• 作成日 : 2025年12月23日

害虫駆除ビジネスは儲かる？開業資金・年収・集客方法を解説

害虫駆除ビジネスは、近年注目を集める安定成長型のサービス業です。住宅や飲食店、企業施設など、清潔で安全な環境を保つための需要は年間を通して高く、景気や季節の影響を受けにくい点が特徴です。

本記事では、害虫駆除ビジネスの収益性、開業に必要な資金や年収の実態、チラシやWeb広告による集客のコツなどを解説します。

害虫駆除ビジネスは儲かる？

害虫駆除ビジネスは、年間を通じて一定の需要があり、サービス単価も比較的高いため、工夫次第で安定した利益を得られるビジネスです。ただし参入障壁が低く競合が多いため、差別化や顧客満足度の向上が不可欠です。

需要が安定しており将来性がある

害虫駆除の需要は、季節を問わず年間を通して安定しています。飲食店やホテル、食品工場など衛生管理を求められる施設では、定期的な防除契約が一般的で、仕事が途切れにくいのが特徴です。夏場はゴキブリや蚊などの昆虫が増加し、冬場はネズミやハクビシンなどの害獣駆除が中心となるため、季節ごとに需要対象は変化しても仕事量は一定に保たれます。

近年は都市部の建築密集化や気候変動の影響で害虫の発生リスクが上昇しており、害虫・害獣対策のニーズが高まっています。さらに食品衛生法改正によってHACCP（ハサップ）による衛生管理が義務化され、飲食・製造分野では防虫・防鼠管理を含む衛生管理の重要性が一段と高まりました。

こうした背景により、害虫駆除ビジネスは今後も一定の需要が見込まれる市場と考えられます。

在庫不要で利益率が高いサービス

害虫駆除は、在庫を抱える必要がないサービス業であるため、原価率を比較的抑えやすいビジネスモデルです。必要な経費は殺虫剤・防護服・捕獲器具などの道具類が中心ですが、一度購入すれば繰り返し使用できるため、材料費負担は軽微です。

作業には専門的な知識と技術が必要であり、顧客は安全かつ確実な駆除を求めるため、比較的高単価でも成約しやすい傾向にあります。スズメバチの巣撤去など危険度の高い作業では一般的に1件あたり数万円程度の料金が設定されていることが多く、巣の場所や規模、高所作業などの条件によっては10万円前後まで料金が上がるケースもあります。さらに駆除後に再発防止や定期メンテナンス契約を締結すれば、安定した継続収入も得られます。このように、コストを抑えながら付加価値を高められる点が、害虫駆除ビジネスが儲かるといわれる理由の一つです。

競合に勝つための差別化が必須

害虫駆除業界は個人でも開業しやすいため競争が激しく、価格勝負に陥りやすい業種でもあります。そのため、利益を上げ続けるためには「他社にはない強み」を打ち出すことが重要です。独自の駆除ノウハウを磨き、難易度の高い害虫にも対応できる体制を整える、あるいは環境に配慮した薬剤を用いた「エコ駆除」を導入するなど、付加価値のあるサービスを提供することで顧客から選ばれやすくなります。

また、24時間受付や即日対応、施工後の無料点検や長期保証など、アフターサービスの充実も信頼を高める要因です。これらの工夫により「この業者なら安心して任せられる」と評価されることで、価格競争に巻き込まれず安定した利益を確保できます。

逆に、他社との差別化が弱いと価格以外で選ばれる理由がなくなり、利益率の低下を招くため、自社独自の価値提案を明確にすることが成功の条件です。

害虫駆除業者の年収の目安は？

害虫駆除業者の年収は雇用形態や営業スタイルによって異なります。ここでは一般的な年収の目安と、高収入を実現するための条件について見ていきます。

平均的な年収は300万円台〜600万円

業界全体で見ると、害虫駆除に従事する人の平均年収は統計上おおむね370万〜400万円程度とされており、一般的な会社員の平均よりやや低めです。これは駆除業者に雇用されている正社員や契約社員の給与も含まれるため、地域や企業規模によっては入社直後の年収が300万円未満となるケースも考えられます。ただし、経験を積み、資格を取得することで年収は徐々に上がり、300万〜400万円台を目安とする事業者が多いとされています。

一方で、個人事業主や小規模経営者として自ら案件を獲得していく立場になると、収入の幅は広がります。フランチャイズに加盟し、専門スキルと営業力を活かして活動すれば、条件が整った場合には年収450万〜500万円台を目指せるケースもあります。さらに、マンション管理会社や商業施設などとの定期契約を複数獲得できれば、年収800万円規模も見込めるでしょう。

