人事担当者・管理職向けにわかりやすく解説します。
モラールサーベイで自社の組織力を高め、従業員がいきいきと働ける環境づくりをしましょう。
目次
モラールサーベイとは
モラールサーベイとは、従業員の士気や職場への満足度、仕事への意欲などを可視化するための意識調査です。
モラールサーベイは、社員がどのような点に満足・不満を感じているのか、組織としてどのような課題を抱えているのかをアンケート形式で把握することを目的としています。
具体的には、社員の声を以下のようなデータとして収集できるのが特徴です。
- 職場の雰囲気
- 上司・同僚との人間関係
- 仕事へのやりがい
- 給与や評価制度などの待遇面
調査結果の分析により、職場環境の改善策が立てやすくなり、離職防止や組織運営の向上に役立ちます。
モラールサーベイと他のサーベイとの違い
サーベイには他にも種類があります。各サーベイの違いは以下のとおりです。
| サーベイの種類 | 主な特徴 | 測定する指標 |
|---|---|---|
| モラールサーベイ | 職場に対する満足・不満・士気の把握 | 組織や職場環境に対する感情面 |
| エンゲージメントサーベイ | 企業の目標に対する共感・貢献意欲の測定 | 会社への愛着や貢献したいという組織貢献意欲 |
| パルスサーベイ | 短期間で社員の状態を測定 | 体調や業務負荷など、状態の変化やスピード |
関連記事:エンゲージメントサーベイとは?目的や効果、実施方法を解説
モラールサーベイのデメリット・課題
モラールサーベイは、組織改善に有効なツールであるものの、デメリットや課題もゼロではありません。
以下では、モラールサーベイのデメリットと課題を2つ解説します。
実施にはコストと時間がかかる
モラールサーベイは設問設計・回答収集・データ分析・フィードバックに至るまで、多くの工程があります。
社員数が多い場合、実施準備から結果共有、改善施策の検討までに多くの時間と人件費が必要となるでしょう。
また、組織の状態変化を追うには定期的な実施が不可欠であるため、継続的な調査体制やデータを正確に読み解く分析担当者の確保も必要です。
しかし、調査結果により得られる離職率低下や生産性向上という長期的なメリットにより、投じたコストと時間の回収は可能といえるでしょう。
本音が聞けるとは限らない
モラールサーベイは社員の心理を可視化できるものの、回答が必ずしも本音とは限りません。
社員が「回答内容は上司に伝わってしまうのではないか」と考え、無難な回答をすると、組織の実態が見えてこなくなります。
社員の実態が反映されたデータを収集するには、以下の工夫が必要です。
- 質問文を丁寧かつ堅苦しすぎない表現にする
- 回答の匿名性を必ず守ると説明する
- 調査結果を改善に反映する姿勢を示す
丁寧に説明をすると、社員の不安は解消され、本音が引き出せるでしょう。
モラールサーベイのメリット・効果
モラールサーベイは、単に従業員の意識を測るだけでなく、組織変革と成長を促すメリットや効果が多くあります。
以下では、モラールサーベイのメリット・効果を3つ解説します。
社内の課題を可視化できる
モラールサーベイを実施すると、普段は見えにくい以下の社内課題の可視化が可能です。
- 従業員の不満の要因
- 職場の人間関係
- 仕事へのやりがいの度合い
データにもとづいて現状を把握できるため、改善の優先順位が明確に設定しやすくなります。
部署や年代別の傾向の違いを分析すると、社内全体の課題が把握しやすいでしょう。
組織力や生産性の向上につながる
モラールサーベイは、実施結果を踏まえて改善に取り組むきっかけとなり、組織力や生産性の向上につながります。
適切な改善策を実行すると、社員が抱える業務上の悩みを解消でき、働く意欲が向上します。働く意欲の向上は組織の一体感を高め、生産性の向上が期待できるでしょう。
また、経営層や管理職はデータにもとづいた客観的な意思決定が可能となるため、組織運営の質が向上します。
社員の離職防止が期待できる
モラールサーベイは社員の離職防止が期待できます。
モラールサーベイを通じて社員の声を吸い上げ、課題改善に取り組む姿勢を示すと「現場の声が届く、風通しのよい職場」という信頼感が高まるでしょう。
社員からの信頼感は会社への愛着や帰属意識を強め、離職率の低下や定着率の向上という効果をもたらします。
組織に対する不満を解消し、社員が長く働き続けられる環境を整えるのは、人材獲得コストの削減となり、会社全体の安定を築くでしょう。
モラールサーベイの種類
モラールサーベイには調査の目的や企業規模により、種類があります。
一般社団法人日本労務研究会が開発・提供している方式は、以下の2つです。
NRK方式
NRK方式については以下のとおりになります。
| 対象 | 主に従業員規模300人以上の企業を対象 |
|---|---|
| 目的 | 働く意欲の要因を分析する |
| 特徴 |
|
厚生労働省方式
厚生労働省方式については以下のとおりになります。
| 対象 | 主に従業員規模300人未満の企業を対象 |
|---|---|
| 目的 | 社員が仕事や給料、上司などに対してどのような意見を持っているのか、意識を集計・分析する。会社全体の意識レベルを世間水準と比較して調査する |
| 特徴 |
|
モラールサーベイの実施の流れ
モラールサーベイは調査自体よりも、改善施策の実行までを見据えた計画性が大切です。
以下では、モラールサーベイの実施の流れを解説します。
目的設定・実施体制を整える
モラールサーベイを実施する際は、実施目的を明確に設定し、実施体制を整えます。
実施体制は以下の2つです。
| 実施体制 | 外部機関を利用する | 自社で実施する |
|---|---|---|
| メリット | 適切な評価が得られ、より確実な改善につなげやすい | コストがおさえられる |
| デメリット | コストがかかる | 担当者の負担が増え、フィードバックや改善が不十分だと意味がない可能性がある |
