- 作成日 : 2025年12月24日
ジム経営は儲からない?失敗する理由や高収益を実現するためのポイントを解説
健康志向の高まりを背景に、フィットネス市場は年々拡大を続けています。「フィットネスを仕事にしたい」という参入希望者も多いですが、大手24時間ジムの乱立や格安ジムの台頭により、市場はかつてないほど競争が激化しています。
そのため、現在では安易な計画で参入し、短期間で撤退を余儀なくされる失敗事例も後を絶ちません。しかし、正しい戦略さえあれば、個人や小規模法人でも勝機は十分にあります。
本記事では、なぜ多くのジムが「儲からない」と言われるのか、その構造的な理由から、高収益を上げるための具体的な生存戦略までを徹底解説します。
これからジム開業を目指す方が、厳しい現実を乗り越え、長く愛される「儲かるジム」を作るためのロードマップとして、ぜひ参考にしてください。
目次
ジム経営は本当に儲からないのか?
ただ器具を並べただけの普通のジムや、大手チェーンを真似した中規模ジムは、今から参入しても高利益を出すのは難しいでしょう。
なぜなら、現在のフィットネス市場は、圧倒的な資本力を持つ大手24時間ジムと格安ジムがシェアを独占しており、価格と設備の面で個人が対抗するのは容易ではないからです。
しかし「儲からない」わけではありません。 大手の手が届かないニッチな需要を狙い、コストを極限まで抑えた「スモールジム(マイクロジム)」を運営するといった戦略をとることで、個人でも高収益を上げることは十分に可能です。 つまり、戦う土俵を戦略的に選ぶことで、ジム経営は依然として利益率の高い魅力的なビジネスなのです。
ジム経営が儲からないとされる失敗の理由とは?
ジム経営が「儲からない」と言われる最大の理由は、多額の初期投資と固定費が重くのしかかる中で、資本力のある大手チェーンとの価格競争に巻き込まれやすい点にあります。 加えて、会員の継続率を維持するのが難しく、常に新規集客コストがかさみ、一般的に利益率が低い構造であることも大きな要因です。これらの構造的な失敗要因は、市場に存在する主要なジムの収益モデルに深く根付いています。
大手・24時間ジムとパーソナルジムの収益モデルの構造的な違い
多くの個人ジムが既存のジムのやり方を踏襲することで「儲からない」構造に陥ります。参入前に、市場で高いシェアを獲得しているビジネスモデルの構造を理解することが不可欠です。
- 大手フィットネスクラブのモデル(薄利多売型): 収益源は比較的、低価格な月会費がメインです。高い固定費(賃料、設備)は、「幽霊会員(来館しない会員)」の会費と、多角的なサービス(プール、スタジオ)などによる集客力でカバーします。資金力で劣る個人ジムは、この土俵で勝負できません。
- 24時間ジムのモデル(低コスト自動運営型): 収益源は格安な月会費ですが、人件費を極限まで抑え、高い会員密度を確保することで利益を出す構造です。これも資金力や集客力で、対抗するのは容易ではありません。
- 従来のパーソナルジムのモデル(労働集約型):収益源は高単価な回数券ですが、トレーナーの「時間」が商品であるため、売上に上限ができやすく、業績の拡大が難しいという特徴があります。また、人気のトレーナーが独立するリスクも常に抱えています。
この構造を理解することで、「戦わない」戦略をとるためのヒントを得ることができます。その理由が明確になります。
重すぎる初期投資と固定費
ジム経営はマシンを導入し、内装を整えるだけで数百万円〜数千万円の初期投資がかかります。 さらに重くのしかかるのが、毎月の家賃、光熱費、マシンのリース料といった「固定費」です。
特に、マシンのリース契約は長期間(通常5年〜7年)にわたり、解約が難しいケースが多く、一定の集客が出来ないと、固定費のみが発生し経営を圧迫する原因になります。 会員が集まらない月であってもこれらの支払いは発生し続けるため、損益分岐点を超える前に資金がショートし、廃業に追い込まれるケースが後を絶ちません。
ジムを開業・経営する場合の初期費用については、以下の記事もぜひ参考にしてください。
差別化不在による価格競争への巻き込まれ
多くの個人ジムが、「最新マシン導入」「24時間営業」といった特徴を打ち出しますが、これらはもはや大手の標準装備であり、差別化になりません。
