- 作成日 : 2025年8月19日
「創業支援等事業者補助金」は終了!後継の小規模事業者持続化補助金<創業型>を解説
小規模事業者持続化補助金<創業型>は、創業間もない小規模事業者が行う販路開拓や経営基盤の整備を支援する補助金制度です。かつて実施されていた「創業支援等事業者補助金」の後継的な位置づけで一定の条件を満たす必要があり、初めての方は事前準備が重要です。
本記事では制度の概要や申請の流れを解説します。
目次
創業支援等事業者補助金とは【受付終了】
創業支援等事業者補助金は終了している
この制度は国が認定した市区町村や民間の創業支援事業者と連携し、創業者向けの支援を行う制度でした。現在は制度が終了しており、令和7年度においても募集はありません。したがって、新たな申請は認められていません。
旧制度における対象と支援内容
かつての創業支援等事業者補助金は、創業後まもない個人事業主や中小企業の開業準備・販路開拓費用を支援対象としていました。対象経費には、機械装置費、広報費、ウェブ制作費、展示会出展費、旅費、委託費などが含まれており、それらの一部を補助する形式でした 。補助対象となる創業者は「創業後3年未満」「特定創業支援事業の支援証明書を受領済」などの条件を満たす必要がありました 。
制度は「小規模事業者持続化補助金<創業型>」に再編されている
創業支援等事業者補助金は2019年度をもって終了しましたが、その支援内容の一部は、現在の「小規模事業者持続化補助金<創業型>」に引き継がれています。この制度は、創業間もない小規模事業者の販路開拓や経営基盤強化を後押しするもので、実質的に旧制度の後継的役割を担っています。
小規模事業者持続化補助金<創業型>の対象者と要件
創業型として本補助金を申請するには、「創業後3年以内」であり「小規模事業者」に該当し、さらに「特定創業支援等事業の修了証明書」を取得していることが求められます。以下ではそれぞれの要件を解説します。
小規模事業者の定義を満たしている
この補助金の対象は、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で常時使用する従業員が5人以下、製造業その他の業種で20人以下の事業者です。経営者本人や役員は従業員数に含めず、常時雇用のスタッフが基準となります。法人・個人の別を問わず、株式会社、合同会社、個人事業主、また条件を満たすNPO法人なども応募可能です。
創業から3年以内であること
「創業型」という枠組みから、申請者は公募締切日時点で創業から3年以内でなければなりません。法人設立日や開業届出日が基準となり、たとえば2025年11月28日締切分であれば、2022年11月28日以降の創業である者が対象です。申請時点で開業している必要があるため、開業前の事業者は対象外となります。
特定創業支援等事業の修了証明を取得している
応募には、各自治体が認定事業者と連携して行う「特定創業支援等事業」の受講と修了証明書の取得が必要です。これは創業塾やセミナーで経営・財務・人材・販路の4分野を学ぶものです。修了後に市区町村から交付される証明書は、補助金申請に必須であるほか、登録免許税の軽減や公的融資の優遇措置の利用にも役立ちます。発行には時間がかかる場合もあるため、早めに受講を検討することが推奨されます。
小規模事業者持続化補助金<創業型>の補助金額・補助率
ここでは補助率、補助金額、上限引き上げの条件など、申請前に把握しておきたい金額面の特徴を整理します。
補助率は2/3(自己負担1/3)
創業型では、補助対象経費の2/3が補助金として交付され、残る1/3は事業者の自己負担となります。150万円の経費を使った場合、補助金支給額は100万円、自己負担は50万円となります。この補助率は一般型と共通で、自己負担ゼロで事業を行える制度ではないことに注意が必要です。
補助金の上限額は最大200万円
創業型の基本上限額は1事業者あたり200万円で、これは一般型(通常枠)の上限50万円と比べ高額です。実際の支給額は、申請書の計画に基づいて採択された後、実績報告を経て確定されます。つまり、交付決定額=実支給額ではなく、実際に支出した経費に基づき清算されるため、採択後に計画が縮小した場合は補助金も減額されます。
インボイス特例で最大250万円に引き上げ可能
一定の条件を満たす場合、補助金の上限は250万円に引き上げられます。対象は、過去の一定期間に免税事業者であったか、2023年10月以降に創業し、補助事業終了時点でインボイス発行事業者として登録している場合です。インボイス登録は補助金支給の必須条件となるため、忘れずに申請手続きを行いましょう。
賃上げ特例は非適用
