- 更新日 : 2025年12月5日
協調性がない社員の特徴や職場に与える影響、適切な対処法を解説
協調性がない社員を放置すると、業務停滞やトラブルの増加、優秀な人材の離職につながるなどのリスクがあります。協調性とは、異なる意見や立場を調整し、チームとして成果を出すための要となる能力です。
本記事では、協調性の意味や協調性がない人に見られる特徴、対処法を解説します。協調性の不足による影響や対応方法を整理したい方は、参考にしてみてください。
協調性の意味
協調性とは、立場や考え方が異なる相手と協力しながら仕事を進めるための「調整力」です。相手の意見を尊重しつつ、自分の行動を柔軟に合わせることで、チームとして成果を出しやすくなります。
協調性とあわせて比較されがちなのが、コミュニケーション能力です。コミュニケーション能力は「伝える・聞く技術」を指しますが、それだけでは協調性が高いとはいえません。
一方で、協調性はコミュニケーション能力の一歩先の力である、意見の違いを受け止め、折り合いをつけながら合意形成へ導く力を含みます。単に会話ができるだけではなく、関係性を調整し、協力体制を築く力が求められます。
働き方が多様化する現代において、価値観の異なるメンバーと摩擦を最小限に抑えつつ連携を図るために欠かせないスキルといえるでしょう。
協調性が仕事で必要とされる理由
協調性が重視されるのは、多くの業務が「チームで成果を出すこと」を前提に進めるためです。
協調性がある社員は、周囲と歩調を合わせて動けるため、情報共有や引き継ぎがスムーズになりやすい傾向があります。結果として、業務上のミスや情報の抜け漏れが起きにくく、職場の雰囲気も安定しやすくなります。意見を伝えやすい心理的安全性の維持にもよい影響を与える点がメリットです。
一方で協調性が欠けると、周囲がフォローに回る場面が増え、負荷が偏りやすくなることがあります。連携が乱れて本来の業務が圧迫されると、社員の不満が蓄積し、場合によっては離職につながる可能性もあります。
組織全体の成果を最大化するうえで、協調性は基盤となる重要な能力です。
協調性がない人の特徴
協調性が不足している社員には、コミュニケーションが取りにくい、チームより自分を優先しがちなど、共通した行動パターンが見られます。以下で具体的な特徴を詳しく解説します。
1. コミュニケーションが取りにくい
協調性が不足している人は、やり取りがスムーズに進みにくい傾向があります。必要な情報を「自分で判断して抱え込んでしまう」ことが多く、共有が後回しになりやすい点が課題です。作業の遅れや連携ミスにつながる可能性が高まります。
説明が足りなかったり、一方的に話してしまったりすることで、周囲が意図を正しく受け取れず誤解が生じる場面も見られます。
また、相手の意見を聞く姿勢が弱く、会議や打ち合わせが思うように進まないこともあるでしょう。他者の視点で考えることが苦手なため、会話のキャッチボールが続かず、チーム全体の意思疎通に負担をかけてしまうのが大きな特徴です。
2. チームより自分を優先しがち
協調性が低い人は、個人のペースややり方を優先し、必要な場面でも協力行動に踏み出しにくい傾向があります。「自分が正しい」という意識が強く、全体最適より個人の利益を重視する姿勢が見受けられるのが特徴です。
「周囲が忙しいときも手伝わない」「依頼されている業務だけに意識が向きやすい」など、個人プレーに偏りやすい傾向があります。結果として、一部のメンバーに負担が集中し、不平等感やストレスの原因になります。
自分の担当範囲外の業務に関与することが少ないため、組織として求められる連携を取りにくい点が課題です。
以下の記事では、チームビルディングについて詳しく解説しています。ビジネスにおけるチームビルディングの定義や重要性などの理解を深めたい方は、参考にしてみてください。
3. 攻撃的・否定的な態度が見られる
協調性が不足している人は、他者の意見に対して否定的な反応を示しやすく、自分の考えに固執する特徴があります。反発的な言動が増えると、その場の雰囲気が悪くなり、議論や打ち合わせの妨げになることもあります。
指摘やフィードバックに対して前向きに受け止められない傾向もあるため、改善行動に結びつきにくい点も課題です。感情的になりやすいことで対立が発生しやすく、トラブルの火種となる場合もあります。
