• 更新日 : 2025年11月25日

休憩時間の付与は義務?労働基準法のルールや短い、長い場合を解説

労働時間が6時間を超える場合、従業員へ休憩時間を付与することは法律上の義務です。労働基準法第34条に基づき、6時間超で45分、8時間超で少なくとも1時間の休憩を労働時間の途中に与えなくてはなりません。

休憩を与えない、または休憩中に電話番をさせるなど業務を命じることは法律違反となります。

このルールをふまえ、企業の担当者は、残業や多様な働き方に対応した正確な勤怠管理が求められます。休憩が正しく付与されないと、未払い賃金の発生や法律違反による罰則のリスクにつながるため、ルールを正確に理解しましょう。

休憩時間の付与は法律上の義務か?

労働時間が一定の基準を超える場合、休憩時間を与えることは労働基準法第34条で定められた使用者の義務です。

この義務は、正社員、パートタイマー、アルバイトといった雇用形態にかかわらず、すべての労働者に適用されます。たとえ従業員本人が「休憩は不要です」と申し出たとしても、使用者は法律で定められた休憩を付与する義務を免れません。

もし使用者がこの義務を果たさなかった場合、労働基準法違反となり、「6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」が科される可能性があります。

参照:労働基準法 第三十四条(休憩)|e-Gov法令検索

労働時間に応じた休憩時間は何分必要?

労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間(60分)の休憩が必要です。

労働基準法第34条第1項では、必要な休憩時間の最低ラインが明確に定められています。付与すべき休憩時間は、残業時間を含めた実労働時間の合計で判断します。

実労働時間必要な最低休憩時間
6時間以下付与義務なし
6時間超 8時間以下少なくとも45分
8時間超少なくとも1時間

労働時間が6時間ちょうどの場合

実労働時間が「6時間ぴったり」の場合、法律上、休憩時間を付与する義務はありません。

ただし、1分でも超えて「6時間1分」の労働となった瞬間に、45分の休憩付与義務が発生します。日々の勤怠管理において、残業などで6時間を超える可能性がある場合は、トラブルを避けるためにも、あらかじめ休憩時間を設定しておく運用が望ましいでしょう。

6時間を超え、8時間以下の場合

実労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合は、少なくとも45分の休憩を与えなければなりません。

例えば、所定労働時間が7時間や8時間の場合、多くの企業では昼休憩として45分や1時間が設定されています。また、所定労働時間が6時間であっても、残業によって実労働時間が6時間を1分でも超えた場合は、その日のうちに最低45分の休憩が必要となります。

8時間を超える場合

実労働時間が8時間を超える場合は、少なくとも1時間(60分)の休憩を与える義務があります。

所定労働時間が8時間の会社で、あらかじめ1時間の休憩が設定されているのは、この規定にもとづいています。もし所定労働時間が7時間30分(休憩45分)の人が、残業して実労働時間が8時間30分になった場合は、合計で1時間の休憩が必要となるため、どこかで追加の15分の休憩を付与しなくてはなりません。

休憩時間を付与する際の「3つの原則」とは何ですか?

休憩時間を付与する際は、時間の長さだけでなく、法律で定められた「途中付与」「自由利用」「一斉付与」の3つの原則を守る必要があります。

これらはすべて労働基準法第34条で定められており、休憩を適切に運用するための重要なルールです。

1. 途中付与の原則

休憩時間は、必ず労働時間の「途中」に与えなければなりません。

例えば、始業時間のすぐ後や、終業時間の直前にまとめて休憩を与えるといった方法は認められていません。休憩は、労働による疲労を回復させ、継続的な業務の能率を維持するために設けられるものです。そのため、業務の合間に挿入する必要があります。

「休憩時間が早すぎる」といったケースも、この原則に反する可能性があります。

2. 自由利用の原則

休憩時間は、労働者が労働から完全に解放され、自由に利用できる時間でなければなりません。

休憩中に電話番、来客対応、メールチェック、指示があれば即時対応できる状態での待機(いわゆる手待時間)などをさせることはできません。もし、そのような業務を命じた場合、その時間は「休憩時間」ではなく「労働時間」とみなされます。

3. 一斉付与の原則

休憩時間は、原則として、その事業場の全労働者に対して一斉に与えなければならないと定められています。

ただし、この原則には例外があります。

  • 労使協定による例外
    事業場の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数代表者)との間で書面による協定(労使協定)を結んだ場合は、交代で休憩を与えることが可能です。
  • 業種による例外
    運輸交通業、商業(飲食業など)、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業(病院など)、接客娯楽業(旅館など)、官公署の事業については、業務の性質上、一斉付与が困難であるため、労使協定なしで交代制の休憩が認められています。

参照:労働時間・休憩・休日関係|厚生労働省

残業や深夜勤務の場合、追加の休憩時間は必要?

