- 更新日 : 2024年10月9日
ネットショップ経営の基礎知識!市場状況や仕入れ先も解説
ネットショップはコロナ禍が追い風になった分野もあり、全体として市場が拡大しています。ネットショップの開業にあたっては、何を売るかの選択と仕入れ先の選択がポイントです。この記事では、ネットショップ経営の基礎知識について解説します。市場の状況や仕入れ先も紹介しますので、ネットショップの運営を考えている方はぜひ参考にしてください。
目次 [非表示にする]
ネットショップ経営の現状
ネットショップの市場規模は、右肩上がりの大幅な伸びを見せています。最初に、ネットショップ経営の現状を、物販系分野、サービス系分野、デジタル系分野、個人間EC、越境ECの5つの分野について解説します。
物販系分野
物販系分野ネットショップの市場規模の推移は、下の図に示す通りです。
出典:令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書|経済産業省
この図を見ると、青い棒グラフで示される市場規模(単位:億円)が、年々拡大していることがわかります。また、茶色い折れ線グラフで示される、商取引全体の市場規模に対するネットショップの市場規模の割合であるEC化率も、年々増加しています。
物販系分野の商品分類とその構成比率は以下のようになっています(単位は億円、%は構成比率)。
出典:令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書|経済産業省
以上の分野のうち「飲食、飲料、酒類」の市場規模は2兆5,199億円で最大です。項目別には肉類、生鮮野菜、生鮮果物、調理食品、酒類などが伸びており、コロナ禍を機に外出が減り、日常の食材・ストックの購入のためにネットショップを利用する人が増えていると見られます。
サービス系分野
サービス系分野と、後述するデジタル系分野におけるネットショップの市場規模の推移は、以下の図に示す通りです。
出典:令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書|経済産業省
サービス系分野は旅行サービスや飲食サービス、チケット販売などが含まれているため、2020年にコロナ禍の影響で市場規模が減少しました。
サービス系分野の商品分類とその市場規模は、以下のようになっています。
出典:令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書|経済産業省
上のなかで、特に⑥フードデリバリーサービスがコロナ禍を追い風として大幅に伸びています。ただし、コロナが沈静化し、外食需要がもとに戻ったときにどうなるかは、現在のところ予測ができません。
デジタル系分野
サービス系分野の商品分類とその市場規模は、以下のようになっています。
出典:令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書|経済産業省
いずれも伸びていますが、市場規模がいちばん大きいのはオンラインゲームで、デジタル系分野の約6割を占めています。オンラインゲームは、2020年に巣ごもり需要の増加を背景として市場規模が拡大しました。2021年も引き続き伸びている状況です。オンラインゲーマーの世界的な増加に加え、eスポーツの盛り上がりや、オンラインゲームトーナメントの開催増などが背景にあると見られます。
個人間EC
個人間ECの推定市場規模は、以下の通りです。
出典:令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書|経済産業省
市場規模調査の対象となったのは、フリマアプリとネットオークションです。2012年に登場したフリマアプリは、市場規模が急激に拡大しています。フリマアプリ市場は、①総合プラットフォーム事業者、②アニメ、本、ブランド品、チケット、家電などの特定カテゴリー、③ハンドメイドマーケットの3つに分類されます。海外ではハンドメイド商品の取引が盛んです。日本でも、今後市場が拡大する可能性があると見られています。
越境EC
日本・米国・中国3カ国間の越境ECの市場規模は、以下の図に示す通りです。
出典:令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書|経済産業省
国境を越えて販売を行う越境ECの市場規模は、世界的にも拡大しています。国別のEC市場シェアは、中国が1位で全世界の52.1%、次いで米国の19.0%となっています。
中国の消費者は日本のネットショップから、2兆1,382億円の購入をしています。アンケート調査によれば、中国人が越境ECの利用で購入したい日本の商品として、以下のものが挙げられています。
出典:令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書|経済産業省
ネットショップ経営成功のポイント①サービス選び
ここからは、ネットショップ経営成功のためのポイントを紹介します。まずはサービス選びです。
ネットショップを経営するためには、モール型、ASP型、ソフトウエア型、システム構築型のいずれかのサービスを選ばなければなりません。ここでは、それぞれのサービスの特徴と、メリット・デメリットを解説します。
モール型
モール型サービスとは、多数のネットショップを一同に集めた大型ショッピングモールのようなサイトに、テナントの一つとして出店する形態です。Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどがよく知られています。
■モール型のメリット