さらに、大手チェーンは「大手ブランドへの安心感」や「多店舗利用可能」といった顧客が重視する利便性も備えています。近隣に大手チェーンが進出してくれば、設備規模で劣る個人ジムは「価格」で勝負せざるを得なくなります。しかし、月額3,000円〜7,000円という大手の価格帯に対抗しようとすれば、利益率は極端に下がり、経営は疲弊します。
高い退会率と終わりのない集客地獄
フィットネスビジネス最大の課題は「継続率の低さ」です。 多くの会員は「モチベーションが続かない」「効果が出ない」などの理由で、入会から3ヶ月〜半年以内に退会します(「幽霊会員」になればラッキーですが、最近はすぐに解約されます)。
業界全体の平均退会率は、概ね3ヶ月間で30%前後とも言われており、入会から半年後には半分近くが辞めてしまう計算になります。 常に退会者の穴埋めをするために新規集客をし続けなければならず、そのための顧客獲得コスト(CPA)はWeb広告の競争激化により年々高騰しています。集客コストが、利益を圧迫する要因になりやすい特徴を持ったビジネスです。
トレーナー依存による売上の天井
パーソナルジムの場合、トレーナー自身の「時間」が商品となります。 これは「労働集約型」のビジネスであり、トレーナー1人が1日に対応できる人数には限界があるため、必然的に「売上の天井」が決まってしまいます。
また、人気トレーナーへの依存度が高いビジネスであるため、経営者がプレイヤーとして現場に立ち続ける限り、自身の労働時間が売上の上限を決定してしまいます。 さらに、そのトレーナーが長期離脱した場合、売上が急落する属人化リスクも極めて高いのが特徴です。組織としての拡大を目指し、複数トレーナーを雇用しても、指導の質を均一に保つ難しさも伴います。
当たり前のサービス・市場把握の欠如
構造的な理由以前に、基本的な部分で失敗しているケースも多々あります。
- 市場や流行を把握できていない:「今は24時間ジムが流行っているから」と数年遅れで参入したり、逆に需要のない地域に最新マシンを導入したりするケースです。
- コンセプトが曖昧:「誰でも痩せられます」といった特徴のない打ち出しでは、大手ジムの看板に勝てません。自社に合ったコンセプトとそれに伴ったサービスを提供することが重要です。
- 当たり前のサービスがない:実は意外と多いのが、「掃除が行き届いていない」「挨拶がない」「空調がカビ臭い」といった衛生面・接客面の不備です。どんなに良いマシンがあっても、ここが欠けていると会員は無言で去っていきます。
儲かるジム経営を実現するためのポイント
個人や小規模法人が勝機を見出すには、大手が参入できないニッチな市場に特化し、高単価でも顧客に選ばれる独自の強みを持つことが効果的な施策の1つです。 資金力による真っ向勝負を避け、安定した高収益を生み出すための具体的なポイントを解説します。
ターゲットを絞り込む
「誰でもどうぞ」という総合ジムではなく、特定の悩みや属性に特化した「専門店」になることで、高単価でも選ばれる理由を作ります。ターゲットを絞ることで、大手との比較対象から外れることができます。
- ターゲット例:「産後ダイエット専門」「50代からの筋力アップ」「下半身痩せ専門」「ゴルフの飛距離アップ専門」
- メリット:「私のためのジムだ」と思わせることでWeb集客の反応率(CVR)が上がり、専門性を売りにすることで客単価を相場の1.5倍〜2倍に設定できます。
近年、子供の体力低下を心配される家庭が増えており、キッズ指導は社会的意義も高い分野です。短期的なダイエットとは異なり、成長を見守る「習い事」として習慣化するため、長期的なお付き合い(LTVの向上)に繋がりやすいのが特徴です。
ターゲットの動線を押さえて立地を選定する
「駅チカなら絶対に儲かる」という考えは危険です。駅前の一等地は家賃が高く、損益分岐点を押し上げる要因になります。 重要なのは、人通りの多さではなく、ターゲットの生活動線(ライフスタイル)に合致しているかどうかです。
- 主婦層:買い物ついでに通える「スーパーの近く」や、送迎前後に寄れる「幼稚園・保育園の周辺」。自転車で通うケースが多いため、駐輪場の有無が重要になります。