残業した結果、その日の実労働時間が法定の基準(6時間または8時間)を超えた場合、基準に応じた休憩時間の合計が必要です。

休憩時間の要否は、所定労働時間ではなく、残業時間を含めた「実労働時間の合計」で判断されます。

残業時間を含めた休憩の考え方

法律が要求するのは、あくまで実労働時間の合計に対する「最低休憩時間」です。

例えば、所定労働時間8時間(うち休憩1時間)の人が、2時間の残業をしたとします。この日の実労働時間は10時間です。

10時間労働の場合、法律上必要な休憩は「8時間超」にあたるため「1時間」です。すでに昼休憩として1時間を取得しているため、残業時間中に追加で休憩を付与する法律上の義務は発生しません。

一方で、所定労働時間7時間(うち休憩45分)の人が、2時間の残業をした場合、実労働時間は9時間です。

9時間労働の場合、必要な休憩は「1時間」です。すでに45分しか取得していないため、どこかのタイミングで追加の15分の休憩を付与しなければ、法律違反となります。

深夜勤務や仮眠の扱い

深夜勤務(原則22時~翌5時)の場合でも、休憩時間のルール(6時間超で45分、8時間超で1時間)は昼間の勤務とまったく同じです。

勤務中に設けられる「仮眠時間」が休憩時間として認められるかは、その時間が「自由利用の原則」を満たしているかによります。仮眠室など一定の場所で休むことが義務付けられ、警報や呼び出しがあれば即座に対応する必要がある場合は、労働から解放されているとはいえず、労働時間(手待時間)と判断されます。

休憩時間が正しく取れなかった場合はどうなる?

休憩時間が法律の定めどおりに取れなかった場合、その時間は「労働時間」として扱われ、賃金の支払い対象となります。

使用者の指示や業務の都合で休憩が取得できなかった時間は、労働者が自由に利用できる時間ではなかったためです。

休憩が取れなかった時間の賃金請求

休憩時間に業務を命じられたり、業務から離れられなかったりした場合、従業員はその時間分の賃金を請求できます。

もし、その時間が法定労働時間(1日8時間)を超える時間外労働や、深夜労働にあたる場合は、通常の賃金に加えて割増賃金(残業代・深夜手当)の支払いも必要です。

従業員が自主的に仕事をした場合

従業員が使用者の指示なく、「自主的に」休憩時間に仕事をしていた場合、使用者に賃金の支払い義務は原則として生じません。

しかし、注意が必要です。使用者がその事実を知りながら注意せずに黙認していた場合や、休憩時間内に作業をしないと終わらないほどの業務量を課していた場合は、実質的な「指揮命令下」にあったと判断される可能性があります。この場合、労働時間とみなされ、賃金の支払いが必要になるケースも考えられます。

法律違反による罰則

前述のとおり、法定の休憩時間を正しく付与しなかった使用者は、労働基準法第119条に基づき、「6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」という罰則の対象となります。

パソコン作業(VDT作業)特有の休憩ルールとは?

長時間のパソコンやタブレットなど を用いた事務作業(VDT作業)を行う業務については、厚生労働省のガイドラインが「小休憩」を推奨しています 。 VDTガイドラインの対象となる業務は、コールセンター業務 やプログラミング 、長時間のデータ入力  などがあります。

これは法律上の義務ではありませんが、従業員の健康を守る「安全配慮義務」の観点からの指針となります。

  • 連続作業時間が長くなりすぎないよう、1時間以内を1サイクルとする。
  • サイクルの間に10分~15分の「作業休止時間」(小休憩)を設ける。
  • さらに、サイクル中にも1~2回の「小休止」(数分程度)を設けることが望ましい。

VDTガイドラインの小休憩は、作業の合間の休息であり、労働から完全に解放されているとは限らないため、一般的には賃金が発生する「労働時間内」の休息として扱われます。

参照:情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン|厚生労働省

休憩時間に関するよくある疑問

実務においては、休憩時間の運用に関して様々な疑問が生じます。

休憩時間とみなされない行為(やってはいけないこと)は?

