- 作成日 : 2022年10月21日
【2022年5月施行】宅地建物取引業法の改正点は?わかりやすく解説
近年は電子化が進んでおり、さまざまな法律がデジタルに対応できるよう改正されています。宅地建物取引業法についても同様に改正法が施行され、不動産取引の在り方が変わりつつあります。そもそも宅地建物取引業法とは何なのか、どのような法改正があったのか、この記事で整理していきましょう。
目次
改正が進む宅地建物取引業法
2021年5月に公布された「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」により、押印を求める手続の見直しや、書面交付を求める手続の見直しが行われました。同法により宅地建物取引業法の内容も見直され、電子化が推し進められています。
その結果、改正法が施行される2022年5月18日からは一定の手続につき押印が必須ではなくなったり、書面の交付を電磁的方法により代替することも可能になりました。
そもそも宅地建物取引業法とは?
そもそも宅地建物取引業法とは何かを簡単に説明しておきましょう。
同法は「宅建業法」と略して呼ばれることが多く、「人の住居に関わる土地や建物の取引に関するルールを規律した法律」といえます。
宅地と建物の取引につき公正性を確保するための免許制度や、その事業に関する規制を設けています。また、宅地建物取引業の健全な発展や購入者の利益の保護、流通の円滑化なども同法の目的として掲げられています。
この記事をお読みの方におすすめのガイド5選
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
電子契約にも使える!契約書ひな形まとめ30選
業務委託契約書など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など使用頻度の高い30個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
導入で失敗したくない人必見!電子契約はじめ方ガイド
電子契約のキホンからサービス導入の流れまで、図解やシミュレーションを使いながらわかりやすく解説しています。
社内向けに導入効果を説明する方法や、取引先向けの案内文など、実務で参考になる情報もギュッと詰まった1冊です。
紙も!電子も!契約書の一元管理マニュアル
本ガイドでは、契約書を一元管理する方法を、①紙の契約書のみ、②電子契約のみ、③紙・電子の両方の3つのパターンに分けて解説しています。
これから契約書管理の体制を構築する方だけでなく、既存の管理体制の整備を考えている方にもおすすめの資料です。
自社の利益を守るための16項目!契約書レビューのチェックポイント
法務担当者や経営者が契約書レビューでチェックするべきポイントをまとめた資料を無料で提供しています。
弁護士監修で安心してご利用いただけます。
法務担当者向け!Chat GPTの活用アイデア・プロンプトまとめ
法務担当者がchat GPTで使えるプロンプトのアイデアをまとめた資料を無料で提供しています。
chat GPT以外の生成AIでも活用できるので、普段利用する生成AIに入力してご活用ください。
2022年7月に施行された「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」改正について
宅地建物取引業法では、宅地建物取引業を営もうとする者は免許の申請時、事業者や使用者などの情報を提出することを義務付けています。また、従業員には免許を受けた事業者の従業者であることを示す証明書の携帯や、事務所に従業者名簿を備えることも義務付けています。
国土交通大臣自身が宅地建物取引業法の解釈・運用を行う際の基準として作成・公表されている「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」も、上記法改正に合わせ、2022年7月に内容が改正されました。
従業者証明書、従業者名簿での旧姓併記が可能に
2022年5月改正の、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」のポイントは、従業者証明書・従業者名簿における旧姓併記が認められるようになったことです。法人の代表者や役員、免許を受ける個人などについても同様です。
なお旧姓の併記は義務ではなく、「併記してもよい」とされています。ただし業務が混乱したり、取引の相手方が誤認したりするような事態は避けなくてはなりません。
2022年5月に施行された宅地建物取引業法の改正点
実際の取引への影響が大きいのは、2022年5月18日施行の改正法です。
建物を賃貸借する際のやり取りなどがスムーズになり、オンライン上で完結できるようルールが変更されています。
押印が不要に
宅地建物の購入や賃借を行うにあたって買主や借主が取引条件などを正しく理解できるよう、宅地建物取引士には「重要事項の説明」を行うことが義務付けられています。取引金額が大きいことが想定される不動産取引においては、十分な情報を得た上で契約を締結できるよう、このような説明義務が課されています。買主・借主が求めなかったとしても、宅地建物取引士は重要事項の説明をしなければならず、省くことができません。