- ビジネス層:出社前や退勤後に立ち寄れる「オフィス街」や「主要ターミナル駅」。
- また、都市部以外では車移動を好むユーザーも多いため、駅の遠近よりも「無料駐車場完備」のロードサイド店舗が喜ばれる場合もあります。
固定費を極限まで抑える
いきなり好立地のテナントを借りて大型マシンを入れるのはおすすめできません。まずはリスクを最小限に抑える「小さく始める」スタイルが鉄則です。
- マンションの一室で開業:家賃を10万円以下に抑え、完全個室のプライベート感を売りにします。
- レンタルジムの活用:最初は店舗を持たず、時間貸しのレンタルジムを利用してトレーナー活動を行い、固定客がついた段階で自分のお店を持ちます。
- 中古マシンの活用:新品にこだわらず、良質な中古マシンを導入することで初期投資回収の期間を大幅に短縮します。
収益を最大化する料金設定にする
大手ジムとの価格競争に巻き込まれないよう、「安さ」ではなく「価値」で価格を決めます。安すぎる料金設定は、利益を圧迫するだけでなくマナーの悪い顧客を集めやすくなる可能性があり、クレームやトラブルの原因にもなります。
- サブスクリプション(継続課金):都度払いや回数券は来店のハードルを上げ、フェードアウト(退会)の原因になります。月額制を基本とし、毎月の安定収益(ベース)を確保します。
- 松竹梅の法則: 料金プランは1つではなく「ライト」「スタンダード」「プレミアム」の3段階を用意します。心理的に真ん中のプランが選ばれやすくなり、客単価のコントロールが可能になります。
LTV(顧客生涯価値)を高める
「会費」や「レッスン料」以外にも稼ぐための手段をもつことが重要です。会員一人あたりの単価と継続期間を伸ばすための仕組みを導入します。
- 物販(クロスセル):オリジナルプロテイン、サプリメント、ウェアなどを販売、または定期購入(サブスク)してもらいます。
- コミュニティ化:会員限定のイベントやオンラインサポートを行い、「運動」以外のつながりを作ることで退会率を下げます。
- 高単価コース販売:月額制だけでなく、「2ヶ月集中コース(20万円)」のようなまとまったキャッシュが入る商品を用意し、経営(キャッシュフロー)を安定させます。
SNS・MEOを活用する
大手ジムは莫大な広告費をかけて集客しますが、個人ジムはInstagram、YouTube、Googleマップ(MEO対策)を駆使してコストを抑えられます。メリットは以下のとおりです。
- ファン化:トレーナーの人柄や指導風景を発信することで、価格ではなく「あなたに教わりたい」という濃いファンを集めます。
- 利益率の向上:昨今、Web広告費は高騰しています。SNS経由で集客できれば、通常なら数万円かかる顧客獲得コスト(CPA)が実質ゼロになり、その分が丸ごと利益になります。
ただし、高単価でも納得して契約してもらうためには、SNSで伝える「人柄」に加え、客観的な「信頼の証」が不可欠です。 - 国家資格(理学療法士等): 医学的知識に基づいた「安全性の担保」になります。
- コンテスト実績: 自らの身体で結果を出した「実体験の証明」になります。
「親しみやすさ」と「確かな技術」の掛け合わせこそが、競合他社が真似できない最大の差別化要因となります。
儲からない理由を理解して、高収益のジム経営へ
「ジム経営は儲からない」と言われるのは、多くの場合、資本力のある大手と同じ土俵で戦ってしまうからです。
個人が確実に利益を出すための鉄則は、まず豪華な設備競争を避けて固定費を極限まで抑え、損益分岐点を下げることです。その上で、「キッズ(子供の成長)」や「深い悩み」といった、価格競争に巻き込まれない特定の市場に狙いを定めます。
そこに、SNSで伝える「人柄」と、国家資格などの「確かな技術」による信頼を掛け合わせれば、高単価でも長く愛されるジムを作ることは十分に可能です。戦略さえ明確なら、ジム経営は依然として夢のあるビジネスと言えるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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