労働者が労働から完全に解放されていない時間は、休憩時間とはみなされません。

これは休憩時間の「自由利用の原則」に反するためです。具体的には、以下のような行為を企業が命じたり、黙認したりしている場合、その時間は「労働時間」と判断されます。

  • 電話番や来客対応
    休憩中であっても、電話や来客があれば対応するように指示されている状態。
  • 手待時間
    店舗で顧客が来たら対応する、あるいはシステムアラートが鳴ったら対応するなど、具体的な業務は発生していなくても、即時対応できるよう待機している時間。
  • 業務の義務付け
    休憩時間中のメールチェック、日報作成、研修や勉強会への参加を強制すること。

これらの行為で従業員を拘束した場合、企業はその時間分の賃金(時間外労働であれば割増賃金)を支払う義務が生じます。

休憩中に寝たり外出したりしても良いですか?

はい、原則として自由に過ごして問題ありません。

「自由利用の原則」に基づき、労働者は休憩時間をどのように利用するかを自分で決められます。そのため、休憩室で昼寝(仮眠)をとる、食事に出かける、私用で買い物をするといったことはすべて自由です。

ただし、事業場の規律保持や施設管理の観点から、一定の合理的な制約を設けることは認められています。例えば、休憩中の飲酒を禁止する、安全管理上危険な場所への立ち入りを禁止する、などがこれにあたります。外出を許可制にすることも可能ですが、これはあくまで施設管理や労務把握のためであり、自由な外出を不当に妨げるものであってはなりません。

休憩を15分ずつなどに分割してもよいですか?

はい、法律上、休憩時間を分割して付与することは認められています。

例えば、8時間超勤務で必要な1時間の休憩を、「昼に45分、夕方に15分」と分割することは可能です。ただし、5分や10分といったあまりに細切れな分割は、労働者が実質的に休んだことにならず、「自由利用の原則」を満たさないと判断される可能性があるため、社会通念上、休憩として妥当な長さで設定する必要があります。

パート・アルバイトにも休憩付与の義務はありますか?

はい、あります。労働基準法の休憩ルールは、雇用形態にかかわらず、実労働時間が6時間を超えるすべての労働者に適用されます。

「パートだから休憩は30分でよい」といった雇用形態による例外は一切認められていません。労働時間が6時間を超えれば45分、8時間を超えれば1時間の休憩が、正社員と同様に必要です。

休憩時間の「買い上げ」は可能ですか?

いいえ、できません。休憩時間は法律で必ず付与することが義務付けられています。従業員から「休憩はいらないから、その分早く帰りたい」「休憩時間の分を給料として買い取ってほしい」という申し出があったとしても、使用者はこれを拒否し、法定の休憩を与えなければなりません。休憩の買い上げは違法です。

休憩時間が長すぎると問題ですか?

法律は最低基準(45分/1時間)を定めているだけなので、休憩時間がそれを上回って長いこと自体は、直ちに違法とはなりません。

ただし、休憩時間が長すぎると、その分だけ従業員の拘束時間が長くなります(例:9時始業20時終業、うち休憩3時間)。これが従業員の不満や労働意欲の低下につながる可能性はあります。また、極端に長い休憩時間が、実質的には業務の待機時間(手待時間)ではないかと疑われないよう、自由利用を明確に保障する運用が求められます。

休憩時間の付与義務を今一度確認しよう

労働時間が6時間を超える従業員に対し、法律の定める休憩時間を付与することは、企業の法的な義務です。単に「6時間超で45分」「8時間超で1時間」という時間数を満たすだけでなく、「労働時間の途中」に「自由に利用できる」かたちで与える必要があります(一斉付与の原則には例外あり)。

休憩時間が正しく取れなかった時間は労働時間として扱われ、未払い賃金や残業代の請求、さらには罰則のリスクに直結します。従業員が「休憩は不要」と申し出ても、使用者の義務は免除されません。パート・アルバイトや残業時も含め、すべての労働時間に対して休憩ルールが正しく適用されているか、日々の勤怠管理体制を今一度確認しましょう。


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