こうした状況が続くと、周囲が意見を言いにくくなり、心理的安全性が損なわれるおそれがあります。
4. 約束や締切を守るのが苦手な傾向がある
協調性が低い人は、時間やルールに対する意識が弱く、遅刻や納期遅延を起こしやすい傾向があります。自分の判断を優先して「少しくらい遅れても問題ない」と考えてしまい、業務全体の遅れにつながることがあります。
手順やルールを軽視する行動が続くと、組織としての信用を損なうリスクもあるでしょう。
チームで業務を進める場合、ひとりの遅れが全体の進行を止め、ほかのメンバーの負荷を大きくする点が深刻です。こうした状況が続くと、職場のストレス増加や不満の温床となり、チームワークを崩す要因になります。
5. 周囲の雰囲気を乱すことがある
協調性が不足すると、本人に悪気がなくても、行動や態度が職場の雰囲気を不安定にさせることがあります。自己中心的に見える言動や批判的な発言が増えると、周囲は気を遣い、安心して意見を出しにくくなるでしょう。
また、協力し合う文化に馴染めないことで孤立しやすく、場合によっては職場内の分断につながることもあります。雰囲気の悪化が続けば、一体感が失われ、離職につながることも否定できません。早期に兆候を捉えて、組織として適切な対応を取ることが重要です。
協調性がない社員を放置した場合の職場への影響
協調性が欠けた社員を放置すると、組織全体に深刻なダメージが生じます。ここでは、放置によって生じる代表的な悪影響を詳しく解説します。
1. 業務品質の低下や顧客トラブルにつながる
協調性のない社員を放置すると、業務品質が落ちる可能性があります。
指示を無視したり独断で判断したりする行動が増えることで、ミスや作業漏れのリスクが高まります。情報共有が滞れば、誤った対応や重複作業が発生し、業務全体の精度も低下するでしょう。
顧客対応に影響すれば、クレームや信用低下を招き、企業の評価にも直結します。発生したトラブルの対応は周囲が負担することになり、生産性も大きく下がるでしょう。
問題行動に対して注意されない状況が続くと「何をしても咎められない」という空気が生まれ、職場の規律まで緩んでしまいます。
2. チームの雰囲気が悪化する
攻撃的・否定的な態度を取る社員がいると、周囲は意見を言いにくくなるでしょう。意見交換が減り、日々のストレスが積み重なることで、チームの一体感が失われやすくなります。ほかの社員が萎縮し、主体的な行動が減るのもよくあるパターンです。
この状態が続くと、安心して意見を出せる「心理的安全性」が低下し、生産性の低下にも直結します。さらに「組織は守ってくれない」と感じれば、上司や会社への信頼が揺らぐでしょう。
協調的な社員ほど精神的負担を抱えてしまい、離職リスクが高まります。
以下の記事では、心理的安全性について詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
3. 優秀な人材の離職を招く
問題社員を放置したときに大きな損失となるのが、優秀な社員の離職です。
トラブルの後処理や調整に追われ、本来の仕事に集中できなくなることで、働く意欲が下がります。結果として「理不尽を放置する会社」と判断されれば、信頼も失われてしまうでしょう。
実際、人間関係の悪化が退職理由となるケースは少なくありません。ストレスが続くとメンタル不調を引き起こし、休職・退職に至るリスクもあります。
問題社員をひとり放置するだけで、複数の有能社員が離れる可能性があるため、早めの対応が重要です。
協調性がない社員への対処法
協調性に欠ける行動をそのままにすると、業務や人間関係のトラブルが拡大します。早い段階で、問題点を整理する、改善すべき点を伝えるなど、適切な対処が必要です。以下で、具体的な対処法を解説します。
また、以下の記事では人材育成について解説していますので、あわせて参考にしてみてください。
1. 問題点を整理する
最初に行うべきことは、起きている問題を事実にもとづいて把握することです。感情的に「協調性がない」と判断してしまうと、改善点が曖昧になり、指導の根拠を示しにくくなります。
下記のように、具体的な行動を一つひとつ明確にしましょう。
- 情報共有をしなかった
- 期限を守らなかった
- 攻撃的な態度があった
