• 作成日 : 2025年12月11日

整骨院(接骨院)の交通事故治療は儲かる?仕組みや通いすぎのリスクまで解説

交通事故治療とは主に「自賠責保険を利用した施術」を指します。整骨院(接骨院)の経営戦略として、交通事故治療は儲かる可能性のある重要な分野です。仕組みを正しく理解し導入することで、経営の安定化を図れます。しかし、儲かるという側面だけを見て不適切な運営を行うと、患者様の慰謝料が減るばかりか、整骨院自体の存続が危ぶまれる事態にもなりかねません。

この記事では、整骨院が事故治療で収益を上げる仕組みから法的なリスクまで、深く掘り下げて解説します。

整骨院(接骨院)の交通事故治療が儲かる理由は?

交通事故治療が整骨院の収益性を高める理由は、健康保険の施術とは根本的に異なる自賠責保険の仕組みと料金体系にあります。

1. 健康保険よりも高い施術単価

交通事故治療が儲かると言われる最大の理由は、健康保険適用時と比べた場合の相対的な施術単価の高さにあります。

健康保険を使用する場合、柔道整復師の施術には1部位いくらといった厳格な料金規定(療養費)が存在します。

しかし、交通事故治療で使われる自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)による施術は、原則として自由診療扱いとなります。これにより、症状の必要性に応じて、電療、手技療法、特殊機器の使用といった手厚い施術を、整骨院が設定した適切な料金で請求することが可能です。

結果として、健康保険適用の施術単価(患者様の3割負担分で数百円〜1,500円程度)に対し、自賠責保険では1回あたり5,000円〜10,000円以上の売上になるケースも珍しくありません。

2. 窓口負担0円による通いやすさ

自賠責保険は、国の強制保険であり、交通事故の被害者救済を最優先の目的としています。そのため、被害者となった患者様の窓口負担は原則0円となります。

患者様にとっては、治療費の心配をせずに怪我の回復に専念できるため、必要な回数を継続して通院しやすい環境が整っています。この通いやすさが、結果として整骨院側の安定した来院数と収益に繋がります。

3. 保険会社からの直接入金でキャッシュフローが安定

自賠責保険を使用する場合、施術費用は患者様を介さず、加害者側の保険会社(任意保険会社が一括対応することが多い)から整骨院へ直接支払われます。

健康保険の請求とは異なり、患者様一人ひとりに対する施術費が比較的まとまった金額で入金されるため、キャッシュフローの安定化に大きく貢献します。患者様からの窓口徴収の手間や未払いリスクがなく、確実な収益が見込める点も、整骨院経営における大きなメリットと言えます。

参考:自賠責保険・共済ポータルサイト|国土交通省

整骨院の交通事故治療は一日いくらの売上になる?

整骨院の交通事故治療は、1回の施術で5,000円以上の売上が見込まれ、総額では数十万円単位の大きな収益となるケースが一般的です。

高い施術単価に加え、交通事故の怪我(特にむちうちなど)は完治までに時間がかかるため、長期的な通院が見込まれることが収益を押し上げます。

具体的な収益シミュレーションを見てみましょう。

交通事故治療の収益シミュレーション例
  • 施術単価(一日):7,000円
  • 通院頻度:週3回(月12回)
  • 施術期間:4ヶ月
7,000円/回 × 12回/月 × 4ヶ月 = 336,000円

施術期間が6ヶ月に及べば、患者様一人で50万円以上の売上となります。通常の健康保険の患者様と比較すると、その収益性の高さは歴然です。

このように、高い施術単価と長期的な通院の組み合わせが、交通事故治療が儲かると言われる一般的な収益構造の正体です。

整骨院の交通事故治療へ通いすぎた場合のリスクは?

交通事故治療儲けたいという気持ちが先行し、患者様に不必要な通院を指導することは、絶対にいけません。患者様に不利益を与えるだけでなく、以下のように重大なリスクを伴います。

1. 慰謝料の減額

整骨院の都合で過剰に通院させると、保険会社から不必要な通院と判断され、患者様が受け取るべき入通院慰謝料が大幅に減額される危険性が高くなります。

入通院慰謝料は、怪我の治療のために「必要かつ相当な範囲」で行われた通院に対して支払われます。症状の改善が見られないにもかかわらず、漫然と通院回数だけを重ねる行為は、この必要性を否定されます。

例えば、医師(整形外科)が症状軽快と判断しているのに、整骨院が「慰謝料が増えるから」と毎日通院させると、保険会社はその期間の施術費の支払いを拒否するだけでなく、慰謝料の算定基礎からも除外します。これは患者様の権利を奪う背信行為です。