これまでは、重要事項説明書や37条書面等を交付するにあたって宅地建物取引士は「当該書面に記名押印をしなければならない」と定められていましたが、改正後はその文言が「記名押印」ではなく「記名」のみへと変更されました。つまり、押印は義務ではなくなったのです。
また、契約成立時に交付することが義務付けられている「契約内容を記載した書面」についても同様の変更がなされています。
書類の電子化が可能に
法律上で「書面の交付」とあるときは、紙として作成された書類を指します。そのため、書面で交付しなければならない旨が規定されている場合は、PDFなどのデータで交付することは認められません。
しかし、社会全体でデジタル化が急速に進む中、いつまでも書面が必須とされていたのでは円滑な業務遂行が実現できません。このような流れを受け、宅建業法でも電磁的方法による交付も認められるよう改正されました。
依頼者の承諾を得れば、電磁的方法による交付をもって書面を交付したとみなされるようになったのです。
具体的には、家の売買を媒介した際に交わされる「宅地建物売買等媒介契約書」などが改正法の影響を受けます。前述の重要事項説明書や、契約内容を記載した書面についても同様です。事業用定期借地権では、公正証書が必要となります。
なお、事業用定期借地権に関してはまだ公正証書の運用が必要である点には注意が必要です。
電子化を進める上で気をつけたいこと
宅建業法改正により、宅地建物の取引が円滑になることが期待されます。オンライン上で重要事項の説明を受けることも、契約書等のやり取りもできるようになるからです。しかし、電子化を進めるにあたっては注意すべきこともたくさんあります。
例えばオンラインで行う重要事項の説明においては、その内容が十分に理解できるよう音声や映像の質が保たれていなければなりません。映像が乱れてよく見えない、音声が聞き取りづらいといった環境で説明を行うことのないよう注意しましょう。
法律でどのような機器を使用するのか、どのサービスを利用しなければないのか、といったルールは設けられていません。
音声に関しても、相手方が音声を明瞭に聞き取れるような性能を有するマイクを使用しましょう。
重要事項を説明する前に、相手方が契約当事者本人であることを確認することも大切です。オンラインであっても、本人であることを確認できるフローを設けましょう。
今後の不動産取引の動向に注目
電子化は義務ではないため、すぐにすべての宅地建物の取引が電子化されるわけではありません。しかし、今後はオンライン上でのやり取りが増えることが見込まれ、取引の在り方が変わることが予想されます。
よくある質問
2022年5月に発表された宅地建物取引業法で可能になったことは何ですか?
従業者証明書や従業者名簿などに、旧姓を併記することが可能になったことです。詳しくはこちらをご覧ください。
2022年5月に発表された宅地建物取引業法の主な改正点は何ですか?
重要事項説明書や契約内容記載書面などへの押印が不要になったことと、書類の電子化が可能になったことです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
道路交通法とは?事業者が知っておきたい規制や改正をわかりやすく解説
道路交通法とは、交通ルール等をまとめた法律のことです。無秩序に道路を使用すると人を死傷させてしまうこともありますので、法律で共通のルールを設けているのです。 従業員による運転が事故に繋がることもありますので、道路交通法については企業において…
詳しくみる抱き合わせ販売とは?独占禁止法と事例を解説
事業を行う上で、複数の商品を組み合わせる「セット販売」は一般的な販売戦略ですが、その一形態である「抱き合わせ販売」が独占禁止法に抵触し、排除措置命令や課徴金といった経営リスクを招く可能性があります。 この記事では、抱き合わせ販売の定義、独占…
詳しくみる特定商取引法とは?概要や実務上の注意点をわかりやすく紹介
「特定商取引法」では特定の取引に適用されるルールを定め、クーリングオフ制度などにより消費者保護を図っています。 そこで通信販売や訪問販売など、同法で定められた特定の営業方法を行っている企業は同法の内容を理解する必要があります。当記事でわかり…
詳しくみるシュリンクラップ契約とは?法的有効性や判例、問題点について解説!
他人が権利を有するソフトウェアを使用する場合、ライセンシー(実施権者。ソフトウェアを使用する者)とライセンサー(実施許諾者。権利を保有する者)が使用許諾契約を締結することが一般的です。使用許諾契約を締結する方法の一つに「シュリンクラップ契約…
詳しくみる商法526条とは?民法改正による変更点や売買契約書の注意点などを解説
商法526条は、売買契約において買主による目的物の検査と通知の義務を定めた条文です。事業者間の売買契約において、売主と買主の双方にとって重要なルールとなります。 今回は、商法526条の解説をしたうえで、民法改正による変更点、売買契約書を作成…
詳しくみる民法117条(無権代理人の責任)とは?無過失責任についてもわかりやすく解説
民法117条は、無権代理人の責任についての要件と効果を定めた条文です。無権代理人とは代理人としての権利を有さないで代理人行為を行った者を指し、代理行為を実施できないため、代理人が自分自身のために行った行為とみなされ、すべての責任を負います。…
詳しくみる