外部委託先としては、一般社団法人日本労務研究会のほか、社労士事務所やコンサルティング会社などがあります。外部機関を利用すると、客観的なデータ分析と改善提案が得やすいでしょう。
モラールサーベイを実施する
モラールサーベイの実施にあたっては、以下3点を社員に伝えるのが重要です。
- 趣旨:なぜモラールサーベイを実施するのかという目的
- 社員が答えるメリット:回答はどのように職場改善に活かされるのか
- 匿名であること:回答が個人を特定せず、評価に影響しないこと
3点を事前に伝えると、社員は安心して本音で答えられる環境になるため、信頼性の高いデータを得やすくなるでしょう。
実施結果を集計・分析する
実施結果は集計後に部署別・年代別などの切り口で、傾向を可視化します。
分析により、不満が集中する項目を洗い出し、課題の優先順位を明確にしましょう。
自由記述欄を設けた際は、データだけでは見えない社員の感情や具体的な背景を把握するため、記載内容を丁寧に確認する必要があります。
標準値や前回調査との比較を行うと、自社の客観的な位置づけや過去の改善施策の効果、組織の変化が把握できるでしょう。
改善施策の立案・フィードバックを行う
モラールサーベイの実施後は、分析結果をもとに具体的な改善施策を立て、実行しましょう。
同時に、モラールサーベイに参加した社員全員へ、結果と今後の対応をフィードバックします。
社員が「自分の意見が反映されている」「会社が改善に向けて取り組もうとしている」と感じるように、可能な限り迅速に対応しましょう。
モラールサーベイの注意点
モラールサーベイを組織改善に有効活用する際、運用方法を誤ると、社員の不満や不信感が高まるリスクがあります。
以下では、モラールサーベイを実施するにあたって、注意すべき点を4つ解説します。
目的を明確にして共有する
モラールサーベイを実施する際には、目的を明確に設定し、社員に共有するのが重要です。
実施の目的が曖昧な場合、社員自身が重要性を理解できず、表面的な回答が増える可能性もあります。
また、データが得られたとしても、どのように活かせばいいのかがわからず、改善できません。
「離職防止のため」「職場環境の課題を把握するため」など、実施目的を明確に設定して伝えると、社員が意義を理解し、より本音で回答しやすくなるでしょう。
匿名性とプライバシーを徹底的に守る
社員の本音を引き出すには、回答の匿名性とプライバシーを徹底的に守るのが前提条件です。
匿名性を十分に示さないと「回答内容が上司や人事に伝わるのではないか」という懸念から、無難な回答が増え、モラールサーベイの結果への信頼性が低下しかねません。
社内告知の際は、個人名は特定・公表されないことを明確に伝え、安心して回答できる環境を整えましょう。
結果を放置せず改善につなげる
モラールサーベイは実施自体に満足せず、改善につなげなければ意味がありません。
結果を放置すると「何も改善されない」という社員の不満が募り、社内環境を悪化させる可能性があります。最悪の場合、会社への不信感から社員の離職のきっかけとなる場合もあるでしょう。
実施結果を分析し、具体的な改善施策を迅速に実行しましょう。定期的に進捗を社員へ共有すると、モラールサーベイの信頼性と効果が高まります。
設問数は多すぎないようにする
モラールサーベイの質問項目は、多すぎないようにしましょう。
質問が多すぎると、社員の負担や集中力の低下を招き、回答精度が下がりかねません。集計や分析にも時間がかかり、結果共有の遅れや改善スピードの低下を招くでしょう。
また、長期的な運用を行う場合は、年1回のモラールサーベイと四半期ごとのパルスサーベイを組み合わせる方法も有効です。
モラールサーベイに関するよくある質問
ここでは、モラールサーベイでよくある質問にお答えします。
モラールサーベイの頻度はどのくらいですか?
モラールサーベイの実施頻度は年1回がオススメです。
年に1回実施すると、社内の課題を定期的に可視化でき、年ごとの比較・分析もできます。
しかし、環境変化が激しい組織や変革期にある企業では、状況を素早く把握するために半年ごとの実施も効果的です。
また、年1回のモラールサーベイに加えて、負担にならない頻度でパルスサーベイを行うのも効果的です。
パルスサーベイも行うと、改善施策の効果を短期間で検証できたり、新たな問題を早期に察知できたりします。
関連記事:パルスサーベイとは?意味やメリット・デメリット、質問項目、事例を紹介
モラルとモラールの違いは何ですか?
モラルとモラールの違いは、以下のとおりです。
| モラル | モラール | |
|---|---|---|
| 意味 | 倫理や道徳心を意味し、社会的な規範や行動の基準を指す | 職場や組織における労働意欲や士気を指す |
| 例 | 「法やルールを守る」といった、個人や集団が守るべき善悪の判断基準 | 目標達成に向けた前向きな姿勢といった、感情的・心理的な状態を示す |
モラールサーベイの質問項目にはどのようなものがありますか?
モラールサーベイの質問項目は、企業の実施目的により変わるものの、一般的には以下のテーマが含まれます。
- 仕事への満足度(仕事内容にやりがいを感じていますか?)
- 上司や同僚との関係(上司に相談しやすい雰囲気はありますか?)
- 成長とキャリア支援(会社でスキルアップの機会があると感じますか?)
- 労働環境(業務量や労働時間は適切だと思いますか?)
- 会社への信頼・帰属意識(この会社で長く働きたいと思いますか?)
また、回答者の具体的な意見を得るために、自由記述欄を設けるのも効果的です。
目的に合った質問設計を行い、データを踏まえて、的確な組織改善をしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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