• 作成日 : 2025年12月11日

一番儲かる花とは?収益性が高い品種(菊・バラ等)や利益を出す仕組みを解説

花栽培での収益化を考え始めた時、「一番儲かる花とは何だろう?」という疑問は誰もが抱くものです。しかし、この問いに対する答えを見つけるのは困難です。なぜなら、花の収益性は、栽培する地域、必要な設備、そして市場の需要とトレンドによって大きく変動するからです。

この記事では、「一番儲かる花」というキーワードを手がかりに、統計的に産出額が多い品目や、高い利益率が期待できる花の種類、そして花卉栽培で実際に利益を生み出すための仕組みについて解説します。

一番儲かる花とは?

あらゆる状況で「これが一番儲かる」と断言できる唯一の花は存在しません。生産者にとって利益が最大になる品目は、その人のリソース(土地、資金、技術)、栽培地域の気候、そして選択する販売戦略によって個々に異なります。

例えば、統計上の産出額で見れば、菊が国内トップクラスですが、これは需要が安定している反面、薄利多売になる可能性も含みます。一方、一本当たりの単価で見れば、胡蝶蘭や高級バラは非常に高価ですが、生産するための高度な設備投資や維持コストが莫大な利益を相殺する可能性もあります。

つまり、儲かるという言葉をどう定義するかで、答えは変わってきます。

  • 安定した売上が期待できる花
    需要が常にあり、大量生産・大量出荷が可能な品目。
    市場は安定していますが、競争も激しい場合があります。
  • 単価が高く、高い利益が期待できる花
    贈答用やイベント用など、付加価値が非常に高い品目。
    生産コスト(初期投資、維持費)も高額になる傾向があります。
  • 利益率(所得率)が高い花
    生産コスト(種苗費、肥料代、光熱費など)に対して、販売価格が比較的高く、手元に残る利益が大きい品目。

「一番儲かる花」を探すことは、これら3つの視点を持ちつつ、自身の環境とリソースで、最も効率的に利益を出せる品目を見つけ出すプロセスそのものと言えます。

収益性が高く儲かる花の種類と特徴は?

栽培の難易度や必要な投資規模は異なりますが、統計的な産出額、単価の高さ、あるいは経営効率の観点から、収益性が高いとされる代表的な花が存在します。

菊は、国内の花卉産出額で長年トップクラスを維持している品目です。その最大の理由は、仏花や供花としての根強い需要が、年間を通じて安定しているためです。

特にお盆や彼岸、年末といった需要期に合わせて出荷時期を調整する「電照栽培」や「遮光栽培」の技術が確立されています。これにより、計画的な生産と安定した収入を見込みやすいのが最大の強みです。

ただし、需要が安定している分、多くの生産者が参入しており、高品質なものを安定供給する技術力が求められます。

バラ、蘭(胡蝶蘭など)

バラや蘭(特に胡蝶蘭)は、ギフト、ブライダル、贈答用として非常に高い単価で取引されるため、高収益が期待できる品目の代表格です。

  • バラ:品種が極めて多く、高品質なものは1本数百円で取引されることも珍しくありません。しかし、周年栽培や高品質維持のためには、加温・冷却、補光(電照)などの設備が整った高度な環境制御ハウスが必要不可欠です。初期投資と維持費(特に燃料費)が経営を大きく左右します。
  • 蘭(胡蝶蘭):贈答用の鉢物として圧倒的な地位を確立しており、1鉢数万円で販売されることもあります。一方で、開花までに数年を要し、徹底した温度・湿度管理が求められるため、参入障壁は非常に高いです。莫大な初期投資と高度な栽培技術が成功の前提となります。

リンドウ

リンドウは、他の主要な花卉と比較して経営効率が良いとされる品目の一つです。

リンドウは、比較的冷涼な気候を好み、中山間地域などでの栽培にも適しています。品目によっては、バラや蘭ほどの重装備な施設を必要とせず、露地栽培や雨よけハウス程度で栽培可能な場合もあり、初期投資を抑えられる可能性があります。また、栽培管理が比較的省力化しやすいため、労働時間あたりの収益性、すなわち経営効率が高くなる傾向があると言われています。
ただし、高温期の管理やウイルス対策などのリスクもあるため、地域適性と栽培技術の習得が重要になります。

ハーブ、エディブルフラワー

小規模や副業から始める場合、ハーブ類やエディブルフラワー(食用花)も注目されます。これらは省スペースで栽培可能であり、生育サイクルが短く高回転で収益を上げられる可能性があります。

  • ハーブ:生育が早く、生のまま、あるいは乾燥させて加工品(ハーブティー、ポプリなど)として直売所やECサイトで販売しやすいのが特徴です。
  • エディブルフラワー:飲食店の料理やスイーツの装飾用として需要があり、少量でも非常に高単価で販売できます。鮮度管理と販路開拓(飲食店への直接営業など)が鍵となります。

花の栽培を始めるためのステップは?