一般型では賃上げに伴う上限引き上げ制度(+150万円)が設けられていますが、創業型にはこの特例は適用されていません。その代わり創業型では基本上限が高めに設定されており、創業直後の事業者でも利用しやすい内容になっています。
小規模事業者持続化補助金<創業型>の申請手続きの流れ
創業型補助金の申請には、準備・申請・採択後の手続きまで複数のステップが必要です。初めて申請する方でも迷わないよう、各段階の流れとポイントを解説します。
ステップ1:事業計画と提出書類を準備する
まずは事務局の公式サイトから最新の公募要領をダウンロードし、申請様式や要件を確認します。補助金の申請には「経営計画書」および「補助事業計画書」が必要で、創業型では創業計画も踏まえた内容が求められます。不明点がある場合は、地域の商工会・商工会議所へ相談するとよいでしょう。
ステップ2:商工会・商工会議所の支援計画書を入手する
計画書が完成したら、所轄の商工団体(商工会または商工会議所)に相談し、「事業支援計画書(様式4)」を発行してもらいます。これは申請時に必要な必須書類で、申請締切の約10日前までに発行を依頼する必要があります。
ステップ3:創業支援セミナーの修了証明書を準備する
創業型では、「特定創業支援等事業」の修了証明書も必要です。創業前後に自治体が実施する創業セミナー等を受講し、証明書を取得しておきましょう。発行には時間がかかる場合もあるため、早期に手続きを済ませておくことが望まれます。
ステップ4:電子申請の準備を進める
補助金の申請は「Jグランツ」によるオンライン申請のみです。電子申請に必要な「GビズIDプライムアカウント」を事前に取得し、Jグランツの初期設定を済ませておきましょう。取得には1~2週間かかることがあります。
ステップ5:書類を揃えてオンラインで申請する
すべての書類を揃えたら、Jグランツ上で必要事項を入力し、PDFファイルを添付して申請します。申請直前はアクセス集中によりトラブルが起きやすいため、数日前までに申請を完了するのが安全です。
ステップ6:採択後の手続きと実績報告を行おう
採択通知を受けたら、補助事業の交付申請、実施、実績報告、補助金の請求と受領、さらに1年後の事業効果報告までが必要です。実績報告では支出証憑の提出が求められるため、領収書や振込明細などの書類を適切に保存しておきましょう。
小規模事業者持続化補助金<創業型>に関するQ&A
ここでは補助金制度に関する情報をQ&A形式で解説します。
創業前でも申請できる?
本補助金は「創業後3年以内」の事業者が対象です。申請時点で開業済みであることが前提であり、開業届や法人登記を済ませていない状態では申請できません。将来的に申請を検討する場合は、創業支援セミナー等を受講し、証明書を取得して準備を進めておきましょう。
応募すれば必ず採択される?
補助金は審査・選考により採択される制度です。事業の必要性や有効性、計画の妥当性などが審査基準となり、すべての応募が採択されるわけではありません。採択されなかった場合に備え、計画内容をしっかりと作り込むことが重要です。
補助金は自由に使える?
補助金は返済不要ですが、用途はあらかじめ申請した補助事業に限定されます。領収書や請求書で証明できる支出のみが対象であり、私的な費用や計画と無関係な経費に充てることはできません。不正利用が発覚すれば返還やペナルティーの対象になります。
採択されたらすぐに資金がもらえる?
補助金は原則として「後払い」です。交付決定後に事業を実施し、実績報告・経費証憑の提出後に補助金が支払われます。補助金が入金されるまでには時間がかかるため、つなぎ資金の確保も含めた資金繰りが必要です。
人件費や家賃も補助対象になる?
基本的に自社従業員の人件費や事業所の家賃は補助対象には含まれません。補助金の対象は創業に伴う機械装置や販路開拓等のための経費(広告費、設備費など)に限定され、またウェブ関連費は補助金交付申請額の4分の1が上限となっています。一般に日常の運転資金には使えない点に注意が必要です。
一度使ったら再申請できない?
同一内容での重複申請はできませんが、異なる事業計画であれば再申請も可能です。創業型と一般型の両方を別の年度で活用することもできます。長期的な事業戦略にあわせて柔軟に制度を活用しましょう。
小規模事業者持続化補助金で創業期の成長を後押ししよう
創業支援等事業者補助金はすでに終了しましたが、その後継として位置づけられるのが「小規模事業者持続化補助金<創業型>」です。本補助金は、創業から3年以内の小規模事業者を対象に、販路開拓や経営基盤の整備にかかる費用の2/3を最大200万円(条件により最大250万円)まで補助する制度です。事前準備や手続きは多いものの、創業初期の経費負担を大きく軽減できるチャンスです。計画的に活用しましょう。
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