- 更新日 : 2025年12月5日
コンセンサスとは?意味やビジネスにおける重要性、使い方を解説
ビジネスにおける「コンセンサス(合意形成)」とは、全員が納得して行動に移すために欠かせないプロセスです。社内会議で意見が割れてしまい、なかなか結論が出ないときこそ、コンセンサスが重要になります。
本記事では、コンセンサスの意味や重要性、スムーズに合意を得るための具体的な方法を、実践例を交えてわかりやすく解説します。
目次
コンセンサスとは
コンセンサスとは、関係者全員が納得したうえで、判断を共有する合意形成のことです。相互理解を前提として同意することから、ビジネスだけでなく、社会的意思決定にも使用されます。
直訳すると「認識」「意識」
英語の「consensus」は「共に感じる」を意味します。多数派が賛成している状態ではなく、関わる人たちの考え・感情が近い方向にまとまっているイメージです。
つまり、コンセンサスは「なんとなく決まったこと」ではなく、参加者が考えを共有し、同じ認識や意識を共有した状態を表します。話し合いのなかで認識のズレを調整し、信頼関係を築くことが、コンセンサスの基本です。
ビジネスシーンでは「合意」「同意」
ビジネスシーンの「コンセンサス」は、会議や打ち合わせなどで関係者全員が納得した状態を指します。
たとえば、会議において賛成が多くても、後から不満や戸惑いが表出し、足並みが乱れるかもしれません。目的や背景を最初から共有すると、全員が結論に納得できるため、協力して物事を進められます。
コンセンサスは、上司や同僚との信頼関係を築くうえでも重要な考え方です。メンバー同士が安心して意見を出せるようになれば、チームの生産性向上につながります。
コンセンサスの言い換え
コンセンサスの類語として「同意」「合意」「総意」があります。いずれも、関係者の考えがまとまり、同じ方向を向いている状態です。
「アグリーメント(agreement)」もコンセンサスと似た言葉のひとつです。しかし、アグリーメントは「条件付きの合意」を意味するため、全員が同じ考えを持った状態ではありません。
ビジネスの現場では、下記の表現に言い換えられます。
- 意思の統一
- 足並みを揃える
- 認識をすり合わせる
「コンセンサス」の意味が伝わりにくい場面では、日本語表現を使用しましょう。
ビジネスにおけるコンセンサスの重要性
ビジネスにおいても、コンセンサスの考え方は重要です。
企業やチーム全体が同じ目的・判断基準を共有することで、参加者は組織全体の考え方を理解できます。結果として、行動がスムーズになり、足並みが乱れにくくなる仕組みです。
コンセンサスは意思決定のスピードだけでなく、質にも影響します。反対意見や不安の声もいったん受け止めたうえで、対話を通じて落としどころを探るため、後戻りややり直しの手間を抑えられるでしょう。
全体方針に納得した状態は、メンバーの心理的な安心感にもつながります。個人の意見を総合したうえで方針を決めるため、結論に対して納得感を持って行動できるでしょう。
コンセンサスは、組織の信頼度と成果の両方を支える考え方です。
【例文付き】コンセンサスの使い方4選
同じ「コンセンサス」でも、場面によってニュアンスや使い方は異なります。例文を交えて、場面ごとの意味合いをチェックしましょう。
1. 他社からの合意を得る
他社との話し合いで使われる「コンセンサス」は「双方の納得を得た」という意味です。契約内容や価格条件、納期などをすり合わせ、落としどころを見つける場合に使われます。
ビジネスシーンでの用例は、次の通りです。
「新しい取引条件について、先方とコンセンサスを得ました。」
「価格改定案について、主要顧客3社とコンセンサスを取りました。」
ビジネス文書や会議報告の場でも、合意形成を示す言葉として使えます。
2. 意見をまとめて合意する
「チーム内でコンセンサスを取る」という表現は、メンバーの意見が分かれているときに、方向性を揃える場面で使われます。具体的には、次のような文脈です。
「方向性が分かれたため、部署でコンセンサスを取り直した。」