モール型サービスのメリットは、知名度が高いため、集客がしやすいことです。また、ネットショップ経営に必要な機能が一通り用意されているため、専門的な知識がなくても比較的短期間でショップを構築できます。
■モール型のデメリット
モール型のデメリットは、競合ショップが多いため、自社のショップが埋もれてしまったり、価格競争などの集客争いに巻き込まれてしまったりしがちなことです。また、顧客データがモール側で管理されるため、リピーターの獲得が困難なこと、および売り上げごとに手数料がかかるため、利益率が低くなりがちなことも挙げられます。
ASP型
ASP型サービスとは、自分のショップをモール内のテナントではなく、独立した路面店のような形で立ち上げるための方法の一つです。ASPとは「アプリケーション・サービス・プロバイダ(Application Service Provider)」の略で、インターネット上でアプリケーションを提供するサービスを意味します。ASP型のネットショップ構築サービスでは、ネットショップに必要な機能がインターネットを通じて提供されます。無料サービスはBASEやSTORESなどが、有料サービスはmakeshopやFutureShop2などがよく知られています。
■ASP型のメリット
ASP型のメリットは、必要な機能がパッケージとなっているため構築の難易度が低いことや、デザインを比較的自由に決められるためオリジナリティーの高いショップを構築できること、モール型サービスで起こりがちな集客争いに巻き込まれることがないこと、および無料または比較的安価な月額料金となるため利益率が高くなることなどが挙げられます。また、顧客データが自社で管理できるため、メルマガやDM、ポイントなどのキャンペーンを自由に実施できることも挙げられるでしょう。
■ASP型のデメリット
ASP型のデメリットは、まず集客をモールの助けを借りずに独自に行わなければいけないことです。また、すでに社内に基幹システムを導入している場合は、連携が難しいことでしょう。また、後述のソフトウエア型やシステム構築型と比べると、カスタマイズの自由度は低くなります。
ソフトウエア型
ソフトウエア型サービスは、ネットショップに必要な機能がまとめられたパッケージソフトを入手し、レンタルサーバーへインストールして、自社の独自ショップを構築するものです。パッケージソフトは、無償であるオープンソースと、有償のものと2通りあります。有償パッケージソフトとしては、ホームページ・ビルダー22などが知られています。
■ソフトウエア型のメリット
ソフトウエア型のメリットは、まずASP型と比較してカスタマイズ性が高いことが挙げられます。また、顧客データはネット上に置かずに、自社のPCなどで管理できるため、基幹システムとの連携がしやすく、セキュリティー面も優れています。
■ソフトウエア型のデメリット
ソフトウエア型のデメリットは、まずシステムの構築や更新を自社で行わなければならないため、難易度が比較的高く、システム構築の時間もかかることです。また、有償のソフトウエアを利用した場合には、導入コストも高めとなるでしょう。
システム構築型
システム構築型とは、ネットショップの専用システムを自社で一から構築することです。
■システム構築型のメリット
システム構築型のメリットは、すべて自社で構築するため、思い描いた通りのネットショップを制限なしに作れることです。基幹システムとの連携や顧客データ管理なども自在にできます。
■システム構築型のデメリット
システム構築型のデメリットは、エンジニアが相応の時間をかけてシステム構築を行わなければならないため、時間と費用がかかることです。また、システムの更新も同様に時間と費用がかかります。
ネットショップ経営成功のポイント②仕入れ先
ネットショップ経営成功のポイントとして次に挙げられるのは、商品の仕入れ先です。ネットショップで取り扱う商品を、オリジナルで作る方法ももちろんあります。しかし、そうでない場合には、仕入れなければなりません。仕入れ先にはさまざまなものがありますが、ここでは主要なものであるネットの仕入れサイトと展示会・見本市、および卸問屋・問屋街の3つを紹介します。
ネットの仕入れサイト
ネット上には仕入れサイトがあり、商品を卸値で購入できます。一般消費者は購入できないため、取扱商品の閲覧には会員登録が必要です。幅広い商品を取り扱っている仕入れサイトとしてスーパーデリバリーやNETSEAなどが知られています。
■仕入れサイトのメリット
仕入れサイトのメリットは、1つのサイトから多様な商品を仕入れられるため、取扱商品の幅が広がることです。また、1点からでも仕入れられるため、リスクを抑えた仕入れができるでしょう。
■仕入れサイトのデメリット
仕入れサイトのデメリットは、誰でも仕入れが可能なため、他のネットショップとの差別化がしにくいことです。また、実際に手にとって見られないため、仕入れてみるまで商品の内容が正確にわからない、ということもあります。
展示会・見本市
多数のメーカーが集まって自社商品を紹介する、展示会や見本市で仕入れ先を見つけることもできます。展示会・見本市はインターナショナル・ギフト・ショーやファッション雑貨EXPOなどが知られています。
■展示会・見本市のメリット
展示会・見本市のメリットは、新商品をいち早くチェックできること、サンプルをもらえる場合があることなどが挙げられます。また、メーカーや同業者とのパイプづくりができるのもメリットといえるでしょう。
■展示会・見本市のデメリット
展示会・見本市のデメリットは、個人のネットショップの場合、実績がないと信頼を得られず、商談を成立させにくいことです。名刺やショップのパンフレットを持参するなどして、ショップの実績と魅力をしっかりと伝えることが必要でしょう。
卸問屋・問屋街