「雰囲気が悪い」「イライラした」などの感覚的な評価は、指導の材料になりません。
また、周囲の不満だけで判断するのは避けるべきです。業務にどのような支障が出ているかを客観的に分析する必要があります。性格ではなく、改善すべき行動に焦点を当てましょう。
問題点を明確にしておくと、後の面談や指導の裏付けとなり、企業として適切に対応している証拠にもなります。
2. 改善すべき点を伝える
問題行動を整理したら、本人へ改善点を明確に伝えます。業務や顧客、チームにどのような影響が出ているのかについて、具体的な事例をもとに説明します。
下記のように「どの行動を、どのレベルまで改善してほしいのか」まで細かく示すことがポイントです。
- 情報共有の頻度
- 報連相のタイミング
- 協力姿勢の取り方
修正方法や手順を本人と一緒に確認し、理解できているかも必ずチェックしましょう。改善状況は定期的に振り返り、フィードバックを行うことが重要です。
継続的な指導を記録に残しておけば、「企業は適切な改善機会を提供した」と説明できるため、トラブル時の重要な証拠にもなります。
3. 指導内容・面談履歴を記録に残す
面談や指導内容は、必ず文書として残します。下記のように、後から確認できる形で整理しておくことがポイントです。
- 問題行動の具体例
- 指導の日時
- 本人の反応
これらの記録は、法的トラブルが起きた際に企業を守る証拠になります。懲戒処分や配置転換など、最終的な対応方針を検討する場面でも必要になるでしょう。
記録が不十分だと「指導が行われていない」「正当な理由がない」とみなされるリスクが生じます。客観的な記録を残すことで、本人にも納得感をもたせやすくなります。
面接・選考の際に協調性を正しく見抜く方法
協調性の欠如は、入社後に表面化することも多く、採用ミスマッチの大きな要因になります。ここでは、協調性を判断するための方法を解説します。
1. チームワークに対する考え方を質問する
協調性を判断するには、候補者のこれまでの経験や価値観を具体的に把握することがポイントです。過去にチームで取り組んだエピソードを尋ねると、役割や貢献度、他者との関わり方が明確になります。
また、意見が対立した場面でどのように行動したかを聞けば、調整力や柔軟性も把握可能です。本人が協調性をどの程度重視しているかを掘り下げることで、価値観の深さがわかります。
語られたエピソードと価値観に矛盾がないかを確認すれば、表面的な回答なのか、実体験にもとづくものなのかを見極めやすくなるでしょう。
2. 面接中の立ち居振る舞いを観察する
協調性は発言内容だけでなく、態度や姿勢にも表れます。
「面接官の話を遮らずに聞いているか」「受け答えが丁寧か」といった基本的な振る舞いは重要な判断材料です。姿勢・表情・声のトーンから、相手への配慮が自然に現れているかも確認できます。
「回答が一方通行になっていないか」「質問と回答のキャッチボールができているか」もチェックポイントです。自己中心的な印象や否定的な態度が見られる場合は、職場でも同じような問題が生じる可能性があります。
3. グループ選考で協力の姿勢を確認する
グループワークは、協調性が行動として表れる場です。他者の意見を尊重し、必要以上に発言を奪わないかどうかを観察します。
自分ばかり話さず、議論のバランスを意識できているかは大きなポイントです。役割を独占したり、他者を押しのけたりする態度がないかも確認しましょう。
また「グループ全体の成果に向けて自然に動けるか」「調整役・まとめ役として立ち回れるか」などの行動からも、協調力の高さが見えてきます。
4. 適性検査で客観的にチーム適応力を測る
適性検査は、面接で判断しきれない協調性の要素を客観的に確認できる手段です。「協力性」「柔軟性」「対人配慮」などをデータとして把握でき、候補者のコミュニケーションスタイルやチームプレー適性を客観的に評価できます。
検査結果と面接での印象を照合することで、一貫性や再現性も確認できます。主観的な評価に偏らず、多面的に判断できる点が大きなメリットです。
以下の記事で適性検査について詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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