年収1,000万円以上を実現するには営業力と差別化が必要

自営業として害虫駆除で高収入を目指すには、作業をこなすだけでは不十分です。1,000万円以上の年収を実現している事業者は、いくつかの共通する特徴を持っているといわれています。

まず、単価の高い案件を扱える専門性を備えていることが挙げられます。シロアリ防除やスズメバチ駆除といった危険性の高い作業は、1件あたり数万円から数十万円になることもあり、高収益につながります。また、害虫にとどまらず、ネズミやハクビシンなどの害獣駆除まで対応できる体制を整えることで、受注機会がさらに広がります。

加えて、収益の安定化には定期契約の確保が重要です。飲食店や食品工場といった衛生基準の厳しい業種では、月1回の定期点検契約が多く、これを複数持つことで閑散期の売上を補うことができます。

害虫駆除ビジネスの開業の必要資金は？

害虫駆除ビジネスは、比較的少ない資本でスタートできるビジネスとして注目されています。ただし、事業の成否を左右するのは開業時の設備投資と運転資金のバランスです。必要な資金の全体像と、各費用項目を具体的に把握しておくことが重要です。

開業には100万円〜300万円の資金準備を想定する

個人事業として自宅を拠点に小規模にスタートする場合には、開業資金の目安は100万円前後からとされることが多いです。たとえば自宅を拠点にすれば物件取得費用を削減でき、フランチャイズに加盟する際にも初期費用が比較的抑えられたモデルが存在します。

一方で、広告や専門機材への投資、車両の導入なども考慮すると、小規模開業であっても300万円前後を準備しておくと安心です。なお、店舗を構えたり、加盟金の高いフランチャイズモデルを選んだりする場合は、さらに高額な初期投資が必要となるケースもあります。

初期費用には設備・資格・広告費などが含まれる

開業に際して発生する初期費用の主な内訳は以下の通りです。

これらを合計すると、必要最低額は約100万円前後。より多角的な集客戦略や事業展開を行いたい場合には、200〜300万円を想定しておくと余裕を持って運営が始められます。

ランニングコストは固定支出と広告費を中心に発生する

開業後も事業を継続するためには、毎月一定の経費が発生します。以下に主なランニングコストを整理します。

広告費は、集客効果に直結します。開業初期はポスティングや無料SNSを活用し、売上が安定してきた段階でリスティング広告やポータルサイトへの掲載を積極化するのが効率的な流れです。

害虫駆除ビジネスで必要となる資格・法令・事業者登録は？

害虫駆除ビジネスを行う際には、対象とする建物や事業内容によって関係する法令や資格が異なります。

たとえば、一定規模以上のビルや大型商業施設などの特定建築物で、ねずみ・昆虫等の防除を業として行う場合は、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律（いわゆる建築物衛生法）」に基づき、建築物ねずみ昆虫等防除業の登録や、防除作業監督者講習を修了した者の配置などが必要になります。

一般住宅のみを対象とする小規模な事業であっても、作業中の事故や薬剤トラブルに備えた賠償責任保険への加入や、安全な施工手順の整備は重要です。

具体的な要件は事業規模や取り扱う建物の種類によって変わるため、開業前に最新の法令や自治体の指導内容を必ず確認しましょう。

害虫駆除の集客にチラシは効果的？

害虫駆除ビジネスの集客では、チラシ配布は今でも有効な手段とされることが多いです。地域密着型サービスとの相性が良く、特定エリアに対する認知拡大に一定の効果を期待できる施策です。ただし、反響を得るには工夫が必要であり、Web集客との併用も視野に入れるべきです。

地域を絞ったチラシ配布は高い集客効果を発揮する

チラシ配布は、サービスを必要とする層に直接アプローチできる手段です。ポストに届いたチラシは一度は手に取られやすく、必要なタイミングで取り出して連絡してもらえる可能性があります。ゴキブリの大量発生やスズメバチの巣など、緊急性のある害虫トラブルでは、「手元にあったから連絡した」というケースが実際にあります。

また、高齢者層やネットに不慣れな世代にとって、チラシは今も重要な情報源です。費用も比較的安く、ポスティング・新聞折込など配布方法を選べるのも利点です。チラシは情報量が多く、料金やサービス内容、対応エリア、連絡先、実績などを詳しく掲載できるため、信頼感を与えるのに効果的です。

「24時間受付」「即日対応」「地域密着○年の実績」といった安心感を示す言葉や、「施工後◯年間の再発保証」「このチラシ持参で割引」などの特典も、反響率を高めるポイントになります。