日本国内に多数ある卸問屋や問屋街も仕入れ先として利用できます。東京都内なら、布生地やハンドメイド素材などの問屋が多数ある「日暮里繊維街」や、調理器具やテーブルウェアなどの問屋が集まる浅草「かっぱ橋道具街」などが知られています。問屋街や店舗ごとに独自のルールがあるため、事前の下調べが必要となるでしょう。
■卸問屋・問屋街のメリット
卸問屋・問屋街のメリットは、さまざまな商品を扱う問屋があるため、他のショップにはない珍しい商品を仕入れられる可能性があることです。
■卸問屋・問屋街のデメリット
展示会・見本市と同様に、実績がないネットショップでは商談が成立しない可能性があります。基本的な専門用語や暗黙のルールを身に付けたうえで訪問するなどして、真剣さをアピールする必要があるでしょう。
ネットショップを開業する際の流れ
ネットショップを開業する際の流れを紹介します。
商品を決める
ネットショップを開業する際にまず必要なのは、取り扱う商品を決めることです。商品の選択は、オリジナル商品を作るのか、仕入れるのかが挙げられます。また、多数の商品を取り扱うのか、あるいは厳選した少数の商品を取り扱うのかのという選択もあるでしょう。
商品を仕入れる場合には、仕入れ先を決めなければなりません。商品の品質や、発注から納品までの期間、仕入れの最小ロットなどについてしっかりと確認しましょう。
商品を決めるにあたっては、実際にネットショップでどのような商品が売れているかを知ることも重要です。めぼしいネットショップを調査・研究する必要があるでしょう。
必要な許可や資格を取得する
取り扱う商品を決めたら、販売に必要な許可や資格を取得します。まず個人が事業を始めるために、税務署に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出する必要があります。また、以下の通り取り扱う商品によっては、届出や許可申請が必要です。
取扱商品 | 許可・資格 |
---|---|
食品 | 食品衛生責任者 食品衛生法に基づく営業許可 |
酒類 | 通信販売酒類小売業免許 |
中古品 | 古物商許可 |
化粧品 (自社による製造や輸入が伴う場合) | 化粧品製造販売業許可 化粧品製造業許可 |
輸入品 | 食品等輸入届出書 |
医薬品 | 医薬品販売許可 特定販売許可届出 薬局開設許可 登録販売者・薬剤師の資格 |
管理医療機器 (コンタクトレンズなど) | 管理医療機器販売許可 |
許可・資格には、取得までに数カ月がかかるものもあります。早い段階での手続きが必要です。
使用するネットショップの構築サービスを決めて、開設作業をする
許可・資格の申請と並行しながら、使用するネットショップ構築サービスを決めて開設作業を進めます。ネットショップ構築サービスは、前述の通りモール型、ASP型、ソフトウエア型、システム構築型の4つがあります。
開設作業は、具体的に以下のようなものがあります。
- デザインを決める
ネットショップのデザインは、売上に影響します。商品の特徴がユーザーにしっかり伝わること、閲覧や購入などの操作がしやすいこと、スマホ対応していること、などをポイントに決めましょう。 - 取扱商品を登録する
商品ページは、特に売上を左右します。商品写真のクオリティ・撮影方法に徹底的にこだわること、および商品説明の文はできるだけ詳しく書くこと、などを心がける必要があるでしょう。 - 決済方法を導入する
ネットショップの決済方法は、クレジットカード決済、コンビニ払い、電子マネー(ID決済)、銀行・郵便局での振り込み、の4つが人気です。この4つは導入の必要があるでしょう。そのほか、代金引換、後払い(BNPL)などもネットショップでは一般的に利用されます。 - 特定商取引法の表記ページ作成
ネットショップの信頼性を高めるうえで、特定商取引法に基づく表記のページは重要です。特定商取引法に定められた表示義務項目を守ってページを作成しましょう。
配送業者を決める
商品の配送業者は、大手ではヤマト運輸、佐川急便、日本郵政、西濃運輸、福山通運の5つの選択肢があります。配送にはコストがかかるため、どの方法を利用するかの選択は重要です。
一般に法人契約をすれば福山通運が最も安く、個人契約では佐川急便が安くなります。また、日本郵政は重量制限が緩いため、小型のわりに重量のある荷物は日本郵政を利用するのがよいかもしれません。
日本郵政のクリックポストは、全国一律185円で商品を送れるため、CD・DVDや衣料品、サプリメント、雑誌・コミックなどの小さいものを送る場合は利用するのがよいでしょう。一方、大型の荷物は西濃運輸や福山通運が安くなるケースがあります。
ただし、配送方法の選択はコストだけの問題ではなく、顧客の信頼にも関わります。無名の配送業者では、本当に無事に届くのか、顧客が不安に思うこともあり得るからです。ヤマト運輸や佐川急便、日本郵政などの実績と知名度がある業者を優先的に選ぶことも考える必要があるかもしれません。
ネットショップ開業向けの事業計画書テンプレート(無料)
こちらから自由にお使いいただけるので、ぜひご活用ください。
・ネットショップの事業計画書・創業計画書テンプレート・作成例
ネットショップ開業準備はポイントを押さえて進めよう
年々市場が拡大しているネットショップは、構築サービスをモール型、ASP型、ソフトウエア型、システム構築型のいずれにするのか、および仕入れ先をどうするかが、経営のポイントです。開業にあたっては、商品を決めるとともに、許可申請手続きや開設作業、配送方法の選択など、準備作業も多くあります。しっかりと準備をして、ネットショップを成功させましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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