2. 自賠責保険の限度額超過

通いすぎにより、早期に自賠責保険の限度額120万円を使い切ってしまい、患者様が治療費を自己負担せざるを得なくなるリスクがあります。

自賠責保険は万能ではなく、傷害(怪我)に関する補償(治療費、慰謝料、休業損害、交通費のすべてを含む)には総額120万円という上限枠が定められています。

整骨院が儲けるために高頻度・高額な施術費を請求し続けると、この枠はあっという間に尽きます。枠を超えた分は任意保険会社の審査対象となりますが、過剰診療と判断されれば支払いは拒否され、最悪の場合、残りの治療費は患者様本人の自己負担となります。

参考:限度額と補償内容|国土交通省

3. 保険会社による治療費の打ち切り

医学的根拠のない通いすぎや高額な請求は、保険会社からの信用を失い、早期に治療費の支払いを一方的に打ち切られるリスクを高めます。

保険会社は、症状の経過に関する膨大なデータを持っています。その基準から逸脱した不自然な通院(例:半年経っても週5回通院など)は、即座に過剰と判断されます。儲かるはずだった交通事故治療が、不適切な運営によって経営リスクに変わってしまいます。

4. 不正請求(詐欺罪)による資格剥奪

実態のない通院日数を請求する「水増し」や「架空請求」は、詐欺罪にあたる犯罪行為であり、逮捕や資格剥奪のリスクがあります。

儲けたいという動機がエスカレートし、患者様と口裏を合わせて通院日数を偽る行為は、保険金を騙し取る明確な犯罪です。発覚した場合、施術費の全額返還請求、刑事告発、柔道整復師免許の停止・取消といった行政処分が下されます。儲かるどころか、すべてを失うことになります。

参考:保険医療機関等、訪問看護ステーション及び柔道整復師等において不正請求等が行われた場合の取扱いについて|厚生労働省(地方厚生局)

整骨院の交通事故治療で絶対に守るべきルールは?

整骨院の交通事故治療で儲かる仕組みを適正に活用し、リスクを回避するためには、経営者が以下のルールを徹底する必要があります。

1. 医師の受診・併院を徹底指導する

整骨院での施術と並行して、患者様に整形外科を最低でも月に1〜2回受診するよう指導することが絶対条件です。

柔道整復師には診断権がありません。レントゲンやMRIなどの画像検査、治療終了の判断、後遺障害診断書の作成は医師にしかできません。保険会社は医師の診断を最重要視するため、医師の管理下で施術を行うことが、施術の必要性を保険会社に認めてもらうための最大の防御策となります。

2. 施術の必要性をカルテに記載する

保険会社から施術の必要性を問われた際に備え、なぜその施術を行ったのか、症状がどう改善したのかを、カルテに詳細かつ客観的に記録し続ける必要があります。

通いすぎか必要な施術かを判断する材料は、最終的にカルテの記録です。漫然と同じ施術を繰り返しているだけの記録では、必要性なしと判断されても反論できません。

整骨院の交通事故治療の収益を最大化するポイントは?

通いすぎによるリスクを回避し、健全に交通事故治療の収益を上げるポイントは、以下の通りです。

1. 専門性の高いWebサイトの構築

交通事故治療の専門ページ(LP)を作成し、自賠責の仕組みや整形外科との併院の重要性など、患者様の不安を解消する情報を網羅的に掲載します。

事故直後の患者様は「事故 治療 どこがいい」「むちうち 整骨院」といったキーワードで検索します。「毎日通院できます」「慰謝料アップ」といった表現は避け、「医師との連携を重視します」「症状に合わせた最適な通院プランを提案します」といった、患者様の利益を第一に考える誠実な姿勢を打ち出すことが信頼と集客に繋がります。

参考:あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師|厚生労働省

2. MEO対策の強化

Googleビジネスプロフィールの情報を最適化し、地域で事故治療を探している潜在患者様にアピールします。

良質な口コミと正確な情報を提供することが来院の決め手となります。

3. 弁護士・整形外科など関連業者との連携

交通事故に強い弁護士、理解のある整形外科、地域の自動車修理工場などと提携し、患者様へのワンストップサポート体制を構築します。

不正を行わず、整形外科との併院をしっかり指導する誠実な整骨院は、弁護士からも信頼されています。弁護士と提携することで、不当な治療費打ち切りに法的な側面から対抗してもらえたり、患者様の法的な不安を解消してもらえたりします。このような連携体制こそが他の整骨院との最大の差別化となり、安定した紹介を生み出します。

整骨院の交通事故治療を健全に行うために

整骨院が交通事故治療で儲かるというのは、自賠責保険の仕組み上、一日あたりの施術単価が高いことに起因する事実です。しかし、その収益性を追求するあまり、患者様に過度な通院を指導することは、慰謝料減額や治療費打ち切り、120万円の枠超過などのリスクに満ちています。

目先の儲けを追うのではなく、医師との連携を最優先し、患者様の症状改善と権利保護に努めることこそが、長期的に安定した経営をもたらす唯一の道です。


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