内容と配布方法の工夫が成果を左右する

効果を上げるためには、チラシの内容やデザインにも注意が必要です。たとえば、害虫の写真を大きく掲載すると不快感から捨てられてしまう可能性があり、視覚的な配慮が求められます。「困った時に役立つ情報」として手元に残したくなるデザインが理想です。

配布方法にも特性があります。自社ポスティングは費用を抑えられる一方、地域が偏ることもあります。新聞折込は高齢層には効果的ですが、若年層には届きにくく、街頭配布は対面の訴求力があるものの効率は低めです。

また、チラシだけに依存するのは危険です。若い世代はWeb検索で業者を探す傾向が強く、チラシの効果を最大化するにはホームページやWeb広告との組み合わせが欠かせません。紙媒体は「信頼と安心の補完ツール」として位置づけ、総合的な集客戦略の一環として活用するのが効果的です。

チラシ以外で効果的な集客方法は？

現在の害虫駆除ビジネスにおいて集客力を高めるには、チラシだけでなくWeb施策や口コミによる集客が欠かせません。多くの顧客がインターネットで業者を探す時代に対応し、継続的に選ばれる仕組みを整えることが、安定経営につながります。

Web集客は必須の集客手段

多くの利用者が「地域名＋害虫駆除」などで検索して業者を探す中、ホームページやWeb広告の整備はほぼ必須と言える状況になりつつあります。まずは自社のWebサイトを開設し、対応可能な害虫や作業事例、料金プラン、お客様の声を掲載することで、信頼感と実績をアピールできます。

SEO（検索エンジン最適化）を行い、地域名を含むキーワードで上位表示を狙うことで、自社サイトへのアクセス数を増やすことが可能です。また、Googleなどで検索された際に広告として表示される「リスティング広告」も即効性があり、開業直後の集客に有効です。費用はクリックごとに発生しますが、緊急性の高い依頼が多い業種だからこそ、短期間で結果を出しやすいのが特徴です。

さらに、くらしのマーケット、ミツモア、生活110番などの見積もりマッチングサイト（ポータルサイト）に登録するのも効果的です。こうしたサイトはSEOに強いため、自社名を知らないユーザーにも発見されやすく、比較検討の場に乗ることができます。ただし、他社との価格競争になりやすいため、自社の強みを明確に打ち出したプロフィール作成が重要です。

リピーターと口コミの獲得が安定収益に直結する

新規集客だけでなく、既存顧客からのリピートや紹介を促進することも重要な集客戦略です。害虫駆除は一度きりで終わることもありますが、再発や定期点検のニーズがあるため、丁寧な作業と対応で信頼関係を築くことで再依頼につながります。

施工後のアフターフォローや長期保証、定期契約の提案なども、顧客満足度を高める手段です。また、満足した顧客からは自然と口コミ紹介が発生しやすく、特に地域密着型のサービスでは評判が広まりやすくなります。

自社サイトやチラシに「お客様の声」や施工実績を掲載することで信頼感を強化し、紹介による新規獲得も狙えます。定期顧客に対しては、点検割引やニュースレターなどで継続的な関係を維持する取り組みも有効です。

害虫駆除ビジネスは、着実に収益を狙える成長市場

害虫駆除ビジネスは、一定の需要と比較的高単価になりやすいサービス設計により、条件が整えば少ない資本からでも利益を生みやすいビジネスです。専門性・信頼性・対応力で他社と差別化できれば、競争の激しい業界の中でも高い収益性を期待できる余地があります。集客面ではチラシとWebを併用し、地域密着＋オンラインの両軸で販路を広げることが重要です。開業前に資金計画と市場戦略を整えれば、中長期的に事業を成長させていける可能性のある業種といえるでしょう。

• 監修：中田 宏樹（不動産証券化協会認定マスター / 2級ファイナンシャル・プランニング技能士）

  1984年生まれ。大学卒業後、大手金融機関にて資産運用やファイナンス分野の新規事業企画、法人向けコンサルティングに従事し、多くの企業や個人の資産形成・経営支援に携わる。現在は、ファイナンシャルプランナーとして、保険・投資・相続を中心に、一人ひとりの人生に寄り添った資産形成をサポートする一方で、起業や独立を志す方に対する事業計画の策定、資金調達、経営基盤づくりまで一貫した包括的な支援や、大手企業に対する新規事業企画・開発、DX推進、マーケティング戦略策定などにも幅広く携わり、理論と実務の両面から成果創出に向け伴走支援している。
  「数字の裏にある想いを大切に」「金融をもっと身近に、経営をもっと戦略的に」を信条に、金融・不動産・デジタルの知見を備えた実務経験に基づき、信頼と成果につながる実践的な情報を分かりやすくお届けします。