「施策の優先順位について、チーム内でコンセンサスを取っています。」
上記の場合は、それぞれの意見を整理し、全員が納得できる着地点に落ち着いたことを示しています。コンセンサスは「議論で合意形成を行った」意味になるため、報告時の定型表現として使うのがおすすめです。
3. 全会一致を目指す
会議やプロジェクトで、全員が同じ結論に納得した状態にも「コンセンサス」を使います。多数決ではなく、疑問や不安を出し合って解消したうえで合意に至った場合に「コンセンサスが取れた」と表現するのです。
実際のビジネスシーンでは、次のように使用します。
「全員が納得したため、企画案についてコンセンサスが取れた。」
全員が同意するための会議を「コンセンサス会議」と呼ぶこともあります。
4. 事前に根回しをする
「事前にコンセンサスを得る」という表現は、会議やプレゼンの前に関係者と認識を揃える意味合いです。提案内容に対して疑問や懸念が残ったまま本番に臨むと、想定外の反対意見が出ることも考えられます。
本番で意見の食い違いを防ぐため、「根回し」することを次のように表現します。
「プレゼン前に関係部署からコンセンサスを得ておくことが重要です。」
「事前にコンセンサスを得たうえで本日の会議に臨みます。」
上記のように報告すると、「十分に根回しや準備を行っている」といったニュアンスを伝えられるでしょう。
コンセンサスがもたらす3つのメリット
コンセンサスを取ると、少数意見の尊重や、信頼感の向上といった効果が得られます。また、同意を得る過程で多様な意見が集まるため、イノベーションの促進にもつながるでしょう。
1. 少数の意見も尊重される
コンセンサスを意識すると、多数派だけでなく、少数派の意見にも耳を傾ける姿勢が生まれます。少数の意見にも価値が生まれるため、組織のモチベーションアップが可能です。
また、一見マイナーに思える指摘の中に、リスクや課題が隠れている可能性も否定できません。少数の意見を深掘りすると、多数派の意見にはなかった落とし穴を発見できることがあります。
2. 視野が広がる
コンセンサスのプロセスでは、立場や経験が異なるメンバーの意見を採り入れるため、多様な価値観に触れる機会が増えます。多数派の意見では見えなかった視点が加わることで、より客観的で戦略的な判断が可能です。
たとえば、企画段階で「顧客視点」と「現場運用の視点」が出そろうと、偏りの少ない結論に近づきます。それぞれの意見を尊重し合う姿勢が生まれることで、チーム全体の一体感も高まりやすくなるでしょう。
3. 全員が納得したうえで行動に移せる
コンセンサスが取れている状態では、参加者が議題を理解したうえで決定を受け止めています。実行段階で「本当にやる意味があるのか」と迷ったり、水面下で反発が生まれたりするリスクの抑制が可能です。
話し合いの中で疑問や不安を出し切ってから決めることで、「やらされ感」が薄れ、当事者意識が生まれます。結果として、自ら工夫して行動するメンバーが増えるため、業務全体のスピードや精度も高まるでしょう。
コンセンサスを取る2つのデメリット
参加者全員の納得を得るコンセンサスは、確かに理想的な方法です。しかし、通常の会議と比較して時間がかかったり、方向性が曖昧になったりするリスクも抱えています。
コンセンサスを取る際は、次のデメリットを把握しましょう。
1. 多数決より時間がかかる
コンセンサスの考え方では、少数意見を調整する必要があるため、議論が長期化しやすくなります。参加者が多いほど、理解度や前提知識に差が出やすく、全員の認識を揃えるのが困難です。
加えて、コンセンサスを取る議論では、リーダーシップを持った進行役が不可欠です。リーダーが議論を整理できないと、意見をまとめきれず、結論を出せません。
議論の迷走を防ぐため、進行役はリーダーシップに優れた人物を選定しましょう。
2. 意見の完全な一致は難しい
価値観や立場が異なるメンバーで話し合う以上、意見の完全な一致は困難です。
議論を進める際は、折衷案を探したり、重要度に応じて優先順位をつけたりしましょう。意見の違いを無理に揃えようとすると、議論が停滞しかねません。