花栽培の経営をスタートするには、計画的な準備が不可欠です。

1. 事業計画の策定

まず、「何を(品目)、どれくらいの規模で(専業か副業か)、誰に売るか(販路)」を明確に決定します。例えば、初期投資を抑えたいなら露地栽培可能な品目を選ぶなど、この計画が次の土地や施設の確保、必要な投資額を左右します。

2. 土地と栽培施設の確保

栽培する土地を確保し、品目に適した施設を準備します。初期投資を抑えたい場合は、露地栽培が可能な品目(リンドウ、菊、シャクヤクの一部など)から始める選択肢もあります。一方で、バラや蘭など高単価な品目には、高額な設備投資が必須となります。

3. 農業技術の習得

見様見真似で始めても、高品質な花を安定生産することは困難です。病害虫や生育不良で失敗するリスクを減らすため、専門的な栽培技術の習得が不可欠です。各都道府県の農業大学校、先進農家での研修、地域の農業改良普及センターへの相談などを活用します。

参考:全国新規就農相談センター

4. 運転資金の確保

初期投資とは別に、運転資金の確保が極めて重要です。花栽培は、植え付けから収穫・販売までに数ヶ月〜1年以上かかることが多く、その間の生産コストや生活費を賄う資金が必要となります。

花の栽培で儲かる仕組みを構築するポイントは?

花栽培で儲かる仕組みを構築するには、単に高価な花を選ぶことではなく、「(販売単価 × 販売数量) – 生産コスト」という利益の基本式を最適化することが重要です。

1. 収益性を高める品目選定

利益を出すための品目選定には、市場の需要と供給のバランス、差別化、地域適性の視点が不可欠です。

  • 市場の需要と供給のバランス
    需要の多い花 は安定した収入につながりますが、その分生産者も多く競争が激しくなる傾向があります。一方で、ニッチでも特定の需要を掴めば、競争を避けつつ高い利益率を狙える可能性があります。
  • 差別化
    同じ品目でも、珍しい品種や新品種を導入したり、栽培方法を工夫して品質を高めたりすることで、他者との差別化を図り、付加価値を高めることができます。
  • 地域適性と栽培コスト
    最も重要なのが、自分の土地の条件や地域の気候に合った花を選ぶことです。気候に合わない品目を選べば、冷暖房などのコストが過剰にかかり、利益を圧迫します。小面積であっても、地域に適した品目を選び、高い栽培技術を習得すれば、十分な経営が可能です。

2. 利益を生み出す栽培技術

儲かる花農家は、生産コスト(種苗費、肥料代、光熱費、人件費など)を最小限に抑えつつ、顧客が求める高品質な花を安定的に生産する技術を持っています。

準備不足のまま栽培を始めても、病害虫や生育不良で失敗するリスクが高まります。確かな栽培技術を習得し、コストを管理しながら品質を高めることが利益につながります。

3. 販路の最適化

販売ルートによって、生産者の手取り額は大きく変わります。一般的に、消費者への距離が近いほど利益率は高くなりますが、集客や梱包・発送などの手間も増大します。

儲かる花農家は、単一の販路に依存せず、品質や時期に応じて販路を賢く使い分けています。

4. 6次産業化

単に花を生産する(1次産業)だけでなく、加工(2次産業)や体験(3次産業)を組み合わせます。規格外の花をドライフラワーや押し花、ハーブティーに加工して販売したり、花摘み体験やワークショップを開催したりすることで、廃棄ロスを収益に変え、新たな収益源を創出します。

参考:6次産業化の取組事例集|農林水産省

一番儲かる花は環境と戦略で決まる

「一番儲かる花」を追い求めることは重要ですが、その答えは一つではありません。統計的に産出額が多い菊、単価が高いバラや蘭、経営効率が良いとされるリンドウなど、それぞれに特徴があります。

最終的に花栽培で儲かるためには、自分の地域の気候に適し、自分の資金力と技術レベルで挑戦可能であり、かつ市場の需要が確保できる品目を冷静に選択するという経営的な視点が重要です。確かな技術と戦略に基づき、持続可能な経営を目指すことが、成功への最も確実な道となるでしょう。


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