また、合意形成を行う際は、目的の共有が必須です。一定の落としどころを見つけるためには、完璧を求めすぎてはいけません。全員が前向きに行動するために、柔軟な姿勢で取り組みましょう。
コンセンサスを得る3つの方法
コンセンサスを得るには、信頼関係を作ることが大切です。安心して発言できる雰囲気を作り、建設的な対話を行いましょう。お互いに本音を出し合うことが、相互理解につながります。
また、会議でコンセンサスを得るには、進行役(ファシリテーター)が不可欠です。詳しくは、関連記事をご覧ください。
1. 批判を恐れない
コンセンサスを取る際は、異なる意見や反論を受け入れることが大切です。むしろ、反対意見こそが議論の質を高め、よりよい結論に近づくヒントになると考えましょう。
反対意見を多数派が封じれば、表面上はスムーズに話がまとまるでしょう。しかし、本来議論されるべき、重要なリスクや課題が見落とされ、失敗につながるリスクも否定できません。結果として、メンバーが納得しないまま進んでしまい、実行段階でトラブルが発生することもあります。
反対意見や批判的な意見をヒントにして、建設的な対話を重ねるのが、コンセンサスを取るコツです。
2. 解決策を検討する
意見がぶつかったときは、正しさを競うのではなく、違いが生まれた理由を分析しましょう。個々人の前提や価値観を共有することで、双方の主張を理解し、着地点を見つけやすくなります。
また、結論を急がないことも大切です。
2つ以上の選択肢から1つを選ぶのではなく、双方の強みを活かしましょう。案を採り入れられない場合も、学びとして記録に残せば、将来の改善につながります。
3. 率直な意見を伝える
コンセンサスを得るためには、率直な意見を伝える姿勢が必要です。建前だけで会議を進めてしまうと、決定の背景が不明瞭になります。後から反対意見が表出して、全体が止まってしまうリスクもあるでしょう。
議論の際は、事実と根拠にもとづいて、意見を伝えることが重要です。感情論に流れにくくなり、合意形成の質も自然と高まるでしょう。
率直な意見は、時に衝突を生むかもしれません。しかし、意見を交換することで、よりよい結論に近づけます。
ビジネスシーン以外のコンセンサスと使い方
ビジネスシーン以外でも、コンセンサスはさまざまな場面で用いられます。本章では、教育や金融、投資などの分野でどのように活用されているのかを見ていきましょう。
1. コンセンサスゲーム
コンセンサスゲームは、教育研修でよく使われる、合意形成トレーニングの一種です。参加者は小さなグループに分かれ、与えられたテーマについて意見を出し合いながら、全員が納得できる結論を出します。
ゲームの目的は、相手の考えを理解しながら、着地点を探ることです。議論の中で、自然とコミュニケーション力や傾聴力が鍛えられ、チームワークの向上にもつながります。
コンセンサスの基礎を学ぶには、最適なトレーニング方法です。
2. コンセンサスアルゴリズム
コンセンサスアルゴリズムは、ブロックチェーンのような分散システムで使われる仕組みです。ネットワーク上に存在する多数のコンピュータが、取引データを見せ合うことで、正式な記録を定めます。
コンセンサスアルゴリズムは、あくまで技術的な分野の概念です。しかし、情報の正確性や信頼性を担保するため、複数端末における意見の一致を重要視しています。
3. 市場コンセンサス
「市場コンセンサス」とは、経済・投資の分野で使われる言葉です。アナリストや投資家など、市場参加者内で一致した予測・見解を指します。
たとえば、企業の決算発表前に出てくる「市場コンセンサス予想」は、複数のアナリストが出した業績予想値を平均したものです。投資家は、予想数値と実際の決算を比較しながら、
株価が割高かどうかを判断します。
市場コンセンサスは「集団的な予測」の意味合いであり、「合意」の意味はありません。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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